第199話 炎の大魔獣
作者_:(´д`」∠):_「寒くなってまいりました」
ヘルニー_(:3 」∠)_「インフルエンザに注意しないとねー(シュッシュッ)」
作者_:(´д`」∠):_「お前それインフルを撃退するんじゃなくてインフルで弱った所にとどめ刺す気だろ」
ヘルニー_(:3 」∠)_「(ニッコリ)」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「そう! この国を襲う災害の元凶、大魔獣がなぁ!」
戦いに勝利したと思っていた僕達だったけど、そこで魔人がとんでもない重大発言を発したんだ。
「大魔獣!?」
何それ、そんなのがこの国の災害の元凶だったの!?
「人間共はマジックアイテムによって災害を鎮静化させたと思っていたようだが、実際に封じられていたのはあ奴よ!」
「あの魔獣を!?」
「この地はこの国の地脈と霊脈が交わる土地の生命と魔力の流れを司る重要な霊域! だがそれは刺激を与えれば容易に災害を招く危険極まりない場所でもあるのだよ!」
確かに、地脈は大地の生命力の流れを司り、霊脈は魔力の流れを司る。
普通はそんな重要な場所が重なるなんてことは無いんだけど。この国ではそれが起きてしまった。そりゃあ霊域として崇められるよ。
「って、まさか!」
「そうだ! 奴はこの場に満ちる力を自らの餌とする為に、長年にわたって地脈と霊脈を刺激する事で食事をしてきたのだ。その結果、この国が絶えず災害に襲われる事になろうとも構わずにな!」
「なんてはた迷惑な魔物なの!?」
本当だよ。自分の為に災害を引き起こしていたなんてとんでもない生き物だ!
「さて、そんな最高に空腹な状態で目覚めた奴はどうすると思う? そうさっそく食事としゃれこむだろうさ! 最高のご馳走を口にする為に、これまでとは比でない程の刺激を地脈と霊脈に叩き込むぞ! それによって引き起こされる災害は封印から漏れ出た災害など比べ物にならん! この国を滅ぼすどころか大地を海に沈めてしまうかもな!」
魔人は血を流しながら楽しそうに笑う。
自分がもう長くないと分かっているからこそ、全てを道連れにしてしまおうとしているのか!
「それだけではない! 解き放たれた大魔獣は新たな餌を求めて世界中の地脈と霊脈を刺激して回るだろう! 終わりだ! この世界は終わりを迎えるのだ!」
なんて恐ろしい魔獣なんだ!
もしかしてコイツは古代魔法文明を崩壊に導いた白い災厄に関係する魔物なんじゃ……
「火山大亀甲の二つ名を持つ大魔獣、ボルカニックタートルによってな!」
魔人が恐れおののけと言わんばかりに大魔獣の名を僕達に告げる。
「……って、ボルカニックタートル?」
んん? どういう事?
「そうだ! 数々の国を滅ぼした邪悪な魔獣ボルカニックタートルだ!」
うーん、聞き間違えじゃないっぽいな。
「なーんだボルカニックタートルかー」
「……何?」
「ビックリしたー。地脈と霊脈が交差する火山の中に封じられた世界を滅ぼす大魔獣なんて言うから、てっきりボルカニックタイガーあたりが封印されているのかと思ったよ」
さんざん脅すからどんな恐ろしい魔物が出て来るのかと思ったら、普通にそこら辺に居る火属性の魔物じゃないか。
あービックリした。
「い、いや、待て。ボルカニックタートルだぞ? 山ほどある巨大な魔物だぞ? その背中の甲羅からは火山の如く溶岩弾を打ち出し幾つもの国を滅ぼした大魔獣だぞ! 強がりもいい加減にしろ!」
「ボルカニックタートルがいくつもの国を滅ぼした?」
んん? どういう意味だろう? 確かにボルカニックタートルは大きいけど、そこまで脅威度の高い魔獣って訳でもない。
それなりに腕の良い水属性か氷属性、何なら地属性の魔法使いでも倒せるんだけど?
というか知り合いは普通に剣で切ってたしなぁ。
あっ、もしかして魔人の世界のボルカニックタートルが僕達の世界のソレよりも危険な魔物なのかも!
魔物って土地によって同じ種類の魔物でも危険度が変わる事もあるし、魔人にとっては本当に恐ろしい魔物って認識なんじゃないかな?
例えば魔人達の世界で生まれた魔物なら、こちらの世界の魔物でも違いが出て来るかもしれない。
それか以前戦ったヴェノムビートの様に特殊な力を持った変異種なのかもしれない。
うーん、そう考えると油断はできないね!
「とはいえ、このまま考えていても仕方ないね。ちょっと退治してきます。よっと」
僕は地割れの底に見えるボルカニックタートルにめがけて飛び降りる。
「ちょっ! レクスさん!?」
「ボァァァァァァァァァッッ!!」
すると地割れの底の溶岩に浮かんでいたボルカニックタートルがこちらを見つめながら雄たけびを上げてきた。
それは僕の存在を察しての事なのか、それとも単に自由になれる出口を見つけたからなのか。
そんな事を考えていたら、ボルカニックタートルの甲羅の火口から、轟音と共に大量の溶岩弾と溶岩が射出された。
あっ、こちらの事を認識してるっぽいね。
「リフレクトフィールド!」
上に居る皆が被害を受けないように、僕は手前の空間に反射魔法を発動させる。
すると魔法が発動された領域に入った溶岩弾と溶岩は、まるで壁に当たったようにボルカニックタートルへと跳ね返っていった。
リフレクトフィールド、この魔法は発動した空間に入った物質や魔法を侵入してきた方向へ向かって跳ね返すお手軽迎撃魔法だ。
同一属性の攻撃を無効化するタイプの敵じゃない限り大抵の敵にダメージを与えられるのが良いね。
「ボアァァァァッ!?」
まさか自分の放った攻撃が戻ってくるとは思っていなかったみたいで、ボルカニックタートルから驚きの声が上がる。
うーん、普通に攻撃を反射出来たし、やっぱり僕の知ってるボルカニックタートルとそう大差ない感じがするなぁ。
とはいえ、元々溶岩の中で暮らす魔物だけあって、溶岩弾を反射しただけじゃ大したダメージにはならなかったみたいだ。
甲羅だけでなく皮膚もけっこう硬いんだよねアイツ。
「さて、どうやって倒そうかな。下手な攻撃をして地脈の溶岩が噴き出しても不味いし、ここはやっぱり氷属性の攻撃で倒しちゃおう!」
僕は混乱から回復してないボルカニックタートルに向けて必殺の魔法を放つ。
下は溶岩で熱いし、ここは氷属性の魔法が定番かなぁ?
