表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/349

第2話 冒険者登録とドラゴンの買取

第2話投稿です。

第3話も本日中に投稿いたしますのでご期待ください!

 日が沈むギリギリの時間に、僕はトーガイの町へとたどり着いた。


「よし、これなら何とか今日中に冒険者登録が出来るぞ!」


 僕は町に入ると冒険者ギルドの建物を探して歩く。

 目的の建物はすぐに見つかった。


 その建物には翼のマークの看板が掲げられていたからだ。

 それは自由の象徴、冒険者は自由であるという初代冒険者ギルド長の信念がこめられた翼の看板。


「ここが冒険者ギルド……」


 感激で胸がいっぱいになる。

 ここから僕の冒険者人生が始まるんだ!


「っていけない! ギルドが閉まる前に冒険者登録しないと!」


 ◆


 ギルドの建物に入ると、大勢の人達でごった返していた。

 うわー、この人達全員冒険者なのかな?

 凄いなぁ、こんなにたくさん冒険者が居るんだ。

 ドキドキしてきた。


 いけないいけない、また目的を忘れるところだった。

 僕は受付を見つけると急いで行列にならぶ。


「すっごい行列だなぁ」


「なんだボウズ、この時間に並ぶのは初めてか?」


 僕の独り言を聞いて、前に並んでいた冒険者さんが振り向く。

 ちょっと顔は怖いけど、悪い人じゃなさそうだ。


「はい、今日が初めてです」


「おお新入りか。初仕事は上手く……荷物がないな。もしかしてお前、これから冒険者登録をするつもりか?」


 あれ? 何かおかしな事をしてるのかな?


「はい、成人の儀が終わってすぐに村を出てきたんです」


「ああ、なるほどな。それでこんな時間に」


 良かった、別におかしな事をしてた訳じゃなさそうだ。


「はははっ、たまにお前さんみたいなのが居るんだ。冒険者に憧れて成人の儀が終わったらその足でやってくる若いのがな」


「僕と同じ事をする人が居たんですか?」


「ああ、結構多いぜ。まぁ登録したらすぐ依頼を受けたがるから、この時間に来るヤツは少ないがな。夕方は仕事を終えたやつ等が依頼完了の報告に来るから混むんだよ」


 なるほど、それでたくさん人が居るのか。


「お前さん、どこから来たんだ? 成人の儀が終わってこの時間に着いたって事は結構遠くから来たんだろ?」


「はい、ゼンジェの村から着ました」


「ゼンジェ? 聞いた事のない村だな。どの辺だ?」


 あー、僕の村は近くに他の村がない僻地の村だもんなぁ。


「ゼンジェの村はこの町から西に向かって山を越えた先にあります」


「山を!? また遠くから来たもんだ」


 驚かれちゃった。僕のしたことはよっぽど常識はずれだったみたいだ。

 いけないいけない。今度の人生じゃ地味に暮らすと決めたのに。


「山育ちなんで、近道を通ってきたんですよ」


「ほう、そういえば猟師とかは秘密の山道を知っているっていうからな」


「はいそうなんです! 冒険者になる為に狩りの手伝いをさせてもらった時に教えてもらえたんです!」


「なるほど」


 うん、獣道を教えてもらったのは嘘じゃないから大丈夫。

 空を飛んできたのは内緒にしておこう。


「あっ、前空いたみたいですよ」


「おお、じゃあお先」


「はい」


 冒険者さんと話をしていたおかげでいい暇つぶしになったなぁ。

 初めて話をした冒険者さんが優しい人でよかった。

 あ、名前を聞きそびれちゃった。

 次にあったら教えてもらおう。


「次の方どうぞ」


 おっと僕の番だ。


「冒険者ギルドにようこそ。受付のエルマと申します。ご用件は冒険者登録ですね」


「はい! ってなんで分かったんですか!?」


「ふふ、だって貴方、さっきガーランドさんと大きな声で話をしてたじゃない。バッチリ聞こえてたわよ」


「うわぁぁぁぁ」


 しまったー、そんなに大きな声で会話をしてたのかぁ。

 うう、初めて会った冒険者さんに興奮しすぎたよ。


「それでは登録を行いますね。文字の読み書きは出来ますか? 出来ない方には代筆も致しますが」


「それは大丈夫です。ちゃんと書けます」


 だって前々世は賢者だったし、読み書きなら数ヶ国語をいけるよ。


「ではこちらの書類に記入をお願いします」


「はい!」


 僕は差し出された書類に名前や年齢を書き込んでいく。


「出来ました!」


 エルマさんは受け取った書類を見ると満足そうにうなずく。


「確認しました。とてもきれいな字ですね」


 きれいな字だなんて、なんだか照れるなぁ。


「字が書けるといっても、かなり汚い字の方もいらっしゃいますからね。きれいな字を書ける方はギルドでも募集していますよ」


 ええと、それは冒険者ギルドの職員にならないかってお誘いなのかな?

