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第197話 聖域での戦い

ヘルニー_(:3 」∠)_「先週はお休みしてごめんねー」

作者_:(´д`」∠):_「という訳で更新です」

ヘイフィー_(:3 」∠)_「可能なら今週中にもう一話更新したいなー」

作者_:(´д`」∠):_「がんばりゅ……」

ヘルニー_(:3 」∠)_「寒さで元気になる時期になってきたもんね!」

作者_:(´д`」∠):_「それはお前だけだ!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「ここが魔道具の設置された聖域だね……」


 村を出てアマツカミ山の麓へとやってきた僕達は、魔道具の設置された聖域と呼ばれる場所へやってきた。

 聖域の入り口はどちらかというと鉱山の入り口のようになっていて、入り口部分の壁には不思議な形をした赤い枠の様なものが半分埋まっている。

 たしかこの国の神聖な場所に建てられる鳥居っていうシンボルだっけ。


「よし、行こう!」


 坑道の奥へと進んでゆくと、そう時間を置かずに大きな広間へと出る。

 飾り気のないその空間には濃密な魔力が満ち、その下には巨大なマジックアイテムが鎮座していた。


「あれがこの国を災害から守っているマジックアイテム」


 あまりの巨大さに思わず声が漏れてしまう。

 古代の東国の技術者達は、こんな大掛かりなものまで作ってこの国を守ろうとしていたんだね。


「晴臣……」


 雪之丞さんの声に我に返れば、マジックアイテムの傍に見覚えのある二人の姿が。

 晴臣さんと魔人の二人だ。


「ははははっ、遅かったではないか雪之丞」


 二人は悪意を感じる笑みを浮かべていて、その表情からもマジックアイテムは既に彼等の支配下に置かれている事が察せられた。


「晴臣……」


 雪之丞さんが一歩前に出て、晴臣さんに語り掛ける。


「お前は、何を求めて鍵を奪ったのだ!」


「何を……だと? 今更だな。お前に言った通り、復讐の為だとも。俺を捨てた将軍に、俺を救わなかった全てに。そして俺から全てを奪ったお前に絶望を味わわせる為だ!」


 晴臣さんが憎しみのこもった眼差しを雪之丞さんに向ける。

 晴臣さんの目的は徹頭徹尾、国と雪之丞さんへの復讐に向けられているみたいだ。


「既に魔道具は俺の意のままだ。手始めに魔道具の力を弱めてやった。早く俺を止めないと国中で災害が起こるぞ」


「晴臣、お主なんという事を!」


「はははははっ! そうだ。その顔が見たかった! お前の驚愕と絶望の表情がな! だが言ったはずだ。俺の名は晴臣ではない。春鴬だ!」


 晴臣さんがマジックアイテムに手をかざすと、マジックアイテムから発せられていたであろう濃密な魔力が弱まっていく。

 そして遂に魔道具から完全に光が失われると同時に、魔力もまた霧散してしまった。


「これで魔道具は完全に機能を停止した。喜べ雪之丞。お前が来るのを待っていたのだぞ? この国が取り返しのつかない災厄によって破滅する瞬間を見せてやるためにな!」


 まるでその言葉に応えるかの様に地面が揺れ始め、獣の雄叫びの様な轟音と共に大地に亀裂が走る。


「な、なんという事を!」


 揺れは次第に大きくなり、天井からもパラパラと土や石の欠片が降ってくる。


「ちょっ、このままだと生き埋めになるわよ!」


 どうも聖域の内部は僕達の予想以上に脆かったみたいで、このままだとリリエラさんの言う通り崩壊してしまうかもしれない。


「すぐに魔道具を起動させろ晴臣! このままでは共倒れだぞ! それに魔道具が埋まれば再び起動させる事は出来なくなる! そうなれば魔道具を使ってこの国を支配する事もできなくなるぞ!」


 雪之丞さんの言う通りだ。操作することが出来なくなってしまえば、マジックアイテムを使って人々を従わせるどころか自らの命すら危なくなってしまう。


「はっ、貴様の指図など受けん! それに困るのは貴様等だけだ」


「なんだと!?」


「魔道具は離れた場所に居ようと問題なく俺の命令を聞くように出来ているのだ。つまり魔道具が埋まってしまえば、俺を殺しても新たな主となる為の契約が出来なくなる! しかも常に災害に襲われる状況ではたとえ聖域を掘り起こしても再び災害で落盤するのが関の山よ! 魔道具までたどり着くには何年かかることだろうな? それまでに何人の民が死ぬと思う?」


