第173話 調査再開
作者(:3」∠)_「今週も文字数多くなったので、商人勇者コミック二巻が発売するから分割掲載します!」
ヘルニー(:3」∠)_「本音が」
ヘイフィー(:3」∠)_「漏れてる」
作者(:3」∠)_「後半は6/12日(商人勇者コミック2巻の発売日)です!」
ヘルニー(:3」∠)_「隠す気すらない!?」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「焼き豚にしてやるぜ! メルトソード!」
剣に炎を纏ったジャイロ君が、オーク達を次々に切り裂いてゆく。
「あんまり木に近い場所で戦うんじゃないわよ! ウインドスラッシャー!」
ミナさんが味方の冒険者が居ない方向に連射型の風魔法を放つと、オーク達の上半身と下半身が綺麗に分断されていく。
全ての魔法が敵に命中したあたり、ミナさんの魔法精度と戦場の把握能力は高まっているね。
「最小限に……切る!」
メグリさんは風の属性防御で更に速度を上げた飛行魔法で戦場を縦横無尽に移動しつつ、周囲の木々や岩を足場にして三次元的な跳躍を伴った奇襲攻撃でオーク達の急所を的確に攻撃している。
「てぇい!」
「ブモォォッ!?」
そしてノルブさんは手堅く属性防御と防御魔法の組み合わせによる防御特化の戦術で対応していた。
オーク達の攻撃を最小限の動きで回避しつつ、避けきれない攻撃は受ける事で回避の練習にもなっているみたいだね。
「お、おい、あのガキ何であんなデカブツの攻撃を真正面から喰らって平気なんだ!?」
「あっちの嬢ちゃんはすげー魔法でオーク共を纏めて薙ぎ払ってるぞ!? なんで魔力が尽きないんだ!?」
「確かあいつ等ってちょっと前に冒険者になったばかりの新入り共だろ? なんであんなに強いんだよ!?」
ジャイロ君達の活躍に、他の冒険者さん達や騎士達が驚きの声をあげている。
うんうん、身内が褒められると嬉しいもんだよね。
「ええい! 冒険者共に後れを取るな! お前達もオーク共を殲滅せんか!」
「「「はっ、はい!!」」」
上司に叱られ、騎士達が慌ててオーク達に向かって行く。
けど慌てて飛び出した為に、相手がどんな特性を持ったオークかを確認していなかったみたいだ。
彼等が飛び出したのは、カマキリのような長い腕を持つオークで、その手に握った幅広の刃の戦斧が騎士達に襲い掛かる。
「ひぇっ!?」
予想外に長い腕の攻撃を何とか避けたものの、そのせいでバランスを崩して尻もちをついてしまう騎士達。
そこにもう片方の手に持った斧が襲い掛かる。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
避けられないと思わず目をつぶる騎士。
けれどその時、オークの手にした斧の刃の部分が吹き飛んだ。
「そんな物騒なものを振り回したら、危ないわよ」
そこに現れたのはリリエラさん。
オークの斧が吹き飛んだように見えたのは、リリエラさんの槍に持ち手を切られたのが原因だ。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「なら良いわっと!」
騎士の無事を確認すると、リリエラさんは凍らせた地面を滑って加速し、足元が不安定になって困惑するオーク達を切り裂いていった。
「女神様……?」
そして、あとに残された騎士達が呆然とした顔でリリエラさんを見つめていた。
さて、そろそろ僕も戦いに集中しないとね。
◆
「ふー、やっと終わった」
探索中に遭遇したオークとの戦いを終えて、皆が大きく息を吐く。
「今日は朝からオーク達と戦い続きだからね」
冒険者ギルドと騎士団の合同でこのオーク騒動の再調査を始めた僕達だったけれど、状況は予想以上に面倒な事になっていた。
というのも、オーク達がやって来た方向に向かうにつれて、どんどんオーク達との遭遇する頻度が増えてきたんだ。
「にしてもこいつ等、ちょっとずつ強くなってきてねぇか?」
「あっ、僕もそんな気がしていました。さっきから負傷者の数が増えてきているんですよね」
ジャイロ君のぼやきに、ノルブさんが同意の声を上げる。
「それに、どんどんオーク達の形がおかしくなってきてるわよね」
「うん、もう絶対オークじゃないアレ」
ミナさん達が言うように、遭遇するオーク達は尋常じゃない姿をしてるものが増えていた。
これまで遭遇した相手は、オークの延長みたいな感じの姿だったんだけど、今ではオークの要素が添え物のオーク? になってきたからだ。
「9つのオークの頭を持ったヒドラみたいな魔物とか、ありえないわ」
「こっちのは虫みたいに肌に殻がついてる」
「キュキューウ」
モフモフはそれぞれのオーク達の部位を齧っては何やら考え込んでいる。
「キュッキュ」
そしてそのうちの一体に戻って本格的に食べ始めた。
もしかして食べ比べしてるのかな?
