第160話 若き英雄の凱旋
作者_:(´д`」∠):_「最近雨が多いなぁ……」
ヘルニー|^・ω・)/ 「雨の日はさよなら花粉症!」
作者_:(´д`」∠):_「お前は復活すんな!」
ヘルニー|^・ω・)/ 「けど折角だからエイプリルフール企画で短編考えておけばよかったねぇ。ヘルニーちゃん主役の新作はっじまっるよーとか。ああ、これは近いうちに現実になるから駄目ね」
作者(:3)レ∠)_「そんな予定はガチでねぇよ!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「いやー、今回は助かったよ。まさかあれほど多くのオークに襲われるとは思っても居なかったからな」
無事トーガイの町へと到着した僕達は、商隊のリーダーさんからそんな事を言われながら、書類に依頼達成のサインを書いて貰っていた。
「いやー、それ程でもあるかな」
「調子に乗ってるんじゃないわよ!」
ご機嫌なジャイロ君をミナさんが窘めるのもいつもの光景だね。
「じゃあ冒険者ギルドに依頼達成の報告をしに行こうか」
「おうっ! ここのギルドも久しぶりだな!」
「そうだね、凄く久しぶりだ」
うん、ここが僕達の始まりの場所だからね。
それほど昔の事でもないのに、ちょっと懐かしく感じるよ。
「レクスさんが活動していたギルドに行くのね」
「ええ、皆良い人達ですよ!」
「きっと沢山の人が振り回されたんでしょうねぇ」
とリリエラさんは溜息をついたけど、一体それはどういう意味なんだろう?
◆
久しぶりにトーガイの町の冒険者ギルドにやって来ると、中は驚くほど賑わっていた。
「うわっ、凄く混んでるね」
「なにこれ、混雑してる時の王都のギルド並みじゃない!? ヘキジの町のギルドだってこんなに混雑した事ないわよ!?」
リリエラさんの言う通り、ギルドの中は歩くのも困難なくらい人でごった返していた。
「うーん、これは時間をズラした方が良さそうだね」
「そうね、とてもじゃないけどこんなんじゃ窓口に行けそうもないわ」
「だな、先に宿を取ろうぜ」
皆の意見が一致した事で、僕達は一度宿を取る事にして冒険者ギルドを後にした。
そして時間をずらしてまた冒険者ギルドに戻ってくると……
「流石にこの時間なら人も少な……くないね」
時間をズラしてまた冒険者ギルドに来た僕達だったけれど、ギルド内は未だに混雑したままだった。
とはいえ、それでもさっきよりはマシになったかな。
「つ、次のかたー……はぁ」
受付のエルマさんが随分と疲れた様子で順番待ちの冒険者さん達の相手をしている。
あの様子じゃそうとう忙しいみたいだね。
「とはいえ、並ばない訳にはいかないよね」
しかたなく僕達も列に並ぶ事にする。
「くっそー、負けた―!」
僕の後ろでジャイロ君が悔しそうにふてくされている。
どうやらジャイロ君達はじゃんけんで並ぶ人を決めたみたいだね。
まぁパーティで仕事を受けたからって、全員で並ぶ意味もないからね。
そうして暫く待っていると、僕の番がやってくる。
「次の方ぁー……」
「すみませーん、依頼完了の報告に来ましたー」
僕の窓口担当のエルマさんだ。
随分久しぶりに会ったけど、なんだか疲れてるみたいだなぁ。
「はーい……では書類を確認させて貰いますねー」
エルマさんはヨロヨロとした手つきで書類を受け取るとその内容を確認する。
「はい、依頼主のサインを確認しましたぁ。依頼を達成されたのはSランクのレクス……さん?」
と、そこでエルマさんがゆっくりを顔を上げる。
「お久しぶりです」
「……」
けれどエルマさんはピタリと止まったままだ。
「エルマさん?」
「レ……」
「レ?」
「レクスさんんんんんんっ!?」
突然大声をあげたエルマさんに、ギルド中の人達が何事かと顔を向ける。
「な、ななななっ、何で!?」
「いえ、ちょっと依頼を受けてこの町まで来たんです」
「い、依頼!?」
「はい。それにしても、ちょっといない間に随分と人が増えましたね。何かあったんですか?」
もしかして、お金になる薬草や、希少な魔物でも見つかったのかな?
