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第144話 到着! 腐食の大地

作者_:(´д`」∠):_「うーん、全力で執筆した所為でライトアームが痛い……腱鞘炎?」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

◆リリエラ◆


 私達はアイドラ王女のゴーレム作りの材料を集める為に、腐食の大地へと向かっていた。

 全員が飛行魔法を使える事から、お金がかかるだけで遅い馬車は使わず皆で空を飛んで行くことにしたの。


 ちなみに先頭は全体のペースを決める為に私が飛ぶ事になった。

 レクスさんじゃ速過ぎるし、ジャイロ君じゃはしゃぎ過ぎて途中で魔力切れになるのは目に見えてる。

 ミナも私達と比べたら魔法の扱いが上手いから、戦士である私がペース配分を決めることになったってわけ。


 あと、目的地までの道を調べたのが私ってのもあるんだけどね。



「腐食の大地は王都から南に馬車で約二週間、飛行魔法なら半分といったところね」


「へぇ、詳しいんだな、リリエラの姐さん」


 とジャイロ君が感心したように言うけれど、先輩としてはちょっと言っておかないとね。


「冒険者ギルドの受付で、資料室の使用を申請すればこの程度の情報は簡単に集まるわよ?」


 そう、自分の身一つが武器の冒険者は、情報収集も欠かしてはいけない。

 パーティなら情報集めを専門に行う職業の仲間がいる事も珍しくないけれど、彼のパーティの情報収集役は今日ここには居ないのだから。

 そして私達とジャイロ君達は別のパーティ、何かあった時の為に彼等も独自に情報を集めるのが冒険者として当然の備えだわ。

 そこに考えが至らない辺り、まだまだ経験が足りないわね。


「い、いやー……本読むのって苦手だからよう」


「メグリがパーティから抜けたんだから、リーダーである貴方が情報を集めるのが筋よ。読み書きが出来ない訳じゃないんでしょ?」


「お、おう! ちゃんと文字は読めるぜ!」


「その辺は私達の方でちゃんと教えたわ。リーダーをやるなら、最低限読み書きはしてもらわないと困るものね」


 ミナの言葉は正しい。

 ならず者やはみ出し者が多い冒険者には、読み書きが出来ない人なんてザラだもの。


 そして読み書きのできない冒険者を騙す依頼主も確かにいるのよね。

 理由を作って不当な契約書を書かせたり、討伐対象の情報が口頭と依頼書で違ったりといった事も実は少なくない。

 勿論そんな事を繰り返す依頼主はギルドのブラックリストに載って依頼を発注できなくなるんだけどね。


「初見の場所では何が起こるか分からないわ。これからはちゃんと自分で調べておきなさい。これは冒険者の先輩としての忠告よ」


「わ、分かっ……」


「分かりましたリリエラさん!」


 と、何故かレクスさんが元気よく返事を返してきた。


「……レクスさんはまぁ……あんまり注意する必要ないと思うわ」


「え? 何でですか? 僕もジャイロ君達の同期で、リリエラさんの後輩ですよ?」


 いやまぁ、そうなんだけどね……

 レクスさんの場合、どんな予想外のトラブルでも力尽くで解決しちゃいそうで……


 ◆


「おっ⁉︎なんか見えて来たぞ⁉︎アレが腐食の大地ってヤツか?」


 5日目の朝。

 途中立ち寄った町や村で宿を取りながら進んできた私達は、地平線の向こうから紫色に染まった大地が見えてきた事に気づいた。


「意外に早かったわね。やっぱり飛行魔法だと障害物を無視して進めるから早いわね」


「でもそれにしては早いわ。まだ5日目よ?」


 予定よりも二日も早いのは流石に気になるわね。


「単にオレ達が速過ぎただけなんじゃねぇの?空飛んで来たんだぜ?」


「うーん、でも目的地を間違えないように、街道を常時確認出来るルートを選んで飛んできたのよ。だから最短距離って訳でもないのよね。そもそも一週間でも早いのに5日は流石に早すぎ……」


