第21話 新しい仲間と新しい武器
ご報告です!
なんと本作『二度転生した少年はS級冒険者として平穏に過ごす』が書籍化決定いたしました!
やったー!
詳しい事はまだ話せませんが、とりあえず出版者様より決定の報告はしてよいと許可を戴きました!
これも皆さんが応援してくださったお陰です!
ありがとうございます!
あとついでですが、よくよく考えると仲間が出来たこのタイミングが、お話的にもキリが良いので今日から第三章にします。
魔獣の森編としてはもうちょっと続きますが、ヒロインが入ったやったーの方が二章完! っぽいよね。
そしていつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「リリエラさん、そっちに行ったよ!」
「任せて! はぁっ!」
リリエラさんが横なぎに槍を振るうと、ブレードウルフの首が真横に吹き飛んだ。
「すごい切れ味ねコレ!?」
新しい得物の切れ味にリリエラさんが驚きの声をあげる。
「まだくるよ! 油断しないで!」
「え、ええ!」
◆
ヘキシの町に戻ってきたリリエラさんは、これまで組んでいた仲間達と別れて僕とパーティを組む事を望んだ。
本人曰く、恩返しをする為らしい。
そんな事気にしなくて良いのになぁ。
仲間と別れる事になっても良いのかと聞いたんだけど、リリエラさん曰く。
「私はアルザ病を治す薬草を求めていたから、採取系の依頼に専念できる様に固定したパーティは組んでこなかったの。だから今回の仲間もいずれ別れるつもりだったのよ」
との事だった。
まぁ僕としても一人寂しく冒険するよりは、同じBランクの仲間が居たほうが楽しいかなと思って彼女とパーティを組むことにしたんだ。
そして今日、僕達はパーティを組んで初めての冒険に出た。
依頼内容は街道に出るブレードウルフの討伐。
どうも以前遭遇した変異種の支配から逃れたブレードウルフ達が、森の奥に戻らず変な所を縄張りにしてしまったらしい。
「これで最後ね」
リリエラさんが最後の一頭の首を刈る。
「それにしても、本当にこの槍は凄いわね」
リリエラさんが手にした槍をしげしげと眺める。
「あはは。それに元々、剣よりも槍の方が戦いでは有利ですからね」
新しくパーティを組んだ僕達だったけど、出発前にある問題に直面したんだ。
それは、リリエラさんの剣が折れていた事。
というのも、彼女の武器は以前のブレードウルフ達との戦いで折れたままだったからだ。
その後も買いなおす暇も無く僕が故郷の村に連れて行ってしまったので、そのまま忘れてしまっていたらしい。
で、急ぎ新しい武器を買いに行ったんだけど、これまた程度の低い武器しか売っていなかったんだ。
正直言って、トーガイの町のゴルドフさんの武器の方がよっぽど出来が良かったなぁ。
そこで僕は町の鍛冶屋さんに頼んで仕事場を貸して貰う事にした。
お店にこの程度の武器しか売っていないのなら、自分で作った方が早いと思ったんだ。
勿論気難しい職人さんの仕事場を借りるんだから、タダで貸してなんてとても言えない。
お礼として金貨を100枚ほどと、倒したブレードウルフの素材を幾つか進呈したら……
「おう!好きなだけ使ってくんな兄弟!」
と、気前良く仕事場を貸してくれたんだ。
帰りに変異種と一緒にそばに転がっていたブレードウルフの素材を回収しておいてよかったよ。
そして僕はリリエラさんの武器を新たに作る事にした。
リリエラさんは元々剣使いだったけど、それはお金が無くて仕方なくギリギリ手に入る武器を使っていたに過ぎないらしかった。
「だって伯母さん家に仕送りしないといけなかったし、装備の手入れは最低限のお金しか使えなかったのよ」
うん、それすごく危険な事です。
仕方ないので、武器屋さんで適当な武器を何種類か買ってきて、リリエラさんに最も適した武器を調べる事にしたんだ。
「こ、ここまでして貰うなんて悪いわ。っていうか、買ってきたコレで良くない?」
遠慮するリリエラさんに僕はノーと首を横に振る。
「駄目ですよ、ちゃんと自分の強さにあった武器を選ばないと。強い人間が弱い武器を使っても強いなんていうのは幻想です。質の低い武器では強い人間の力に耐えられないんですよ。だからリリエラさんに一番合った武器を作らないと」
