第209話 精霊魔法と普通の魔法
作者(:3 」∠)「桜の季節になってきましたー」
ヘルニー(:3 」∠)「そしてコミックス4巻の季節があと二週間後くらいになってきましたー」
作者(:3 」∠)「具体的には4/7の季節ですよー」
ヘルニー(:3 」∠)「それもう季節じゃねぇ」
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「魔物が攻めてきたぞーっ!!」
今日もドワーフ達に鍛冶の技術をレクチャーしていると、地上の見張りから、風の精霊の力を借りた精霊魔法による魔物襲撃の報告が届いたんだ。
「よし、行くぞ!」
「はっ!!」
そしてシャラーザさんの号令の下、エルフの戦士達が地上に向けて降りてゆく。
けれどドワーフ達は準備こそすれど、一向に地上に向かう様子を見せないのは何でだろう?
「あれ? ドワーフの皆さんは戦わないんですか?」
「はい、俺達は足が遅いですからね。まずは身の軽いエルフ達が先行して魔物を魔法で迎撃し、敵にダメージを与えた所で俺達と交代して殲滅するやり方なんでさぁ」
ああなるほど、種族的な身体能力を考慮して種族単位で先発と交代要員を決めているんだね。
「レクス殿、貴殿等も魔法を使える者は我々と共に来て欲しい。魔法を使えない者はドワーフ達と後発で来てくれ」
「となると、ジャイロとノルブは後発の方が良いわね」
「えー、なんでだよ。俺だって攻撃魔法は使えるぜ?」
ミナさんの振り分けにジャイロ君が不満を口にする。
「アンタは射撃系の魔法は苦手でしょ。なら回復役のノルブと一緒に後発の方が良いわ」
「私も接近戦の方が得意だけど?」
そしたらメグリさんが自分は良いのかと質問する。
「メグリはジャイロよりは射撃系魔法が得意だし、いざとなったら私の護衛もしてほしいのよ」
「ん、分かった」
と言う事は、僕達の先発部隊は、僕、リリエラさん、ミナさん、メグリさんの四人か。
でも分けるなら3:3に分けた方がいい気が……
「ちょっとバランス悪くないですか?」
「まぁ念のためね。どっちにしろ先発隊だけでどうにかなると思うし」
「まぁ、そうなるわよね」
「ん、後発の必要はない」
と、何故か皆して先発隊だけで問題ないと断言していた。
何か根拠があるのかな?
◆
地上に降りてくると、既に戦闘が始まっていた。
エルフ達は防壁や世界樹の枝の上から魔物に向けて魔法を放っている。
「大地の精霊よ! かの魔物の足を止めろ!」
「風の精霊よ! かの魔物の関節を切り裂け!」
エルフ達の精霊魔法が魔物達の足を止め、硬い甲殻を避けて関節部を切断する。
「え? 何であんな短い詠唱で魔法が発動するの!?」
そんな中、エルフ達の魔法にミナさんが驚きの声を上げる。
「ああ、エルフの精霊魔法は人間の魔法と違って、精霊と契約を行うからですよ」
「どういう事?」
「人間は呪文という式を世界に刻むことで魔法を使います。でも精霊魔法は契約した精霊そのものが式なので、アイツをやっつけてって言えばあとは魔力を渡すだけで勝手にやってくれるんです」
「なにそれズルい!」
ミナさんが精霊魔法を初めて知った魔法使い特有の悲鳴を上げる。
分かるよ。精霊魔法って常に魔法が待機状態で発動してて、命令すればすぐ発動するからね。
「でもその代わりに精霊が判断して全てを行うので、精密さには欠けるんですよ。だからああやって足を止めろとか関節を狙えって具体的に指示するんです。それでも精霊の賢さや性格によってはこっちの指示を理解できずに適当に攻撃するだけになったりしますけどね」
そう、精霊魔法って意外と大ざっぱなんだよね。
「それに契約して間もない精霊の力を借りる時は魔力の消耗も多くなります。省魔力かつ高威力を目指すには、時間をかけて精霊と仲良くなる必要があるんですよ」
だからこそ、寿命の長いエルフあたりでないと精霊魔法を使いこなす事は出来ないんだよね。
「精霊魔法は精霊魔法で大変なのね……」
「ともあれ、話し込んでないで僕達も手伝いましょう!」
「そうね」
「私とメグリは魔法の威力が弱いから、牽制とエルフ達の援護に専念するわ」
「ん、任せて」
僕とミナさんが魔法で攻撃、リリエラさんとメグリさんが援護と役割を決めて行動を開始する。
「それじゃあ僕は敵のど真ん中にぶち込んで混乱させますね!」
「分かったわ。私は前線で負傷の少ない魔物を狙う」
僕達は互いの目標を決めると、魔法を発動させる。
「サンダーウェッジ!!」
まずミナさんが放った魔法の雷が、魔物の体のど真ん中に突き刺さる。
けれど雷はそのまま消えることなく魔物の体に残り続け、更に地面に食い込むことで魔物の移動を阻害していた。
「よし!」
魔法の手ごたえがあった事で、ミナさんが会心の笑みを浮かべる。
この魔法は雷の楔で対象を縫い留める事で移動を阻害し、更にダメージを与える持続型魔法だ。
更にこの魔法を喰らっている味方に触れた魔物もまた感電し、慌てて仲間から離れた事で進軍が滞る。
「それじゃあ僕もやろうかな! バーンバーストブレイク!!」
僕が上空から放った魔法は、丁度魔物達のど真ん中に命中する。
その瞬間、命中した魔物が大爆発を起こし、更にその爆発を受けた魔物がまた大爆発を起こし、更にその爆発を受けた魔物が大爆発を起こす。
これぞ連鎖爆裂魔法バーンバーストブレイク!!
