第230話 巡礼の始まり、伝説の爆発
作者_(:З)∠)_「ちょっといろいろやることがあったので更新遅れました!」
ヘルニー└(┐Lε:)┘「引っ越し準備とかでいろいろ忙しくて……(そのタイミングで大物新商品を買ってしまう愚行)」
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「「「「オホホホホホホホホッ(ノイズの走った低音ボイス)」」」」
巡礼の旅の会場にやって来た僕達は、そこに集まっていた無数のアマゾネス達の姿に圧倒されていた。
「なにこれ……」
うん、本当になにこれとしか言えない。
それほどまでに会場の中は筋肉で埋まっていたんだ。
ええと、本当にこの人達は女の人……なんだよね?
「おや、これは主神の神殿の御一行ではないですか(重低音ボイス)」
「ふぇ!? あ、あの……」
突然見上げる程の巨漢、いや巨アマゾネスに話しかけられたトレーシーさんが怯えて後ずさる。
うん、その気持ちは凄く分かるよ。だってこの人物凄くゴツいんだもん。
「おっと失礼。私は商売神に仕えるマ……マーサと申します(重低音ボイス)」
「え? あっ、はい。どうも。えと……ト、トレーシーと申し……ます」
マーサと名乗った女性司祭はトレーシーさんから僕達の方に視線を向ける。
「ところでそちらの神殿長殿の姿が見えませんが?(重低音ボイス)」
どうやらマーサさんの目的は僕達じゃなく神殿長だったみたいだ。
「し、神殿長は今回は不参加です……」
「なんと! もしやお体を悪くされたのですか!? (重低音ボイス)」
「ひぅっ!? い、いぇ……神殿長はもうお年ですので、参加を見合わせられたんです……」
マーサさんの巨体に気圧されながらもトレーシーさんはなんとか言葉を返す。
うん、アレは圧倒されちゃうよね。
「おお、そうなのですか。では神殿長殿のご健康を我が神に祈るといたしましょう(重低音ボイス)」
「ど、どうも……」
マーサさんは胸元で商売神の聖印を切ると手を組んで神に祈る。
「えと……そのぉ……私達に何か御用だったのでしょうか?」
祈りを終えたマーサさんにトレーシーさんが何の要件だったのかと問いかけると、マーサさんは朗らかに低く重い声で笑う。
「いえいえ、ただご挨拶に伺っただけですよ(重低音ボイス)」
「は、はぁ……そうだったんですか。これはご丁寧にどうも」
「では私はこれで。お互い頑張りましょう(重低音ボイス)」
「あ、はい、頑張りましょう!」
本当に挨拶に来ただけだったらしく、マーサさんは特に何をするでもなく去っていった。
「ビ、ビックリしたぁー。まさか商売神の神殿に話しかけられるとは思わなかったですよぉー」
どうやらかなり緊張していたみたいで、トレーシーさんは大きく溜息を吐いて脱力する。
「落ち目のウチに話しかける人が居るなんて思っても居ませんでした……」
ああ、成る程そう言う意味で驚いたんだ。
でもそれは、それだけ聖都での主神の神殿の権威が落ちているって事なんだろうね。
フォカさんが神殿間のパワーバランスが崩れる事を恐れる理由がわかったよ。
他の国でなら、こうまで露骨に教会間に力の差が出来るなんて珍しいからね。
国によって一柱の神の教会が多かったり少なかったりする事はあるけど、複数の神の教会が共存する場所でここまで大きな差になる事は滅多にない。
なによりここは各教会の聖地なんだから、猶更力の差が目に見えて現れるのは異常だ。
「ふんっ、始まる前から仲良くお喋りとは、主神の神殿は随分と余裕だな!(野太いダミ声)」
「ふひゃっ!?」
大きな声を上げて現れたのは、随分と目つきの悪くゴツい女司祭だった。
「えっ、ど、どなたですか?」
またしても知らない人に話しかけられた事で、トレーシーさんが困惑する。
「主神の神殿の連中は礼儀知らずしか居ないのか!? 人に聞く前に自分から名乗るのが礼儀だろうが!(野太いダミ声)」
「ひぅっ!?」
一方的な言いがかりではあるものの、あまりの迫力にトレーシーさんが泣きそうになる。
「す、すみません、私トレー……」
「待ちな姉ちゃん」
けれどそれを止めたのはジャイロ君だった。
「そっちから話しかけて来たくせに、礼儀知らずもなにもねぇだろ」
「何だと貴様!? (野太いダミ声)」
ジャイロ君に反論されたダミ声の女司祭が気色ばむ。
「名乗りもせずに話かけてきたそっちの方がよっぽど失礼だろ。さっきの奴はちゃんと自分から名乗って来たぜ?」
「きさ……ふん、良いだろう。俺はサン……サニーだ。小娘、名乗れ(野太いダミ声)」
「ジャ……ジャネットだよ」
「ジャネットか。ふん、その名覚えておこう。言っておくが巡礼の旅は貴様のような小娘が達成できる程甘くはないぞ。痛い目を見たくなければ今のうちに棄権するのだな(野太いダミ声)」
「ははっ、アドバイスありがとよ」
「ちっ……後悔するなよ(野太いダミ声)」
そうサニーさんは吐き捨てるように言うと、すぐに踵を返して去っていった。
「何しに来たんだアイツ?」
結局サニーさんも特に何かをするでもなく帰って行っちゃったんだよね。
もしかしてあの人も挨拶に来たのかな?
