第210話 食料問題を解決しよう!
作者(:3」∠)_「いえーい! 更新ですよー!」
ヘルニー(:3」∠)_「ちょっと締め切りでごたついていたので今週も土曜日更新だよー」
ヘイフィー(:3」∠)_「そして今日も花粉症を運んできました」
作者Σ(゜Д゜)「帰れっ!」
作者(:3」∠)_「あと新連載『目覚めたら魔法世界の幼女になっていた僕~ただいま拗らせ百合少女達に溺愛されています!?~』始めました!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
◆リリエラ◆
「いっくぜーっ! どっせーい!」
天高く飛び上がったジャイロ君が、炎を纏って地上の魔物達にダイブすると、その瞬間魔物達が大爆発を起こす。
「うおおっ! 何て威力だ! あの巨大な魔物が一撃で!!」
「と、とんでもねえ小僧だ!」
ジャイロ君の戦いぶりにドワーフ達が驚愕の声をあげる。
「はっはーっ!! どんどんきやがれー!」
そしてジャイロ君は剣に炎を宿し、向かってくる魔物を薙ぎ倒していく。
「よ、よし! 俺達もあの小僧に負けちゃいられねぇ!」
「そうだな。せっかくレクス名誉国王陛下に学ばせてもらったんだ! その成果を見せてやるぜ!」
「「「おおーっ!!」」」
彼の戦いに触発されたドワーフ達は、真新しい武装を纏って魔物達へと向かって行く。
「そりゃーっ!!」
先頭のドワーフが大斧を振るうと、魔物の硬い甲殻が綺麗に切断された。
「ぬうん!!」
そしてその横のドワーフが鉄槌を振り下ろすと、まるで卵の殻を割るかのようにクシャリと魔物の甲殻が叩き割られた。
「ス、スゲェ! こんなに簡単に魔物が!?」
「危ない!!」
新しい装備の性能に驚いていたドワーフが魔物の巨大なハサミに襲われる。
「う、うわぁぁぁ!?」
けれど世界樹の古い樹皮を加工して作られた鎧は、魔物の攻撃を受けてもビクともしない。
「ま、まじかよ……」
自分達の作った装備の凄まじい性能に、ドワーフ達の方が驚きの声をあげているくらいだった。
「ほらほら、驚くのはあと。今は目の前の魔物に集中よ」
私は困惑するドワーフ達に向かって来た魔物達を切り捨てると、彼等に注意を促す。
「す、すまねぇ。助かったよ」
私は戦場を見回しながら、他のドワーフ達の援護に向かう。
「とはいえこれは……予想以上よねぇ」
戦場で戦っているドワーフ達は自分達の性能に驚いてはいるものの、誰も苦戦はしていなかった。
寧ろ大量の巨大な魔物相手に優勢なくらいだった。
しかも、魔法の援護もなしで。
「これ、本当に魔法使い要らないわよね」
そう、私達は魔法使いの援護なしで魔物達と戦っていたのよ。
こんな事になったきっかけは……ジャイロ君の一言が原因だったのよね。
「兄貴達が先に戦うとあっという間に戦いが終わっちまって俺達の出番がねぇよ!」
事実、戦闘になるとレクスさんとエルフ達の魔法で……というかレクスさんの魔法で戦況が一気にこちらに有利になるから、ジャイロ君とドワーフ達の援護が到着する前に戦いが終わっていたのよ。
で、そんな状況が何度も続いた事で、彼が自分達も戦いたいってダダをこねたって訳。
まぁ、気持ちは分からないでもないけどね。
これについてはエルフ達の戦士長であるシャラーザさんと、ドワーフの長老も受け入れてくれたの。
というのも、レクスさんが居ればいざという時に頼る事が出来るから、効率的な戦い方や魔法使いが戦えない時の訓練にうってつけなのよね。
「それにレクス名誉国王陛下のお陰で我々は古きドワーフの業を一部ではあるが取り戻した。この技術とこれまで加工できなかった世界樹の古い樹皮を使った装備の性能を試してみたい」
と、新しい装備のテストも兼ねたいみたい。
「うおおーっ!! レクス師匠から学んだ素材の弱い部分の見極め方のお陰で、この魔物のどこを攻撃すれば良いのかが分かるぞー!」
「はっはっはーっ! お前はここが弱いんだなー! ほーれ!」
ただまぁ、あそこのドワーフ達みたいに、レクスさんのトンデモナイ技術のお陰で装備以外の、技術面でもドワーフ達は強化されていたのよ。
「キュッキューッ!」
ついでにモフモフも戦場を縦横無尽に駆け巡って魔物達を倒していたわ。
「モキュモキュ」
……まぁあの子の場合、敵を倒すと言うよりは魔物を食べる為みたいだけど。
そんなこんなで戦っていたら、自然と敵は壊滅したの。
「す、凄まじいな。よもやドワーフ達がここまで圧倒的な勝利を収めるとは……」
この戦いを後方で見守っていたエルフ達は、ドワーフ達の圧倒的な戦力アップを驚愕の目で見ていた。
ええ、分かるわ。レクスさんのやらかしを見てそう言いたくなる気持ち。
「はー! スカっとしたぜ!」
「お疲れ様。大活躍だったわね」
「おう! リリエラの姐さんもドワーフ達をサポートしてくれてありがとな!」
前線でずっと戦っていた彼を労うと、ジャイロ君もまた私をねぎらってくれた。
へぇ、敵と戦う事しか考えてないと思ってたんだけど、いつの間にか周囲を見る事が出来るようになってたのね。
これは私もうかうかしてられないわ。
「ふふ、ありがと」
戦いを終えた私達は、魔物の素材回収をドワーフ達に任せて世界樹に戻ろうとしたんだけど、視界の隅で白い毛玉が動いているのに気付きすぐに回収に向かう。
「あっ、こらモフモフ。レクスさんに外に出たらダメッて言われてるでしょ?」
「キュウ?」
この子、何でか分からないけどやたらと郷の外に出たがるのよね。
森で魔物を狩りたいのかしら?