周囲に敵がいる限り、無限に爆発をし続ける対軍勢爆砕魔法さ!
連鎖爆裂魔法を喰らった魔物達は、どんどん爆発の連鎖を広げていき、まるで中心部から大輪の花が広がっていくようだった。
「な、何だあれは……!?」
「あ、あれが人間の魔法なのか!?」
「な、なんと恐ろしい……!?」
連鎖爆裂魔法を見たエルフの戦士達が、戦いの手を止めて驚きの表情を浮かべている。
うん、彼等はずっとこの郷から出ていない若い戦士達だから、人間の魔法には詳しくないんだろうね。
でも熟練のエルフの精霊魔法はこんなもんじゃないからなぁ。
だって「よろしく!」の一言で大精霊が軍勢を吹き飛ばしちゃうんだもん。
僕達人間からしてみれば、エルフの魔法の方が恐ろしいよ。
「そんなに大した魔法じゃないですよ。人間の国では割と普通に使われる害虫駆除魔法ですから」
「「「害虫駆除魔法!?」」」
「ええ、大量発生するアント系のような厄介な魔物を駆除する為に開発された魔法です」
厳密には虫だけじゃなく、大量発生する魔物全般を対象とした魔法だけどね。
「あんな魔法で駆除……?」
「外の世界ってあんな魔法が必要となる魔物が当たり前に居るのか!?」
まぁ世界は広いからね。僕も初めて軍勢型の魔物の群れを見た時はビックリしたよ。
僕も仕事で現地にやって来て現状を見た時は、慌てて駆除魔法を開発したくらいだもん。
「「「外の世界怖ぇ……」」」
外の世界に害虫が沢山いると知ったエルフ達が青い顔になって体を震わせている。
もしかして彼等は虫型の魔物が苦手なのかな?
なるほど。だからエルフは人里に出てこないのか。
種族レベルで苦手なものがあるのって大変だなぁ。
「人間の魔法使いが誤解されている……」
「騙されちゃ駄目よ。あんな真似ができるのは人間の世界でもごく一部なのよ」
「ドワーフだけでなくエルフにも誤解が……」
いやいや、誤解じゃなくて普通ですよ?
国に所属する軍属魔法使いならこのくらい当たり前ですからね?
ともあれ、連鎖爆裂魔法が上手く効いた事と、エルフ達の連携もあって、魔物はほどなく殲滅する事が出来た。
「いや助かった。レクス殿達のお陰で驚く程早く敵を撃退できた。しかも撤退させるのではなく殲滅とはな」
敵を殲滅出来たことで、シャラーザさんが感謝の言葉を告げてくる。
「けど、随分とあっさり倒せましたね。もしかして今回は敵の数が少なかったんですか?」
シャラーザさんの話じゃ郷を襲う魔物の数はかなりのものの筈だ。
なのにこんなに簡単に倒せるなんて。
「い、いや、数はいつも通りだったぞ」
「そうなんですか?」
どういう事だろう? 魔物の強さは大したことないのに数はいつも通り?
……あっ、もしかして郷の外で戦っている主力のエルフの戦士達が頑張っている成果なんじゃ!?
彼等が強力な魔物を減らしてくれた事で、郷にやってくる魔物は弱い個体ばかりになってきたのかもしれない。
そう考えると、僕達はかなり良いタイミングでやってきたんだなぁ。
ちょっと郷の外で戦っているエルフの戦士達に申し訳ない気分だ。
「あ、あの……」
そんな事を考えていたら、エルフの戦士の一人が僕に話しかけてきた。
「はい、なんでしょう?」
「あ、はい。ええとですね。あの生き物ってあなた方のペット……なんですよね?」
「え?」
エルフの戦士の視線につられて郷の外を見てみれば、白い球体が森の外へと移動している光景を目撃する。
「ってモフモフ!?」
僕は慌てて地上に降りると、モフモフを抱え上げる。
「ギュウウ!?」
モフモフは何をするんだと言わんばかりに唸り声をあげるけど、すぐに僕だと分かって大人しくなる。
「キュ、キュウウン」
「こらモフモフ、外は危ない魔物が多いんだから、勝手に出て行っちゃだめだぞ!」
「キュウン」
モフモフはどうしてもダメ? と言いたげにコテンと首を傾げるけど、かわい子ぶっても駄目なものは駄目だ。
だって外は危ないからね。
「さ、郷に帰るよ」
「キュウウン」
なおもジタバタと外に出たがるモフモフを抱え、僕は郷に戻っていく。
後に、モフモフのこの行動に重要な意味があったのだと、僕は気付く事になるのだった。
メグリ(:3 」∠)「そもそも精霊魔法の前にレクスの魔法の方がえげつない……」
存在しない熟練のエルフの戦士:3 」∠「そして私達への過大評価も大変な事に」
モフモフΣ(:3 」∠)「そもそも存在しない奴がここに来るな」
グッドルーザー号<:3 」>「ですよねぇ」
存在しない熟練のエルフの戦士:3 」∠「生き物ですらないヤツは良いんです?」
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