「な、なな何かって……」
エルマさんはワナワナと震えながら僕を睨む。
あ、あれ? 僕何かエルマさんを怒らせるような事言った?
「そんなの、レクスさんがSランクに昇格したからに決まってるじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」
「ええ!? 僕のせい!?」
い、一体どういう事!?
「Sランク!?」
「誰がだ!?」
エルマさんの絶叫を聞いて、周りの冒険者さん達がざわめき始める。
「エルマさんと話してるあの小僧の事か?」
「いやお前、あんな小僧がSランクに成れる訳ないだろ」
「だよなぁ」
うわっ、何だかギルド内が騒がしくなってきちゃったぞ。
これは報酬を受け取ったらさっさと撤収した方が良いかもしれないな。
「おっ!? ドラゴン坊主じゃないか! 久しぶりだな!」
そんな中、僕に話しかけて来たのは、僕が初めて冒険者ギルドに来た時に色々と教えてくれた冒険者さんだった。
「あっ、お久しぶりです」
「おー、俺みたいな万年Cランクを覚えてくれていたとは嬉しいねぇ」
「初めて冒険者ギルドに来た時に色々と教えて下さった方ですから、よく覚えています」
「はははっ、Sランクに昇格しても相変わらず謙虚だな!」
「まだまだ未熟者ですから」
久しぶりに出会った顔見知りの冒険者さんと話をしていると、他の冒険者さん達も声をかけてくる。
「おー、ホントにドラゴン坊主だ! 王都でも派手にやってるらしいじゃないか!」
「よードラゴン坊主。お前さんの噂はこの町まで届いてるぞ!」
「え? ホントですか!?」
なんだか恥ずかしいなぁ。大した活躍もしてないのにSランクになっちゃったから、他の冒険者さん達に悪い感情を持たれてないと良いんだけど。
「あれが本物の大物喰らい……ホントにガキじゃねぇか」
「古参のおっさん達のホラ話じゃなかったんだな」
「アイツが冒険者登録初日にドラゴンを狩ったっていう……」
「しかも翌日にはイーヴィルボアの群れを討伐したんだろ?」
「魔界の魔物を討伐したって聞いたぞ」
「森の木が全て植物の魔物って恐れられてた魔獣の森に道を通したのもアイツなんだろ?」
気が付けば、周囲の冒険者さん達が僕の事を見ながら遠巻きに何か話している。
「「「「どう見ても普通のガキにしか見えないのが逆に怖い……」」」」
「レクスさん……」
リリエラさんが呆れた様子で僕を見る。
「い、いやホント大した事してませんから。なんか気が付いたら変に過大評価されてただけですから!」
前々から思ってたんだけど、冒険者さん達って物事をポジティブに考えすぎだと思うんだよね。
僕が倒した魔物なんて、前世じゃ普通に皆倒してたようなヤツ等だったし。
「まぁ良いんだけど、それよりこっちの人放っておいて良いの?」
「え?」
そう言ってリリエラさんは受付の方を指さす。
そこにはプルプルと震えながら涙目で睨んでくるエルマさんの姿があった。
「受付の最中ですが、お話は終わりましたか……?」
「ご、ごめんなさい……」
あ、あれ? これって僕が謝る流れなの?
◆
「はい、ではこちらが護衛の報酬となります」
エルマさんはホッペタをぷくーっと膨ませたままで、報酬を差し出してくる。
「あ、ありがとうございます。それと、こちらは王都の冒険者ギルドからこちらのギルド長に渡すように頼まれた手紙です」
「ウチのギルド長にですか? 分かりました。すぐに渡しておきますね」
そういうと、エルマさんは近くを通った職員の人を呼び止め、ギルド長に手紙を渡すように伝える。
ふぅ、これでギルド長からの指名依頼は半分完了だ。
あとはこっちのギルド長に手紙の返事を書いてもらって、それを王都のギルド長に届ければ依頼は完了だ!