 晴臣さんの言葉に魔人がニヤリと笑みを浮かべる。

 どうやら魔人の入れ知恵みたいだね。

 ただ魔人の言う事だ。その入れ知恵も本当かどうか分からない。

 ならここは……


「貴様、民を人質に取るなどそれでも武士か!」


「その武士が俺をこんな立場に追いやったのだ! さぁ、これ以上民に犠牲を出したくないのなら、跪いて命乞いを……」


 けれど僕は最後までその言葉を聞く事無く魔法を発動させる。


「グランドカルム!」


「「むっ!?」」


 攻撃をされたのかと思った晴臣さん達が身構えるけれど、何も起きない事に困惑している。

 そう、何も起きないんだよ。


「地震は僕の魔法で鎮めたよ。お前達の野望はこれまでだ!」


「「……な、なにぃーっ!?」」



 ◆雪之丞◆


「「はぁーっ!?」」


「ば、馬鹿な! 人の身で災害を止めるだと!? それも魔法で!? ありえん!」


 起こる筈だった災害がレクスの魔法によって鎮められたと言われ、晴臣達が驚愕の表情を浮かべる。

 分かるぞ、余も驚いたからな。

 だがお陰で安心して戦いに挑むことが出来るというものだ。


「さぁ、これでアンタ達の野望もこれまでね! おとなしく捕まりなさい!」


 ミナ達が武器を構えると、晴臣もまた剣を構える。

 

「待ってくれミナ!」


 だが余はミナ達を制止する。


「雪之丞?」


「頼む、晴臣は余に任せてくれ」


 そうだ、晴臣とは余が決着を着けねばならん。

 これは将軍家に生まれた余の使命なのだ。


「……ちゃんと責任とるのよ?」


 余の頼みを聞いたミナはわずかに逡巡したが、結局は何も聞かずに受け入れてくれた。

 まったくなんと良い女だろう。

 将軍の子である余に臆することなく意見を述べ、時にこちらを立ててくれる気遣い。

 やはり余は彼女に惹かれておるのだろうな。


「……感謝する」


 だが今は戦いの時、余計なことに気を取られている余裕はない。

 すぐに意識を切り替えると、余は晴臣に向けて鍔を失った刀を突きつけた。


「晴臣! 決闘だ!」


「な、何っ?」


 動揺しているところに突然決闘を申し込まれた晴臣が眉を顰める。


「余と決闘しろ晴臣」


「貴様、何を……言っている?」


「余が憎いのだろう? ならば魔道具などに頼らず余と直接戦え! 戦って己の信念を貫いて見せよ!」


 これは賭けだ。

 一対一で戦う事で、晴臣の心を目覚めさせる為の!


「今まで俺に一度も勝てた事が無いくせに……良いだろう。その挑戦受けてくれる」


 乗ってくれた! やはり晴臣も武士であったか!


「余が勝ったら魔道具の鍵を返してもらう! お主が勝ったならば余の命でも将軍の座でも好きにするが良い!」


「ほざいたな! その言葉後悔させてやる!!」


 晴臣が獰猛な笑みを浮かべる。

 その顔には余を実力で叩き伏せる事が出来ると言う喜びに満ちていた。

 だがそうはいかぬぞ!


「魔人よ、雪之丞は俺が殺す。貴様はあの異人共をやれ。特にあの小僧が死ねば災害を封じる手段も無くなるはずだ!」


 晴臣もまた魔人に手出し無用と告げると剣を抜いて余と対峙する。

 だがその戦いが始まる事は無かった。


「……いや、その必要はない」


「何?」


 言葉を発したのは魔人だ。


「連中を真面目に相手にせずとも、こうすれば俺の勝ちは確定だっ!」


 そういって魔人が手にしていた小さな宝玉をかざすと、宝玉から強い光を発する。


「いけない!」


 それを見たレクスが珍しく焦った声をあげる。

 同時に魔道具から次々と爆発が起こる。


「なっ!?」


「やられた! マジックアイテムに使い捨ての爆破用マジックアイテムを設置していたんだ!」


「その通りだ! 俺が何もせずお前達が来るのを待っていたとでも思ったか? このチャンスを狙って爆破マジックアイテムを設置していたのだよ! いかに外敵からの防衛能力が高くとも、機能を停止してしまえば身を守る術は無いからな!」


