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第183話 港へ向かう者達

作者(:3)∠)_「ポンポンぺいん」

ヘルニー(:3)∠)_「つヨーグルト」

作者(:3)∠)_「胃腸薬くらい出せや」

ヘイフィー(:3)∠)_「つ便器)


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 ◆リリエラ◆


「さて、これからどうしようかしらね」


 海に落ちた海賊達を助けた私とメグリは、なんとか東国に上陸することが出来た。

 そしてこれまた運よく港町に着いたんだけど、レクスさん達の情報はどこにも無かった。


「この町で待機するか、他の港町を探すか」


 現状、私達には仲間達との連絡手段が無かった。

 というのも……


「「まさか冒険者ギルドが無いとは……」」


 そうなのよね。この東国には冒険者ギルドという組織が無かったの。

 おかげでギルドに連絡を頼んで、他の支部にレクスさん達が居ないかを調べるという手が使えなくなっちゃったのよね。


「こうなると、お手上げねぇ」


「すんません姐さん方。俺達を助ける為に」


「すんません」


 私達が助けた海賊、ディスタとシタバが申し訳ないと頭を下げてくる。


「気にする必要はないわ。私達が助けるって決めて行動した結果だもの」


「ん、冒険者の行動は全て自己責任。それが自由人である冒険者の矜持」


 そうね、何をするにも自己責任。

 それが私達の誇りだもの。


「「か、かっこいぃー!!」」


 ディスタとシタバが妙に感激した様子で私達を見ながらはしゃぐのは勘弁して貰えないかしら?

 通行人が何事かって顔でこっちを見てくるんだけど。

 東国って衣服が独特のデザインをしているから、異国人である私達の格好は猶更目立つのよね。


「と、ともかく、この町にレクスさん達はいないんだし、別の港町に行くのが良いんじゃないかしら? 運が良ければ街道沿いで出会うかもしれないし」


「私もそう思う。港の人達から、雲が荒れていた方向を聞いたから、私達が流されてきた方向は分かってる。そっちに向かって歩いて行けば、あの嵐の起きた場所から一番近い港町に着く筈」


