第166話 奇跡の魔法(再生風味)
作者_:(´д`」∠):_「今週二度目の更新だオラァ!」
ヘルニー|^・ω・)/ 「わーホントに書くとは思わなかったー(棒)」
作者_:(´д`」∠):_「お前が書けって言ったんだろうがぁ!」
ヘイフィー|^・ω・)/ 「という訳で皆さんお楽しみくださいー」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
モフモフが全てのオークを倒してくれたので、僕達はオーグさんの探索を再開する事にする。
「モフモフ、食べ終えたらすぐに僕の所に戻ってくるんだよ!」
「キュ~ウ~」
はーいとモフモフが手を上げて返事をする。
弱っている生命反応が気になるし、モフモフが食べ終わるのを待ってはいられない。
「さぁ、行こう!」
「今度こそ俺が魔物を倒すかんなーっ!」
「はいはい、次は頑張りなさい」
探査魔法に反応した生命反応のすぐ傍まで近付く。
「この辺りに居る筈だよ。オーグさーん! 何処ですかー!?」
「居たら返事をしてー!」
「おっさーん! 生きてるかー!」
皆で声を出しながら、森の中を駆けてゆく。
「ブモォォォォッ!」
すると先ほどの戦闘音に引き寄せられたのか、森の奥からオークの群れが姿をあらわす。
このオーク達もさっき戦った異形のオーク達と同じく、腕や下半身が別の生き物の姿をしている。
なかには頭が別の生き物の、もうオークとは言い難い個体の姿も見られた。
これってやっぱり……
「おっしゃー! 今度こそ俺の出番だぜ!」
さっきの戦いで出遅れたジャイロ君が、今度は後れを取らないぞとばかりに前に出て、オーク達に向かってゆく。
「喰らいやがれメルトソード!」
刀身を炎で蒼く染め、ジャイロ君がオークの群れを通り抜けざまに一閃してゆく。
そして、ジャイロ君に切られたオーク達の群れの上半身が、地面へと落ちてゆく。
血は出ない。切断面は完全に焼き切られていたからだ。
「お見事ジャイロ君!」
「へへっ、まぁ俺にかかればこんなもんよ!」
「私達も出番無いわねぇ」
「楽でいい」
オークの群れを撃退した僕達は、周囲を探索してオーグさんの姿を探す。
「もう見つかってもいい筈なんだけど……オーグさん! 返事をしてください! レクスです!」
「おーいオッサーン! 生きてるかー?」
「ぅ……」
声を張り上げて呼びかけると、藪の奥からうめき声が聞こえた。
「オーグさん!?」
藪をかき分けると、そこには血まみれのオーグさんの姿があった。
「お、おう……レクスか……こんな所で会うとは奇遇だな……」
「大丈夫ですかオーグ……さん!?」
「はは、ちっとばかしヘマをしちまった……」
オーグさんの姿は酷い有様だった。
全身がボロボロで、体にはいくつもの大きな穴が開いている。
腕も殆ど千切れかけていて、出血の量は相当なものだ。
正直言って、生きているのが不思議なくらいの有り様だった。
「お、おっさん……」
「ひ、酷い……」
あまりの惨状に皆が声を詰まらせる。
「ノルブ、治せるの?」
メグリさんがオーグさんの傷を癒せるのかとノルブさんに問いかける。
「……無理です。こんな状態じゃ出血を止めるくらいしかできません。体にこんな大きな穴が開いていては、体の一部を失ったも同然です。そして回復魔法には、欠損した部位を再生させる力は無いんです……」
「そんな……」
そう、ノルブさんの言う通り、普通の回復魔法じゃここまで損傷したオーグさんの体は治せない。
「申し訳ありませんが、僕ではオーグさんを救う事は出来ません……」
「……何とか、何とかならないのかよ兄貴!? 兄貴ならオッサンを元通りに治せるんじゃねぇのか!?」
「無茶言うんじゃないわよ! いくらレクスでも、ここまで酷い怪我を治す魔法なんて使えないわよ! 回復魔法は普通の魔法とは違うのよ!」
「え? 治せますよ?」
「は、はは、気にすんな。自分の体だ……もう助からねぇのは、分かって……え」
「「「「「え?」」」」」
何故か皆が目を丸くしてこちらを見て来る。
「いやレクスさん、流石に欠損した部位を治すのは無理だと思うんですが……」
