179話 元海賊船、大海原を往く!
作者(:3)∠)_「いえーい! 本日は二度転生五巻の発売日ですよー!」
ヘルニー(:3)∠)_「皆買ってねー!」
ラシエル(┐「ε:)_「そして新連載の世界樹も好評更新中だよー! よろしくねー!」
ヘイフィーΣ(・Д・)「何か来た!?」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
商船に偽装した海賊達を返り討ちにした僕達は、そのまま東国へ向かう事にした。
「うぉー、マジで何にも無くなっちまったぞ」
船が外洋に出た事で、周囲に何も見えなくなった事にジャイロ君が驚きの声をあげる。
「海辺の国にメガロホエールを調査しに行った時でも陸地は見えてたけど、今は本当に何にも見えないわ。海って本当に広いのね」
リリエラさん達は海の広さにただただ興奮していた。
「ここで海に落ちたら、陸に戻る事が出来ずにそのまま溺れ死ぬかも」
「こ、怖い事言わないでくださいよ!」
突然そんなことを言い出したメグリさんに、ノルブさんが悲鳴を上げる。
「メグリ、止めなさいって」
「これだけ陸から離れていたら、飛行魔法でも魔力が保たない」
「な、なら船から落ちなけりゃいいだろ?」
「でも嵐に巻き込まれる危険もある。嵐に巻き込まれて船から投げ出された人間はまず助からないらしい」
「マ、マジか……」
メグリさんの語り口に、ジャイロ君がゴクリと唾を飲み込む。
「ふっ、だから私はレクスからもらった水着を服の下に着ている! これなら水中に落ちても呼吸が出来るから!」
そういうとメグリさんは上着を脱ぎ、中に着ていた水着を見せびらかした。
「おまっ! 天才かよ!」
「いやいや、さすがに心配しすぎじゃない? っていうか、はしたないから仕舞いなさい!」
うん、ミナさんの言う通り、周囲の海賊達がギョッとした顔で水着姿のメグリさんを凝視しているからね。
「備えあれば憂いなし。盗賊はもしもの時の事を考えて二手三手先の事も考えておくもの」
「まったく、それを自慢する為に私達を脅したのね」
「冗談キツいですよ」
これまでの脅しが、水着を着こんでいた事の仕込みだと気づいて、皆が呆れ声をあげる。
「まったくだぜ。俺がそんな簡単に海に落ちるわけねぇだろ」
「そうそう、そもそもわざわざ陸に戻ろうとしないで、船の方に戻れば魔力切れの心配もないでしょうに」
「と言いつつ、皆そそくさと着替えに戻っていくのであった」
あっ、ホントだ。
◆
港を出て数日が経過した。
「うーん、暇だ」
そうなんだよね。外洋に出て暫くは釣りをしたり襲ってきた魔物を狩って料理をしていたんだけど、基本的に海の上には何もないからなぁ。
どうしても娯楽が無くて暇になる。
なるほど、だからうわさに聞く豪華客船というのは、無駄に大きくて娯楽が充実していたんだね。僕は乗ったことないけど。
「兄貴ー、暇だぜー」
最初の内は海の魔物相手の修行に最適と言っていたジャイロ君だけど、魔物もいつも襲ってくるわけじゃないし、弱い魔物なら海賊達だけで十分防衛出来るから、今じゃすっかり暇を持て余していた。
「東国まであと何日だっけ?」
「確か、一か月かかるそうです」
「「「「「一か月~!?」」」」」
こんな退屈があと一か月も続くと聞いて、僕達は悲鳴を上げる。
「うう、いっそもう魔法で空を飛んで行く?」
「いやいや、流石に一か月分の距離を飛ぶのは無理でしょ」
あまりの退屈に、普段冷静なリリエラさんまで無茶な事を言い出した。
「う、うう……そんなに長い間お金を稼がない生活なんて耐えられない……」
「ああっ!? 長期間の無給生活を想像したメグリさんに禁断症状が!」
え? なにその禁断症状。
「というか、何でメグリさんはそんなにお金にこだわるんですか? アイドラ様の影武者だったんだから、お金の心配は無かったんじゃないですか?」
前々からメグリさんのお金への執着は疑問だったんだよね。
「私、小さいころからお金は自分で稼げってお母様から言われてたから……」
「え? それは普通じゃ……?」
「食費とか」
「普通じゃなかった!?」
食費も自分で!?
