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第191話 雪之丞は強くなりたい!

作者_(:3 」∠)_「だいぶ涼しくなってきたなぁ」

ヘイフィー_(:3 」∠)_「クーラーもほとんどいらなくなってきましたしねぇ」

ヘルニー_(:3 」∠)_「風邪をひかない様にきをつけなさいよー」

作者/ヘイフィー_(:3 」∠)__(:3 」∠)_「はーい」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 追手を撃退した僕達は、海賊達の船を使ってアマツカミ山の麓にある神官達の村に向かっていた。


 ちなみに元々海賊のものだったこの船だけど、海を荒らした海賊達を捕らえた功労者の権利として正式に僕の所有物になった。

 まぁ役人さん達の本音としては、廃船にするしかない船の処理が面倒だったからだろうけどね。


 事実貰った船を修理がてら調べてみたら、結構な老朽船だった事が分かった。

 これじゃあ沖で嵐に遭わなくてもいずれ沈没していたと思うよ。


 でもまぁ、せっかく貰った船だから修理がてら色々改造してみる事にした。

 幸い、改造用の素材と時間は潤沢にあったからね。

 そんな訳で清兵衛さんの所で厄介になっている間、僕はポーションなどを作る片手間で船の修理をしていたから暇を持て余す事は無かった。


「ううむ、よもや本当に船が空を飛ぶとは……異国とはこのようなモノが当たり前のように使われているのか?」


「いやいや、それはレクスの周りだけだから。普通の船は空を飛んだりしないわよ」


「そ、そうだな」


 恐る恐る船の縁から地上を見ながら晴臣さんが恐ろし気に呟き、それを聞いたミナさんが否定する。


「そんなことないですよ。飛行船なんて探せばそこら中にありますって」


「あるのか!?」


「ないわよ!」


 まぁ僕達の暮らしていた国は内陸の国だし、何故か飛行魔法を使おうとしないお国柄だったから、ミナさんが飛行船になじみが無いのも無理はない。

 前世でも宗教的な理由や、地理的魔法的な事情から特定の技術を禁止する国は少なからずあった。


 それは土地の歴史やさまざまな事情で認められなかったり、その技術が土地の特性で悪い方向に作用して危険だったりする事があるからだ。


 だからそうした土地の人にとっては、外の国では当たり前の技術が見た事もない未知に溢れた世界に見えるんだ。


 ただ昔の東国じゃそうでもなかったはずなんだよね。

 まぁ何かしらの技術が原因で災害が発生した国は、その後その技術が禁忌になる事も珍しくないし、きっと前世の僕が死んだ後で東国でも飛行技術による事故が起きたんだろう。


 前世でも知り合いの技術者がやらかしたのが原因で一部の技術が永久封印になった国もあったし。

 寧ろ世界的に見れば、年一回くらいのペースで大きな事故が起きて危険技術指定されるなんてよくある事だった……よくあったんだよね。


 ともあれ、そんな事情もあって特定の技術が禁忌とされた土地の人が外の国に出ると、当たり前の技術が見た事もない未知の技術に見えるなんてのはよくある事だったんだ。

 だからミナさんや晴臣さんが知らないだけで、飛行船や飛行魔法は普通に存在しているんだよね。


「この船の速度なら、アマツカミ山へは一日で到着します。それまでは皆さんノンビリ体を休めてください」


「や、休むか……ううむ、休めるだろうか? ……墜ちぬよな?」


「それは大丈夫よ。レクスが作ったものだからね」


 まぁ見た目が老朽船だからね。不安になるのも仕方がない。


「この国は飛行船がないし目的地は目印があって分かりやすいから、進路を固定すれば舵から手を放しても問題ないのが楽だね」


 せっかくだから、アマツカミ山に向かうまでに色々追加の準備をしておこうかな。

 敵はこっちが来るのを分かって待ち構えている訳だし、こっちも無策で突っ込む理由は無い。

 どうせ襲ってくるんだから、迎撃の準備をしておかなくちゃ!


「……はぁ」


 と、そこに地獄の底から響いて来そうなため息が聞こえてきた。


「……はぁ」


 うん、雪之丞さんだ。

 目を覚ました彼はずっとあの調子でため息を吐いていた。

 正直どう声をかけたものかと迷ったから、皆そっとしておこうって事にしたんだよね。


「何故余はこうも弱いのだ……」


 あっ、語りだした。


「余は次期天峰皇国の将軍であるというのに」


 まぁ雪之丞さんは実戦経験が足りないみたいだから、不覚を取るのは仕方ないと思う。

 戦闘訓練も触りくらいしかやってないみたいだし。

 寧ろ実戦を経験して生きていただけでも儲けものだ。

 今後の成長が見込めるという意味では悪い事ばかりじゃないよ。


 とはいえ、それは本人が自覚して初めて意味がある。

 あまり周りがあれこれ言ったら、雪之丞さんの成長につながらない。

 だからああやって迷っている時は、本人が何かしらの決断をするまで放っておくのが戦士達の暗黙の了解だ。

 身内である晴臣さんが黙っているところを見ると、今の東国でもそれは変わらないみたいだね。


「これでは亡き父上に申し訳が立たん! うぉぉぉぉぉぉっ!!」


 様子を見る限り、諦めて腐っている感じではないっぽいね。

 これならすぐに立ち直るかな?

