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第17話 炎の大輪と変異種

いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 リリエラさんが森に置き去りになったと聞いた僕達は、彼女を救出する為に夜の森へと突入した。

 けれど森の中は暗く、周囲全てから魔物達が襲ってくる為に探索の進みは遅かった。


「夜ってこんなに魔物が襲ってくるんですか!?」


 夜の森が初めての僕はイヴァンさんに普段の森はどうなのか質問する。


「いや、ここまで魔物が襲ってくるのは初めてだ。おそらくブレードウルフの変異種が原因だろう」


 初めてというのは本当らしく、イヴァンさん達もこの状況には戸惑っているみたいだった。


「グァウ!」


 正面に飛び出してきたヘキサアームモンキーを切断しながら後続のイヴァンさん達の進路を確保する。

 本来は進行を邪魔する魔物だけと戦う予定だったんだけど、予想外に襲ってくる魔物が多くて結局ほとんどの魔物と戦う羽目になっていた。


 これならいっそ、フレイムインフェルノで魔物を焼きながら道を作った方が早いかもしれない。

 探査魔法では前方に人間の気配は感じないし、実行しちゃおうか。

 と、思った時イヴァンさんが僕に声をかけてきた。


「レクス、お前は先行しろ!」


「え? でも」


 夜の森は危険だから、単独行動は避けるべきなんじゃ?


「俺達が居ると足手まといだ! お前はそのまま進め。俺達は向こうへ行く。嬢ちゃんを見つけたら空に派手な魔法を打ち上げろ。こっちが見つけたらコイツに魔法をあげさせる」


 そうか、これだけ魔物が多いと安全を確保するより二手に分かれて探索範囲を広げた方が良いって判断したんだ。

 さすがイヴァンさん、臨機応変だね!


「分かりました! 先行します! フレイムインフェルノ!!」


 僕は探査魔法の範囲ギリギリまでフレイムインフェルノを放って道を作り出し、全速力で森の奥を目指した。


 ◆


「フレイムインフェルノ!!」


 魔法でひたすら道を作りながら前進していく。

 時折出来上がった道に魔物が飛び出してくるけど、それはノータイムで切り捨てる。


 倒した魔物の死体を回収する事無く前進を続ける。

 魔物退治をしに来た訳じゃないから、そんな事をしている時間も惜しい。


「リリエラさん、一体どこに」


 ォォ……ン。

 その時、僕の耳に小さくだけど、確かに狼の遠吠えが聞こえた。


「どっちだ!?」


 探査魔法で魔物の反応をチェックする。

 ブレードウルフは数が多い。

 だったらリリエラさんはまだ範囲外でも、ブレードウルフの群れの一部は探知できるかもしれない。


「……居た!!」


 数は少ないけど、明らかに連携して何かを追う動きを感じる。


「あっちだ!」


 再び魔法で道を作りながら進んでゆくと、探査魔法に大きな魔物の群れの気配を感じた。

 そして、その中心に人間の気配を発見する。


「居た! リリエラさんだ!」


 リリエラさんの位置を特定した僕は、身体強化魔法で矢の様に加速しながら森の中を駆け抜ける。

 場所さえ特定できれば、いちいち道を作りながら捜索する必要もない!

 立ちふさがる魔物すらすり抜けて僕は一目散にリリエラさんの下へと向かった。


 そして、視界に体から刃を生やした狼の姿が見えてきた。

 ブレードウルフだ!

 狼達は既にこちらに気付いていて、臨戦態勢を取っていた。


「お前達と戦っている暇なんて無いんだ!」


 こちらを切り裂こうと突撃してくるブレードウルフに対し、僕は深く体を沈めて跳躍した。

 体がブレードウルフどころか木々すらも跳び超えて前に進む。

 僕を切り裂こうとしたブレードウルフ達は跳躍して木々の陰に隠れた僕を見失って戸惑う。

 そんなブレードウルフ達を無視して、僕は地上に着地、再び加速を開始した。

 そして途中に待ち構えていた他のブレードウルフ達もすり抜けた僕は、ブレードウルフに襲われているリリエラさんの姿を発見した。


「フラワーバーン!!」


 リリエラさんを発見した僕は、イヴァンさん達に知らせる為、そしてブレードウルフ達の注意をこっちに惹きつける為に派手な魔法を空に放った。


 ドォォォォォンッ!!