「ある程度自分で出来る様に育てられたら、突然そんな事を言われて田舎のお爺様の所に放り出された。だから冒険者になって自分でお金を稼ぐ事が出来るようになって本当に助かった……ちなみに影武者としての必要経費だけは国から出てた」
な、なるほど。メグリさんのお金への執着は、お母さんのスパルタ教育が原因だったんだね。
「お金を払うだけで食べ物が出てきて、ちゃんとした家具のある生活最高」
これはこれで駄目になってるような気が……
「あー暇だぁ~」
ジャイロ君のぼやきに、僕達が暇を持て余していた事を思い出す。
「うーん、いっそ船を改造させてもらえれば楽なんだけどねぇ」
さすがにそれは……
「「「「「それだぁーーっ!!」」」」」
「ええっ!?」
「それよそれ! 船の改造よ!」
「そうだよな! クッソ遅い船も兄貴が改造すればいいんだよ!」
いやジャイロ君、そのセリフは後ろの海賊達が凄い目で睨んでいて危ないよ。
「そうよね、確かにそれは盲点だったわ。いっそ改造して貰えば、もっと早く着くじゃない!」
「うん、レクスに改造してもらおう」
「成る程、確かにいいアイデアです」
い、いや、あくまで例えの一つとして言ったんだけど、流石に人様の船を勝手に改造するのはちょっと……
「よし、俺が聞いてくるぜ!」
「おーい船長のおっさーん!」
「ひぃ!? な、何ですかい坊ちゃん!?」
ジャイロ君に駆け寄られて、船長が悲鳴を上げる。
そんな悲鳴を上げるような事はした覚えがないんだけどなぁ。
「なーなー、この船改造していいか?」
「は? 改造?」
突然改造と言われ、船長は首を傾げてこっちを見てくる。
あーうん、いきなりそんな事言われても困惑しちゃうよね。
「えーっと、船の移動速度を上げる為に魔道具を設置させてもらいたいなと思いまして」
「魔道具!? 旦那はそんなもんまで持ってらっしゃるんですか!?」
なんか旦那呼ばわりされてる。
「ええ、それで設置のために少し船を改造したいなと思って」
「魔道具、速度が上がる……仕事が捗る……っ!? ぜひお願いします!」
船長が目をキラキラさせながら船の改造を許可してくれた。
うんうん、やっぱり海の男なら自分の船の性能アップはロマンだもんね。
「はっはっはーっ! 魔道具で船の性能が上がるぞー! ヒャッホー!」
「ねぇ、レクスさん」
船長がスキップしながら作業に戻っていくと、リリエラさんが難しい顔をして話しかけてきた。
「どうしたんですかリリエラさん?」
「いえね、賛成しておいてなんだけど、あの人達って海賊なのよ?」
「ええ、そうですね」
「そんな人達の船を改造なんてしたら、その船でもっと酷い被害が出ると思うんだけど、大丈夫なの?」
ああ、リリエラさんはそれが心配なんだね。
「大丈夫ですよ。東国に付いたらちゃんと騎士団に突き出しますから」
だってあの人達は海賊だからね。ちゃんとしかるべき所に預けないと。
「あっ、うん。ちゃんと考えてるなら良いの。ごめんなさい変な事聞いて。そうよね、普通に考えればそうなるわよね」
リリエラさんは心配症だなぁ。
「さて、それじゃあ船を改造するとしようかな!」
まずはどんな改造をするかだ。
「まずは目的である船の速度アップだね。そして速度に耐える為と、うっかり岩礁にぶつかった時の為に船体の強度アップ。速度が上がる事で揺れも増すとおもうから、衝撃緩和機構の内蔵。あと甲板上の乗員が船から落ちない様に保護結界も必要だね」
うん、方向性が見えてきたぞ。
「速度の上昇は風魔法と水魔法を併用した追い風と水圧による二重推進にして、操舵は舵じゃなくて魔法で周囲の水を動かす水舵式にしよう」
改造案が固まると、僕は魔法の袋から材料を取り出しさっそく船の改造に取り掛かる。
魔法で空中に材料と部品を固定する事で揺れを無視して施工作業。
完成した各種魔道具を船に設置、更に飛行魔法で飛びながら船の要所に強化部材を張り付けする。
そして全ての魔道具の設置が完了した所で、船体全体に強化と状態保護の魔法をかけて……
「よし完成!」
「「「「「速っ!?」」」」」
「いやー、速いと言っても簡単な改造だから」
「いやいや、そういう問題じゃないから。まだ改造を始めて半日も経ってないわよ!?」
「え? マジ? これで完成したのか?」
船の改造が終わったと告げたら、何故か皆が目を丸くしていた。