「あの、ジャネットさん……さっきはありがとう」
と、トレーシーさんがジャイロ君にお礼を告げる。
「あん? 何のことだよ?」
「あの怖い人から庇ってくれたでしょ?」
何の事かと首をひねるジャイロ君に、トレーシーさんはサニーさんから庇ってくれたお礼だと告げる。
「ああ、そんな事か。気にすんなって。あいつがむかついたから勝手にやっただけだ」
「でもありがとう。あんな怖い人に立ち向かえるなんて凄いわね」
「大したことじゃねぇよ」
まぁ僕らは本当は男だからね。トレーシーさんが思うほど危ない事をした気がしないのは確かだ。
「ふふふ、随分と派手にやり合っていたわね」
ジャイロ君達が話していると、聞き覚えのある声が会話に加わってきた。
「フォカさん!?」
そう、やってきたのはフォカさんだ。
それにフォカさんの仲間らしいこれまた逞しい女性司祭達の姿もある。
「はい、大地母神に仕える司祭フォカと申します。皆さん初めまして」
これまでのやり取りを見ていたらしく、フォカさんは自分から挨拶をしてくれた。
まぁホントはフォカさんの事はとっくに知っているけれど、トレーシーさんの前だから初対面の振りをした方が良いだろう。
うっかり名前を呼んじゃったけど、そこはフォカさんが有名人だからなんとか誤魔化せるかな?
「せ、聖女フォカ様!? な、何で!? い、いえ、は、初めまして! 私は主神様に仕える司祭でトレーシーと申します!」
フォカさんの登場に慌てたトレーシーさんだったけれど、流石に三回目ともなるとなんとか挨拶を返す事が出きた。
これもマーサさんとサニーさんに挨拶したお陰かな?
「はい、よろしくお願いしますねトレーシーさん」
「ふわっ!?」
にっこりと慈愛に満ちた笑みを浮かべるフォカさんの姿に、トレーシーさんの体が突然グラリと傾く。
「うわわっ、危ない!」
顔を真っ赤にしてふらついたトレーシーさんを、ノルブさんが慌てて介抱する。
「は、はう~、聖女と名高いフォカさんとお話出来るなんて……」
どうやらフォカさんの名声は聖都でも、ううん、聖都だからこそ大きいみたいだ。
フニャフニャになったトレーシーさんを見たフォカさんは小さく笑い、彼女に背を向けると小声で僕達に話しかけてきた。
「ふふっ、凄い参加者ばかりでビックリしたでしょう?」
まるでちょっと珍しいもののように言うけれど、あれはちょっとどころじゃないよ。
「とても女とは思えねーよ。実は男なんじゃねーの?」
「ちょっ、流石にそれは失れ……」
ジャイロ君が余りにもはっきりとものを言うものだから慌てて止めようとしたんだけど、フォカさんはクスクスと笑い声をあげる。
「ええ、その通りよ」
「「「「「「「え?」」」」」」」
しかも叱るどころからそれを認めちゃうの!?