 大きな音と共に、空中に巨大な炎の華が咲く。

 一輪だけじゃない。

 二輪、三輪、五輪、十輪と炎の華が咲き乱れる。


「ギャウン!?」


 突然空に咲いた大輪の炎の華に、ブレードウルフ達の足並みが乱れる。


「チェイスフリーザージャベリンズ!!」


 リリエラさんを巻き添えにしない様に、僕は氷魔法を放つ。

 手元から放たれた氷の槍の群れがブレードウルフ達を襲う。

 だが仮にも単体でBランク相当の魔物、ブレ-ドウルフ達は僕の魔法を難なく回避する。

 けどそれは油断だ。

 回避した筈の氷の槍が、ブレードウルフ達に向かって軌道を曲げる。


「グォウ!?」


 ブレードウルフ達が驚きに目を見開く。


「追尾式の魔法だよ!」


 そして回避しきれずに氷の槍の直撃を受け、次々とブレードウルフ達が氷の彫像に姿を変えていった。 

 よし、これでリリエラさんの周囲にいる敵は一掃したぞ!


 僕は周囲に残っていたブレードウルフ達を無視してリリエラさんの下にたどり着いた。


「助けに来ましたよリリエラさん!」


 ◆


 どうしてこうなってしまったのかしら?

 私は見た事もない魔物の群れにかこまれて、今まさに命の危機に晒されていた。


 二日前、その魔物達は結界の魔法で守られていた私達に襲いかかってきた。


「ぐぁぁぁっ!」


 最初に襲われたのは魔法使い。

 きっと動きが遅いと思われたからでしょうね。

 次に僧侶が狙われた事で、私は決断した。

 自分が囮になると。


「こっちよ!」


 私は松明と剣を振りまわして魔物達の注意をこちらに向ける。


「今の内に逃げて!」


 援護役である魔法使いだけでなく、回復魔法と結界を張る役目の僧侶まで襲われたら、たとえ逃げ切れても町まで保たない。


「必ず追いつくから! 先に行って!」


「わ、分かった! 直ぐに応援を呼んでくる!」


 仲間の言葉に微笑みで返すけど、それは叶わぬ希望だと言うのは、お互いに分かっていた。

 だって町までは丸一日かかる。

 急いで助けを呼びに行っても往復で二日かかるだろう。


 たぶん私は助からない。

 でもこれは仲間を強引に誘った私の責任。

 自分の目的に皆を巻き込んだから。


「でも、まだ死ねないのよ! ゼンソ草を見つけるまでは!」


 それからは必死だった。

 死に物狂いで逃げ回り、使えるものは全て使って逃げ続けた。

 幸いにも逃げる途中に川や小さな崖があったお陰で、時間稼ぎが出来たのは幸運だった。


 けど、それもここまでだ。

 周囲を囲まれて逃げ場も無い。

 逃げられないように足をやられた。

 ポーションも使い切ったから回復も出来ない。


「ごめん皆、ごめんお母さん……」


 せっかくここまで来たのに、あと少しだったのに。


「ウォォォォン!!」


 群れを従える黒い魔物が吼える。

 私に止めを刺す気ね。


「せめて一太刀と言いたいところなんだけど……」


 運が悪い事に、私の武器は既に壊れていた。

 魔物の体から生えた刃の猛攻に耐え切れず折れてしまったから。


 魔物達が包囲を小さくして近づいてくる。

 次にあの黒い魔物が吼えたら私は終わりだ。


「本物の冒険者になりたかったな……」


 黒い魔物が今まさに雄たけびを上げるべく息を吸う。


 その時だった。


 ドォォォォォォン!!


 突然空が真っ赤に輝いた。


 ドドドドドォォォォォォン!!


 続くように空が連続で轟音に包まれる。


「一体何が起こったの!?」


 これもあの黒い魔物の仕業!?