「一見すると船にいくつかの魔道具と金属の板を張り付けただけにしか見えないんですが……」
「必要な機能は全部魔法で補うからね。船体そのものを大改造するような改造じゃないですよ。これ以上は専用のドックでないと無理かな」
「という事は、これ以上の改造も出来るのね……」
「それにしても速すぎ……」
実はこれ、前々世で僕が作った既存船の簡易改造用魔道具なんだよね。
古くてもう一から作った方が良いボロ船や、緊急時に改造が必要な時の為に開発した技術なんだ。
その分専用に設計された最新鋭船に比べると全然性能が低いのが欠点だけどね。
「じゃあ起動させるよ!」
魔道具を起動させると、まず最初に衝撃緩和機能によって船の揺れがピタリと収まる。
「な、なんだ!? 揺れが無くなったぞ!?」
船の揺れが収まって、海賊達が動揺する。
次いで船外落下防止の風結界が発動し、船の周囲の風が止まる。
「こ、今度は風が止まった!? な、何が起きてるんだ!?」
「ここまでは設計通りだね、それじゃあ出発進行!」
移動の為の魔道具を起動させると、船が動き出す。
その速度は先ほどまでとは比べ物にならない速度で、その速さで上空の雲が物凄い速さで動いている様な錯覚を受けた。
「く、雲が信じられない速さで動いているぞ!? どういう事だ!?」
うんうん、動作は順調だね。
と、その時、ドバァンッ!!と凄い音が鳴る。
「何だ今の音!?」
音に驚いた皆が船べりに寄っていくと、何かを発見する。
「コ、コイツは船の壊し屋パイルシャークじゃねぇか!?」
「おいおい、どうなってるんだ!? 凄まじい突進力と角の硬さで軍艦だろうと容赦なく大穴を開けるパイルシャークが潰れたバナナみたいにグシャグシャになってんぞ!?」
どうやら船の船体強化もちゃんと動作してるみたいだね。
テストの手間が省けたよ。
「「「「い、一体何が起きているんだぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
海賊達が綺麗にハモりながら悲鳴をあげた。
「船の性能テストは問題なく終わりましたし、それじゃあそろそろ全速で東国に向かいましょうか」
「ね、ねぇレクスさん。それは良いんだけど、あの人達に一言説明してあげたほうがいいんじゃないの?」
と、リリエラさんが海賊達に説明をしないで良いのかと聞いてくる。
「それなら船長がしたんじゃないですか?」
「でもアレ、普通に何が起きてるかわかってないみたいだけど」
「あー、海の男はノリがいい上にイタズラ好きですからね。こっちの性能テストに合わせてふざけてるんですよ」
前世でも船乗り達は長旅で退屈しない様にと、暇潰しに長けていた。
だから船の性能テストも、彼らにかかればちょっとしたショーみたいなものなんだろう。
と思ったら……
「こ、これは一体何事ですかぁぁぁぁぁぁっ!?」
腰を抜かした船長が這いずりながら事情を聞きにやって来た。
「何って、船の改造が終わったので試運転をしていたんですよ」
船長も大げさなリアクションを取るなぁ。
いくら何でも船の速度を上げた程度で腰を抜かしたりしないでしょ。
「し、試運転!? これが!? というか改造を始めたのは朝からですよね? もう終わったんですか?」
「ええ、簡単な改造でしたから」
「こ、これが簡単……?」
僕の説明を聞いた船長は、何故か呆けた顔になって呆然と立ちすくむ。
「こ、これが簡単?……これが……?」
ちょっと大げさ過ぎる気がしないでもないけど、まぁ楽しんでくれてるならそれでいいや。
「じゃあ東国に向けて、いざ出発!」
僕は魔道具の出力を全開にして、東国への歩みを再開するのだった。
「や、やべーのに関わっちまったぁ……」
ん? それはどういう意味船長?
パイルシャーク 三('ω')三「しめしめ、獲物がやって来グエェーッ!?」
海賊船(:3)∠)_「なんか体が凄い事になった」
モフモフ(┐「ε:)_「なおパイルシャークは角が一番美味である。ガリガリ」
齧られた海賊Σ(・Д・)「ひぃっ!? あのモフモフ、鉄をも貫く角を齧ってる!?」
船長(´д`」∠):_「ちなみに最後まで読むと今回のサブタイトルの意味がわかったと思うんだorz」
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