そうしてリリエラさんに様々な武器を使って貰った結果、彼女に一番適した武器は槍だという事が判明したんだ。
それに槍は長いっていうメリットがあるから、同じ力量の人間同士なら剣よりよっぽど強いしね。
「使う素材はコレ! ブレードウルフの変異種の短刃! これを槍の刃先に使います!」
「変異種の素材!? ちょっ、ちょっと待ってよ! そんな貴重な素材を使わなくて良いわよ!」
リリエラさんが勿体無いからいらないと言ってくるけど、変異種と言ってもこの程度の素材ならそんな気を使う必要なんてないですよ。
「で、本体の棒部分は豪華キラープラントの削り出し、石突きはグリーンドラゴンの鱗を叩いて固めた物を使います!」
「待って!? 今何か凄い名前が聞こえなかった!?」
「そんな事無いですよー」
たかだかグリーンドラゴンの鱗の切れ端だからね!
「あと金具はヴェノムバイパーの鱗を加工すれば良いかな」
「聞いた事無い名前だけど、それ絶対貴重な素材でしょ!?」
「ぜんぜん普通の素材ですよ!」
「絶対嘘だぁー!」
トンテンカンテントンテンカンテンと、僕は変異種の刃を加工し、それぞれの部品に付与魔法で剛性強化や腐食耐性、劣化防止に切れ味維持の魔法をかけていく。
「なんだか分からないけど、ピカピカ光ってるし絶対凄い事してる気がするー!?」
あははは、ドワーフ的に普通の出来ですよこの程度。
「よし出来た!」
僕は完成した槍をリリエラさんに差し出す。
「リリエラさんの槍が出来ましたよ! どうぞ受け取ってください!」
「……」
けれど、何故かリリエラさんは槍を受け取ろうとしない。
「さっ、使ってみてください」
「それ、本当に触って大丈夫? 魂とか取られない? なんか凄いオーラ放ってるんだけど? 魔槍とかじゃないの?」
「まぁ付与魔法で強化してるから、魔槍といえば魔槍ですね」
「やっぱり!? マジックアイテムを作れるなんて、貴方一体何者なのよ!?」
「普通の元村人で今は普通の冒険者ですよ?」
「普通の概念がおかしい! 普通の元村人は一ヶ月以内にBランク冒険者になんてなれないし、凄い剣技で変異種を倒せないし、空も飛べないし、治すのが凄く難しい難病だって治せないし、魔法で魔獣の森を焼き尽くす事も出来ないし、Aランクの魔物を素手で制圧する事も出来ないし! 何よりマジックアイテムを作る事も出来ないわ!! ……ぜーはーぜーはー……」
一息に叫んだリリエラさんが呼吸困難になっている。
と、いうか……。
「そ、そうだったんですか!?」
「気付くのが遅い!!」
叱られちゃった。
「で、でもウチの村では皆出来ますよ!?」
「それ絶対普通の村じゃないから!」
知らなかった。ウチの村は普通じゃなかったんだ……。
「まぁウチの村は普通じゃないかも知れませんが、僕は普通の冒険者ですから。変異種を倒すとか普通に出来る人はいっぱい居ますよ」
「居ーなーいーかーらー!」
本当に居るのになぁ。
一流の戦士を目指すなら、剣も魔法も回復も鍛冶も全部自分でできる様になるのは常識だし。
「そっか、リリエラさんは独学で冒険者をやってきたから、師匠が居ないんですね」
「え?」
「僕は師匠達に一人前を目指すなら、ある程度は何でも自分で出来る様になれと教わってきました。リリエラさんは誰かに師事した事はありますか?」
「……な、無いけど。あえていえば、今まで一緒にパーティを組んだ先輩冒険者達かしら?」
やっぱりだ。リリエラさんは正式な師匠が居なかったから、その辺りの基本的な知識や技術を学んでいなかったんだね。
我流で強くなると、基礎がすっぽ抜けちゃうんだよね。
彼女に教えた冒険者さん達も、リリエラさんが基礎を学んでいないとは思わなかっただろうし。
でもそれでBランクに昇格できたんだから、リリエラさんの素質は確かだと思うよ。
「なるほど分かりました! じゃあ僕がリリエラさんに必要な技術や知識を教えてさしあげます!」
「え!? 今の会話の流れからどうしてそういう結論になるの!?」
「リリエラさん身体強化魔法や回復魔法は使えませんよね?」
「ええ、そりゃあ私は剣士だし」
「一人前の冒険者を目指すなら、剣士でもある程度魔法を使える必要がありますよ! 実際僕の知り合いのFランクの冒険者さんも、剣士だけど身体強化魔法を使えますから!」
そういえばジャイロ君達元気かなぁ?