「けど実際に着いたじゃねぇか。ならそれで良いだろ?」


「うーん……」


 ギルドの情報だと、まだ先の筈なんだけど……


「でもあの毒々しい色は普通の土地じゃないわ。だったら例の腐食の大地なんじゃないの?」


 ミナの言うとおり、確かに普通の場所には見えないのよねぇ……


「じゃあさっさと行こうぜ! そんでゴーレムの材料をパパッと集めちまおうぜ! そしたらメグリのヤツも影武者なんかやらずに済むようになるだろ!」


「っ!?」


 ああ、そうね。この子にとっては、そっちの方が大事な事よね。


「分かったわ。確かに早く着いちゃったものはしょうがないものね」


「へへっ、そういう事! それじゃ行こうぜ!」


「ちょっと待った!」


「うぉぉっ!?」



 ジャイロ君が腐食の大地へ向かって飛び出そうとしたその時、レクスさんからのストップがかかった。


「いきなり何だよ兄貴!?」


「ごめんねジャイロ君。けど皆腐食の大地に入るのは、これを装備してからにして欲しいんだ」


「「「装備?」」」


 そう言ってレクスさんが差し出してきたのは、三つの首飾りだった。


「レクスさん、これは?」


 レクスさんが用意したものだからただの首飾りとは思えないけれど……


「これは毒消しの首飾りです。これを装備すれば、弱い毒は全部無効化できますよ」


「「「毒消しの首飾りっ!?」」」


 えっ!? 何それ!? 毒消し!?


「ドラゴニアでリューネさんにあげた物と同じですよ」


 あー、そういえばそんな物渡していたようないなかったような……

 あの時は龍姫の座を辞退する事しか考えてなかったからなぁ……


「まぁでも、そんな強力な装備じゃないので、飲まない下級万能毒消し程度に思ってくれれば」


「「「それもう『程度』じゃないから!?」」」


 下級万能毒消しポーションでも十分凄かったのに、今度は同じ効果のマジックアイテムをポンポン出す時点でおかしいんだからね!?

 っていうか、これがあったら下級万能毒消し自体いらないじゃない!?


「いったいいつの間にこんな物を……」


「腐食の大地に行くと決めた日の晩に用意しておいたんですよ」


「「お弁当気分でマジックアイテムを作ったの!?」」


 ……いえね、レクスさんがとんでもないのは知っていたけれど、けどやっぱり出来ることの幅が広すぎるわ……

 寧ろこの人は何が出来ないの!?


「毒消しのマジックアイテムなんて、どうやって作るのよ……こんな小さな首飾りにどうやって術式を組み込んだわけ!?」


 あー、ミナが落ち込んでるし。


「おーっ! こんな物まで作れるなんて流石は兄貴だぜ! やっぱ兄貴は凄ぇなぁ!」


 魔法使いじゃないジャイロ君は無邪気に喜んでいるけど、貴方がはしゃいで振り回してるソレ、多分金貨3000枚くらいの価値があるわよ? ううん、もしかしたらそれ以上かも……


「おーい、どうでも良いけどさっさと行こうぜ!」


 そんな事を考えてたら、ジャイロ君が待ちきれない様子で私達を急かしてきた。


「あー、ごめんね。それじゃあ行きましょうか」


「ええ!」


「そうね。せっかく早く到着したんだもの。沢山素材を採取しないとね!」


  私達は毒消しのマジックアイテムを首にかけると、腐食の大地へと降りていく。

 はぁ、こうなったらもう、便利なアイテムを用意してもらえたと受け入れるしかないわね。


 ◆


「近くで見ると一層不気味な所ね」


 地上近くまで降りてくると、腐食の大地の詳細な光景が見えてきた。

 腐食の大地は、その名前こそ大地と呼ばれているけれど、実際には沼地になっていたの。

 それも紫色の、明らかに毒に満ちた沼地だわ。

 沼の表面にはポコポコと音を立てては大きな泡が弾けているし。


「なんか臭ぇなぁ」


 ジャイロ君の言う通り、腐食の大地の空気はなんとも言えない臭気に満ちていた。


「……コレ、沼地から湧き出た毒の空気が周囲に充満してますね」


「毒の空気!?」


「ええ、多分この空気を吸うだけでも体に悪いですよ。まぁ弱い毒みたいなので、この毒消しの首飾りだけでなんとかなってるみたいですけど」


「……マジックアイテム用意して貰えて本当に良かったわ」


「「激しく同意」」


 これ、下手したら自覚無しに死んでたんじゃない私達?