 魔人による破壊はすさまじく、魔道具は無残に破壊されてしまった。


「ああっ! マジックアイテムが!」


 ああ、なんという事だ! 我が国を守って来た偉大な魔道具が……


「き、貴様何を……ぐふっ!?」


 更に決闘に水を差された晴臣が怒りの声をあげようとした時、その腹を黒鉄色の腕が貫いた。


「は、晴臣ぃぃーっ!!」


 晴臣の体が魔人によって貫かれ、真っ赤な血を吹き出しながら痙攣する。


「カハッ!」

 

「ははははははっ!! 魔道具さえ壊してしまえば、もう災害を止める事は出来ん! 小僧、貴様の魔法には驚かされたが、いかにその規格外の魔法といえど、災害を封じていられるのは一時的なものだろう? 永遠に災害を鎮め続ける事は不可能な筈だ! だからこそこの国の人間共はここまで巨大なマジックアイテムを創り出したのだからな!!」


 ◆


 なんてことだろう。魔人は晴臣さんを裏切ってマジックアイテムまで破壊してしまった。

 魔人の狙いは最初から魔道具を奪う事じゃなく破壊する事だったのか!


「アンタ! 晴臣さんは仲間なんでしょ!」


 ミナさんが魔人に向けて怒りをあらわにするけれど、当の魔人はどこ吹く風。

 愉快そうに怒るミナさんの様子を楽しんでいる様だった。


「ああその通りだ。この地の結界を無力化する為、そしてマジックアイテムの支配権を手に入れる為にわざわざ将軍家縁の人間を陥れた甲斐があったというものだ」


「陥れた? それってどういう……?」


「もしかして、東郷家が反乱を起こしたのは……!」


「察したか。その通り、東郷家の藩内にマジックアイテムを運び込んだのはこの俺だ!」


「なっ!? 東郷家の謀反が魔人の策略!?」


 やっぱり。おかしいと思ったんだ。

 あれだけ有利な状況で政争を勝ち進んでいた東郷家が、わざわざ反乱なんて起こすメリットは無いんだから。


「そして将軍の息子が生まれた時期を見計らってその情報を幕府に流したのだ。お陰で将軍は東郷家が反乱を行っていると勘違いし、東郷家を滅ぼした。たった一人の息子を残してな」


「なっ、お前が、俺の家族を……?」


 衝撃の事実を聞かされた晴臣さんが、驚きに顔を歪ませる。


「そうとも。更に言えばお前があの家に押し付けられるようにしたのも俺の手はずだ。おかげでお前は良い感じに世の中を怨みながら育ってくれた。人類の敵である俺と手を組むことを厭わぬ程になぁ!」


「外道……っ!」


 メグリさんが不快感を隠しもせず顔を忌々し気に歪ませる。


「はははははっ! だが約束は守ったぞ。この国を亡ぼす手伝いをするという約束はなぁっ!」


 魔人が腹を貫いた手を引き抜くと、晴臣さんがドサリと地面に倒れる。


「この!」


「おっと」


 リリエラさんとメグリさんが魔人に切りかかると、魔人はあざ笑うかのような軽やかな身のこなしで後ろに下がる。


「晴臣! しっかりしろ晴臣!」


 倒れた晴臣さんに雪之丞さんが縋りつく。


「僕が治療します!」


 我に返ったノルブさんが急ぎ晴臣さんの治療に入る。


「くっ、傷が深い! でも必ず僕がっ!」


 僕も治療を手伝いたいけど……今はもっと優先しないといけない事がある。


「皆、僕はマジックアイテムを修理するから魔人をお願い! ノルブさん、このポーションを治療の補助に!」


「任せて!」


「ええ、ぶっ飛ばしてやるわ!」


「仲間を裏切るのは許せない」


「助かりますレクスさん!」


 僕の指示を受けた皆が、僕と魔人の間に立ちふさがる。


「マジックアイテムを修理するだと!? そんな真似をさせるか!」


 魔人がその手にいつもの赤黒い魔力光を集中させるけど、その前にミナさんの魔法が炸裂した。


「邪魔させはしないわよ! ライトニングバンカー!」


 あれはついこの間僕が教えた魔法だね。

 高密度の魔力はたとえ魔人の肉体と言えど容易に貫くよ!


