第217話 獰猛なる食欲の群れ
作者_(┐「ε:)_ 「エアコンが壊れて部品注文待ち。車のバッテリーが上がって調べたらバッテリー交換の必要ありって言われたのん……orz」
ヘルニー└(┐Lε:)┘「湿気がキツイ時期になって来たからマジで執筆に影響でまくりだわー」
ヘイフィーヾ(⌒(ノ-ω-)ノ「エアコンが直るまで執筆ペースが乱れそうですー」
作者_(:3 」∠)_ 「このやるせない思いは新作のプロットに宛てる事でストレス解消するしかねえ」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さまの声援が作者の励みとなっております!
◆ジャイロ◆
「おー、来やがったな」
魔物の大群が世界樹を包囲するように全部の方向から迫ってくる。
まさか兄貴が居ないタイミングを狙ってやって来るとはな。
「す、凄い数ですよ!?」
さっそくノルブの奴がヘタれてやがる。
まったく、兄貴に鍛えて貰ったってのに気の弱さは治んねぇなぁ。
「どんだけいても関係ねぇよ! 全部倒せばいいだけだろ!」
俺はヘタれてるノルブの背中を叩いて気合を入れてやる。
「ただ倒せば良いって訳じゃないわ。敵は世界樹の実を狙っているのよ。相手の目的を阻止出来なかったら敵を全滅させても意味が無いでしょ!」
そしたらミナの奴がめんどくせぇ事を言い出した。
「そんなの登ってくる前に全部倒せばいいだけだろうがよ」
「この数を全滅させるのは流石に無理だと思う」
「ですよね。いくらなんでも多すぎますよ」
ノルブだけじゃなく、メグリも真っ向勝負を嫌がってるみたいだ。
まぁメグリは盗賊だから力づくで戦うのが苦手なのはしょうがねえけどよ。
「どのみち魔物を撃退しないと皆も無事じゃすまないわ。何しろ周りを全部囲まれているんだもの」
そんなミナ達のケツを叩くように、リリエラの姐さんが声を上げる。
だよな! さっすが姐さんは分かってるぜ!
ビビってても何も変わらねぇ! だったら悩む前に一匹でも多く、一秒でも早く魔物を倒した方が敵が減ってマシになるってもんだ!
「ん、私達は飛べるけど、飛べない郷の皆は逃げれない」
「ウダウダ考えても仕方がねぇだろ! どうせ逃げれねぇなら纏めてぶっとばすだけだ!」
「だからもう少し考えなさいっての」
じゃあどうしろってんだよ。
「私がデカい魔法をぶっ放して前線の魔物を吹き飛ばすから、そしたらノルブは防壁の魔法で砦の外側に壁を張って」
「出来る事は出来ますけど、あの数では焼け石に水ですよ?」
どこから来たんだってくらいいるもんなぁ。
「それでも壁があれば多少は時間稼ぎになるわ。レクスが来るまでの時間稼ぎがね」
「おいおい、最初から兄貴頼りかよ。たまにはオレ達だけでやってやろうぜ! 俺達は兄貴にここの守りを任されたんだぜ」
「どうやってこの大軍を何とかするつもりなのよ? 言っとくけど、私の一番強い魔法を連発しても魔力が保たないわよ」
まったく、ミナの奴も魔物の数にビビって重要な事を見落としてやがんな。
「そこはアレよ。ボスを狙うんだよ」
「ボス? でもそれはレクスが探しに行ってるでしょ?」
ミナは何言ってんだって顔で首を傾げる。
「いーや、ボスはここに来てるね」
「根拠は?」
「こんだけ魔物が沢山いるからだよ。連中は世界樹の実を狙ってんだろ? だったら手下が勝手に食っちまわねぇようにボスも付いて来てるはずだ。自分が食う為にな」
「成る程、確かにそれはありえそうね。獣の群れでも、ボスが一番最初に良い所を食べるものだものね」
リリエラの姐さんは俺の考えに成る程と納得してくれた。
やっぱり腕利きの冒険者は理解が早いぜ!
