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第181話 ミナ、東国の大地を踏む

作者(:3)∠)_「あー、リフレッシュする為に温泉に行きたいなぁ」

ヘルニー(:3)∠)_「つ(お湯が緑色になるアレ)」

作者(:3)∠)_「温泉の素ですらねぇ!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 ◆ミナ◆


「さて、これからどうしたもんかしらね」


 海に落ちた海賊を救出した私は、なんとか嵐を抜けて東国の海岸へと辿り着いた。

 けれどかなり流されたみたいで、私達が乗って来た船の姿は見当たらない。


「とりあえず港町を目指しちゃどうですか姐さん? 元々俺等も港を目指していたわけですし」


 助けた海賊が、妙にペコペコしながらこれからの方針を提案してくる。


「そうね。じゃあ近場の港町を目指しましょうか」


 まずは飛行魔法で上空に上がり、周辺の地理を確認っと。

 周囲をぐるりと見回すと、目につくのは例の巨大な山。

 そして海岸の近くを通る街道が目についた。


「あっちに街道が見えたわ。行きましょう」


 地上に降りた私は、海賊にこれから向かう方向を指示する。


「いやー、飛行魔法ってのは本当にすごいもんですね。けどそれならわざわざこんな所を通らずに飛んでいけばいいんじゃないですか?」


「貴方飛べないでしょ」


 私一人ならそれも出来たんだけどね。


「それなら俺が姐さんに掴まっ……あ、いえ、なんでもないです」


 馬鹿な事を言おうとした海賊を視線で黙らせ、私達は街道に向かって林を抜けていく。


「とりあえず、私達は嵐で船から投げ出された旅人で、アンタはその船の船員だったけど今は私の護衛をしてるって事にしておくからね」


「なんでまたそんな面倒な設定にするんで?」


 コイツ、自分が何者か忘れてるわね。


「アンタ海賊でしょ」


「おっとそうでした」


 言われて思いだしたのか、海賊がこりゃ失礼しましたと頭をかく。


「っと、そろそろ街道に……何?」


 その時だった。街道の方からギンッ、ギンッ、と何か金属がぶつかるような音が聞こえてきたの。


「「……」」


 私達は顔を見合わせると、そーっと木々の間から街道の様子を覗き見る。

 すると道の向こうで、誰かが剣を振るって戦っているのが見えた。


「誰か戦ってるみたいですね」


 戦っているのは二人組の若い男と、複数の男達だった。

 劣勢なのは二人組の方で、年上の男が年下の少年を守っているみたいね。

 少年の方は私やジャイロ達よりちょっと幼いかしら?


「とりあえず様子を見ましょう。ヤバそうだったら関わらない方向で」


「そっすね」


 薄情なようだけど、この海賊は嵐の最中に海に放り出された所為で武器を持っていないから、戦えるのは私だけなのよね。

 この状況で厄介事に関わるのはただの命知らずだわ。


「小僧は殺すな! だが生きてさえいれば手足を失っても構わん!」


「くっ、若に近づくな下郎!」


 どうやら大勢で襲っている方はあの男の子を狙っているみたいね。

 身代金狙いの誘拐犯か、人質に使うとかかしら?


「うーん、明らかに厄介事ね」


 間違いなく後ろに厄介な連中がいるわ。


「そっすね。隠れてやり過ごしますか?」


「そうねぇ」


 と言っても、人が誘拐されそうになってるこの状況で見捨てるのも微妙に後味が悪いのよね。

 でも巻き込まれたくないのも事実。

 

 こんな時ジャイロなら考える間もなく助けに行くでしょうね。

 ノルブも助けに行こうとするかしら。

 メグリはお金にならないなら放置するでしょうね。

 私は……私はどうしよう?