「ところで、さっきの僕がSランクに昇格したからってどういう意味なんですか?」
ふと、さっきのエルマさんの言葉が気になった僕は、あれがどういう意味だったのかと聞いてみた……んだけど。
「っ!……」
その言葉を聞いた瞬間、再びエルマさんの目に剣呑な光が宿る。
「あっ、いえ。言いたくないなら良いですよ」
「いえいえ、レクスさんにはぜひとも聞いて頂きたいです」
しまった、藪蛇だった!?
「ふ、ふふ……Sランクは冒険者にとって特別な称号なんですよ」
「特別……ですか?」
まぁ、冒険者の中で最上位のランクだからそれも納得かな。
まぁ僕は過大評価されてSランクになっちゃったから、ちょっと申し訳ないんだけど。
「だからですね。世の冒険者と冒険者を目指す人たちは、そんな冒険者にあやかりたいとSランク冒険者の所属するギルドに集まってくる事があるんですよ」
「え? でもそれなら王都の冒険者ギルドに来るんじゃあ?」
だって僕がSランクに昇格したのも、今現在活動の拠点としているのも、王都の冒険者ギルドな訳だし。
「そこはアレですよ。王都は実力者も多いですし、依頼のレベルも高いものが多いですから。だからSランクになった冒険者が最初に登録したギルドにあやかろうって寸法です」
えー、何それ?
あやかるにしても本末転倒な感じがするんだけど。
「とはいえ、こんな片田舎の町で大した仕事がある訳でもなし。見ての通り今は依頼の奪い合い状態で、残ってるのは安い常設依頼ばかりです。あの人達も暫くしたらお金が足りなくなって他の町に移動するでしょう。それまでの辛抱です」
成程。一時的なものなんだ。
「それにしても対応が慣れていますね」
「ええまぁ。Bランク以上の冒険者が出ると良くある事なんですよ。いってみればゲン担ぎみたいなものですから」
なるほど、神殿や聖域でお参りする様なノリなんだね。
冒険者は身一つで仕事をこなす実力主義の世界だから、その分縁起を担ぐってことなのかな。
しかしこうなると僕が原因というのもうなずける。
なんだか申し訳ないなぁ。
と、そんな時だった。
急にギルドの中が騒がしくなったんだ。
「どうしたんだろう?」
どうやら騒ぎはギルドの入り口で起こっているみたいだ。
しかも騒ぎはこっちに近づいてきているような気が……
「おーいエルマちゃん、ちょっといいかー?」
そこに現れたのは、立派な格好をした騎士だった。
「あれ?」
ただ不思議な事に、僕はこの人を知っているような気がした。
でもおかしいな、今の僕の人生に騎士の知り合いはいない筈なのに。
「ちょっとギルド長に用があるんだが……ってあれ? お前さんは……」
けどこの声、やっぱり聞き覚えがある。
「ああ、やっぱりレクスじゃないか! 久しぶりだな!」
「も、もしかしてオーグ……さん?」
「おう、そうよ! お前の頼れる元先輩冒険者オーグさんだぜ!」
やっぱり! なんだかものすごくさっぱりして綺麗な格好になっていたから、一瞬分からなかったよ!
「って、元?」
それってどういう意味?
「ああ、今は冒険者を引退して騎士になったのさ! これからは騎士オーグと呼んでくれ!」
騎士? オーグさんが騎士!? だからこんなにサッパリした見た目になっているの!?
「って、騎士ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
ちょっ、ちょっと!? 僕がSランクになった事よりも、こっちの方が大事件なんじゃないのっ!?
オーグ(:3)レ∠)_「転職しました!」
レクス(i|!゜Д゜i|!)「ええーっ!?」
ジャイロ(:3)レ∠)_「(俺はいつまで並んでいればいいんだろう?)」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。