でも氷属性の魔法って解凍がちょっと面倒なんだよね。
「よし、熱いからこっちに引き寄せよう! ハイエリアアポーツ!」
僕は溶岩の上に浮かぶボルカニックタートルに座標を合わせ魔法で空間ごとこちらに引き寄せる。
するとボルカニックタートルが丁度僕の目の前へと現れた。
「ボアッ!?」
ボルカニックタートルからすれば、僕が突然目の前に現れたように見えるんだろうね。
驚いているところ悪いけど、このまま狩らせてもらうよ!
「メタルスライサー!」
僕は金属の様に固い皮膚や甲羅を持った魔物を切り裂く切断付与魔法を剣にかけ、ボルカニックタートルの首を斬りつけた。
するりと剣がバターを切る様に滑らかにボルカニックタートルの首に食い込み、更に斬撃波が伸びて剣の刀身より太く大きい首が切れてゆく。
そして僕が剣を振り下ろした時には、大木どころか塔ほどもある太い首が胴体から綺麗に切り離されていた。
「ボア?」
未だ自分の首が切られた事に気付かないボルカニックタートルが首を傾げようとして首が動かない事を訝しむ。
同時に一緒に引き寄せた溶岩が地下へと戻る様に落ちてゆく。
「おっと、こっちは回収だよ!」
僕は一緒に落ちてゆくボルカニックタートルの胴体を魔法の袋に収納し、次いでようやくこと切れた頭部を回収した。
炎属性で重装甲の魔物だし、武器にも防具にも使えそうだ。それにジャイロ君が炎属性だから、彼の装備強化にも役立ちそうだね。
「よし、回収完了っと」
「「「な、なにぃぃぃぃぃっ!?」」」
上の方から魔人や雪之丞さん達の驚いたような声が聞こえてくる。
うーん、この程度の強さなのにあの驚きよう。
やっぱりあの魔人、名前が似ているボルカニックタイガーと間違えてたんじゃないかな?
「ああそうだ。地脈と霊脈もなんとかしないとね」
地脈と霊脈を暴走させていた災害の原因は取り除いた訳だけど、このままだとどちらも荒れたままだから僕の魔法の効果が切れたら災害が再発してしまう。
でも自然に土地が直るには何百年もかかるだろうから、土地を癒す為の仕込みをしておいた方が良さそうだね。
「まずはっと、カームウェイブ!!」
僕は沈静化と癒しの波動を地脈と霊脈に放つ。
この魔法は術者を中心とした一定範囲内に癒しの魔力を放射する魔法だけど、それを地脈と霊脈の流れに注ぎ込むことで、力の流れに乗って本来届かない土地へと届ける事が出来る。
まぁこんな事は地脈と霊脈の両方が重なっているこの土地くらいでないと出来ないだろうけどね。
でもお陰でここで魔力を大量に注ぎ込めば、いちいち災害が起こっている現地まで行って土地を鎮める必要が無いから楽なんだよね。
「よし、鎮まった。あとは災害を封じていたマジックアイテムを改造して、長期的に土地に癒しの波動を送って治療する機能を盛り込んでおこう」
霊脈越しに無事遠方の土地まで癒された事を確認した僕は、その後の事を考える。
この土地はかなり特殊な霊域だし、またボルカニックタートルみたいな魔物に目を付けられないとも限らない。
普通の霊脈や地脈ならボルカニックタートルが関わってもここまで大ごとにはならなかったんだろうけど、運が悪かったんだろうね。
だからこれまで通りの災害封印の能力だけでなく、土地の治療と魔物を寄せ付けない機能を付与しておかないと。
地割れから戻った僕は、大地の安定化に成功したと皆に告げる。
「ま、まことか!? し、信じられん……長年天峰の地を悩ませてきた災害を、魔道具の力も借りずにたった一人で解決してしまったとは……」
雪之丞さんの驚きの声が聞こえてくるけど、封印されていた魔物の正体が大したことない相手だったお陰なんだよね。
「ば、馬鹿な……俺の二段構えの策が……ガクッ」
「あっ、死んだ」
とこれまでの一部始終を見ていた魔人がとうとう力尽きたのかガクリと倒れ、脈を測りに行ったメグリさんが両腕を頭の上で交差させて魔人が完全に息絶えたと告げてくる。
「キュウ! ケプッ」
そして倒れた魔人の羽を食べ終えたモフモフが、満足気なゲップをしていた。
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「魔人の羽の溶岩炙り焼き美味ぇーっ!」
魔人_:(´д`」∠):_「死体蹴り止めてぇ……」
ボルカニックタートル_:(´д`」∠):_「満を持して現れたのに、何の成果も得られませんでした……」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。_(:3 」∠)_