 と思ったら、雪之丞さんは立ち上がると僕の方を向く。


「レクスよ!」


「はい?」


 急に何だろう?


「余にそなたの戦いの技を教えてはくれぬか!」


「え? 僕の?」


 なんと雪之丞さんは僕に戦闘技術を教えてほしいと頼んできたんだ。


「でも僕よりも東国……この国の腕利きの武人に習った方がよくないですか? 僕の技術は外の国の技術ですし」


 一応この国の剣技も前世の知り合いから習った事があるから多少は出来るけど、やっぱり専門家から習った方が良いのは間違いない。

 何せ僕の東国剣術は自分の知っている剣技と合わせたアレンジ剣術だし、古い技術だからね。


「いや、そなたは我が国の精鋭でも歯が立たなかった追手を軽々とあしらったミナの師。なればそなたは我が国のいかなる達人よりも強いのは明白! 余はもう足手まといには……否、誰よりも強くなりたいのだ!」


 雪之丞さんは、自分の弱さが許せないと僕への師事を頼み込む。


「若! 御身は天峰皇国の次期将軍ですぞ! いかに強いとはいえ、異国の剣技を学ぶのはどうかと!」


 今までは静観していた晴臣さんも、流石にそれはどうかと思うと異を唱える。

 けれど雪之丞さんは晴臣さんの言葉に首を横に振る。


「否だ晴臣よ。そなたの言う通り、余は次期将軍。なればこそ、国を統べる者として強さに手段を選んではおれぬ。弱き者に道理はなし。はじめに力を示してこそ、万民に道理を通すことが出来る。それが我が国の武士のありようであろう?」


「……おっしゃる通りです」


 自分の意思を通す為なら国の伝統武術にこだわるよりも、なりふり構わず異国の強い技を学ぶ方が確実だと言われ、晴臣さんが悔しそうに頷く。

 うーん、自分達の誇りである伝統武術が否定されたようで良い気分じゃないだろうな。


 けど参ったな。雪之丞さんの気持ちも分かるけど、そもそもアマツカミ山まであと一日しかないし、たった一日じゃ出来る事なんて限られてるよ。


「良いんじゃないの? やらせてみたら?」


 と言ってきたのはミナさんだ。


「なんでもいいからやりたい気分なら、まずはやらせてみれば良いのよ。それでだめならすっぱり諦めて別の方法を探せばいいんじゃない?」


「おお! さすがはミナ! 話が分かるな!」


「神官の村までたった一日なんだし、その程度の時間じゃ大したことは覚えられないわよ」


 と、不満そうな晴臣さんを説得するミナさん。

 それを聞いた晴臣さんも、言われてみればその通りだと納得する。


「確かに、言われてみればミナ殿の言う通りですな。私も冷静さを欠いていたようです」


 良かった。晴臣さんも落ち着いたみたいだ。


「という訳なんだけど、良いかしらレクス? たった一日だけでもいいから稽古をつけてやってくれない? こんなのでも一応依頼主だしね」


「こんなのと一応は余計であろう!?」


 ミナさんの非情な一言、いや二言に雪之丞さんが苦情を漏らすけど、当のミナさんはガン無視だ。

 けど成る程、ミナさんが雪之丞さんの稽古を肯定したのは、この状況で雪之丞さんの気分を和らげるのが目的だったみたいだ。

 確かに時間が無い状況であがいても無理だと言われるよりは、何かをしていた方が精神衛生上マシになるだろう。

 依頼主の心の安定も考えての発言をするあたり、流石はチームドラゴンスレイヤーズの知恵袋だね!


「そういう事なら分かりました」


「おお! 感謝するぞレクスよ!」


 僕と稽古出来る事になって、雪之丞さんが喜びの声をあげる。


「ありがとうレクス」


「お手数をおかけする」


 ミナさんと晴臣さんにお礼を言われた僕は気にする事は無いと告げ、雪之丞さんと甲板の真ん中に立つ。


「では最初は軽く模擬戦といきましょうか」


「うむ!」


「レクスー! ガツンとやっちゃいなさい! 時間もないんだし、厳しいくらいでちょうどいいわ! ……殺さない程度にね」


「大丈夫ですよミナさん」


 さすがに訓練で大怪我をさせるようなヘマはしないよ。

 僕は自分の剣と雪之丞さんの剣に魔法をかける。


「セーフティエフェクト」


 魔法が発動すると、お互いの剣が淡く緑色に光る。


「おおっ!? これはなんだ!?」


「衝撃保護魔法です。これで真剣でもお互いを傷つけずに訓練が出来るんです。模擬戦専用の刃を潰した剣を用意できない時や、使い慣れた愛用の武器で訓練したい時用の魔法です」