「Fランクなのに魔法剣士!?」
リリエラさんが驚いた顔を見せる。
うんうん、誰かに師事しないで今まで過ごしてきた事に危機感を感じたみたいだね。
「安心してください、リリエラさんが強くなれる様に僕もお手伝いしますから!」
「貴方が? ……いえでも……うーん」
そういってリリエラさんはあごに手をやって悩み始める。
「確かに今の私じゃこの人の足手まといに……だったらいっそ戦い方を学べば……」
そしてしばらくぶつぶつと独り言を呟いていたリリエラさんが、何かを決心した様子で顔を上げる。
「分かったわ。レクスさん、貴方の教えを受けます。いいえ、私に戦い方を教えてください!」
「ええ、喜んで!」
こうして、僕とリリエラさんはパーティを組むだけでなく、仮初めの師弟関係を築く事になったんだ。
◆
そしてリリエラさんは見事新武器のデビューを果たした訳です。
「ちゃんと使いこなしているみたいですね」
「ええ、凄く軽いし、怖いくらいに切れ味も良いわ。それに、貴方に教わった槍術もまるで自分が達人になった気分よ」
と、リリエラさんがはにかみながら答える。
はにかんだ顔も可愛いなぁ。
「あはは、といっても僕も知り合いから教わった槍術をそのまま教えただけなんですけどね」
「きっとその知り合いもとんでもない達人なんでしょうね。何か流派とかあるの?」
「確か龍帝流空槍術、とかいう名前だったはずです」
「リューテイ流クー槍術? 変わった名前ね」
「あはは、確かに大仰な名前ですよねぇ」
「大仰?」
リリエラさんが首をかしげる。
「さて、武器の試し切りも終わりましたし、奥に行きましょうか」
そういって僕は森の奥を指差す。
「そうね、レクスさんの結界魔法があるとはいえ、あまり入り口で時間をかけてはいられないものね」
リリエラさんも同意してくれたので、僕らは更に森の奥へと向かう。
「ええ、行きましょう。目標は、魔獣の森の中心地です!」
「ええ!!」
リリエラさんが気合を入れて返事を返してくる。
「……ん? 中心?」
と思ったら首をかしげた。
「はい、魔獣の森の中心に向かいます」
「そっかー、中心に行くんだー」
「ええ、各地の町や村に街道を通す為にも、やっぱり中心からそれぞれの町や村に行くのが一番便利でしょうから」
「そっかー……って、聞いてないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
何故か、リリエラさんの叫びが魔獣の森に木霊したのでした。
_(:3 」∠)_ 今日は日曜かつお仕事原稿が押してるのでちょっと文字数少なめ。
_(:3 」∠)_ でもヒロインの絶叫は当社費たぶん3倍くらい。
_(:3 」∠)_ これからは彼女が苦労するのじゃ。
_(:3 」∠)_ 大丈夫その分恩恵も凄いから。
_(:3 」∠)_ ただし精神的なダメージと正比例するとは限らない。
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