 いやいや、僕は冒険者になるんだ!


「いえ、冒険者でお願いします!」


「ふふ、分かりました。でも引退した時にまた考えてくださいね」


 そっか、冒険者ギルドって引退した時の再就職先でもあるんだ。

 たしかに冒険者は厳しい仕事でもあるらしいし、大怪我をして引退しないといけない可能性があるんだ。

 まぁ僕は回復魔法が使えるから簡単に引退する事はないと思うけど。


「では次に実技試験を受けていただきます」


「実技試験?」


 実技って一体何をするんだろう?


「実際に戦ってみて冒険者としてやっていけるのかを確認するのさ」


 と、後ろから声が聞こえた。

 後ろを振り向けば、年のころは30代くらいの髭の生えた男の人が居た。

 髭は生えているものの、きちんとそろえられているので、不潔な感じはしない。


 その格好はハーフプレートメイルで胸と肩、それに金属製の小手と脚甲で体を覆い、それ以外の部分は魔物の皮を使った皮鎧で覆っている。

動きやすさと防御力を考慮したいい装備だ。

 あれ? 小手はもしかして一部ミスリルを使用してない?


 それに腰に装備している剣も鞘に刀身が隠れているけど鍔や握りの部分はしっかりとした造りをしていて、一目で良い品だと分かる。


 何よりこの人の佇まいはこの建物に居る冒険者の中で一番芯が通った姿勢をしていた。


 この人、間違いなく強い。


「なぁエルマちゃん。このボウズの試験は俺に任せて貰えないか?」


「「「ええっ!?」」」


 エルマさんだけでなく、周囲に居る冒険者さん達も驚きの声をあげる。


「オーグさん、何言ってるんですか!? 貴方はAランクの冒険者なんですよ!?」


 この人がAランク!? 道理で強そうな筈だ。


「いやなに、こんな時間に冒険者になりに来た将来有望な少年なんだ。先達としてぜひとも指導してやりたいじゃないの」


 そういうと、オーグと呼ばれたこの人はエルマさんに顔を近づけ、耳元で何かをささやく。

 手で口元を隠しているので唇が読めないのが残念だ。

 集音魔法をこんな所で使うのも失礼だしなぁ。


「分かりました。そういう事でしたら仕方ありませんね」


 どうやら話が決まったみたいだ。


「レクスさん、突然で申し訳ないんですが、貴方の試験はギルドの職員ではなく、こちらのオーグさんが担当する事になりました」


「分かりました」


「ちょっと問題のある方ですが、本物のAランク冒険者ですので、引退したギルド職員相手に戦うよりもいい経験になるかもしれませんよ」


 なるほど、現役の冒険者さんが相手なら色々と勉強になるもんね!