「ふーん、野性の勘って訳ね。そういう事なら分からなくもないわ」
「オメェなんでもっと素直に褒める事が出来ねぇんだよ」
ったく、コイツも素直じゃねぇなぁ。
「じゃあ纏めるわね。私達の勝利条件は三つ。世界樹の実と世界樹を守る事、郷の人達を守る事。そして魔物達を撃退すること。魔物を全滅させるのは難しいからボスを倒す、もしくはレクスさんが戻ってくるまで耐える事!」
「おうっ!」
「分かったわ」
「ん」
「分かりました」
「そして最後に、なるべく死なない事! 生きていれば怪我は治せるから、死なない様に戦って!」
「「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
リリエラの姐さんの言葉に、エルフ達が雄たけびを上げる。
「任せてください! 死なない程度に怪我をするのは慣れっこですぜ!」
「そうです! レクス師匠のお陰で俺達はギリギリの世界に足を踏み入れる事が出来るようになったんです!」
「その世界にはあんまり足を踏み入れて欲しくないかなぁ」
「世界樹に乗り込んできた魔物の相手は儂等に任せて貰おう。レクス名誉国王陛下より伝授頂いた鍛冶の業で鍛えた武具は魔物の牙も通さぬぞ!」
ドワーフ達も新調した装備に身を包んでやる気満々だ。
「おっしゃぁ! それじゃあ行くぜお前等ぁぁぁぁぁ!!」
◆ミナ◆
「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」
ジャイロの号令を受け、エルフとドワーフの戦士達が雄たけびを上げて地上へと駆けだしてゆく。
「あのバカ! 私の先制攻撃が先だってのに!」
「私が戦士長なんだがな……」
「……がんばれ」
駆け出していったエルフの戦士達を切ない顔で見つめていたシャラーザさんの肩をメグリがポンと叩いている。
ってそんな光景をのんびり見てる場合じゃないわ! 早く先制攻撃しないと!
「んじゃデカイのかますわよ! フロストストームッッ!!」
私は世界樹を包囲する魔物達に向けて極寒の嵐を放つ。
嵐は森を突き進む魔物達を一気に凍らせてゆく。
「おぉぉぉぉっ!! 魔物共がみるみる凍っていくぞ!」
更に迷いの森に満ちた霧が凍った魔物達をさらに凍らせて巨大な氷塊、いや氷壁へと変えてゆく。
「しかも凍った魔物が障害物になって魔物が進めなくなっているぞ!」
「す、凄い。精霊の力を借りた我々の魔法よりも威力があるぞ……!?」
エルフ達が氷壁に閉じ込められた魔物達を見て、驚きの声をあげる。
ふふん、大量の魔力を込めて放ったんだもの。このくらいは驚いてもらわないとね。
「はぁはぁ……ノルブ! あとよろしく!」
「は、はい!! グランドサークルトーチカ!!」
ノルブが魔法を発動させると、大地が広範囲に盛り上がり、世界樹を覆うエルフ達の砦を覆うようにもう一つの砦を形作る。
「うぉぉぉぉぉっ!? 砦の外に巨大な防壁が!?」
しかもノルブが気を遣ったのか、新たに作られた防壁には内部の砦と連携しやすいように通路状の壁が蜘蛛の巣状に繋がっていた。
「ぜい……はぁ……こ、これで少しは進行を遅らせる事が出来る筈です」
「おっしゃ! あとは任せて休んでなっ! 行くぜリリエラの姐さん、メグリ!」
私達が息を切らせてへたり込むと、ジャイロ達が飛行魔法で飛び出していく。
「ええ!」
「ん!」
「客人達だけに頼るな! 世界樹は私達が守るんだ!」
「「「「「おぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
更にエルフとドワーフ達も地上へ向かって駆けだしていった。
「さて、私達もマナポーションを呑んで戦いに戻らないとね」
◆ジャイロ◆
「うぉぉぉぉぉっ!! ファイヤーストライクッ!!」
俺は武器から迸った炎の大剣魔法で魔物共を纏めて横一文字にぶった切る。
「コラーッ! 森の中で炎の技を使ったら駄目でしょ!」
「え? あっ、すまねぇ!」
「大丈夫。森の中は霧で満ちてるから、燃え広がる事は無いみたい」