「彼女達の正体はね、貴女の言う通り男なのよ」
「「「「「「ええーっ!?」」」」」」
フォカさんのとんでもない発言に、僕達は思わず声をあげてしまう。
「男ってど、どういう事ですか!?」
けれどフォカさんは口元に指を当ててしーっとジェスチャーを送ってくる。
(どういう事なんですか?)
(言葉通りの意味よ。レクス君達にも思い当たるフシは無いかしら?)
思い当たる節? と言われても……
(((あっ)))
フォカさんに言葉に反応したのはリリエラさんとミナさんとメグリさんの三人だった。
(何か気付いたんですかリリエラさん?)
(あー、うん。多分分かったと思うわ)
けれどリリエラさんはなんだかよそよそしい感じで目を逸らす。
(つまり、レクス達と同じことをしたのよね?)
え? それって……
(あの人達も性転換の魔法薬を飲んで女になった)
(((あ、ああーっっ!!)))
メグリさんの言葉を聞いて、ようやく僕達はフォカさんの言葉の意味を理解したんだ。
(マジかよ! アイツ等マジで男だったのかよ!?)
(というか他の教会も同じ事してたんですか!?)
まさか僕達以外にも魔法薬で女になってる人達がいるなんて思ってもいなかったよ。
っていうかこんな薬を自分から飲む人が居たんだ……
(これは巡礼の儀における公然の秘密なのよ)
驚く僕達にフォカさんは説明を続ける。
(巡礼の旅に参加できるのは女性のみ。けれど旅には魔物や盗賊が襲ってくるし、単純に旅そのものも過酷だわ。聖都の司祭達は優秀な人達が多いけれど、それでも神殿間のメンツをかけて戦える程の女性司祭となると数は限られる。そもそも司祭の仕事は戦う事じゃないしね)
ああ、確かに言われてみれば神に仕える司祭は人を救う事が役目であって、決して戦う職業じゃない。
戦神の司祭や神殿騎士といった例外はいるけれど、それでも普通は積極的に戦ったりなんてしないものだからね。
それに司祭の魔法は攻撃よりも防御や回復寄りだ。そう言う意味でも戦闘には向かないだろう。
「で、丁度都合よく見つかった女体化の魔法薬のレシピを商売神の司祭が使いだしたって訳。そしたらその情報が故意か偶然か外に漏れちゃってね、商売神の神殿がそんな手を使うのならウチもって皆使い始めるようになったのよ。そうして性別という縛りが無くなった各神殿はより強い手駒を求めて世界中から腕利きを集めるようになったと言う訳なのよ」
((((((うわぁー……))))))
あの参加者の大半が実は男なのか……
けど成る程、世界中から腕利きを集めていたから、会場はこんなに国際色豊かな感じになっているんだね。
あっちに居る人は明らかに東国風の格好をしているし、あっちに居る黒褐色の肌に銀の髪をしたゴツい人は南国から来た男の人なのかな?
皆巡礼の旅に参加する為にわざわざ遠い場所からやってきて、女体化の薬を飲んだのかぁ……どんな気持ちで薬を飲んだんだろう?
(でも本当にレクス君達には驚かされたわ)
と、そこでフォカさんが意味深な事を言った。
(どういう意味ですか?)
(彼等を見れば分かると思うけど、女体化のポーションの外見は元の体に準じるのよ)
(はぁ)
あらかじめ変身する姿が決められている魔法薬ならともかく、単純に女体化するだけなら元の体がベースになるのは間違いない。
(だから彼等が女体化すると鍛えた肉体がそのままで女の子になってしまうのよ。仮に母親が華奢な美人だとしても、母親に似る訳でもないの。でもレクス君達はどうみても可愛い女の子でしょ? 元々の質が良かったと言うか、素質があったと言うか……ね)
と、フォカさんはニヤリと嬉しそうな笑みを浮かべる。っていうかなんかこわいんですけど……
「おいおい、誰がヒョロいって? ちゃんと見てくれよ。ほら、腹筋だってバッキバキだぜ!」
そう言ってジャイロ君は服をめくってお腹を見せる。
「「「「っっっっ!?」」」」
その瞬間、会場中の視線がジャイロ君に集まったんだ。
「なっ? ちゃんと腹割れて……」
「ちょっ、馬鹿! 何見せてんのよ!」
その光景を見たミナさんが慌ててジャイロ君にかぶさってお腹を隠す。
「何言ってんだよ。たかが腹だろ? 見られても恥ずかしくねぇだろ」
「普通は恥ずかしいのよ!」
ミナさんはジャイロ君の手ごと服の袖を掴んで降ろす。
「まったく、少しは女らしくしなさいっての!」
「何言ってんだよ、俺はお……」
「おんなのこでしょ?」
「あっ、はい。そうです」
ミナさんの刺すような視線を受けたジャイロ君が慌てて頷く。
(そんな訳で参加者の女性は約9割が男なの。だから女性が相手だからと遠慮する事はないからね)
(はぁ……)
そこでふと僕はフォカさんの傍に居る人達の事が気になった。
この人達もかなりゴツいけど、もしかして……
と思ってフォカさんの仲間を見ようとしたら、すぐに顔を逸らされてしまった。
恥ずかしがり屋さんなのかな?