「おお! それは便利だな!」


 愛用の武器のまま安全に訓練出来ると聞いて、雪之丞さんがはしゃぐ。


「じゃあ準備は良いですか?」


「うむ! ミナよ、合図を頼む」


「はいはい。それじゃあ、はじめ!」


 ミナさんの気の抜けた合図を聞いて、雪之丞さんが真っすぐ突っ込んでくる。


「たりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」


「甘い!」


 雪之丞さんが剣を振り上げた所で、僕は一歩で懐まで入り剣を横薙ぎに当てた。


「ぐぼあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「って、ええ!?」


 そしたらなんと雪之丞さん、何故かダメージの受け流しもしないで攻撃をモロに受けちゃって、船首に向かって吹っ飛んでいった。

 いや、これはわざと攻撃を受けて僕の攻撃の威力を後方に下がる為のエネルギーに利用したんだ!

 直撃を受けたように見せかけて、骨や内臓へのダメージはゼロとみた!


「ペギャン!」


「あれ?」


 と思ったら雪之丞さんは着地する事もせず船首側の船べりにぶつかってそのまま跳ね上がり、水切りの石みたいに跳ねながら衝角の先端に向かって行く。

 一体何を企んでいるんだ!?


 そして衝角の先端まで到達した雪之丞さんは、そのまま船から落ちていった。


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~っ」


「……って、落ちたぁぁぁぁ!?」


「雪之丞っ!?」


「若ぁぁぁぁぁぁっ!?」


 慌てて飛行魔法で追いかけ、僕はぐったりと気絶した雪之丞さんを抱えて船へと戻ってきた。


「いやー、危ない所だったわねぇ」


「危ないで済むか! 危うく我が国の未来は闇に閉ざされるところであったぞ!」


「本当にすみません」


 いきなり自分の主が死にかけた事で、晴臣さんに凄い剣幕で叱られてしまった。

 さすがに申し訳ない事をしちゃったな。

 修行どころじゃなくなってしまったので、とりあえず雪之丞さんに回復魔法をかけて休ませる事にする。


「うーん、これだと修行どころじゃないね。よし、まずは雪之丞さんの安全を守る為のマジックアイテムを用意しよう!」


 時間もない事だし、発想を変えて僕は雪之丞さんの身を守る為のマジックアイテムを作ることにした。


「落下防止と解毒、それに身体防御のマジックアイテムを用意して装備してもらおう。まずは安全第一だね!」


 そうと決まればさっそく手持ちの材料でマジックアイテムの開発を始める。

 本気で作るには素材の質も設備も足りないから不安だけど、最近はそこそこ良い材料も集まってきたし、それなりのものが出来るだろう。


「ヴェノムビートの素材を加工して毒消しの機能を仕込んで、ゴールデンドラゴンの鱗を一度粉末状にしてから固めて金鱗細工のリングにする。あとエンシェントプラントの樹皮をひも状にして……よし出来た!」


 防御用マジックアイテムが完成したので、さっそく眠っている雪之丞さんの腕に装着させる。


「これで何かあっても安全だね!」


 うん、これがあればわざわざ保護魔法をかける必要もないから、修行もやりやすくなって一石二鳥だね!


 そうこうしている間に、空は赤みを帯び、アマツカミ山がだいぶ近くなってきた。


「夜になったら連中も攻めてくるかな?」


 こっちは無防備に空を飛んでいるから、敵からも良く見えている事だろうしね。


「さて、それじゃあ船の改造の再開といこうかな!」


 残り短い時間で、どれだけ魔人達の襲撃に対抗できる準備が出来るか分からないけど、それでも出来る限りの準備はしておこう!

元海賊船<:3 」>「俺、どうなっちゃうの?」

雪之丞_:(´д`」∠):_「余、知らない間に謎のマジックアイテム装備されちゃったんですけど」

ミナ_(:3 」∠)_「こうして、二人は二度と人間に戻れない体に……」

元海賊船/雪之丞_:(´д`」∠):_<:3 」>「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

元海賊船<:3 」>「あっ、俺元々人間じゃなかったわ」

雪之丞_:(´д`」∠):_「あぁーっ! 狡いぞ貴様ぁー!」


面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。_(:3 」∠)_

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― 新着の感想 ―
[一言] 修行もう終わり?
[気になる点] 戦闘訓練も触りくらい~ 触りの意味を間違って使ってませんか?
[一言] もはやその護身用アイテムで無敵な件について
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