「ねぇレクスさん、これってやっぱり……」
明らかにおかしなオーク達の姿に、リリエラさんが今まで抱いていた疑問を口にする。
「ええ、間違いなくキメラですね」
そう、このオーク達は間違いなくキメラだった。
「自然界にこんな不自然な生き物は存在……しないとは言いませんが、これだけ執拗にオークの要素を持った生き物は異常です」
「居る事は居るのね。変な生き物……」
世の中って広いんでだよねぇ……
前世でもこれが自然の生き物!? って驚くような魔物と遭遇した事は結構あったんだ。
「って事は、コイツ等誰かが作ったのか!?」
「けど何でオークにこだわるんでしょうか? オークマニア……とか?」
うーん、それは僕にも分からないんだよなぁ。本当に何でオークなんだろう?
オークって数が増えるのが早いだけで、種族的にはわざわざキメラの素体にするメリットはないと思うんだけどなぁ。
「なんにせよ、原因を特定してみない事には分からないね」
「原因ねえ……」
原因と聞いて、リリエラさんが難しい顔になる。
「キメラと言えば、あのアンデッドを思い出すんだけど……」
「ガンエイさんの事ですか?」
確かに、以前出会った古代魔法文明時代のアンデッドであるガンエイさんはキメラ研究を専門にしていたっけ。
洞窟の最下層で別れて以来あっていないけど、今頃何をしているのかなぁ。
「もしかして今回のキメラの件もあのアンデッドが原因なんじゃ……」
「うーんどうなんでしょうね。あの人の目的は白き災厄を討伐出来るキメラを生み出す事でしたけど、それにしては今回のオークはその目的に沿うとは思えないんですけど……」
そう、ガンエイさんの目的は最強のキメラを生み出すことだ。決して弱いキメラを量産する事じゃなかったはず。
「どっちでもいいだろそんなの。原因を見つけりゃわかるって」
「アンタはもう少し考えなさいよ」
考えても無駄だと切り捨てるジャイロ君に対し、ミナさんはもっと思慮深くなれと注意をしている。
「でもジャイロ君の言う事も一理あるね。情報が無い現状で考えても結局推測どまりだ。元凶を探し出さないとね」
「そうそう! ちゃっちゃと行こうぜ兄貴!」
「という訳にはいかないみたいですよ」
ジャイロ君が先に進もうと声を上げると、ノルブさんから待ったがかかった。
「んだよノリわりぃな」
「負傷者が予想以上に多いみたいで、一旦撤退して改めて準備をしてから再度出直すべきか相談中みたいです」
「そんなに負傷者が多いんですか?」
「ええ、この奇妙なオーク達の種類が多すぎて、想定外の攻撃を受けて負傷する人達が多かったみたいです」
「なるほど。確かにこれだけ姿が違うと、もう別の生き物。実質複数の魔物の集団と戦っているようなものですもんね」
それに、強さにもかなりムラがあるみたいだ。
「僕達が遭遇したのは弱いオークばかりだったけど、他の冒険者さん達は運悪く厄介なヤツと遭遇してしまったんだね。いやもしこのオーク達を裏で操っている黒幕が居るとしたら、敵は腕利きの冒険者さんを狙って弱いオーク達の中に強いオークを潜ませて負傷させたとか?」
「「「「「いやそれなら兄貴/レクス/さんが狙われてたんじゃないかなぁ」」」」」
え? 僕が? 何で?
「とにかく、ギルドが相談中なら、今のうちに休憩しておいた方が良さそうだね」
「そうね。それにこれだけのオークを討伐したんだから、素材を回収して解体するためにも撤退は十分あり得るわ」
そっか、確かにその可能性もあるね。
討伐した素材は魔法の袋に収納すれば腐る心配もないけど、解体師さんの数には限度があるからなぁ。それに解体場の広さにも。
◆
「おーい各パーティのリーダーは集まってくれ!」
せっかくなので昼食をとりながら休憩していると、相談が終わったのか冒険者ギルドからリーダー役を任されたパーティの人が声をあげる。
「じゃあ行ってくるね」
「ええ、私達は食事の後始末をしておくわ」
「うん、よろしく」
「ジャイロ、迷惑をかけるんじゃないわよ」
「話聞きに行くだけだっての!」
ジャイロ君はドラゴンスレイヤーズのリーダーだから、僕と一緒に話を聞きに行く事にするみたいだ。
今までだったら面倒くさがってミナさんに任せていたけど、自分からリーダーの仕事をするようになったなんて、ジャイロ君も日々成長しているなぁ。
「面倒くせぇなぁ。でも行かねぇとアイツがうるせぇし……」
あっ、行かないとお説教されるからなんだね……
「皆も知っていると思うが、オーク達の数が増え、手ごわい敵が多くなってきた。負傷者の数も少なくない。それで騎士団と相談した結果、一旦ここで撤退する事にした」
「「「「おーー」」」」
