第229話 出発の朝
作者_(:З)∠)_「おはようございます! 本日は二度転生7巻の発売日です! ヒャッハーーーッ!!」
ヘルニー└(┐Lε:)┘「いえぇぇぇぇぇいっ!!」
ヘイフィー_(:З)∠)_「皆さんよろしくねー!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さまの声援が作者の励みとなっております!
聖都の主神神殿で生活を始めた僕は、この神殿の司祭達を見て気づいた事があった。
それは司祭達と信徒の距離が近いことだ。
通常司祭と言えば、もっと上から目線で偉そうな感じなんだけど、ここの司祭達はちょっと違った。
「はい、治療は終わりましたよ」
「ありがとうございます司祭様!」
「今後はあまり無理せず、具合が悪くなったらすぐに来てくださいね」
「分かりました!」
なんというか皆の目線が信徒たちと同じなんだ。
もちろん信徒達は偉い司祭達に対して尊敬の念を抱いているんだけど、それに司祭達が偉ぶる様子がなかったんだ。
それはこの聖都で主神神殿が落ち目だからというのもあるのかもしれない。
けれどここで一番偉い神殿長までもが信徒と同じ目線で活動している光景は決してそれだけではないと僕に感じさせた。
「やっぱり他の神殿の司祭達とは違うなぁ」
聖都で暮らすにあたって、ライバルである他の神の司祭達の事も僕らはチェックしていた。
けれど主流となった神々の司祭達にはどうにも良い感情を抱けなかったんだ。
なんというか、僕の良く知っている聖職者って感じでどうにもね。
「はい次の方どうぞー」
うん、これは僕達も負けていられないね!
「よーし! 午後からも頑張るぞー!」
◆トレーシー◆
深夜、皆が寝静まった夜、私は神殿長と二人で語り合っていました。
ある決意と共に。
「本気なのですね」
神殿長が心配そうに私を見つめます。
ですが私の決意は揺るぎません。
「はい、彼女達はこの神殿の為に沢山働いてくれました。それなのに私だけがのうのうと神殿に守られているわけにはいきません!」
そう、ラクシさん達は神殿の為にとても頑張ってくれました。
神殿を改築し、信徒の方達を治療し、裏の畑をさらに広げて、更には聖都周辺の魔物を討伐して人々の安全まで守ってくれたのです。
しかも私達が留守の時を狙ってやってきた戦神の司祭の横暴にも立ち向かってくださったと言うのですから本当に頭が上がりません。
そこまでしてもらっていると言うのに、私達が何もしないでいたらそれこそ主神様に申し訳が立ちません。
「分かりました。貴方の意思を尊重しましょう」
神殿長様は困ったように苦笑していましたが、私の意思を尊重してくださったようで許可を出してくれました。
「ですが気を付けるのですよ」
「ありがとうございます神殿長!」
◆
「よし、それじゃあ行きましょうか!」
とうとう巡礼の旅の朝がやって来た。
準備を終えた僕達は巡礼の旅に出るべく神殿を出る。
「あれ?」
そこには神殿長さんとトレーシーさんを始めとした神殿の司祭達、それに神殿に足繁く通ってくれていた信徒達の姿があった。
「おはようございます。皆さん」
神殿長達はどうやら僕達を見送りに来てくれたみたいだ。
「巡礼の儀はとても大変な旅です。それは旅の過酷さや襲い来る魔物だけでなく、競争相手の方々にも気をつけてください。本当に危ないと思ったら、私達の事なんて気にせずに棄権して良いのですよ」
よほど僕達の事を心配してくれたんだろう。神殿長は危なくなったら負けても良いから無事に帰って来いと告げてくれた。
正直そんな事を言われるとは思っても居なかった。
こんな大きな都の神殿を取りまとめる人なのに、神殿長は凄く優しくて気遣いの出来る人なんだと思うと、僕は心が温かくなった。
高位の神職者にもこんな出来た人がいるんだなぁ。前々世や前世とは大違いだよ。
前世とか、神の為に働けるのは素晴らしい事なのだから、報酬を求めるなど恥ずべきことだって言ってタダ働きさせようとしたり、逆に僕を利用して自分の名声を高め私腹を肥やそうとする人で一杯だったもんなぁ。
でもこれは僕達の引き受けた依頼なんだ。
それから逃げ出す事なんて出来ない。
何より、僕達はこの神殿の人達が気に入っている。
政争渦巻く聖都でちゃんと僕らや信徒の人達と同じ目線で向き合う善良なこの人達を。
だからこの人達の為に頑張りたいとも思ったんだ。
「大丈夫です。僕達に任せてください!」
「そうですか……確かに貴女達はとても凄い娘達だけど、自分の力を過信せず、油断しないように気をつけてくださいね」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
あくまで僕達を心配し、油断しないようにと神殿長は戒めてくれた。
本当に良い人だなぁ。
「では行ってきます」
「はい、気をつけてくださいね」
神殿長に出発を告げると、トレーシーさんが前に出てきた。
あれ? トレーシーさんも何か言う事があるのかな? と思ったんだけど……
「では行きましょうか皆さん」
なんとトレーシーさんはそう言って僕達の旅に同行する姿勢を見せたんだ!