 けれどそれは違った。


「チェイスフリーザージャベリンズ!!」


 轟音が静まりかけた時、少年の声と共に氷の槍が魔物達に襲い掛かった。


「えっ!?」


 魔物達は一瞬で氷の塊となり、動きを止める。

 そして……。


「助けに来ましたよリリエラさん!」


 とても優しい声で、少年が私を助けに来た。


 ◆


 リリエラさんの下にやってきた僕は、まず彼女が無事かを確認する。


「うわっ酷い怪我じゃないですか!?」


 リリエラさんは全身ボロボロで、そこかしこから血を流していた。

 特に足の傷が酷く、これでは歩く事も出来ないだろう。


「失礼します!」


 僕はリリエラさんの手を握ると、すぐに回復魔法を唱える。


「エルダーヒール!」


 上級回復魔法のエルダーヒールなら、魔物の毒や病気も治す事が出来る。

 疲労と出血で乱れていたリリエラさんの呼吸が穏やかなものへと変わっていく。

 ふぅ、これで一安心。


「リリエラさん、すぐに終わらせますから、この中で待っていてください。ハイフィールドウォール!」


 上級結界魔法を発動してリリエラさんを保護する。

 この魔法ならたとえSランクの魔物の攻撃からでも問題なくリリエラさんを守りきれる筈だ。


「え!? 待って!? 何で!? 何で貴方が私を助けてくれるの!?」


 なんかリリエラさんが不思議な事を言ってるよ。

 助けが来た事で緊張の糸が切れちゃったのかな?


「冒険者同士は仲間みたいなものでしょ! 助けるのは当然ですよ!」


 ふふっ、イヴァンさんの真似しちゃった。


「さぁ、行くぞブレードウルフ!」


 魔物達に向き直った僕は、ブレードウルフ達を牽制しながら周囲を確認する。

 こいつ等は自分の意思で本来の縄張りを出てきた訳じゃない。

 こいつ等に命令を下した群れのボスこそ、倒すべき本当の敵だ。


「居た!」


 僕達を囲むブレードウルフ達の奥、最も離れた場所にそいつは居た。

 真っ黒な体に月明かりを受けて銀色の輝く全身の刃はブレードウルフ達よりも更に禍々しく大きい。

 何よりもその瞳は、血のように真っ赤に輝いていた。


「あれが変異種……」 


 ものすごい禍々しさだ。

 とても自然に生まれてきた生き物とは思えない。

 前世でも前々世でもあんな生き物はいなかった。

 魔物が弱かったり、簡単な事で凄いと言われたり、かと思えば変異種は驚くほど禍々しかったりと、一体この時代はどうなっているんだろう?


「ウォォォン!!」


 僕が動かないでいたら、変異種が雄たけびを上げる。


「っと、余計な事を考えてる場合じゃないか」


 ボスの命令に従い、ブレードウルフ達が動き始めた。

 奴等は僕とリリエラさんを同時に狙おうとしているみたいで、二手に分かれて行動を始める。


「リリエラさんを狙えば、彼女を守るために僕が防戦しか出来なくなると思ってるんだね」


 でも甘いよ。

 何のための結界魔法だと思っているんだい?


「グォォォン!!」


 変異種の号令を受けてブレードウルフ達が一斉に動いた。

 さすがはAランクの魔物達、その動きには先ほどまでの動揺はなく、連携に一切の乱れがない。

 3体が三方向から同時に僕へと飛び掛ってくる。

 即座に横に飛ぶと、それを見計らって別の三体がまたしても三方向から同時に飛び掛ってきた。

 しかも今度はこちらの着地位置を狙ったときの攻撃だ。


「でも、こっちには武器があるんだよ!」


 僕は着地と同時に右側のブレードウルフを剣で突き刺す。更に左手からフリーザージャベリンを放って凍らせ、背後から襲ってきた敵は気配を頼りに左足で蹴り飛ばす。


「グギャ!?」


 左右の二頭は即死、身体強化魔法で強化された蹴りを受けた一頭は悲鳴を上げて背後のキラープラントにめり込んで死んだ。


「キャーッ!」


 同時にリリエラさんの悲鳴が響く。

 でも大丈夫ですよ。

 視線を向ければ、リリエラさんは飛び掛ってきたブレードウルフの群れに驚いて身を丸めるも、いつまでたっても襲われない事に疑問を抱いて顔を上げる。


「うわっ!?」


 彼女が見たのは自身との間に立ち上った光の壁がブレードウルフをはじき返している光景だった。


「……なんなのこれ!?」


「それは上位結界魔法のハイフィールドウォールです。その中に居ればそいつ等程度なら簡単にはじき返します」


「え!? 何それ!? 上位結界魔法って? え? どういう事!?」


 どうやらまだブレードウルフに襲われたショックから立ち直ってないらしい。


「大丈夫です! 僕がこいつ等を追い払いますから! 安心してその中に居てください!」


「追い払うって君!? キャッ!!」


 こっちに近づこうとしたら、結界に飛びついてきたブレードウルフに面食らうリリエラさん。

 安心して。ほら、今も結界を抜く事が出来なくて、光の壁に爪を立てることしか出来ていないでしょ?