リーダーさんの言葉に、安堵の声を上げる人もいれば、不満そうな声をあげる人達もいる。
「もちろん強制じゃない。冒険者は自由である事をモットーにしているからな。……とはいえ、それは自己責任が出来てこそだ。帰還する者達は騎士団と共にまとまって行動する為安全だが、この後も残って探索を続けたい者達は共に戦う仲間が居なくなって危険度が跳ね上がる。よく考えて選択してくれ。俺からは以上だ」
リーダーさんの話はそれだけで、皆すぐに今聞いた話をパーティの仲間と相談する為に戻っていく。
「僕達はどうしようか?」
僕はリリエラさんとジャイロ君達の意見を聞く。僕はまだ余裕があるけど、皆はもう疲れて帰りたいかもしれないからね。
「俺はもちろん行くぜ! 他の連中は帰るっぽいし、今日中に問題を解決して手柄を独占しようぜ!」
「私も一応賛成ね。こっちにはまだ余裕があるわ。でもまぁ、今日中にってのはさすがに焦り過ぎだから、慎重に動くべきだと思うけど」
「お、おう……」
「そうね、私の調査続行には賛成よ。どうせ私達なら魔法で空を飛んで帰るのもすぐだしね」
「むしろ団体行動を取らないで済む分、空を飛んで調査が楽になる」
「地上のオーク達と戦わないで済む分、僕達だけなら調査も安全になるでしょうね」
皆調査続行に賛成みたいだね。
「キュキュウー」
気がついたらモフモフは食べ比べをしていたオーク達を全部食べ終えていた。
っていうか、全部食べるなら食べ比べする意味あったの?
「キュッキュウー」
モフモフはお腹をなでると周囲を見回す。
「チッ、キュウー」
そして舌打ちすると僕の足を登って魔法の袋をカリカリと引っかき始めた。
もしかして収納したオークが欲しいのかな?
「どうやらモフモフもオークを食べ足りないみたいだね」
「キュウ!」
モフモフがその通りと言わんばかりに胸を張り、地面に落ちた。
「うん、それじゃあ調査を続行しようか!」
「「「「「おおーっ!!」」」」」
「キューッ!」
◆
「あっさり見つかったね」
「見つかっちゃったわねぇ」
「見つかったなぁ」
「見つかったわねぇ」
「簡単すぎ……」
「あはは……」
結論から言うと、探索を再開したらすぐに目的地は見つかった。
調査隊と別れて飛行魔法でどんどんオーク達が来る方向に進んでいったら、大きな山脈の麓へとたどり着いたんだ。
山の一角には、山と同化するように大きな建物が建っていた。
そしてその建物の中から、何十体ものオーク達が続々と姿を現していたんだ。
「こんなところにあんな建物が……」
「しかもすごく大きい、ギルドや騎士団はこの建物の情報を持ってなかったのかしら?」
あまりにも不自然な佇まいの建物に、何故今まで騒ぎにならなかったのかと首を傾げるミナさん達。
「隠蔽結界が張ってありましたから、騎士団や冒険者さん達がこの近くに来ても気づかなかった可能性が高いですね」
「え? そんなものがあったの!?」
「嘘!? 気づかなかったわよ!?」
結界が張ってあったと聞いて、リリエラさんとミナさんが驚きの声を上げる。
「ええ、邪魔だったんで解除しておきました」
「ああ、だから突然建物が現れたんですね」
「さっきはびっくりした」
「さすが兄貴! 俺、全然わかんなかったぜ!」
「自信満々に言うんじゃないわよ……まぁ私も分からなかったんだけど」
興奮気味に言うジャイロ君に、ミナさんがため息を吐く。
「ともあれ、あの建物が原因なのは間違いないみたいね」
「じゃあさっそくあの建物の調査を……ん?」
その時だった。
突然ゴゴゴゴゴッと地鳴りが鳴り始めたんだ。
「何? 地震?」
「いや違う! 見ろ建物が!」
ジャイロ君の言葉に皆が建物に注目すると、建物が音を立てて崩れてゆく。
「建物が……!?」
そして建物の中から、何か巨大なものが姿を現したんだ。
「ふははははははっ! 結界が解除されたからよもやと思ったが、やはりお主じゃったか小僧!」
土煙の中から聞こえてきたのは、聞き覚えのある声。
「やっぱり、貴方だったんですね……ガンエイさん!」
土煙の中から出てきたのは、リリエラさんが予想した通りガンエイさん、そして様々な生き物と融合しすぎてもはやオークと呼べなくなった、文字通り合成生物というべき生物の姿だった。
謎の建物(´д`」∠):_「せめて入ってほしかったです」
西門(:3」∠)_「所詮謎の建物は我等建物で最弱」
防壁(:3」∠)_「我等建築物の面汚しよ」
謎の建物(´д`」∠):_「ちょっとこの人達厳し過ぎません!?」
西門/防壁(:3」∠)_「まぁ人じゃないし」
謎の建物(´д`」∠):_「……そっすね」
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