第218話 魔を喰らうもの
作者_(┐「ε:)_ 「エアコンの部品まだ届かないみたいで連絡がねぇ……じっとり(冷凍ペットボトル湿気取りの情報を教えてくださった皆様ありがとうございます)」
ヘイフィーヾ(⌒(ノ-ω-)ノ「6月中旬までには治るといいなぁ」
ヘルニー└(┐Lε:)┘「そして二度転生7巻は7月発売予定です! 皆、予約してねー!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さまの声援が作者の励みとなっております!
◆ミナ◆
「ようやく出てきやがったな!」
ジャイロが遂に現れた魔物のボスに向かって飛び出す。
「こら! 突出するんじゃないわよ!」
「何言ってんだ! アイツをやっつけちまえばコイツ等を操る頭が居なくなるんだぜ! 数の多い敵と戦う時はボスを狙えってのは兄貴の教えだろ!」
「だからっていきなり突っ込んでどうするのよ! もっと考えてから動きなさい!」
「考えてるっての! 喰らえ! 燃えないメルトスラァーッシュ!!」
足の裏から高出力の炎を噴き出し、ジャイロがボスに向かって超高速の急降下攻撃を敢行する。
ドラゴニアで開催された大会でジャイロが蒼炎の二つ名で呼ばれた必殺の攻撃は、どんな敵の装甲もバターみたいに真っ二つにする。
そして幸いにも魔物のボスはその巨大な体が災いして、ジャイロの攻撃に反応出来ないでいた。
「もしかして……いける?」
「喰らいやがれぇぇぇぇっ!!」
ジャイロの一撃が見るからに硬そうな魔物のボスの殻を真っ二つに……
ガキンッッ!!
「え?」
ボスの体を真っ二つに切り裂くはずの一撃は、硬い音と共に弾かれた。
そして凄まじい勢いで魔物のボスの体にジャイロが突っ込んだ。
「もばぁっ!?」
変な悲鳴と共にジャイロの体が魔物のボスの殻にへばりつく。
まるで夏場に血を吸いにやって来た蚊が潰されたかのような光景だ。
「おが……が……」
ジャイロの体がずるずると地面に向かって落ちていく。
「って、見てる場合じゃなかった!? メグリ! 回収急いで!」
「ん、分かった!」
私は慌てて指示を出すと、追尾型の魔法で魔物のボスを攪乱してメグリの援護をする。
その間にメグリは魔物のボスに接近し、ジャイロを回収しようとしたら……突然落ちた。
「え!?」
「っ!」
間一髪メグリは魔物のボスの体にとりつくと、ジャイロを回収して離脱する。
そして何故かジャイロを引きずりながら暫く走ったかと思うと、思い出したかのように飛行魔法を使って離脱を行った。
「ノルブ! ジャイロを治して!」
「は、はい!」
メグリからジャイロを受け取ったノルブが慌てて回復魔法をジャイロにかける。
「ありがとメグリ」
メグリに労いの言葉をかけるも、彼女は真剣な顔で私に驚くべき情報を口にした。
「気を付けて。あの魔物に近づいたら魔法が使えなくなった」
「魔法が!? どういう事!?」
「分からない。急に使えなくなった」
魔法が使えなくなったってどういう事? ジャイロの攻撃が通じなかったのもそれが原因なの?
「けどあの魔物から離れたら魔法が使えるようになった」
成る程、だから途中までジャイロを引きずって逃げてたのね。
「あの魔物の周囲は魔法を無効化する何かがあるって事かしら?」
となると不味いわね。魔法での援護が絶望的じゃない。
いや、まずは試すだけ試してみましょうか。
「フロートコントロール!」
私は浮遊魔法を使って魔物との戦いで掘り起こされた岩や木々を浮き上がらせる。
そしてそれらを魔物のボスの上空高くまで移動させ、魔法を解除した。
当然魔法によって浮き上がっていたそれらは、地上に向かって落下してゆく。
「これぞレクス直伝、魔法耐性を持ってる魔物撃退法よ!」
魔法防御力が高い敵に対して魔法使いが行える効果的な攻撃法は、魔力の影響から解放された現象を叩きつける事。
とくに最初から存在している大量の水や土、岩を操る魔法が有効とレクスは教えてくれたわ。
「これならどうかしら?」
ドゴンドゴンと鈍い音が響き渡り、魔物のボスを押しつぶしてゆく。
「ギュガガガガ」
けれど魔物のボスは上から降り注ぐ大質量をものともせずにこちらに近づいてくる。
「うっそー……」
ぜんっぜん通じてないじゃないのっ!