「ふっ」


 けれど魔人はミナさんの魔法を避けるそぶりも見せずその身で受ける。

 その刹那、魔人の鎧の胸元が開き巨大で真っ赤な目玉が姿を現したんだ。


「あれは!」


 そして魔法が不気味な目玉にぶつかると、なんとそのまま目玉の中に吸い込まれてしまった。 


「なっ!? 魔法が!?」


「ふふふ、ふははははははははっ!!」


 魔人が愉快そうに笑い声をあげる。


「驚いたか人間よ! これぞ我がロストアイテムの力!」


「まさかこいつも全身にロストアイテムを!?」


「その通りだ! 同胞を倒した貴様等の戦いは見ていたぞ! これは貴様等の魔法を無力化する封魔装備なのだよ!」


「封魔装備!?」


「ふはははははっ! 魔法を封じられれば人間など脆弱な肉の塊でしかない! だが俺は同胞の様に油断はしない。ロストアイテムで肉体を限界まで強化し貴様等を確実に滅ぼしてくれるわ!」


「さぁ、今度はこちらの番だ! そらそらそらそらっ!!」


 いけない、魔人は皆の魔法を封じて僕らを一網打尽にするつもりだ。

 強力な魔人がマジックアイテムの力で肉体を強化すればそれはかなりの脅威だ。

 早くマジックアイテムを修理して僕も戦いに参加しないと!


「でもマジックアイテムの損傷が激しいし、これは修理に時間がかかるぞ」


 魔人が設置した爆破マジックアイテムの設置場所はかなりいやらしく、的確にマジックアイテムの重要な部分を破壊していた。


「設計図もないから修理は無理か。となると一から作るしかないけど、そんな時間もない」


 このまま災害が広がれば、この国が滅茶苦茶になるのが先だ。

 今はまだ僕の魔法で土地を鎮静化しているけれど、この魔法は魔人が言ったようにあくまで緊急避難用であって長くは保たない。


「だったら……!」


 僕は意を決して作業の方向性を変える。


「完全な修理が無理なら、このマジックアイテムの残骸を流用して一時的に土地を鎮静化するマジックアイテムを作る! これなら数日は保つようになるからその間に魔人を倒して帝さんと一緒に改めて修理をする余裕が出来る筈! 何より、これなら術式を作るのに大した時間はかからない!」


 すぐに魔法の袋から必要な素材を取り出し、加工していく。

 更に部品の削り出しをしながら術式を同時進行で刻んでいく。

 ちょっと仕事が粗くなるけど、それは後で治せばいい。


「よし後はここの術式を組んで……完成! 動けっ!」


 魔力を込めて修理ならぬ改造を施したマジックアイテムを起動させる。

 マジックアイテムが鈍い光を放ち、むき出しになったままの術式回路が動き出すと同時に、坑道内の揺れが収まって来た。


「よし、なんとかなった! あとは魔人を……って、あれ?」


 急いで皆の援護に向かおうと思ったのだけれど、そこで繰り広げられていた予想外の光景に僕は目を丸くしたのだった。

災害_:(´д`」∠):_「気軽にポンポン止めるの止めてくれませんかねぇ」

晴臣_:(´д`」∠):_「切り札を無効化されたり腹を貫かれたりもう散々」

雪之丞_:(´д`」∠):_「活躍シーンが消えました」

魔道具_(:3 」∠)_「何か無断でサイボーグにされました」

晴臣_(:3 」∠)_「いやお前最初から機械だろ!」


面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。_(:3 」∠)_

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 晴臣って、本名が、春◯←はる何て読むんですか? フリガナが欲しいです。 二人の父親の名前も、なんて読む知らないんだよねー。 適当に読んでますよ、将軍家の名前は。 教えて欲しい。
[一言] レクスを一瞬でも焦らせた魔人って初めてじゃね? まあ、一人でこのチート軍団をなんとかできると思ったのが運のつきですが。
[一言] 直接魔法が効かないなら 身体強化しておもいっきり石投げよう(目反らし
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