ミナには叱られたが、リリエラの姐さんが霧のお陰で被害はないと教えてくれた。
「マジか! ラッキー!」
「それでも気を付けなさい。今回は運が良かっただけよ」
だな。さすがに森を燃やしたらマズいのは俺にも分かる。
「おう! 次は失敗しねぇよ! つっても火が使えないとなるとどうすっかな。あと俺が使えるのっていうと回復くらいだからなぁ……」
回復魔法じゃ敵を倒せねぇしなぁ。
「うーん、魔法はイメージが大事だって兄貴も言ってたし、ここらで一つ新技いってみっか! 火や回復みたいにピカピカしてて燃えねぇ魔法……ええいめんどくせぇ!燃えない炎出ろぉーっ!!」
途中で考えるのが面倒になった俺は、燃えても燃え広がらない炎出ろと念じながら魔力を剣に注ぎ込む。
すると剣からいつもとは違う白い炎が出てきたんだ。
「おおっ!? なんか出た!」
この白い炎は見た事もないが、何となくこれは大丈夫だって確信があった。
「おっしゃ、これならいけるぜ! 喰らえ! 俺の新必殺技! えーと、燃えないファイヤースラーッシュ!!」」
俺の一撃が周囲の樹ごと魔物をぶった切る。
だが炎が切ったのは魔物だけで、周囲の樹は無事だ。
しかも炎が燃え広がる様子もねぇ。
「おっしゃ燃えてねぇ!!」
こりゃ使えるぜ!
「ちょっ!? アンタ何よその魔法!?」
「へっへー、スゲーだろ燃えない炎の魔法だぜ!」
「はぁっ!? 何それ!? いつの間にそんな魔法使えるようになったわけ!?」
「今っ!」
「死ね」
「急にマジな声になるなよ……怖ぇだろ」
突然殺気を漲らせたミナの剣幕に思わず足が下がっちまった。
「何で真面目に魔法の勉強をしてない奴があんな複雑な魔法を使えるようになるのよ……」
「なんというか、詠唱を必要としない無詠唱魔法だからこそ出来る芸当ですねぇ」
「ハチャメチャ過ぎる」
「ああいうのも天才って言うのかしらね?」
ふっふっふっ、アイツ等も俺の凄さが分かって来たみてーだな。
「おっしゃ! ノッてきたぜぇーっ!」
森に燃え広がる心配がなくなった事で、俺は遠慮なく魔法をぶっ放せるようになった。
さらに俺達が倒しきれなかった魔物にエルフ達が群がり、後方からドワーフ達の援護の槍や矢が飛んでくる。
「へへっ、良い感じじゃん!」
これなら兄貴が来る前に何とかなるかもな!
俺達は迫りくる魔物を次々に倒してゆく。
「あとはこん中に隠れてるボスを見つけ出すだけだな……おーい! いるんだろ魔物のボスよー! 手下の中に隠れてて恥ずかしくないのかよー! 俺達にビビッってんのかー?」
俺は群れの中に隠れた魔物のボスを挑発する。
「アンタねぇ、魔物にそんな人間の挑発が理解できる訳ないでしょ」
「わっかんねぇぜ。もしかしたら反応するかもしれねーじゃん」
その時だった。
ふと俺は背筋にうすら寒い感覚を感じたんだ。
そして本能に従って全力で空の上に避難した直後、地面から巨大なハサミが飛び出してきやがったんだ。
そしてハサミは俺が今までいた場所を切断する様にバチンと閉じる。
「あれは……」
皆も突然現れたデカいハサミに視線が引き寄せられる。
同時に、地面が震えその中から一匹の巨大な魔物が姿を現した。
「へへっ、派手な登場をしてくれるじゃねぇか」
一際大きなその体から放たれる気配は、他の魔物とは一線を画している。
「間違いねぇ! コイツがボスだ!」
ジャイロ. ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ 「新技出来たー!」
ミナ(#^ω^)「地道な研究、繰り返しの訓練……ビキビキ」
メグリ_(:3 」∠)_「いけない。ミナが準ヒロインにあるまじき顔をしている」
ノルブ (((( ;゜д゜)))「お、落ち着いてください! ほら、アメちゃんあげますから機嫌直して」
ミナ(#|゜Д゜)「子供かぁーーーーっ!!」
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