不味い、流石にここまで通じないとは思っても居なかったわ。
「ちょっと良くないわね。あれじゃ近づくだけで身体強化魔法が切れて致命傷を負いかねないわ」
エルフ達のサポートをしていたリリエラが困った顔で合流してくる。
「ならば我々にお任せください! レクス師匠のお陰で我々はギリギリの戦いに慣れていますからな!」
「あっ、ちょっ!?」
けれど私が止める間もなくエルフ達は飛び出していった。
「はっはっはーっ! 我等の一撃を喰らえ魔物の長よ!」
ポキン!
「なんのグボァーッ!」
バカーンッ!
「エ、エリクサーを……ってなんでエリクサーが効かないんだ!?」
「ば、馬鹿な! エリクサーを飲んでも傷が治らないだと!?」
エリクサーの効果がない事に、エルフ達から動揺の声があがる。
「ぐわー!」
「うぎゃー!」
「もがーっ!」
魔物のボスが腕や足を振り回すたびに、エルフ達が景気よく吹き飛ばされてゆく。
「え、えーっと、リリエラ、メグリ、魔物のボスに近づき過ぎないようにエルフ達を回収してあげて」
「分かったわ」
「ん。任された」
幸い、魔物のボスはこっちに真っすぐ向かってきているから、エルフ達の回収は容易だった。
「でも怪我が酷いわね。すぐに治療しないと」
「……リリエラ、エルフ達にエリクサーを飲ませてあげて」
「え? でもエリクサーは効果ないって」
「試してみたいの」
「……わかったわ」
私もまた砦近くで待機していたエルフ達からエリクサーを分けてもらい、傷ついたエルフ達にエリクサーを飲ませる。
すると瞬く間にエルフ達の傷が癒えていった。
「えっ、何で?」
同じようにエリクサーを飲ませたエルフの傷が癒えた事で、リリエラが驚きの声をあげる。
「エリクサーはただの薬じゃなくて魔法薬だからでしょうね」
「それって……まさか!?」
「そう、そのまさかよ」
エリクサーは貴重な薬草をいくつも使っているけれど、その本質は魔法薬だ。
と言う事は魔物のボスの有する魔法が無効化されるという特性は、『魔法』薬にも適用されると言う事に他ならない。
「なんて厄介な魔物なの」
魔物のボスの厄介極まりない特性にリリエラが毒づく。
まぁ気持ちは分からないでもないけどね。
「でもなんであの魔物だけ……」
「分からないわ。あの魔物がボスだからなのか、それとも他の魔物が子供だからなのか……」
「もしくは、変異種かもね……」
「っ!?」
リリエラの言葉に、私は思わず身を固くする。
変異種、それは魔物からごく稀に発生する特殊な個体だ。
同種の魔物とは一線を画した高い能力を持ち、個体によっては唯一無二の特殊な力を持つものもいるのだとか。
「だとしたら、厄介どころじゃないわね」
あれが変異種だとしたら、強さはこれまで襲ってきた魔物の倍程度では済まないわね。
そりゃあ魔法を無効化くらいするわ。いやしてほしくなかったけど。
「最悪の場合、世界樹を見捨てて郷の住人達を逃がす事に全力を尽くすしかないかもね」
そんな事をしたら彼等は怒るだろうけど、それでも全滅するよりはましだろう。
なにせ今は世界樹の実を最優先に狙っているけれど、その実を食べ終わったら次は何を標的にするかわかったもんじゃない。
「皆砦まで下がって!」
私達は未だ起き上がれないでいるエルフ達を担いで砦に撤退する。
エリクサーで治療はしたけれど、意識を失ったままのエルフ達は少なくない。
砦に待機していたエルフやドワーフ達が弓矢や投げ槍、それに精霊魔法で魔物達を攻撃するけれど、魔物のボスには全く効果がある様には見えなかった。
そしてノルブが作り上げた防壁が魔物のボスによって砕かれると、魔物達が我先にと殺到する。
けれどそんな無礼な手下達をボスは腕の一振りで吹き飛ばすと、悠然とした態度で防壁の内部へと入って来た。
私達が居る砦は目と鼻の先。
そして世界樹はそのすぐ後ろ。
これはもう決断するしかないわね。
そして私が世界樹を捨てて逃げろと声を上げようとしたその時……
ボカァァァァァン!!
激しい音と共に、大地が吹き飛んだ。
「「「「「え?」」」」」
魔物のボスもまた、その衝撃に巻き込まれ宙を舞っている。
そして大地と共に魔物のボスが地面に叩きつけられた。
残ったのは底の見えない巨大な穴。
「よっと」
そこから、何かが姿を現す。
「あれは!?」
「よかった。まだ世界樹は無事だね」
巨大な穴から這い出てきたのは私達が待ち望んでた人物。
「「「「「レクスっ!!」」さん」」兄貴っ!!」
そう、この状況をひっくり返せるジョーカーが帰って来たのだった!
モフモフΣ_(:З)∠)_「理不尽のエントリーだ」
ボス魔物└(┐Lε:)┘「……起こして」
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