第211話 エルフの訓練と追加報酬、そして成長
ヘルニー(:3)∠)_「今週の更新でーす!」
作者(:3)∠)_「そして新連載『魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?』を始めましたー!」
ヘイフィー(:3)∠)_「読んでくれると嬉しいな!」
ヘルニー(:3)∠)_「あと二度転生コミック4巻の発売も近づいて来たわよー」
ヘイフィー(:3)∠)_「コミックス4巻は4/7発売です! あと巻末に書下ろしSSもついてるよ!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
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「レクス殿、頼みがある」
ドワーフ達への鍛冶の技術提供を終えて工房の外に出たら、何やらシャラーザさんがかしこまった様子で僕に頼みごとをしてきたんだ。
「頼み……ですか?」
「うむ、実は先日レクス殿に作って貰ったエリクサーの作り方を教えて欲しいのだ」
「良いですよ」
「いや、分かっている。エリクサーと言えば我々エルフにとっても伝説と呼ばれる代物だ。それの作り方を教えて欲しいなど厚かましいにも程があるのは事実……ってええっ!? 良いのか!?」
「はい、良いですよ」
「そ、それはありがたいが、本当に良いのか? エリクサーだぞ? 伝説の薬だぞ!?」
大げさだなぁ、たかがエリクサーで。
「良いですよ。特に隠すようなものでもありませんし。でも何で急に?」
シャラーザさん達は戦士としての役割に専念している筈。何で専門外の薬作りに興味を持ったんだろう?
「既にレクス共も知っている事だが、郷の者達は過去の大災厄の生き残りだ。その際に当時を知る大人達は全滅し未熟な若者だけが生き残った。その所為で我々は多くの知恵と技を失った」
確か、白き災厄が大暴れしたのが原因だったよね。
「そして此度の魔物の襲来だ。今回はレクス殿達の協力があった故状況は好転したが、貴殿等は寿命の短い人間。次も同じように力を借りる事ができるとは限らん。故に我等は失われた知恵と力を少しでも取り戻したいのだ!」
なるほど、いざという時の為に、なるべく多くの技術を一人一人が覚えておきたいと考えたんだね。
そしてそれをするのは現在進行形で学んでいて、なおかつ郷の未来を担う若いエルフ達に学ばせるべきだと考えたのか。
うーん、後進や郷の事をよく考えてるなぁ。さすが戦士長だよ!
「そういう事なら喜んで協力しますよ!」
「ありがたい。本当に感謝するレクス殿」
シャラーザさんは僕に深く頭を下げて感謝の意を伝えてくる。
「それともう一つ頼みたい。我らに戦い方を教えて欲しいのだ」
「戦い方もですか?」
「うむ、レクス殿達の力は我等を遥かに超えている。それゆえレクス殿達の戦い方を学べば、レクス殿達が帰った後でも魔物と遣り合えると思うのだ」
シャラーザさんの言いたい事は分かったけど、でもエルフに僕が教える事なんて無いと思うんだけどなぁ。
「でも僕は精霊魔法を教える事は出来ませんよ?」
そう、エルフの戦闘と言えば精霊魔法だ。
普通の人間には知覚できない精霊と契約してその力を行使する。
それこそがエルフの最大の力なんだけど、他種族には精霊魔法が使えないから教えようがないんだよね。
「分かっている。だが他種族だからこそ教える事の出来る闘い方と言うものがあると思うのだ」
「他種族だからこそできる闘い方……」
そうか、そういう事か。
エルフの戦いの主力は精霊魔法だ。
でもだからこそ、精霊魔法が使えなくなった時にエルフは大きく弱体化する。
シャラーザさんはそんな場面が来た時の為に、精霊魔法に頼らない戦い方を僕に教えて欲しいと思っているんだね。
さすがシャラーザさん。若い戦士達に精霊魔法の強さに溺れないように、そして彼等がいざという時に精霊魔法以外にも頼る事の出来る力を得て欲しいと考えたんだね!
うーん、やっぱりシャラーザさんは人を育てるのが上手いなぁ。
名教官だよ! 本当に部下思いな人、いやエルフだよ!
そういう事なら協力しないとね!
「分かりました。任せてください!」
「おお、協力してくれるか! 感謝する! ああそうだ。言い忘れていたが、エリクサーの製作法と訓練に関しては別途報酬を用意するから安心してくれ」
「いえ、全員の生存率が上がるなら、仕事の範疇ですよ」
「いや、既にドワーフ達と世界樹の畑の件で十分すぎる程恩を受けている。これ以上そちらにばかり負担をさせるわけにはいかん。正当な対価を支払わねば我等エルフの誇りが失われてしまう」
本当にこの人は律儀だなぁ。
でもだからこそ好感が持てるよ。
「分かりました。そういう事なら」
「追加報酬に関してだが、世界樹から採取できる素材から欲しい物を持って行ってくれ。またレクス殿が望むのであれば、依頼が終わった後も世界樹から得られる素材を優先的に提供しよう」
「良いんですか?」
「ああ、構わん。我等は外の世界の金を持たぬからな。代わりに素材で支払わせてもらいたい」
世界樹の素材か。
世界樹は魔物由来の素材以外の大半が手に入るけど、その分個々の素材の生産量は少ないんだよね。
しかもこの世界樹はまだ小さいから、なおさらだ。
だからそれを報酬として提供するとなると、シャラーザさん達も相当切り詰める事になるんじゃないかな?
……うーん、なら畑だけじゃなく、世界樹そのものにも肥料を与えておこうかな。
そうすれば僕達への報酬だけでなく、シャラーザさん達が使う分も十分確保できるだろうし……そうだ!
◆シャラーザ◆
それは夜中に起きた。
ゴゴゴゴゴゴッ!!