◆
「うーむ」
世界樹の枝街を散策していたら、シャラーザさんが枝の上に作られた畑を見て唸っていた。
「どうしたんですかシャラーザさん?」
「おおこれはレクス殿」
「何か悩み事ですか?」
僕が質問すると、シャラーザさんは複雑そうな表情で頭を掻く。
「いやそれが……食料が足りなくなりましてな」
「食料が?」
シャラーザさんの視線を追って畑を見ると、そこには沢山の作物が実って……いなかった。
「なんだか実が小さいですね」
そう、畑に実っていた作物は小さく、数も少なかったんだ。
「おっしゃる通り。今年は作物の実りが悪く、このままでは皆に行き渡りそうもないのだ」
「そういう時ってどうしているんですか?」
「森に入って山菜や弱い魔物を狩る……のだが、今の森でそれを行うのはかなりの難行。此度は犠牲者を覚悟せねばならんな」
そうか、畑で収穫できない分は外に狩りに行くしかないもんね。
ただ、その為には大量の魔物が闊歩する森の中に入らないといけない。
そんな中で郷の全員を養えるだけの食料を定期的に収穫するのは本当に大変な事だろう。
何か、僕に手伝えることはないかな……そうだ! 折角世界樹に居るんだから、アレを作ろう!!
「あの、シャラーザさん。もしよろしければ僕達にも食料調達を協力させてもらえませんか?」
「それは……助かるが、依頼の内容から逸脱してしまうぞ?」
と、シャラーザさんは僕達に頼んでいるのは郷の防衛だけだからそこまでしなくていいと言ってくれる。
うーん、この人実直で良い人、いやエルフだなぁ。
「構いませんよ。兵站の充実も防衛の一環ですから」
「……感謝する」
そう、食料が足りなくて困るのは郷に住む人達全員だ。
闘えない人達が飢えるのは良い気分じゃない。
「それじゃあさっそく畑の肥料を作りますね!」
「何!? 肥料? 狩りを手伝うのではないのか?」
僕の言葉が意外だったのか、シャラーザさんが驚きの声を上げた。
「えっ? 肥料ってもしかして、またアレを作るの!?」
そんな中、肥料と聞いたリリエラさんが困惑の声を上げる。
リリエラさんの言うアレは、ホンジーオ村で使った肥料の事だね。
「いえ、あの肥料はここの材料では作れませんから、今後の事を考えて世界樹で採取できる素材だけで作れる肥料を用意しようと思います」
「世界樹の素材だけでできる肥料? なんだかとんでもない物が出来そうなんだけど……」
「いえいえ、普通の肥料ですよ。それに世界樹は素材の宝庫ですからね。肥料になる部位が山ほどあるんですよ」
「世界樹の素材で肥料かぁ……なんだか物凄く勿体ない使い方をしてるような気がするわ……」
あはは、単なる雑草の再利用ですよ。
僕は枝街の建物が無い場所まで行くと、その辺りにある古く硬い樹皮を削り取る。
「その樹皮が肥料になるの?」
「そうです。世界樹の古い樹皮は良質な栄養素で満ちているので、剥がれた古い樹皮が地上に落ちて腐葉土になると周辺の土地に豊富な栄養を与えてくれるんですよ」
「へぇー」
まぁその栄養も世界樹に再吸収されちゃうんだけどね。
「けど使うのはこれだけじゃありません」
僕は更に枝の先へと進んでいくと、そこにある小さな萌芽をいくつか採取する。
萌芽といっても世界樹のサイズだから、一抱えもある大きな塊だ。
「この萌芽は世界樹が太陽の恵みを得る為に広げる葉っぱで、こちらも樹皮とは別種の栄養に満ちているんですよ」
他にもいくつかの素材を採取した僕は、さっそく肥料作りを開始する。
世界樹の古い樹皮を粉末にし、そこに世界樹の萌芽を絞って水分を抽出する。
それらを混ぜる事でペースト状にしていき、ある程度混ざったら今度は世界樹の樹液や花の蜜を加えて再び混ぜる。
「……よし出来た!」
そうして出来上がったのは、透き通る蛍光色の液体だった。
「これが……肥料? 以前作った肥料とは全然違うわね」
「それに量も少なくないか? これでは枝の畑に撒くには到底足りないぞ?」
完成した液体を見たリリエラさんとシャラーザさんは、これで畑を回復できるのかと懐疑的だ。
けどそれもその筈。何故ならこの薬はこれで完成したわけじゃないからだ。
「大丈夫ですよ。このエリクサーは中間素材として用意したものですから。これを世界樹の樹皮を粉末にしたものに混ぜる事で初めて肥料として完成するんです」