「よろしくお願いしますオーグさん!」


「おうおう、元気がいいねぇ。おじさんそういう元気な若者好きだよ」


 と、その時だった。

 職員の人がベルを鳴らして声をあげる。


「そろそろ素材の買取受付を終了しまーす! まだの人は急いでください!」


 その言葉を聴いた瞬間、僕は大事な事を思い出した。


「いけない、買取を頼まないと」


「ん? なんだ、何か買い取って貰いたかったのか?」


「はい、今日の宿代と食費の為に出がけに狩って来た魔物の素材を買い取ってもらおうと思ってたんです! 僕文無しなので」


「はははっ、なるほどな。いいぜ、先に買取を頼んでおけよ。試験をしてる間に査定は終わるだろうからさ」


「ありがとうございます! すいませーん、買取お願いします!」


 オーグさんが優しい人でよかったー。


「買取ですね。ではこちらの買取台に素材を置いてください」


「はい!」


 僕は魔法の袋からグリーンドラゴンの頭を取り出して買取台の上に置く。

 ギシリという音と共に買取台がきしむ。


「は?」


 職員の人がキョトンとした目になる。


「胴体のほうは大きいので床に置きますね」


 僕は魔法の袋からグリーンドラゴンの体を取り出してギルドの床にそっと置く。


「このグリーンドラゴンの買取をお願いします!」


 職員の人にお願いした僕は、反転してオーグさんのところに戻る。


「お待たせしました! それでは試験よろしくお願いします!!」


「ちょっとまった」


 あれ? どうしたのかなオーグさん。


「あれ、お前さんが狩ったのか?」


「はい! 町に来る途中に狩りました!」


「誰かと一緒に狩ったのか?」


「いいえ! 死角からの不意打ちで倒しました!」


「方法は?」


「剣で首を真っ二つに切断しました!」


「そっかー」


「そうです!」


「ところであれ、ドラゴンに見えるんだけど。羽も生えているし」


「はい! グリーンドラゴンです!」


「やっぱりドラゴンかー。ワイバーンとかじゃないんだな」


 あれはドラゴンですよ。だってワイバーンは前足と翼が一体化してるし、何よりグリーンドラゴンより断然弱くてたいしたお金にもならないんだもん。


 どうしたんだろう? オーグさん、なんだか汗をかいてるみたいだ。

 外も暗くなってきたし、そんなに暑くないと思うんだけどなぁ。


「では試験を……」


「合格っっっ!!」


「え?」


 オーグさんが突然おかしな事を言い出した。


「まだ戦ってませんよ!?」


「いや大丈夫だ! この試験は魔物や盗賊とちゃんと戦えるかの試験なんだ!」


 それはつまり?


「だから自力で魔物を倒せる君に試験をする必要などなし! 合格! 超合格! おめでとう新人冒険者君! 君は今日から我等の仲間だ! だから戦う必要なんてないんだよ!」


 なんだかオーグさん、妙に必死な様な? 気のせいかな?


「えーっと、エルマさん、合格との事ですが、これで良いんですか?」


「……え? 私ですか!?」


 いや、僕を担当したんだからエルマさんしか居ないじゃないですか。


「そ、そうですね。試験官が合格を出したので合格で良いのではないでしょうか?」


「それじゃあ!?」


「はい、合格おめでとうございますレクスさん」


「……やったぁぁぁぁぁ!!」


 ついに僕は冒険者になった!

 途中腑に落ちない事はあったけど、ギルドの職員であるエルマさんがそういうんだから大丈夫なんだよね!

 これで僕は冒険者として生きていく事が出来るんだ!


 よーっし! 頑張って地味に生きるぞぉぉぉぉ!!


 ◆


 無事冒険者になった僕は、グリーンドラゴンの買取鑑定が終わるまでの間に残りの冒険者登録を終えた。

そして目の前に差し出された一枚のカードに視線が釘付けになる。


「こちらが冒険者ギルドの登録カードとなります。依頼を受ける際は窓口でこのカードを提示して、依頼を達成した場合も窓口でこのカードを提示してください。冒険者は最初Fランクから始めますが、実績を積むことでランクが上がっていきます。ランクが上がると受けられる仕事の種類が増えますので頑張ってくださいね」


「はい! 頑張ってランクを上げます!」


 僕は顔がにやけるのをこらえきれずに受け取ったカードを間近で見つめる。

 うわー、これが僕の冒険者カードなんだ。


「まぁ、レクスさんなら頑張らなくてもすぐにランクが上がりそうですが……」


「え? 何か言いましたか?」


「いいえ、なんでもありません。ところでこちらのドラゴンの鑑定なのですが……」


「はい!」


大して強くないドラゴンとはいえ、ドラゴンはドラゴンだ。

それなりの値段にはなると期待したい。


 だというのに、なぜかエルマさんは申し訳なさそうな目で僕を見つめて言った。


「実はですね、このドラゴンですが、我々では買い取るのが難しいんです」


「……え?」


 それ、どういう事?


「といいますか、むしろウチでは買い取る事が出来ないんです!!」



「ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 なんでさぁぁぁぁぁ!?

面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=625182565&s ツギクルバナー N-Star連載「商人勇者は異世界を牛耳る! ~栽培スキルで武器でもお宝でもなんでも栽培しちゃいます~」
 https://ncode.syosetu.com/n5863ev/

魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?
https://ncode.syosetu.com/n6237gw/

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