第221話 聖女からの指名依頼
作者_(┐「ε:)_「よし! 投稿ペースが戻って来た!」
ヘルニーヾ(⌒(ノ-ω-)ノ「部品の8割を交換したニューエアコンは伊達じゃない!」
ヘイフィー_(:З)∠)_「それって外装と基板とコンセント以外ほぼ全部って事では?」
作者_(:З)∠)_「もう新品だよな……」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
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「フォカさんから指名依頼ですか?」
冒険者ギルドに依頼を探しにやって来た僕達は、かつてカーバング鉱山の奥で発見された危険な遺跡を共に探索したS級冒険者の聖女フォカさんから指名依頼が入っているとギルドから連絡を受けたんだ。
「はい。なるべく早く聖都の大地母神神殿に来て欲しいとの事です。依頼内容は現地で説明、依頼を受けるかどうかはその時に決めて貰えれば良いとの事です。報酬は金貨1000枚、現地までの移動に使う経費として別途金貨10枚を先払いで支給。こちらは依頼を受けなくとも返済の義務はないとの事です」
「経費が金貨10枚で返済の義務なしなんてかなり太っ腹ね。報酬額も大きいし、これはかなり厄介な依頼かもね」
「そうね。その割には依頼を断ってもいいって言うのが面倒事の気配がするのよねぇ」
リリエラさんとミナさんがうーんと頭を悩ませている。
「でもただで金貨10枚貰える! 飛行魔法でビューンと飛んでいけば馬車代もかからないし、宿代も節約できる! 受けるべき!」
さすがメグリさんブレない。
「ああそれと、実力の確かな仲間が居るのでしたら、ぜひその人達も連れてきて下さいとのことです」
「皆も連れてきて良いって事ですか?」
「はい。Sランク冒険者一人ではなく、レクスさんのパーティへの指名ですので」
と言う事はそこまで面倒事じゃないのかな?
「はいはーい! 受けるべきだと思いまーす!」
メグリさんは一も二もなく賛成だね。
「あの、聖女様からの直接依頼なら受けた方がいいと思います。それに聖都の事なら、僕も多少は役に立つと思いますから」
珍しくノルブさんからも積極的な意見が出た。
いつもは皆の意見が出た後に発言するから、ちょっと不思議な気分だ。
逆にジャイロ君は未だに無言だ。
「ジャイロ君はどうする?」
「うーん、聖都ってあれだろ? 教会の爺さん達みたいなのがいっぱい居てずーっと説法だか説教だかしてる所なんだろ? 冒険者の俺達が行く必要なんてあんのか?」
あー、ジャイロ君は体を張って戦うのが好きだから、堅苦しい所で何をやらされるのかが不安なんだね。
「一応依頼を聞いて拒否するのも自由だから、聞くだけ聞いてみるのも良いんじゃないかな」
「うーん」
それでもやっぱり乗り気じゃないみたいで、ジャイロ君は唸っている。
「馬鹿ねぇ。アンタ大事な事を忘れてるんじゃないの?」
「大事な事?」
と、リリエラさんとの相談が終わったらしいミナさんがジャイロ君の所に戻って来た。
「レクスが関わるのよ。絶対大事になるに決まってるじゃないの」
いやちょっと待って。
「あ、そっか!」
あ、そっか! じゃないよジャイロ君! ポンと手を叩いて納得したって顔しないで!
「だよな! 兄貴と一緒なんだもんな! 絶対大冒険になるに決まってるよな!」
「決まってないよ! 僕は普通に冒険者生活してるだけなんだから! そんな大冒険なんてしてないよ!」
「「「「「大冒険、して……ない?」」」」」
え? 何で皆コイツなに言ってんだって顔してこっち見てくるの?
「ともあれ、面倒なのは教会関係って事よね」
そこでリリエラさんが話を戻す。
「教会関係者からの依頼って、主に二つなのよね」
「二つですか?」
「そう。一つは足りない薬草を大量に仕入れて欲しいみたいなランクの低い冒険者向けの依頼。こっちは大きな魔物の群れとの戦いが突発的に起こってポーションが足りなくなった時に頼まれる事があるからそう珍しくもないんだけど、厄介なのはもう一つね。大きい都市にある神殿からの依頼はほぼ間違いなく厄介事ね」
その言葉を聞いてノルブさんが苦い顔になる。
「大きい神殿は人が多いから、その分賄賂を求めたり不正をする聖職者が増えるのよねぇ。そうなると犯罪まがいの仕事を依頼されたり、厄介事の後始末を頼まれたりするのよ。ケチな依頼主だとゴネて報酬を削られたりするらしいし」
「報酬が金貨1000枚だものねぇ」
あー、これは大剣士ライガードの冒険でもあった、権威を盾に悪さを繰り返す悪徳神官の物語と同じだね。
物語だと大抵最後には悪徳神官に神罰が下るんだけど。
「でも依頼をしてきたのは聖女と呼ばれるフォカさんですし、以前一緒に冒険した限りでは、報酬をケチるような人には見えませんでしたよ」
「となると、教会だけじゃ対応が難しいような厄介事って事ね。どっちかというとジャイロ君が求めている荒事の可能性が高いわね」
「おおっ! やっぱりそうなんだな! さすが兄貴だぜ!」
待って、何でそこで流石僕になるの!?
「つまり依頼はいつもやってる事と変わらない。なら、金貨1000枚と経費10枚でとってもお得! 受けない手はない!」
メグリさんは経費の金貨10枚がよっぽど気にいったんだなぁ。
「まぁ皆も賛成みたいだし、それなら受けても良いかな」
依頼を断っても良いと言うのが良いよね!