「いえ、治せますよ。正しくは魔法で生やすと言った方が正しいですけど」
「「「「「「生やす!?」」」」」」
「ウグッ!」
と、大きな声を上げた事でオーグさんが苦しみの声をあげる。
「説明は後です。まずは治療を先に!」
僕はオーグさんの下へ行くと、回復魔法を発動させる。
「リプロダクトヒール!」
治癒の光がオーグさんの全身を包み込む。
「リプロダクト……ヒール? そんな回復魔法聞いた事が……」
「お、お、おおっ!? なんか体中がモゾモゾするぞ!?」
オーグさんが悲鳴を上げると同時に、全身に空いた穴が蠢きだす。
「な、な、なぁぁぁっ!?」
傷口の端から肉が盛り上がり、少しずつ穴が小さくなっていく。
「うわわわわっ!? 何だこりゃ気持ち悪ぃ!?」
「魔法で肉体を再生してるんです。慣れない感覚だと思いますけどすぐ終わるので我慢してください」
事実、体に空いた穴は新たに生み出された肉で埋まっていき、傷口はあっという間に塞がった。
「穴が埋まっちゃった……!?」
次いで千切れかけていた腕も、かろうじて繋がっていたところから少しずつくっついていき、すぐに元通り繋がる。
「な、ななな、なんだこりゃあ!? 傷も穴も千切れかけてた腕も治っちまった!?」
「良かった、見た目の割にはそう深い傷じゃなかったみたいですね」
「いやいや、十分深い傷だったから。死を覚悟してたんだからな!?」
「な、ななな何ですか今の回復魔法は!? 欠損部位を作り出す回復魔法なんて聞いた事もないですよ!?」
「そそそそうよ! 回復魔法は普通の魔法と違うんでしょ!? 効果を高めるには信仰心とかなんかよく分からないものが必要なんでしょ!?」
驚くオーグさんと、興奮して詰め寄って来るノルブさんとミナさん。
あー、そう言えばミナさんには回復魔法の事は詳しく教えていなかったっけ。
前にノルブさんに教えた時は、教会関係者とトラブルになるのが面倒だったから言わなかったしなぁ。
「いえ、回復魔法は信仰心が無くても使えますよ。あくまでも回復という効果を発揮する魔法の一系統というだけです。少なくとも僕の使う回復魔法は」
「じゃ、じゃあ……私も修行すれば回復魔法をつかえるようになるの?」
「はい、なりますよ」
「うそぉ……」
嘘じゃないんだけどね。
「そ、それで、今の回復魔法はどのような魔法なんですか!? 上位の回復魔法でも欠損した部位を再生させる事なんて出来ない筈です!」
「ええ。今のは一般的な傷を塞ぎ、自然治癒力を向上させるタイプのヒールではなく、新しく体の部位を作らせるタイプの回復魔法ですよ」
「「「「「「新しく作らせる!?」」」」」」
「はい、皆さんも知っての通り、一般的な人間の治癒力では欠損した部位を治療する事は出来ません。そして一般的な回復魔法は、対象の肉体に負担がかからない様、人間の自然治癒力を加速させる方法で回復します。弱っている人間の体に負担をかけたら身も蓋もないですからね。だから失った血も回復する事は出来ないんです」
「よく分かんねぇ……」
「そしてこのリプロダクトヒールは、対象の負担とかそういうのを無視してとにかく回復する事を考えた魔法です!」
「「「「「「凄く不穏な発言が出た!?」」」」」」
「え、ええと、方法を変えて……というのは?」
ノルブさんが恐る恐ると言った様子でリプロダクトヒールの詳細を訪ねて来る。
別にそんな怖いものじゃないんだけどね。
「はい。人間は生まれる時、お母さんのお腹の中で体が作られていきます。つまりこの時点で人間は無い物を作りだして体を構築していってる訳です」
「ふむふむ」
「そう言われると無から有を生み出しているみたいねぇ」
とそこでノルブさんがハッとした顔になる。
「ちょっ、待ってくださいレクスさん!? それってつまり……」
「ええ、つまりこの回復魔法は、人間が産まれる時の働きを再現し、新しく欠損部位を作ることで実質的に回復しているのと同じ状況にしたんです」
そう、壊れた部品を修理するんじゃなくて、新しく作った部品と交換する様に肉体を再生させる。それこそがリプロダクトヒールなんだ!