 さすがメグリ。その辺りは抜け目ないわね。


「ならさっそく行きましょうか」


「ん」


「「へいっ!!」」


 という事で別の港町に向かう事を決めた私達だったんだけど……


「ヒャッハー! 命が惜しければさっさと逃げちまいな! もっとも生きて逃がす気はないけどよ!」


「身包み剥いでやるぜー!」


 町を出て暫く歩いたところで、山賊に出くわしちゃったのよね。


「あー、どこかで見た光景だわ」


「「すんません」」


 ちなみに襲われているのは私達じゃない。

 襲われているのは、馬車だ。


「商人の馬車って感じじゃないわね」


「馬車が豪華、駅馬車でもない」


 つまりお金持ちの馬車ね。

 ただ金持ちというと、襲われているのは貴族の可能性もあるのよね。

 善意で助けた結果、面倒な貴族に絡まれたって話も結構聞くから、安易に動くのは危険ね。


「姐さん方、護衛の格好を見て下せぇ。ありゃ東国の鎧でさぁ」


 ディスタの言葉に戦っている護衛の姿を見ると、あれは革鎧かしら? 私達冒険者が使うものと違って、随分とゴテゴテしてるわね。


「ありゃあ東国のちゃんとした騎士の鎧でさぁ」


「へぇ、東国の騎士は革鎧なのね」


「東国の騎士は気候や地形なんかの問題で、フルプレートよりも重装化した革鎧に装飾や派手な塗装をするんでさぁ」


 なるほど、土地柄が革鎧に向いているって事ね。


「そんで倒れた騎士の鎧も同じモンです。つまり襲われてる連中は、同じ装備をそろえる事が出来る金持ちでさぁ」


「成る程、良い装備を全員分揃える事が出来る貴族は金持ち。つまり爵位が高い」


「へい、そういうことでさぁ」


 意外とこの海賊達知恵が回るわね。

 いや、単に獲物を見定める為の知恵ね。


「ともあれ、襲われているのが爵位の高い貴族なら、助けた時に恩が売れるかしら?」


 レクスさん達と合流する為に協力してくれそうね。


「リリエラ、もう一つある」


 と、メグリが私の腕を引く。


「何?」


「あの山賊達、装備の粗末さの割に、訓練された重装甲の護衛を圧倒してる」


「あっ」


 メグリの言いたい事に気づき、私は山賊達の動きを見る。


「確かに、明らかに動きが良いわ、あの山賊達」


「そりゃどういう事で?」


 ディスタの疑問に私は自分の理解を深める意味でも説明する。


「つまりね、あの山賊達は自分達よりも装備が良くて、しかも専門に訓練された職業騎士より強いって事よ」


「つまりたまたま強い山賊に襲われて運が悪かったって事ですかい?」


 うーん、通じないかぁ。


「つまり、あの山賊達は山賊に偽装した腕利きの職業軍人か暗殺者の可能性が高い」


「「成る程!!」」


 メグリの答えに、ディスタ達が納得の声をあげる。


「そうなると一気にきな臭くなってきたわね」


「さっき生きて逃す気はないって言ってた。相手が金持ちと分かっているのなら、身代金を要求する筈。それをしないというのも怪しい」



 うーん、完全に黒ね。


「どうする?」


 メグリが私を見て聞いてくる。

 私にこのパーティのリーダーとして決めろっていうのね。

 これは先輩冒険者としての私を立ててくれているのかしら?


「え? 隠れてやり過ごすんじゃないんですかい?」


「相手は本業の騎士を倒すほどの腕利きなんですぜ?」


 ディスタとシタバが戦う気かと怯えているけど、アンタ達元々海賊でしょうが。


「狙われるほどの貴族なら、それなりの地位にいる可能性が高いと思うのよね。ならそんな相手を助ければ、色々と便宜を図ってくれると思うわ」


「で、でも相手はあっしらよりも人数が多いですぜ?」


「しかも強いっスよ?」


「問題ない。あの山賊達の動きは確認した。あれなら勝てる」


 そう、私達もただ彼らが襲われている姿を見ていたわけじゃない。ちゃんとあの連中相手に戦えるのかを見極めていたのだ。


「私が地上から魔法を放って攻撃するから、メグリは上から奇襲でオッケー?」


「オッケー」


「じゃあ戦力にならねぇあっし等は、邪魔にならない様に隠れてますね」


 ……うん、良いんじゃないかな。


「じゃあ行く」


 すぐにメグリが物陰に隠れて私の傍から離れてゆく。

 そして十分な距離を確保したところで、私は山賊達に魔法を放った。


「アイスラッシュアロー!」


 私は下級の氷の矢を連射する魔法を山賊達に放つ。

 戦士である私は魔力が多くないせいであまり派手な魔法は使えないけど、それでも遠距離攻撃の手段があれば、戦術の幅が大きく広がるわ。今回の目くらましのようにね。

 とはいえ、相手は熟練の戦士だから不意を打っても大したダメ―ジにはならないでしょうけど。


「な、なんだ!?」


「ぐわあぁぁぁっ!?」


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」


 あれ? 意外と効いてる?