「な、何事だ!?」
突然の凄まじい揺れに驚いた私は、ベッドを飛び起きて武器を掴むと、すぐさま家の外へと飛び出した。
「シャラーザ隊長!!」
同じように家から出てきた部下達が慌てて私の下へとやってくる。
「一体何が起きているんですか!?」
「分からん。だがまずは地上の砦と連絡を取れ。この地震に乗じて魔物が攻めて来るやもしれん」
「はっ!!」
部下達が慌てて地上と連絡を取りに行く。
地震は今もなお続いており、郷の皆も慌てて家から飛び出してきている。
「何が起きてるの!?」
その声に視線を向ければ、レクス殿の仲間のリリエラ殿達の姿があった。
「分からん。どうやら地震が起きているようだが、我々もこんな地震は初めてなのだ」
「エルフも初めて体験する地震か。魔物がどう動くか分からないから怖いわね」
「戦士長! 地上の砦と連絡が付きました!」
「魔物の様子はどうだ?」
「今のところ魔物が攻めて来る様子はないそうです」
「そうか、だがまだ安心は出来んな。この地震で家が壊れる危険性がある。郷の民を誘導して安全な場所に避難させるのだ」
「「「はっ!!」」」
その後も地震は続き、我々は不安な気持ちを募らせながら夜を過ごした。
そしてようやく夜が明けてくると、私達はトンデモナイ光景を目にしてしまった。
「ち、地上が遠い!?」
そう、私達の居る枝から地上が驚く程遠くなっていたのだ。
「なにこれ? 世界樹ってこんなに簡単に成長するものなの?」
驚いているのは私達だけではなく、リリエラ殿達もこの光景に困惑していた。
「いやそんな筈はない。少なくとも私の記憶にある世界樹はこんな急激な成長はしない!」
そう、こんな事は数百年を生きてきて初めてだ。
私は世界樹が突然巨大化した理由を考える。
「一体何が原因だ? 世界樹が突然成長を始めた原因は何だ? 何か、この様な劇的な変化をもたらすものは……あっ!」
その時私の頭の中に一人の若者の顔が思い浮かんだ。
そしてその光景が思い浮かんだのは私だけではなかったらしく、リリエラ殿達もまた顔を青くしてこちらに視線を向けてくる。
「私、この状況の原因になった人に心当たりがあるんだけど……」
「奇遇ね、私もよ」
「私も一人思い当たる」
なるほど、ではやはりそういう事なのか……だが一体何故その様な事を……
そうして彼の動機が理解できない事に思い悩んでいると、リリエラ殿達に貸している宿代わりの家の扉が開いだ。
「ふぁーっ、まだちょっと眠いや」
レクス殿だ。どうやら今まで眠っていたらしい。
「レクス殿、聞きたい事があるのだが」
「あっ、おはようございますシャラーザさん。聞きたい事って何ですか?」
「そ、それがだな……」
私はわずかに逡巡する。
この町を守る為に尽力してくれているレクス殿を疑うような事を言って良いのだろうか?
そもそも人ひとりに世界樹という巨大な存在をどうこうできるものだろうか?
くっ! ええい! 私は郷を守る守り人だ! ここで聞かずにどうする!!
「レ、レクス殿! 昨夜は何をしていたのだ? 世界樹のこの状況について何か知っていないか!?」
頼む! 無実であってくれ!
「昨日ですか? 昨日は世界樹に肥料をやってました」
だが無情にもレクス殿はあっさりと自分がこの件に関わっていると白状した。
「おー、結構大きくなりましたね」
それどころか世界樹が成長した事を無邪気に喜んでいる。
わ、分からん! レクス殿が何を考えているのか!
「やっぱりレクスが原因かぁ」
「ねぇレクスさん。何で世界樹を成長させたの?」
リリエラ殿達が躊躇うことなくレクス殿に事情を聞く。
い、一体どんな凄まじい理由があるのだ?
「ああそれですか、シャラーザさん達の報酬の為ですよ」
「「「「「報酬?」」」」
我々の? どういう意味だ?
「昨日エルフの人達への訓練を頼まれた際に、報酬は素材で支払うって言ってたじゃないですか」
確かに言った。
「さらに僕達に対して優先的に素材を提供してくれるとも約束してくれました」
ああ、その話もしたな。
しかし、とレクス殿は続ける。
「でもこの未成熟な世界樹じゃ大した量を精製できないので、僕達に素材を提供したら郷の人達が使う分が無くなっちゃうんです。なので世界樹を大きくして素材の収穫量を増やす事で、僕達が素材を提供して貰っても郷の人達の使う分を確保できると思ったんですよ」
なるほど、それで世界樹を大きくしたの……か。
「って、それだけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ええ!? そんな理由で世界樹を成長させたのか!?
もっと凄い理由とかないのか!? 郷を魔物から守る為にあえて成長させたとかそういう重要な理由は!?
たったそれだけの理由で世界樹を成長させるという偉業を成し遂げたのか!?
「理由ってそれだけ?」
「はい、それだけですよ?」
はい! 本当に大した理由じゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
こうしてレクス殿は世界樹を瞬く間に成長させてしまったのだった。
……あっ、我々の事を考えてくれたのは感謝しているぞ。しているのだが……長老達にはなんと説明しよう。
事情を説明して信じてくれるかなぁ。
シャラーザ(இ ω இ`。)「長老達になんて説明すれば良いんだ……」
レクス(:3)∠)_「これで沢山素材が採取できるね!」
モフモフΣ(:3)∠)_「だがまだエルフ達への戦闘訓練が終わっていないんだなコレが」
メグリ_(┐「ε;)_「地獄はまだこれからだ」
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