第176話 事の顛末
作者(:3」∠)_「次でエピローグだと言ったな。暑くて仕事にならんから嘘になった」
ニッキー(:3」∠)_「えーい罰ゲーム罰ゲーム」
作者(´д`」∠):_「止めろ!ピンポイントに尾てい骨を攻撃するな。っていうか誰!?」
ヘルニー(:3」∠)_「変なところにニキビが出来たわねぇ」
作者(´д`」∠):_「念のため抗生物質入りのお薬をヌリヌリ(出費)」
「古代魔法文明時代のアンデッドか……」
「はい。そのアンデッドが原因でオークをベースにしたキメラが量産されていました」
僕達が報告すると、ギルド長は頭を抱える。
「確かに、町の外で今まさに解体されているオーク共を見れば、普通の魔物じゃないのは理解できるが、まさか『オークに並々ならぬこだわりを持つアンデッド』が原因だったとはなぁ……」
「「「「「……」」」」」
僕達の会話を聞いて、リリエラさん達が微妙な表情で無言を貫く。
ギルドに戻ってきた僕達は、いつものようにギルドの奥の応接室に案内されると、ギルド長に事の顛末を説明していた。
「死を経験した事で正気を失ったアンデッドが正常な判断力を失うのはよくある事です。かつて優れたキメラ研究者だった人物が、オークこそキメラの素材として最良の魔物と考えるようになってしまったように」
「そして暴走するあまり研究所ごと自滅か。なんとも間抜けなオチだな」
「壊滅した研究所は東の山脈の麓にありますけど、相手が自滅した影響で建物はまるごと吹き飛んでしまいましたしね」
「いつぞやの魔人の件と同じだな。だがまぁ、その壊滅した研究所の跡ってやつが見つかれば、そこで何かが起きていたと分かるだろう。無くなっちまった証拠は町の外のオーク共で代用できるだろうしな。あとはこれでオーク共が打ち止めになれば、事件は完全に解決か。ああ、悪いがそれが確認できるまで依頼達成の許可は出せん」
「えー、まだ報酬出ねぇのかよ。こっちはオーク共と戦いまくって疲れてんだぜ? これまで倒したオークがあるからいいじゃねぇか」
「言ってくれるな。こっちもお仕事なんだよ。せめて、第三者が動いていた物証があれば上に話を付けて報酬の早期支払いを交渉出来たんだがな」
ジャイロ君が愚痴ると、ギルド長はアンデッドが実在していた証拠があればとため息を吐く。
「証拠ですか……これはどうでしょう?」
そういって僕はテーブルに二つの品を置く。
「帽子と杖? こりゃ魔道具か」
「はい、アンデッドが使っていたものです。かろうじてこの二つだけ回収できました」
「ほう、どんな効果があるのか確認できたか?」
魔道具だと分かると、ギルド長と、横で調書を取っていたエルマさんの目が輝く。
「はい、帽子は身に着けていると常時防御魔法を発動させる効果を、杖は魔法を発動する時に魔力消費を抑えてくれるものみたいです」
「常時防御魔法を発動と魔力消費抑制か。そりゃまた貴重な品が出てきたもんだな。悪いがこれを借りても良いか? コイツがあれば報告に信憑性が出る」
まぁそんな大したモノじゃないけど、実験が失敗した時の為の緊急用の防具と、実験に使う術式の消費魔力を抑える装備なら、研究者だったアンデッドの装備として信憑性があるだろう。
「ええ、構いませんよ」
「よし、これで上の説得が捗るな!」
「ええ、希少な魔道具が証拠として提出されれば、上も認めざるを得ませんからね。それにしても、貴重な魔道具をよく貸し出してくれましたね。万が一強引に取り上げられたら大損なのに」
「いえ、そんな大したものでもありませんから」
「「……」」
僕がそう言うと、何故かギルド長とエルマさんは顔を見合わせてため息を吐いた。
「まぁSランクだしなぁ」
「そうですね。Sランクですから、貴重な品を多数所持していてもおかしくはないですけど……」
良く分からないけど、納得してくれたって事なのかな?
ともあれ、無事報告を終えた僕達は、ギルドを後にした。
「ああ今日は疲れたねぇ。早く宿に帰って休みたいよ」
「俺は飯食いたい。朝からずーっと豚の焼ける匂い嗅いでたから腹が減ってしかたねぇよ」
「ジャイロ君、豚じゃなくてオークですよ」
「似たようなもんだろ」
「いや豚と魔物は違うでしょう」
「けどホントに良かったの?」
とそこでリリエラさんが真剣な顔で僕に声をかけてくる。
「何がですか?」
「あのアンデッドの事よ。退治したことにしちゃって良かったの?」
リリエラさんが聞きたいのはガンエイさんの事みたいだ。
「ええ、ガンエイさんは退治されたことにした方が良いと思ったんです」
そう、僕はギルド長にガンエイさんを討伐したと伝えた。
だけどそれはちゃんと意味があってのことだ。
「報告する前にも言いましたけど、ガンエイさんの技術は国の貴族に知られない方が良いですから」
ガンエイは死後もアンデッドになってまで白き災厄を滅ぼす為のキメラ研究を続けていた。
古代魔法文明がいつ崩壊したのか正確なところは分からないけれど、それでも数百、長ければ数千年もの間ガンエイさんはキメラの研究をしてきた事になる。
劣化する機材の問題や入手できる素材の問題で最盛期に比べれば研究の進捗具合は良くなかったみたいだけど、それでも失われた古代のキメラ研究は権力者には魅力的に映るだろう。
もし現代の権力者がガンエイさんを内に取り込んだなら、彼に最新の研究設備と予算を与え、軍備力増加を狙って戦闘用キメラの研究を再開させる可能性が高い。
前世や前々世でもそういった欲深い権力者は多かったんだ。今の時代にも間違いなくそういった連中は居るだろう。
「でも僕はもうガンエイさんに破壊の為のキメラ研究はしてほしくないんですよ。どうせやるなら平和的なキメラ研究をしてほしいんです」
「平和的なキメラねぇ。本当にそんなことにキメラが使えるのかしら?」
「これまでずっとキメラの研究をしてきたガンエイさんならできますよ」
現在ガンエイさんは僕の故郷に向かってもらった。
あそこなら人もあまりこないから、権力者に狙われることもないだろう。
それに村の皆なら、ガンエイさんを快く迎えいれてくれるだろうしね。
一応念のため僕からの紹介状も渡してあるから、間違って攻撃される事もないと思う。
「ガンエイさんも、これからは人の役に立つ研究を楽しんでほしいよ。やっぱり争いの為の研究なんて悲しいからね」
前々世の僕も、賢者と呼ばれながら大半の研究は戦い目的のものばかりだったからなあ。
ガンエイさんにはそんなしがらみからは解放されて欲しいんだ。
「ただ、一つだけ心配な事もあるんだよね」
「何? やっぱりあの人を自由にした事?」
「いえ、ギルドに提出用に作った証拠の魔道具なんですけど、やっぱり性能が低かったかなぁって。信憑性を持たせるために、今からでももうちょっとマシな魔道具を代わりに出した方が良いかなと」
「「「「「絶対にやめて!」」」」」
やっぱりもっと証拠にふさわしい品を出そうかと思ったんだけど、何故か皆に止められちゃたよ。
ガンエイ(:3」∠)_「こんにちわー」
門番Σ(´д`)「なんか変なミイラが来たー!?」
子供達(:3」∠)_「わーミイラだー。燃やしちゃえー(ボゥッ)」
ガンエイ(´д`」∠):_「やめろ小僧様達!ギャー!」




