第155話 ヴェノムビート咆哮!
作者_:(´д`」∠):_「インフルエンザからふっかーつ!」
ヘルニー(:3)レ∠)_「先週はお休みして申し訳ありませんでした。お詫びに作者が馬車馬のように執筆します」
作者_:(´д`」∠):_「優しくして!」
ヘルニー(:3)レ∠)_「そして二度転生書籍4巻およびコミック2巻をお買い上げ頂き、皆様ありがとうございます!」
作者_:(´д`」∠):_「皆様の応援のおかげで売れ行きも好調です!」
作者/ヘルニー(:3)レ∠)_「ありがとうございますー!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
復活したヴェノムビートがゆっくりと立ち上がると、その上に被さっていた大量の土がまるで土砂崩れの様な勢いで落ちて行く。
同時にヴェノムビートの胴体下部から、紫色の禍々しい気体が噴き出してくる。
すると周囲の毒の沼地が更に禍々しい色へと変貌していったんだ。
「リリエラさん、あの猛毒のガスには近づかないでください!」
「分かったわ!」
あのヴェノムビートは未知の猛毒を持った突然変異種だ。
迂闊に近づいたら僕の解毒魔法でも解毒できない危険な毒を繰り出してくる危険性が高いからね。
「まずは動きを止めてから再封印を施します!」
「そうはさせんぞ!」
僕がヴェノムビートの動きを止めようとしたその時、鋭い声と共に赤黒い魔力の稲妻が襲いかかってきた。
「っ!?」
僕達は魔力の稲妻を回避すると、攻撃が飛んできた方角に向き直る。
「お前はっ!?」
その攻撃をしてきたのはなんと封印を破壊したあの魔人だったんだ。
相当弱っていたし、てっきり封印を破壊した際に噴き出した猛毒の奔流から逃げ切れず、巻き込まれてトドメを刺されたと思っていたんだけど……
「生きていたの!?」
ただ不思議な事に、魔人はただ生きていただけでなく明らかに健康になっていたんだ。
さっきまで死にかけていたとは思えない程に。
「どういう事なんだ……?」
猛毒に侵された魔人は、治療を頼んだ味方にすら匙を投げられたと言っていた。
あの瀕死っぷりは、とても嘘だったとは思えないんだけど。
「ふっ、不思議そうだな」
健康になった魔人がニヤリと笑みを浮かべる。
「教えてやろう。その答えは……貴様自身だ小僧!」
「ぼ、僕!?」
魔人が健康になった理由が僕だと言われ困惑してしまう。
一体どういう意味なんだ!?
「封印が解けたあの時、貴様が放った解毒魔法のおかげで私の体を蝕んでいた毒も解毒されたのだ!」
「「……っ!? あ、ああ〜〜っ!?」」
そ、そういう事かぁーっ!
しまった迂闊だった。
まさかヴェノムビートの猛毒から身を守る為に発動させた範囲解毒魔法が魔人の毒まで解毒させちゃうなんて想定外だったよ!
「感謝するぞ小僧! 貴様のお陰で私は復活できたのだからな!」
魔人は笑みと共に手から発した赤黒い魔力を槍状に形成して構える。
「その礼に貴様等は苦しまない様に殺してやろう」
魔人が翼に込めた魔力を爆発させ高速で僕達に襲いかかってくる。
「させないわよ!」
その一撃を防いだのはリリエラさんだった。
リリエラさんの槍に込められた魔力が、魔人の手にした魔力の槍と拮抗する。
「レクスさん! この魔人は私が相手をするわ! レクスさんはヴェノムビートの封印に専念して!」
「いえ、毒が漏れない為の結界はすでに張っていますから、まず魔人を倒す事に専念しましょう」
さっきもこの魔人の所為で封印が破壊されたり結界の展開を邪魔されるところだったからね。
コイツとはキッチリ決着をつけておいたほうがいい。
けれどリリエラさんは否と声を上げる。
「私はレクスさんの仲間よ! なら、魔人くらい一人で倒せる……いえ、倒せなくては話にならないわ!」
「ほざいたな小娘!」
二人は互いの槍を弾いた反動で後ろに下がる。
「だからここは私にやらせて! 貴方の相棒として、足手纏いにはならない事を証明してみせるから!」
「っ!」
リリエラさんの言葉からは、強い意志が感じられた。
それはきっと、一人の冒険者としての矜持から出た言葉だ。
なら、その決意に水を差すのは野暮ってもんだよね。
「分かりました。その魔人は任せます!」
「ええ! 任されたわ!」
「あっ、リリエラさん」
魔人との戦いに向かおうとしたリリエラさんに僕は声をかける。