「若っ! ここは私が時間を稼ぎます! 貴方はお逃げください!」


「馬鹿を申せ! お主を置いて逃げる事など出来るものか!」


 そんな事を思いながら悩んでいたら、二人組が逃げる逃げないの問答を始めた。


「甘えた事を仰るな! 貴方の両肩には、天峰皇国(アマツミネこうこく)の民の命が掛かっておるのですぞ!」


「くっ!」


 護衛の男の人に叱責され、男の子が言葉を詰まらせる。


「さぁ、お行きなさいませ!」


「……済まぬっ!」


 決心した男の子が、私達の隠れている方向に向かって駆けだす。


「こっちに来ますね」


「来るわねぇ」


 このまま彼が私達の前を通り過ぎたら、襲撃者も追いかけるだろうから、反対方向は安全に行くことが出来そうね。

 その場合この二人は見捨てる事になっちゃうけど……


「逃さん! 足を狙え!」


 と、そこで襲撃者が男の子を狙って弓を放った。


「いかん! 若っ!」


「くっ!」


 男の子が横に飛んで矢を躱す……って。


「キャアァァァッ!?」


「うわぁぁっ!?」


 なんという偶然。矢を躱した男の子は、私達の隠れている茂みに飛び込んできたの。

 当然しゃがみ込んで隠れていた私達が避けられるはずもなく、男の子に押し倒されてしまう。


「もう、急に突っ込んでこないでよ!」


「ス、スマン!?」


「そ、それどころじゃないですよ姐さん!」


「ええ? 何が……よ?」


 見れば護衛の人と襲撃者達が何事かと私達を見ていた。


「……あっ」


 しまったバレちゃったぁぁぁぁぁぁっ!

 こ、この状況かなり不味いわ!


「も、目撃者ごと消せっ!」


 状況を理解した襲撃者達が、再びこちらに向かって矢を構える。


「やっばー」


 あー、完全に巻き込まれちゃったわ。

 不味いわねぇ。


「い、いかん! 逃げろお主等!」


 私に覆いかぶさったままで、男の子が逃げろと言う。


「へぇ、この状況で私達を心配するんだ」


 自分の身が危ないにも関わらず他人の心配をするなんて、とんだお人好しだわ。

 まるで誰かさん達みたい。

 でも……同じ巻き込まれるなら、そういうお人好しの方がまだマシよね。


「あの、何でそんなに嬉しそうなんですか姐さん?」


「うっさい」


 海賊のツッコミを無視して、私は杖を構える。


「良いわ。どうせ関わっちゃったんだし。これも何かの縁よね」


「ちょっ、姐さん、早く逃げ……」


 海賊が慌てた様子でオロオロしているけど、この状況で逃げる事なんて無理よ。


「やれっ!」


 私達に向かって一斉に矢が放たれる。

 けれど私は慌てず男の子に告げた。


「ちょっとだけ、助けてあげるわ」


 既に構築していた魔力を、ただ解き放つだけ。


「フレイムバースト!」


 私達の前に現れた炎の幕が放たれた矢を迎撃し、そのまま矢を放ってきた襲撃者達に襲い掛かる。


「「「ぐわぁぁぁぁっ!!」」」


 炎に包まれた襲撃者達が、悲鳴をあげて転げまわる。


「な、何という強力な魔法だ!?」


 私に覆いかぶさったままの男の子が、目を丸くして驚きの声をあげる。

 ふふっ、ちょっと良い気分ね。


「くっ! て、撤退だ! 撤退!」


 生き残った襲撃者達が、慌てた様子で逃げだす。


「お、追手が逃げた……」


「それはいいんだけど、そろそろどいてくれないかしら」


 呆然と逃げた追手を見つめていた男の子に、私は早くどいてくれと苦情を言う。


「え? あっ、済まぬ!」


 ようやく状況を思い出した男の子が、慌てて立ち上がり後ろに下がる。

 彼の顔が赤くなっているのは、ちょっとくらい自惚れて良いのかしらね?


「ふぅっ」


「若っ! ご無事ですか!?」


 私が立ち上がるのと同時に、護衛の男の人が駆け寄ってくる。


「うむ、大事ない」


「改めて礼を言うぞ異国の娘よ。余の名は雪之……幸貴(ゆきたか)と呼んでくれ。こやつは晴臣(はるおみ)だ」


「若をお助けくださり誠にありがとうございます」


 幸貴と名乗った男の子が礼を言うと、晴臣と呼ばれた護衛の人が深々と頭を下げてくる。

 とはいえ、まだ警戒されているみたいね。


 うーん、それにしてもこの男の子、自分の名前を言い直したあたり、明らかに偽名臭いわね。

 でもここでそれを追及しても碌な事にならないから、放っておくのが良いわね。


「姐さん、もしかしてこの坊主偽名なゴフッ」


「余計な事言わない!」


 厄介事に首を突っ込もうとした海賊を肘撃ちで黙らせる。


「どうした?」


「何でもないわ。ちょっと疲れているみたい」


 私は服に付いた土を払うと、改めて幸貴に挨拶をした。


「よろしく、私はミナよ」


「あっしはゴブンでさぁ」


 あっ、この海賊そんな名前だったんだ。


「ミナにゴブンか。改めて礼を言うぞ。本来ならそなた等を屋敷に招いて歓迎の宴をしたいところだが、生憎と今の余ではそれも叶わぬ」


 明らかに追われていたものねぇ。

 

「別に気にしなくていいわ」


「そうもいかん。天峰の武人たる者、恩人への礼儀を失する訳にはいかぬ」


 ふーん、その様子だとどうやらこの国の騎士団関係者の子供かしら?