知り合いに見られたくないからって理由なら分かるけど、フォカさんの仲間に知り合いは居ないしなぁ。
(それじゃああんまり長話してても疑われちゃうから、私達はこの辺で失礼するわね。健闘を祈っているわレク、いえラクシちゃん!)
そう言って去っていくフォカさん達を見送りながら、ふとジャイロ君が呟いた。
「……ところでさ兄……姉貴」
「どうしたのジャ……ネットちゃん」
「9割が男って事は、1割は女なんだよな」
「そう……だね」
僕達は何となく会場をぐるりと見まわす。
そこにはフォカさんやトレーシーさんのような普通の女性の姿が確認できるけど、それでもその数は一割にも届かない。
と言う事は……
「どれが本物の女なんだ……!?」
「ジャ……ネットちゃん、気にしたら負けだと思うよ」
と言うか本当に気にしない方が良いと思うんだ……
『静粛に! これより巡礼の旅の開催式を始めます』
そんな事を話していたら、運営係と思しき人が式典の開始を告げたんだ。
見れば会場脇には運営関係者用の席が用意されていて、そこには既に年配の司祭達が座っていた。
そして僕達参加者が静かになると、関係者席から立ちあがったひと際仕立ての良い司祭服を着たお爺さんが立ち上がる。
『ようこそ、巡礼の旅に参った乙女達よ』
「「「「「ぶふっ!!」」」」」
乙女と言う言葉に会場中が吹きだす。
うん、さすがにこのメンツに乙女はないと思うんだ……だって9割男なんだよ?
『えー、本来なら例年通り主神の神殿主導で儀式が行われるところでしたが、異議が申し立てられた事で古来よりの盟約に従い、巡礼の旅で神にお伺いを立てることとなりました。巡礼の旅に参加する皆さんは正々堂々と……』
代表のお爺さん司祭による巡礼の旅についての話が始まる……んだけど。
「長い……」
「いつになったら終わるんだ?」
そう、お爺さん司祭の話はとても長かった。
前世や前々世もそうだったけど、こういった話が長いのはいつの時代も同じなんだね……
『では巡礼の旅を開催します』
そうして、ようやく長い話が終わりを告げる。
『では皆さんの健闘を祈ります。一同、出発してください!』
巡礼の旅の開始が告げられ、全員が一斉に動き始めた……んだけど。
「おおおおっ!? お、押すなよ!?」
「うわわっ、危ない!?」
皆が一斉に走り始めた所為で、僕達は後ろからグイグイと強引に押し出されバランスを崩しそうになる。
その時だった。
僕達の足元でカチリという音が鳴ったんだ。
「「「「「「「え?」」」」」」」
ドカァァァァァァァァァン!!