 リリエラさんもこの中に居れば安全という事が分かったらしく、少し落ち着きを取り戻す。

 その間に僕は襲ってくるブレードウルフの群れを減らしていく。


「その黒いのに気をつけて! 絶対普通じゃないから!」


「分かってますよ。大丈夫です!」


 良かった、嫌われたままかと思ったけど、こちらを心配してくれている。

 不幸な誤解があっただけで、やっぱり彼女は良い人だ。


「そろそろ数も減ってきたし、いい加減前に出てきたら?」


 僕はブレードウルフと戦いながらも、視線は変異種に向けていた。

 けれど、変異種から頑なに動く気配はなく、あくまでも手下のブレードウルフに命令するだけだった。


「グォウ……」


 しかし仲間の数がどんどん減っていくと、ブレードウルフ達が変異種に対して何かを伺うような鳴き声を上げる。


「ガァオ!」


 手下の弱気に変異種が強く吼える。


「ギャウウン!」


 ボスに粛清されるくらいならと、悲壮な覚悟でブレードウルフ達が向かってくる。

 やっぱり変異種に無理やり命じられて行動しているみたいだ。


「なら無理に戦う必要もないよね」


 僕はブレードウルフ達を無視して、変異種に向かって飛びかかる。


「グァオウッ!!」


 変異種が体から生えた禍々しい刃で僕の剣を受け止める。


「グゥオウ!!」


「くっ強い!」


 見た目以上のパワーでこちらの攻撃を押し返してきた変異種に驚いたのがいけなかった。


 パキンッ!


 そんな軽い音と共に、僕のブロードソードが折れてしまったんだ。


「しまった!」


「ガァァオウ!!」


 変異種が勝利を確信して僕の体を串刺しにしようと飛び込んでくる。


「ダメェェェェェ!!」


 それを見たリリエラさんの悲鳴が響く。


「この!」


 僕は襲い掛かってきた変異種に両手を突き出す。

 そして……


 ポキン!


 白刃取りした変異種の刃を根元からへし折った。


「……ガウ?」


 変異種が、え?って感じで顔で僕を見つめる。

 そしてその手に納まった自分の刃を見てから、自分の体を見る。


「……ガガウゥゥゥゥゥッッッ!?」


「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 リリエラさんの驚きの声と共に、変異種が「な、なにぃぃぃぃぃ!?」と言わんばかりの悲鳴をあげた。


「せっかくありものの材料で作った剣をよくも折ってくれたな! お返しだ!」


 僕は驚きの鳴き声をあげる変異種に飛び掛り、その刃を片っ端から白刃折りしていく。


「ギャウン! ギャウウン!!」


 変異種は「やめて!もうやめて!」 といわんばかりに情けない悲鳴を上げて逃げ出そうとする。


「いまさら逃がすか!」


 最後に折った変異種の刃を手に僕は跳躍し、逃げ出した変異種の首を一刀両断にした。


「あっ、これけっこう切れ味良いなぁ」


 割といい素材っぽいし、次はこれを使って新しい剣を作ろうかな?