 

「そっちにもお礼が出来ない事情があるんでしょう? だったらお互いに見なかったことにして別れるのが良いと思うんだけど?」


 うん、助けはしたけどこれ以上深入りしないに越した事は無いわ。

 でないとレクスやジャイロみたいになっちゃうものね。


「それなのだがな、お主達に護衛を頼みたい」


「護衛?」


 いきなり何言ってんのコイツ?

 お金ないんでしょ?


「若っ、何を!?」


 案の定晴臣さんが幸貴を制止する。


「晴臣、この者達の実力はそなたも見ていたであろう? 我々だけでは再び追手に襲われたら助からぬ。ならば叔父上の治める領地まで護衛をしてもらった方が良いとは思わぬか?」


「それは……」


 こらこら、そこで言いくるめられるんじゃないわよ。


「いやいや、こっちの都合を無視しないでほしいんだけど。私達は仲間と合流する為に港町まで行かなきゃいけないから、貴方達の護衛をしている暇なんてないのよ」


 こちらの事情を説明して断ると、幸貴は何故かニヤリと笑みを浮かべる。


「ほう、それは好都合。余がお主達に護衛を頼もうと思っていたのも、オミツの港町までなのだ」


「え? そうなの?」


 まさか目的地が同じだったとは、その偶然にちょっと驚きだわ。


「うむ、そこまでたどり着けば、町を治める叔父上に助けを求める事が出来る。そなた達への謝礼も出来ると言うものだ」


「叔父さん頼りな訳ね」


 さてどうしたものか。

 明らかに厄介事だし、関わらずにさっさと離れたいところなんだけど、目的地が同じってのが厄介よね。


 それにこれから向かう町の領主が叔父って事は、ここで断ると貴族の頼みを断ったって事にもなっちゃうのよねぇ。

 現地の貴族の不興を買いたくは無いけど、貴族がらみだとすると敵も貴族の可能性が出てくるのよねぇ。

 どっちを選んでも厄介だわ。


「姐さん姐さん」


「何よ」


 私が悩んでいると、ゴブンが小声で声をかけてきた。


「せっかくだし受けちまいましょうぜ。どうせ行先は同じなんですし、いつ仲間達に会えるともしれません。だったら長期滞在する事も考慮して、この坊ちゃんに恩を売った方が得ってもんですぜ」


 うーん、一見謝礼に目が眩んでいるように見えるけど、いや実際に眩んでいるんだけど、間違った事は言ってないわね。

 明らかに厄介事に巻き込まれているけど、味方になる貴族が居るのならそれがこちらの利になるのは間違いないか。


「……分かったわ。その港町まで護衛すればいいのね」


「おお、受けてくれるか!」


 異国の、それも皆が居ないこの状況で、これ以上厄介事を背負いたくはないんだけどね。

 それでも、お金は必要だし、土地勘のある人間を味方につけた方が良いのは事実か。


「これからよろしくね幸貴」


 私はあえて幸貴を呼び捨てにしながら手を差し出す。

 相手は貴族みたいだけど、この状況だと下手に敬語で話しかけたら追手にここに獲物が居ますよって言ってるようなものだものね。


「っ!? う、うむ! よろしく頼むぞミナよ!」


 そしたら何が嬉しいのか、幸貴は妙にウキウキした様子で私の手を取る。


「さぁ! オミツの港町へ行くぞ!」


「はいはい」


 こうして、東国……天峰皇国へとたどり着いた私は、仲間とはぐれた代わりに妙な貴族達と関わる事になったのだった。

ゴブン(:3)∠)_「名前が付きましたー! イエーイ!」

幸貴(:3)∠)_「新キャラであるぞ」

ミナ(:3)∠)_「変なの拾っちゃったなぁ」


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― 新着の感想 ―
[一言] ミナってどうせやりたいようにやるのに、誰にぐだぐだ言い訳並べてるんだろ。 ゴブン……コブンと空目したの自分だけじゃなくてよかった(笑)
[一言] 若様よ、惚れたのか、、、
[一言] 雪之…。って言うと雪之丞ですかね。
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