 と、私が驚いている間に、メグリが上から山賊達を強襲した。


「ガハッ!?」


「ど、どこからグアッ!?」


「ど、どこに!? ゴフッ!?」


 上から強襲したメグリは、その勢いで地面にしゃがみ込むと、すぐに飛行魔法で上空に逃亡。その際にもう一人を逆袈裟で切り裂く。


 突然懐に入ってきた敵が一瞬で消えた事で、山賊達はメグリの姿を見失って周囲を探す。

 普通の人間は、上から攻撃されるなんて思ってもみないでしょうしね。

 その心理的奇襲によって、メグリは何度も空と地上を高速でジグザグに動き回って山賊達を襲う。

 けれど何度も同じことをされれば、山賊達も慣れるのが道理。

 仮にも腕利きの暗殺者だものね。


「上だ! 上にいるぞ!」


「飛んでおる!? 魔法!? 否魔道具か!?」


 襲撃で半ばパニックに陥った山賊の口調が一瞬だけ元に戻る。

 やっぱり山賊のフリをしていたのね。


「でもまぁ、私の事を忘れたのはウカツよね。 アイスラッシュアローッ!」


 私はメグリが上空に逃げたタイミングで、上を向いていた山賊達の横っ面を魔法で叩く。


「「「ぐわぁぁっ!!」」」


 完全に決まった魔法が山賊達に重傷を与え、生き残っていた山賊達にはメグリがトドメを刺していた。


「これでおしまいっと」


 山賊達は全員倒され、立っているのは私達と生き残った護衛達だけだ。


「大丈夫ですか?」


 私は呆然としていた護衛達に穏やかな声音で声をかける。

 すると護衛達はすぐにハッとなり、剣を構えて私達に警戒の目を向けてきた。


「な、何奴!?」


「私達は貴方達が襲われているのを見て助太刀に来たんです。現に倒れているのは貴方達を襲った山賊だけでしょう?」


「むぅ……」


 護衛達はちらりと山賊を見ると、どう判断したものかとわずかに考え込む。


「た、確かに助かった。だがお前達が別の賊でないとも限らぬ。故に近づくな!」


 なるほどー、そう考えちゃったかぁ。

 多分この人達は山賊は本物の賊で、私達こそ敵の本命なんじゃないかって警戒しちゃったのね。

 うーん、これは予想外。


「やめよ」


 どう説得したものかと困っていると、馬車の扉が開いて見慣れない格好の老人が出てきた。


「お、お館様!? 外はまだ危のうございます! 中へお戻りください!」


「無様な姿を晒すでない愚か者どもが! この者達がヤツめの手下ならば、我らを助けずともそこの山賊に偽装した追手に襲わせればよいだけの事。わざわざ優勢であった仲間を殺してまで儂の懐に入る意味はないわ!」