そんな訳で、僕達はフォカさんからの依頼を受ける事にしたんだ。
でもその所為であんな事になるなんて、この時の僕は欠片も思わなかったんだよね。
◆
フォカさんからなるべく早く来て欲しいと言われたので、僕達は飛行魔法で移動しつつ暗くなったら最寄りの町の宿に泊まる事にした。
そして今は宿の部屋でノルブさんから聖都についての説明を受けていたんだ。
「聖都、それは神に仕える者達の総本山です。そこはこの世界で初めて神が降臨した場所とも、神々が地上を去った場所とも言われています。僕達神に仕える者達にとって、聖都で勤める事は憧れと言っても過言ではありません」
「つまり田舎者が都会に生きたがるようなもんか」
「……ちょ、ちょっと違いますよジャイロ君」
聖都について説明していたノルブさんの額に珍しく青筋が浮かんでいる。
うん、流石にそれは失礼だよジャイロ君。
「聖都には主神、大地母神、戦神、商売神、英知神、夜神の6大神を祀る主神殿があります」
ふむふむ、この辺りは前世も前々世も同じだね。
「主神様は神々のリーダーで決断、議論を司ります。主に権力者が信仰する神ですね。そして大地母神様は地上の実りと癒しを司ります。農民や薬師が信仰します。戦神様はその名の通り戦いを司るので、騎士や傭兵、冒険者が信仰します。英知神様は知恵を司り、魔法使いや学者が信仰しています。そして商売神様は商売や契約を司り、商人が主に信仰しますが、依頼を受けて働く事で冒険者が信仰する事もあります。最後に夜神様は眠りや安らぎを司る神様で、暗闇や先の出来事などの目に見えない場所からの災いより人を守る神様でもあります」
「そう言えばノルブさんはどこの神様を信仰しているんですか?」
「僕の一族は代々英知神様を信仰しています。知恵を司る神様なので、知恵を蓄え国の政に知恵を貸す事を役割としています」
英知神信仰は珍しく政治にガッツリ食い込むんだよね。
人間だけだと欲望に身を任せて大変な事になるから、時々神様から神託がおりて人間の暴走を止めてくれるらしい。
勿論言う事を聞かずに大変な事になる国も多いみたいだけど。
「神様って色々居るんだな」
「「「「「え?」」」」」
ジャイロ君の言葉に皆がコイツ何言ってんだって顔になる。
「ジャイロ君、村の司祭様に習いました……よね?」
「そーだっけ? どうでも良いから覚えてねぇ」
「おお、神よ、申し訳ありません……」
ノルブさんが頭を抱えながら崩れ落ち、神様に許しを請い始めた。
「まぁしょうがないわよ。田舎の農民なんて神様は神様でしょって認識しかないもの。自分の村の司祭様が信じる神様の事くらいしか知らないのはよくある事よ」
ジャイロ君を擁護したのはリリエラさんだ。
そう言えばリリエラさんも魔獣の森に飲まれた農村の生まれだもんね。
「そうそう! それにそんなの分かんなくても何も困らねぇしな!」
まぁそうなんだけど、それをこれから行く聖都の人達の前では言わないで欲しいな」
「ジャイロ君! 絶対それ聖都の人達の前で言わないでくださいね! 不敬とかそういうレベルの話ではないですから!」
と思っていたらノルブさんがこれまた凄い剣幕でジャイロ君に口止めを始めた。
「お、おう……」
いつも大人しいノルブさんがこんな剣幕になるものだから流石のジャイロ君も押され気味だ。
「そうそう、聖女フォカ様は大地母神様を信仰されておられる大司祭様です」
「大司祭なのに冒険者なんてしてるの?」
「あの方の場合は、司祭の時に冒険者になり、多くの人を癒して神の威光を知らしめた事が認められて大司祭となられたんです」
「つまり実力を伴った宣伝役って事ね」
ミナさんが鋭い事を言う。
事実前世でも教会関係者を前線に出す事で、教会の権威を上げようって活動は多かったからなぁ。
それでも前線で戦う人達からすれば回復魔法の使い手が増えるのはありがたかったから、文句は出なかったけど。
「聖女様がおわす聖都。未熟な僕には行く許可がおりませんでしたが、それはそれは荘厳な神殿が立ち並ぶ地だったとお爺様が仰っていました」
そう呟くノルブさんの顔は、まだ見ぬ聖都へのあこがれに満ちていた。
◆
「ここが聖都かぁ」
王都を出て数日、飛行魔法で移動を続けた僕達は遂に聖都にやって来た。
「……」
「なんていうか……」
「ギラギラしてるわねぇ」
どうやって当たり障りのない言い方をしようかと思っていたら、ミナさんにズバリ見たままの感想を言われてしまった。
「絶対金目のものとお金が沢山ある!」
「……」
「まぁ何ていうか、いかにも都会の教会って感じよね」
「……」
「スゲー下品だよな」
「……」
「荘厳な神殿が立ち並ぶ地『だった』ね」
「……」
もうやめてあげて皆! ノルブさんが空中で顔を覆ってうずくまってるから!
でもこれが聖都かぁ。
確かに皆が言うように、凄く成金くさいというか、金に飽かしたと言わんばかりの光景だった。
時代や建築様式は違っても、そこから感じる雰囲気は変わらないんだなぁ。
「荘厳……厳粛……神聖……」
うん、今は何を言っても逆効果になりそうだ。
そっとしておこう。
ノルブ _:(´ཀ`」∠):_ ...「聖地ぇ……」
メグリ_(:З)∠)_「衛生兵ー!」
ミナ└(┐Lε:)┘「とか言いつつ建物内を物色しない」
モフモフ_Σ(:З)∠)_「今回も碌な事にならない予感」
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