「キャウンキャウン!!」


 ふと周囲を見ると、ボスがやられた事で自由になったブレードウルフ達が一目散に森の奥へと逃げ出していた。


「まぁあれは良いか」


変異種を倒した以上彼等も本来の生息域に戻っていくはずだからね。


「リリエラさん、もう出ても大丈夫ですよ」


 探査魔法で周囲に危険な魔物がいない事を確認してからリリエラさんに呼びかける。


「……」


 だけど何故かリリエラさんは呆然とした顔で僕を見つめていた。


「リリエラさん? もう大丈夫ですよ?」


 もう一度声をかけると、ようやくリリエラさんが我に返る。


「えっ!? あっ!? ま、魔物は!?」


「ボスを倒したから、もう全部逃げ出しましたよ」


そういって両断した変異種の首を見せる。


「さ、夜も遅いですし、帰りましょう」


 僕はリリエラさんに手を差し出す。

 けどリリエラさんは思いつめた顔をして僕を見つめる。

 なんか恥ずかしいな。


「何で?」


「え?」


「何で私を助けてくれたの!?」


「えっと、さっきも言いましたけど、冒険者は助け合いですから」


「そうじゃなくて! 何でこんな危ない真似をしたのよ!? 夜の森に一人で来るなんて!」


「いや、僕一人じゃなくて……」


「それに! 私は貴方に酷い事を言ったのよ! 貴方を偽者って! 私は侮辱したのよ!」


 ……あ、あー、そういう事か。

 リリエラさんはずっと自分の発言を後悔していたんだね。

 たとえ勘違いであっても、人を罵る様な発言をしてしまった自分を悔いていたんだ。

 だから自分が罵った相手である僕が助けに来た事が信じられないんだな。


「リリエラさん。そんな難しい事じゃないですよ」


 僕は故郷の村の子供達をあやす様に優しく抱きしめて語り掛ける。


「僕は貴女が危険な目にあっていると聞いたから助けに来たんです。本当にただそれだけなんですよ」


「でも……」


 それでもやっぱりリリエラさんは納得が出来ないみたいだ。

 僕はリリエラさんの髪を撫でながら、優しく、ゆっくりと語り続ける。

 ぐずる子供に子守唄を聞かせるように。


「だって冒険者は困っている人を見捨てたりなんてしませんから。あの大剣士ライガードも、泣いている女の子がいたら助けるのが男ってもんだって言ったそうじゃないですか」


「でもそれは物語でしょう?」


「はい、僕はその物語に出てくる冒険者みたいになりたいんです! だから貴方を助けに来た! 困っている貴方を助けたいと思ったから!」


 そう、冒険者は困っている人を見捨てない。

 だって冒険者は、僕らの憧れのヒーローなんだから。


「馬鹿よ、馬鹿よ貴方は……。そんな物語を真に受けて人助けをするなんて……そんなの、私が憧れた本物の冒険者そのものじゃないのぉぉぉぉぉ!!」


「えっ!? ちょっ!? ええぇぇぇぇ!?」


 なんとリリエラさんは突然泣き出してしまった。

 今の会話の流れで何で泣き出しちゃうのー!?


「ど、どどど、どうしよう!? ええと、な、泣いた女の子を慰めるには……」


 想定外の状況で僕はどうすればいいのか分からずに困惑してしまう。


「あー、ルーキーが女の子を泣かしてっぞー! いーけないんだー」


「「「いーけないんだーいけないんだー! おーんなのこをーなかしてるー」」」


「へ!?」


 突然背後から変な事を言われた僕は、ビックリして振り向いた。

 そこに居たのは……。


「よーう、色男。無事嬢ちゃんを助ける事が出来たみたいだな」


「いやー、無事じゃないんじゃないかこの有様は?」


「イヴァンさん!?」


 そう、やってきたのはイヴァンさん達だった。

 それだけじゃない、他の冒険者さん達も皆集まってきている。


「えっと、皆さんどうして?」


「いやお前、さっき目印の魔法をぶっ放したろ? あれでお前がここに居るって皆分かったんだよ」


「まぁ正直言うと、あの道を作る魔法で十分位置は把握してたけどな。ドカンドカン森が焼けていったからなぁ。夜だからめちゃくちゃ目立ってたぞ」


「ええと、じゃあもしかして皆さん……」


「おう!さっきからずっと見てたぜ!」


「うわぁぁぁぁぁ!」


 すっごい恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!


「それよりあっちは良いのか?」


「え?」


「うわぁぁぁぁぁぁん!!」


 そうでした、リリエラさんが号泣真っ最中です。


「ええと皆さん、皆さんの大人の知恵で彼女を泣き止ませる方法をご教示頂けませんか?」


「さーて、嬢ちゃんも見つかったし。撤収するかー」


「あー、つかれた。今日は街道の広場で野営して、明日、日が昇ってから町に帰るかー」


 冒険者さん達が僕らを無視して皆帰り始める。


「ちょっ、ちょっと皆さん!?」


「んじゃ、嬢ちゃんをなだめるのはお前に任せるわ」


「そんな無責任な!?」


「いやだって、嬢ちゃんを助けに行こうとしたのはお前さんだしな。だったら最後までお前さんが責任持って嬢ちゃんを連れ帰れよー」


「ちょ、ホントに帰っちゃうんですかー!?」


「その凄そうな結界の中なら大丈夫なんだろ? なんだったら一晩二人っきりで楽しんでこいや。そんじゃおじさん達はお邪魔にならない様に帰るわ」


「ま、待ってくださいよぉぉぉぉぉ!!」


「うえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」


 結局、リリエラさんが明け方まで泣き続け、精神的にヘトヘトになった僕は、泣きつかれて眠ったリリエラさんを背負ってヘキシの町へ帰ったのでした。

ヾ(≧∇≦)ヒロイン救出完了!

(´・ω・`)変異種君は犠牲になったのだ。かませ犬という犠牲にな。

:(;゛゜'ω゜'):犬じゃないよ狼だよ!


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[一言] わんちゃん可哀想(あ、オオカミか) (^∀^ )ケラケラ
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