「さっきは魔人の攻撃を防いでくれて助かりました! お陰で結界の展開が間に合いました!」
「っ!? ……ふふっ、行くわよっ!」
「ふん! 一人で私に挑んだ事を後悔させてくれるわ!」
再びリリエラさんと魔人が槍を手に突撃してゆく。
「サイクロンバースト!」
「アロガントバースト!」
2人の放った魔法が中央でぶつかり合い弾ける。
「たあぁぁぁぁっ!」
「ぜあぁぁぁぁっ!」
双方とも弾けた魔法を目眩し代わりにしてお互いに肉薄し、槍を突き合う。
2人は互いの攻撃をギリギリで回避し、そのまま互いの位置を交互に変えながら応酬を繰り返す。
よし、魔人はリリエラさんに任せて、僕はヴェノムビートの封印に専念する事にしよう。
「その為にも、まずは封印の為の魔法陣を仕込まないとね」
基本魔法で封印を行う場合、封印魔法を使えばそれで事足りる。
強力な相手を封印する場合は成功率を上げる為に、マジックアイテムや魔法陣を使って威力を上げる事もあるけど魔法自体は普通に発動させればいい。
ただヴェノムビートクラスの巨体の相手を封印する場合は話が変わってくる。
というのも、封印魔法は結界の一種だから効果範囲があるんだ。
封印魔法を発動させると一定範囲内に居る対象が封じられるんだ。
けど、相手が大きすぎて魔法の発動範囲から大きくはみ出してしまうと、魔法が失敗してしまうんだ。
だから大型の対象を封印する場合はその巨体をまるごと収める事の出来る大きさの魔法陣を書く必要がある。
もしくは結界型のマジックアイテムで対象を囲うように配置するか。
本来なら封印を解除する前にその辺りの仕込みをするつもりだったんだけど、魔人が封印を破壊した所為で準備が出来なかったんだよね。
「けどまぁ、なんとかするしかないよね」
幸い相手はあの巨体だ。
目覚めたばかりという事もあって、僕達の存在にはまだ気づいていないだろう。
そう思ったその時だった。
地上からギチギチと金属が擦れる様な音が鳴り響いたんだ。
下を見ると、ヴェノムビートが僕達に向けて長大な角を向けていたんだ。
そして次の瞬間、ヴェノムビートのツノから紫色の塊が高速で射出された。
「リリエラさん! ヴェノムビートの毒攻撃が来ます! 高密度に圧縮されているので、城壁を破壊するほどの威力がありますから避けてください!」
僕は魔人と戦っているリリエラさんに警告する。
どうやらさっきのリリエラさんと魔人の魔法のぶつかり合いを自分への攻撃と勘違いしたんだろう。
「はぁっ!? なにそのデタラメな攻撃は!?」
「くっ、馬鹿め! 誰が封印を破壊してやったかも分からんのか!」
高速で迫ってくる毒弾をリリエラさんと魔人がギリギリで回避しようとする。
「あっ、ダメです! もっと大きく回避してください!」
「「え?」」
しまった、リリエラさんに言いそびれた!
「ヴェノムビートは自分の放った毒弾に超音波をぶつける事で破裂させる事が出来るんです!」
「ええっ!?」
警告と同時に耳がキーンとしだす。
地上を見ればヴェノムビートが広げた羽を高速で羽ばたかせて高周波を発生させていたんだ。
至近距離に居たらあの音波だけでダメージを負っていたかもしれない。
「くっ!」
「ちぃっ!」
リリエラさんと魔人が慌てて毒弾から離れた直後、毒弾はお湯が沸騰するみたいに蠢いたかと思うと、次の瞬間破裂して周囲に散らばった。
「た、助かったわレクスさん……」
「ヴェノムビートの毒弾は破裂した飛沫が当たらない様に大きく避けるか、障壁系の防御魔法で防御してください。アイツの戦い方は基本的に相手を毒で弱らせるやり方です」
「デカいくせにセコイ奴ね」
あはは、確かにそう言えるかも。
毒を積極的に使いつつ、巨体も利用した戦い方をするから厄介なんだよね。
「こっちを敵と認識している以上、まずは動きを止めるのが先決だね」
こっそり近寄って封印しようと思ったけど、流石にそう上手くはいかないみたいだ。
「という訳で、動きを封じさせてもらうよ! グランドジオランサー!」
僕は広域殲滅魔法でヴェノムビートの全身を貫き身動きを封じる。
復活直後だからまだ動きが鈍いのが幸いしたね。
「な、なにいぃぃぃぃぃぃっっ!?」
すると向こうから魔人が驚愕する声が上がった。
きっとリリエラさんの実力に驚いているんだろうね。
うん、背中を任せられる仲間が居るってのは良いね!