「「「「「「デタラメ過ぎるっ!!」」」」」」
「何ですかその強引な理屈!? それだと生きてさえいれば頭が吹き飛んでも頭を再生させる事が出来るって事ですか!?」
「ええ、出来ますよ」
「「「「「「出来るの!?」」」」」」
「ちなみにこの魔法だと失った血も新しく作りだしてくれるので、すぐに動く事が出来るようになります」
「あっ、それは便利ね。普通の回復魔法だと、失った血は回復しないから、すぐに動こうとすると貧血になるのよね」
「でもそれだけ聞くと良い事ずくめでデメリットは感じない」
「だよなぁ」
「うん、でもこの魔法の構造的欠点として……」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
とそこで、オーグさんのお腹が物凄い音を立てる。
「う、うぉぉ……なんだコレ、滅茶苦茶腹が減ってきたぞ……」
「とこのように、新しく肉体の部位を作った事で、急激に体力と栄養が足りなくなってしまうから、お腹が物凄く減ってしまうのが欠点なんだよ」
「「「「「問題大有りだーっ‼」」」」
つまりこの魔法は、普段の食事で自分が摂取した栄養素を無理やり再生に回す魔法なんだ。さらに足りない分の栄養素は自分の体から無理やり捻出するから今みたいに急激にお腹が空いて来るんだよね。
「この欠点があるから、このタイプの回復魔法はあんまり流行らなかったんだよね」
「理由があって今の回復魔法が主流になったのね……」
「は、腹……減った……メシ……くれ」
オーグさんはお腹を抱えてへたり込み、食料を求めて這いずって来る。
「おっといけない。すぐにご飯を用意しないと。オーグさん、町まで我慢できますか?」
「むり、しぬ」
参ったな、これはすぐに狩りでもして……いや待てよ?
「そうだ、さっき討伐したオーク肉がありますからそれで焼き肉でもしましょうか」
「え? オークって食べれるの!?」
オーク肉を焼くと聞いて、ミナさんが驚きの声をあげる。
「結構美味しいですよ? 上質の豚肉って感じですよ」
前世や前々世でも、外で任務を受けている最中に魔物肉を食べる機会はよくあった。
大剣士ライガードの冒険でも、食料が無くなって魔物肉を食べたら、意外に美味かったっていうエピソードもあるくらいだからね。
「魔物肉はクセがきついけど、調理次第でいける」
「メグリ、アンタ食べた事あるの!?」
「修行でお母様が作ってくれた」
メグリさんは元々アイドラ様の影武者だった訳だし、お母さんも城の関係者みたいだから護衛騎士とかなのかな?
「更に言うと、この森にいるあのオーク達は、他の生物の特徴を持っていますから、馬肉やイカ肉、鳥肉と、色々な食材が手に入ると思いますよ」
「それはちょっと遠慮したいけど……」
「はやくにく……」
ああいけない、そろそろ本気でオーグさんが限界だ。
「それじゃあ、オーク肉バーベキューにしましょう!」
「「「「「お、おーっ!」」」」」」
「にくぅーっ!!」
「キュキュウーッ!!」
こうして、無事にオーグさんを救出した僕達は、栄養補給を兼ねてオーク肉パーティを開いたのだった。
モフモフΣ(:3)レ∠)_「新たに再生産という事は、何度でも食べ放題!? 時間無制限!?」
レクス(:3)レ∠)_「死んだら治せないよ」
モフモフΣ(:3)レ∠)_「つまり魔人を捕まえて飼育すればワンチャン?」
通りすがりの魔人(i|!゜Д゜i|!)「何もしてないのに狙われてる!?」
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