 あっ、良かった。ちゃんと冷静に状況を見ていた人が居たみたい。


「すまぬな。この者達も儂を守る為に必死だったのだ。気を悪くせんでくれ」


「お、お館様!?」


 自分達の主人が謝った事で、護衛達が顔を青くして動揺する。

 うーん、そんな風に動揺してたら護衛なんか務まらないんじゃないかしら? ちょっと心配になるわ。


「お気になさらないでください。戦いの後で気が昂っていたのでしょう」


「そう言ってもらえると儂としてもありがたいの。ここで立ち話もなんじゃ。良ければ儂の屋敷に招待したい。改めて命を救ってもらった礼がしたいのでな」


 私はメグリと顔を見合わせる。


「どうする?」


「私は構わないと思う。特に急ぎでもないし」


「それもそうね」


 もちろん話し合いは演技だ。

 助けた事で協力してもらおうって、あらかじめ決めていたわけだしね。


「わかりました。そういう事でしたら、ご招待に甘えさせていただきます」


「うむ。ではついてくると良い」


 さすがに馬車には乗せて貰えなかったけれど、代わりに護衛達の乗る馬に乗せて貰えることとなった。

 山賊達の増援を気にしているのか、一行は途中の村や町に止まることなく代わりに馬を交換して進んでゆく。

 そして日が暮れるギリギリで到着した町で、ようやく馬の脚が緩やかになった。


「この町で宿を取るんですか?」


 私は自分を乗せていた護衛にどういった予定なのかを確認する。


「いえ、この町が我々の目的地です」


 なるほど、目的地まで近かったから、一気に突き抜けた訳ね。

 馬車は町の中を進んでいき、貴族街らしき区画に入ってゆく。

 そして奥まで進んでゆくと、ひと際高い壁の屋敷が見えてきた。


「お館様がお帰りだ! 開門せよ!」


 護衛の言葉に門が開き、馬車と私達を乗せた馬が中へと入ってゆく。


「う、うわぁぁ……」


 思わず声が出た。

 なにせ門の中は私の予想以上の豪邸が広がっていたからだ。


「門の中に森がある!?」


「はははっ、アレは庭園ですよ」


「庭園!?」


 私達が進む道の両脇には、森としか思えない木々や草花が綺麗に咲き乱れ、言われてみれば確かにその並びや形には人の手が入っていた。

 更になんだか良く分からない飾りがちらほらと立っている。


「凄い……」


 メグリも珍しくお宝以外のものに圧倒されている。


「あ、あっしらまで入っちまってよかったんですかねぇ?」


「う、うひゃあー」


 一緒にやってきたディスタ達も、屋敷や庭園の光景に圧倒されている。


「はははっ、この庭園はお館様の自慢の庭園ですからな。天峰の武家の屋敷数あれど、これほどの規模の物はこの屋敷を置いて他にありませんぞ」


 それはつまり、私達が助けた老人が相当な権力者であると言う事……よね?

 庭園に挟まれた道を暫く進むと、ようやく屋敷の入り口が見えてきた。


「デカい……」


 近くまで来て見ると、殊更に屋敷はデカかった。

 夕暮れ時で周りが見づらかったから分かりにくかったけど、相当な広さだわ。

 そして屋敷の前には何十人もの使用人達と思しき人達が道の両脇に控えていた。


 先行していた馬と馬車が止まり、私達も馬から降りると、最後に馬車のドアが開いて先ほどの老人が姿を見せる。


「「「「「おかえりなさいませお館様!!」」」」」


「うむ、心配をかけたな」


 老人は使用人達に声をかけると、私達の方を向く。


「さて、先ほどは助けてもらったにも関わらず、名を名乗っておらなんだな」


と、突然そんな事を言い出した。


「何しろ、どこに追手が隠れておるとも知れん状況じゃったからの。儂が本当に標的だと相手に確信を持たれたくなかったのじゃよ」


 なるほど、だからさっきは名乗る事もせずに馬車に乗り込んだのね。


「あと、ここでなら名乗っても護衛達がたくさんいるし、逃がしても追手を出せるからだと思う」


 ボソリと私だけに聞こえる様にメグリが補足する。

 意外にしたたかねぇ、このお爺ちゃん。


「儂の名は山桜小路(さんおうこうじ)左京之介(さきょうのすけ)。この国の筆頭家老を務めておる」


「筆頭家老……?」


 って何?


「「ひ、筆頭家老!?」」


 言葉の意味が良く分からなかった私の代わりとばかりに、ディスタ達が驚きの声をあげる。

 船乗りだけあってこの二人って意外と物知りなのかしら?


「知ってるのアンタ達?」


「し、ししし、知っているも何も!?」


「筆頭家老と言えば、あっしらの国で言う摂政様の事ですぜっ!!」


「へー、摂政ねぇ」


 なるほど、確かにそれならディスタ達が驚くのも……


「って、摂政ぅぅぅっ!?」


 私は驚いて自らを筆頭家老と名乗った老人の方を向く。

 すると、彼はニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべてこう言った。


「驚いたかの異国のお嬢さん達?」


「「……」」


 お、驚いたなんてもんじゃないわよ……

 どうやら私達は、トンデモナイ大物と知り合ってしまったみたいね……

左京之介(:3)∠)_「さっちゃんと呼んで良いぞ?」

リリエラ(:3)∠)_「(ツッコミいれづれぇー)」

ディスタ/シタバ(:3)∠)_((完全に美味しい役所を持って行かれた……))


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cont_access.php?citi_cont_id=625182565&s ツギクルバナー N-Star連載「商人勇者は異世界を牛耳る! ~栽培スキルで武器でもお宝でもなんでも栽培しちゃいます~」
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王の補佐とするなら、「摂政」じゃなく、「宰相」じゃないかな。
[気になる点] >筆頭家老と言えば、あっしらの国で言う摂政様の事ですぜっ!! 摂政というのは一般的には、王や皇帝等の君主が幼少だったり重病などで君主としての役割を担えないときに代行する臨時職のような…
[一言] さっちゃんの着物の下には桜吹雪があって「余の顔を見忘れたか」と印籠を出すんですね
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