「さぁ、これで動きを封じたし封印をさせてもらうよ!」
ヴェノムビートが身動きできなくなった隙に、僕は再封印の準備を始める。
上空から土魔法でヴェノムビートを囲うように真円を描き、魔法陣を書き込む準備を始める
それにしてもこのヴェノムビート、全然抵抗してこないなぁ。
前世で戦ったヴェノムビートはもっと元気だったんだけど。
なんだかグッタリしていて、まるで瀕死の重傷のように見える。
いや……もしかして死んだふりをしているのかな?
突然変異種だし、実は知能が高いのかもしれない。
成程、僕が大規模魔法陣を大地に刻む為に降りてくるのを待っているんだね。
そして油断した僕が背中を向けた瞬間に襲いかかるつもりなんだろう。
けどそれに気づいた以上、大人しく攻撃されたりはしないよ。
「コキュートスピラー!」
反撃の隙を与えないよう、僕はヴェノムビートの体を氷の棘山で貫く。
ヴェノムビートの体を貫いた氷の棘山は傷口から溢れた毒の体液ごと体を凍らせてゆく。
死んだフリがバレていた事に気付いたヴェノムビートが苦しみのあまり足を痙攣させながら悶えてひっくり返る。
毒霧の噴出口をこちらに向けて範囲攻撃をするつもりだな!
「させないよ! イロウシェンフリーズ!」
発動した氷の魔力がヴェノムビートの腹にあるいくつもの毒霧の噴出口を凍らせてゆく。
毒霧を封じられたヴェノムビートは足を丸めて身を守るような姿勢をとる。
うん、むしろ守りに入ってくれた方がこっちにとっては好都合だね。
「よし、今のうちに封印の魔法陣を刻むよっ!」
「あ、あの~~レクスさん?」
と、その時、魔人と戦闘している筈のリリエラさんから、躊躇いがちな声が聞こえてきた。
「なんですかリリエラさん?」
その間も僕はヴェノムビートから意識を逸らさない。
油断を誘ってからの不意打ちを狙っていたほどの知性の持ち主だ、何をしてくるかわからないからね。
「ええと、そのヴェノムビート死にかけているっぽいし、わざわざ封印しなくても普通に止め刺した方が早いんじゃない?」
「え?」
リリエラさんに言われてヴェノムビートをよく見ると、ヴェノムビートはピクピクと痙攣しながらグッタリとしていた。
「あれ?」
おかしいな、あのヴェノムビートは特殊な進化をした特殊個体だったんじゃないの?
なんて思いながら見ていたら、ヴェノムビートがガクリと頭を傾け、足を丸めたまま動かなくなってしまったんだ。
「虫って死ぬとああなるわよねぇ」
うん、言われてみれば夏場に道端で死んでる虫みたいに見えるかも。
「ええと、もしかして……今のでホントに死んじゃった?」
ええ!? ちょっと待ってよ!だって今のは相手の動きと毒を封じる為に放った牽制の攻撃だよ!?
こんなに簡単に倒せちゃう訳ないでしょ!?
慌てて探査魔法でヴェノムビートを見るけど、その体からは一切生命力を感じなかった。
「ええーっ!?」
ほ、本当に倒しちゃったの!?
ヴェノムビート_:(´д`」∠):_「目が覚めたら突然耳元で騒音が鳴ったと思ったら、突然全身を串刺しにされたうえに口を塞がれて死にました」
リリエラ(:3)レ∠)_「読者の皆様にはおかれましては、タイトルが『ヴェノムビート悲鳴!』の間違いであった事を深くお詫びいたします」
ヴェノムビート_:(´д`」∠):_「当方への戦力評価が買いかぶりにもほどがある!」
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