よく見るとトレーシーさんは背中に荷物を背負い、その手には先端に金属塊の付いたロングメイスを握っている。完全にお出かけモードだ。
「え!? トレーシーさんも参加するんですか?」
まさかトレーシーさんが参加するとは思わず、僕達はビックリしてしまう。
「あれ? ご存じなかったんですか? 巡礼の旅には聖都の神殿関係者が最低一人は必要なんですよ」
「ええ!? そうだったんですか!?」
何それ!? 聞いてないよフォカさん!?
「ええ、巡礼の旅は神話の巡礼をなぞらえています。ですから旅を始めた若者役として最低でも5年は聖都の神殿に勤めた者がいないといけないんです。代わりに5年未満の関係者や外部からの協力者は神話における後から加わった仲間として認められます」
「そうしないと巡礼の旅に参加する者が外部からの腕利きの傭兵や冒険者だけになってしまって、神聖な儀式どころではなくなってしまいますからね」
トレーシーさんの説明を神殿長が補足する。
「な、成る程、そう言われればそうですね」
確かに神聖な儀式の参加者が皆金で雇われた部外者ばかりだったら、儀式の意味が無くなっちゃうもんね。
「これまでは私が代表として参加していたのですが、もう年なので体も思い通りには動かなくなってきて、だから今年は辞退しようかと考えていたのです」
と、神殿長は本当なら巡礼の旅を棄権するつもりだったと告げた。
「でもね、トレーシーが言ったのよ。この寂れた神殿の為に力を尽くしてくれる人が居るのなら、全力で力になりたいって」
神殿長の言葉にトレーシーさんが姿勢を正して僕達に頭を下げてくる。
「本来なら私に巡礼の旅に出る程の実力はありませんでした。ですが皆さんこれ程までに神殿の為に力を貸してくださるのならば、私も出来うる限り皆さんの力になりたいんです!!」
頭を下げて必死で語るトレーシーさんの姿に偽りは感じない。
「皆さん、沢山迷惑をかけてしまうかもしれません、ですがどうか私に力を貸してください! 私も皆さんの役に立ちたいんです! どうかお願いします!」
だから僕は、いや僕達は決めた。
「トレーシーさん、顔を上げてください」
僕はトレーシーさんの肩を叩き、顔を上げて欲しいと声をかける。
「じゃあ……」
「僕達が巡礼の旅に出るには神殿で真面目に祈りを捧げてきたトレーシーさんが必要なんです。だから足手まといなんかじゃないですよ」
そう、この神殿の人達はちゃんと真面目に信徒達と向き合っていた。
その為に信徒の数が激減したのは皮肉だけど、それでもトレーシーさん達は真しに聖職者としての務めを果たしている。
でなきゃ落ち目の教会なんてすぐに消えちゃうもんね。
「そうだぜ! アンタが出てくれねぇと参加出来ねぇってんなら、こっちが来てくれって頼むのがスジってもんだろ!」
ジャイロ君もトレーシーさんの決意が気に入ったのか、豪快な笑い声をあげながらトレーシーさんを歓迎している。
「まぁそう言う事よ。それにお互い巡礼の旅に出たかったんだから、利害が一致してラッキーくらいに思っておけばいいのよ」
「皆さん……ありがとうございます!」
改めて僕達に受け入れられたことでトレーシーさんは目を輝かせながら顔を上げる。
「よーし、それじゃあ巡礼の旅に出発だ!」
「「「「「「おぉーっっ!!」」」」」」
「「「「がんばれよーっ嬢ちゃん達―っ!! 危なくなったら戻って来いよーっ!!」」」」
そうして、僕達の雄叫びと信徒の皆の歓声が町の一角に響き渡ったのだった。
◆
「あそこが巡礼の旅のスタート会場か」
巡礼の旅が開催されるスタート地点の会場に近づくと、既に多くの人が集まっているのが見えた。
「ええ、ここから全ての参加者が巡礼を始めるんです。聖都から巡礼の旅を準えていくつもの町や村を進み、聖域にある巡礼の地へとたどり着いた者が勝者として認められるんです」
トレーシーさんの言葉を聞きながら、僕達は会場へとたどり着く。
それにしても凄い数の参加者だ。
これが全部神事の為に集まった参加者なんだ。
きっと凄い腕利きが集められたんだろうなぁ。
「うわぁ、人が沢山い……」
けれど、よく見たらその光景はどこかおかしく……
「オホホ、勝利は我が商売神の神殿が頂きますわ(ゴツイ声)」
筋骨隆々な鋼の肉体と、
「あらあら、それは私達戦神の神殿でしてよ(野太い声)」
鍛え抜かれた鋼の肉体が、
「「オホホホホホホホホッ(ノイズの走った低音ボイス)」」
火花を散らしていたんだ。
そう、会場は無数のむさ苦しいアマゾネス達で溢れかえっていたんだ。
「「「「「「「……うわぁ」」」」」」」
アマゾネスA_(:З)∠)_「フン!(ポージング)」
アマゾネスB└(┐Lε:)┘「ムン!(暑苦しい笑顔)」
モフモフ_Σ(:З)∠)_「何だこの地獄絵図」
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