そして、凄まじい音と共に会場が大爆発に包まれた。
◆運営委員達◆
「おー、今年は一段と派手ですなぁ」
参加者達が爆発に巻き込まれたのを見た私達は、あらかじめ張っておいた防御用のマジックアイテムを解除する。
「ふむ、どうやらたまたま埋まっていた戦闘用のマジックアイテムを参加者の誰かが踏んでしまい、運悪く大爆発を起こしてしまったみたいですな」
普通に考えればそんな事はありえないのだが、巡礼の旅の会場でならどんな事も起こりうる。
何故ならあらゆるトラブルは神が参加者に与えたもうた試練だからだ。
「なんと、それは大変だ。参加者達は大丈夫でしょうか?」
我々は爆炎の中から飛び出してきた参加者が自分達の所属する神殿の信徒達である事を確認する。
「おお、ウチの参加者は無事ですな。いやー、万が一を考えて高価な防御用のマジックアイテムを持たせておいて良かった」
「ウチもですよ。まさかこんな序盤で切り札を使う事になるとは思ってもいませんでしたがね」
「おっと、どうやら他の神殿も無事だったようですね。年々危険度が上がる巡礼の旅ですから、どこも対策は万全ですか」
巡礼の旅は初代教皇達の過酷な旅を再現し神に信仰心を奉納する儀式である。
だからなのか、何故か巡礼の旅では毎回普通の旅ではありえないような事件が立て続けに起きる。
それゆえ各神殿は腕利きの冒険者や傭兵を雇い、更に高価なマジックアイテムで身を守らせるのだ。
「どこの神殿も防御用のマジックアイテムと高速疾走のマジックアイテムを装備してスタートダッシュを狙ったのが功を奏したようですな」
巡礼の旅に勝利する為に必要な物、それは確かな実力と潤沢な財力と高性能なマジックアイテムを仕入れるコネにあると言っても過言ではない。
だからこそ……
「ん? 待ってください。主神の神殿が出てきませんよ? もしかして……」
「そう言えばあそこは落ち目になっているせいで予算に余裕がないと聞きます。もしかしたら対策が不十分で巻き込まれてしまったのでは?」
「なんという事だ! まさか主神の神殿がこんな序盤で脱落するとは!」
力も金もコネも無い者には参加する資格すらない。
最も経験のある神殿長が今年は年を理由に棄権したのも大きいだろう。
「ですが考えてみると良かったのかもしれません。巡礼の旅は進むにつれて危険が増していきます。ここで脱落した方が彼女達にとっても良かった事でしょう」
などと知識神の司祭がわざとらしく言うが、あのマジックアイテムを設置したのはお前達の部下だろうに。
だがそれは知識神の神殿だけではない。
この巡礼の旅でおこるあらゆる試練は実のところ神殿間の妨害工作に他ならない。
そんなあからさまに不自然な妨害行為を誤魔化す為に神の試練だと言っているに過ぎないのだ。
そう、この旅に表向き必要な物が力と金とコネなら、裏で必要な物は悪逆さと謀略だ。
敬虔な信仰心など何の役にも立たないのだから。
「おっと、煙が晴れてきましたよ。生きている者がいると良いのですが」
大爆発の煙がようやく晴れてきた事で、大地母神の司祭のババァが白々しい事を口にする。
この女は商売神の信徒である我々が驚くほどがめつい所為で、自身の神殿で聖女と呼ばれる司祭に呆れられて半ば出奔されているほどだ。
お陰で聖女の治癒魔法の名目で大儲けする算段が台無しになったと癇癪を起していたのは有名な話だ。
「もし生存者がいたら私の所の若い者達に治療させましょう。なに治療費は後払いにしてあげましょうて」
ほらコレだ。何でこの女は大地母神を信仰しているのか不思議でならん。
まぁどうせ商売神の信徒同士で客の奪い合いをするのは儲けが少なくなるとか、そんな所であろうな。
まぁ良い。連中が生きていたらこのババァよりも多少安く治療してやるとしよう。
私からの慈悲と言うヤツだ。
そんな事を考えていたら、煙の中に動くものが見えた。
おお、運の良い連中だ。生きていたとはな。
とはいえ、あれだけの大爆発だ。到底無事では……
「あービックリしたぁ」
「「「「「……え?」」」」」
「急に爆発するとかなんなの一体?」
「おいおい、いきなり大歓迎じゃねぇか。トレーシーの姉ちゃんよ、巡礼の旅ってのは毎回こんなにうるせぇのかよ?」
「い、いえ、そんな事はないと思うんですけど……私も神殿長に聞いた話しか知りませんけど」
「じゃあ今のは誰かの妨害工作ってことかしら? なかなか大胆なことしてくれるじゃないの」
「大胆とかいう問題じゃないですよ!? 殺意高すぎでしょコレ! 普通に死にますって!」
「煙たい」
「キュフン」
そこから出てきたのは、かすり傷一つない主神神殿の司祭達の姿だった。
「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」
運営委員_(:З)∠)_「うそーん」
モフモフ_Σ(:З)∠)_「愚かな。爆発程度でどうにかなる相手だと思ったか……もっと頑張れよ」
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