そう言って僕はあらかじめ用意しておいた世界樹の若い樹皮と枯れた葉を混ぜた粉末にエリクサーを振りかけ、しっかり混ぜていく。
「へー、エリクサーと混ぜる事で肥料になるの……ね?」
「ほう、世界樹から作ったエリクサー……と?」
「「って、エリクサー!?」」
そしたら何故かリリエラさんとシャラーザさんが目を丸くして驚いたんだよね。
「ま、待って待って待って!? い、今の液体がエリクサーだったの!? あの伝説の!?」
「ほ、本当なのか!? 本当にあの伝説の薬を世界樹の素材から作り出したのか!?」
「ええ、出来ますよ。この世界樹も普通の世界樹に比べればかなり小さいですけど、それでも立派な世界樹です。なので普通にエリクサーを作れますよ?」
「いや、エリクサーは普通に作れないと思うんだけど……」
「というか、エリクサーの作り方自体が分からんのだが……」
「え?」
どういう事だろう? 世界樹の素材を使ったエリクサーの作り方は大抵の人が知っている事だし、ご家庭の主婦ならいざという時の為に自分で作った品を備蓄しておくのが基本の筈なんだけど……。
「あっ、そっか」
そうか、そういう事なんだね。
シャラーザさん達里の戦士は、薬の作り方を学ぶ時間を戦闘技術の向上に費やしてきたという事なんだろう。
先日の戦闘でも、エルフが先発、ドワーフ達は交代要員と役割分担っていたくらいだから、薬も専門の人達が作る様に役割を分けているんだろうね。
この辺り、前世の知り合いが分業にする事で戦えない人達が戦っている人達の役に立てていると言う実感を持たせる為に重要な仕組みだって言ってたっけ。
一人が全て出来るようにすると、その分の負担や技術の習熟が遅れるから、サポートする専門家の存在が大事とも言ってたもんね。
でも懐かしいなぁ。
確かにエリクサーで大抵のけがや病気は治るけど、実際には魔法で治療した方が早いし楽なんだよね。
それに薬は生ものだから、特別な処理をしないと腐っちゃうのがネックだ。
それもあってエリクサーの常備は廃れちゃったんだよね。
「伝説のエリクサーを肥料の繋ぎに使っちゃうかぁ……噂じゃ大国の宝物庫に数本だけ残されていて、めったな事じゃ使われないって話だったのに」
へぇ、やっぱり大国は慎重だね。
魔法による治療が主流になったこの時代に、ちゃんとエリクサーも用意してるなんて。
小国は効率重視でエリクサーの生産を止める国ばかりだったのに。
「という訳でこちらがエリクサー肥料になります。これを畑に撒けば、土が一気に回復して大量に作物を収穫できますよ!」
「お、おお、ありがた……い。貴重極まりないエリクサーを肥料に使った事が凄く気になるが……」
「いえいえ、エリクサーなんて簡単に作れますから気にしなくていいですよ?」
「「いやエリクサーは普通簡単に作れないから!!」」
え? そんなことないと思うけどなぁ。
「ともあれ、これで食料不足の問題は解決だね!」
◆シャラーザ◆
「こ、これを撒くのか……」
私達はレクス殿から頂いたエリクサー入りの肥料を畑に撒いていた。
長老達が消極的だったため、畑の一部に撒いて様子を確かめる事でなんとか許可を得たのだが……それにしてもエリクサーを畑に撒くのかぁ。
「これは……本当に使って良いのだろうか?」
正直言って伝説の薬を畑に使って良いのかと不安が募る。
しかし現実問題既に肥料にされてしまったため、ここで捨てる訳にもいかないのが実情だ。
「ええい! こうなったら使うしかない!」
意を決した私は、エリクサー入り肥料を畑に撒いてゆく。
そうして全ての肥料を撒き終えると、これまでの心労がどっと押しかけてきたため、すぐに家に帰って寝る事にした。
正直起きてこの件を考えたくない。
そして翌日。
「な、なんだこれはぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
私は、まるで森の様になった畑を見て、思わず叫び声をあげてしまったのだった……
ホント何者なのだあの御仁は……
畑「いえーい! 超回復―っ!」
シャラーザ(´д`」∠):_「なにこれ、エリクサー超怖い」
メグリ(゜д゜」∠):_∵∵∵∵「私の知らない間にお宝の話をしてた気がしてやってきました!」
シャラーザ(´д`」∠):_「お帰りください」
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