「腐食の大地は長時間滞在が出来ないって資料に書いてあったけど、毒の空気が原因だったのね」


 これは予想以上に危険な場所かもしれないわね。

 さすが実力者しか入る事を許されない危険領域だわ……


「危ない!」


「え?」


 その時だった。

 突然レクスさんが叫んだかと思うと、沼地の中から何かが私目掛けて飛びかかってきたの。


「はぁっ!」


 突然の事に硬直してしまった私を、レクスさんの剣が守る。


「大丈夫ですかリリエラさん!?」


「っ!? え、ええ、大丈夫よ! それよりも今のは何!?」


「あれを」


 レクスさんに促されて沼地を見ると、私はそこに自分を襲ってきたものの正体を見る。


「あれは……魔物!?」


 そう、そこに居たのはレクスさんの剣で真っ二つに切断された魔物の姿だった。

 魔物はムカデのような姿をしていたけれど、その大きさは普通のムカデとは比べ物にならないほど大きかったわ。


「ジャイアントポイズンセンティピードですね。どうやらこの毒の沼地を住処にしているみたいだ」


「こんなのが沼の中に居るの!?」


 完全に油断してたわ。

 もし普通に沼地をかき分けて進んでいたら、毒とか関係なくこの巨大な顎で私の体は真っ二つに切断されていたんじゃ無いの?


 いくら身体強化魔法で守りを強化できるとはいえ、四六時中発動させる事が出来るわけじゃないし……

 それこそ戦闘が終わって油断した所に視界がゼロの水面下で襲われでもしたら……

 飛行魔法が使えて本当に良かったわ……


「コイツは普通のムカデと違って水の中でも長時間活動出来るので、沼地に潜んで獲物が近づいてくるのを待っていたみたいですね」


「隠れてって、いったいどれだけの数の魔物がこの沼地に隠れているの?」


「……ええと、大小合わせておおよそ2000くらいですね」


「「「にせんっ!?」」」


 恐らく探知魔法を使ったんでしょうけど、それにしても2000は多すぎだわ!


「普通の魔物でも数が多いのに、毒を持った魔物が2000だなんて、死にに来たようなものじゃない!」


「え? でも毒消しの首飾りがありますし」


「「「あっ」」」


 そうだった。私達は毒消しのマジックアイテムを装備してたんだった。


「ええと、それじゃあ……」


「空中を飛びながら沼地を移動して、飛び出してきた魔物の攻撃を受けないようにして戦えば良いと思いますよ」


「……」


 そういえば私達空を飛べるのよねぇ。

 って事は、高度さえ保っていれば毒を持った魔物もあんまり怖くない?


「あ、あれ? おかしいわね。私達猛毒の魔物がひしめくSランクの危険領域に来たはずなんだけど」


「奇遇ね、私もそう記憶しているわ」


「はーっはっはっ! 喰らいやがれ魔物共! 俺様の正義の炎でこんがり焼けちまいなっ!」


 見ればジャイロ君が高度を上げたり下げたりしながら魔物を挑発し、おびき出されて飛び出した魔物を切り裂いていた。

 毒を受ける心配がないからって、すごく活き活きとしてるわねぇ。


「えーっと、私達もやる?」


「あー、うん。そうね」


 気を取り直した私達もまた、魔物退治に参加する事にしたのだった。


 ◆


「しっかしよう、いちいち倒した魔物を回収すんの面倒だよなぁ」


 魔物を討伐していたら、ジャイロ君がそんな事を口にする。


「え? 何で?」


「だってよ、下は沼地だし、放っておいたら沈んじまうじゃん? だからすぐに取りに行かないと沼に潜らないといけなくなっちまうよ。コイツで毒が効かなくても、毒まみれになるのはちょっとなぁ」


 あー、確かに言いたい事は分かるわ。


「それなら魔物が沼地に落ちる前に空中で魔法の袋に入れたら? それなら毒の沼地を気にしなくて良いよ?」


 レクスさんがさも当たり前のように真っ二つにした魔物を空中で魔法の袋に仕舞いこむ。


「いや、さすがにそれはちょっとハードルが高いぜ兄貴……」


「コツを掴めば簡単だよ」


 いやいや、それは私も無理だと思うわ。ほらミナも頷いてる。


「そっか、それじゃあ沼地を浄化しちゃおうか」


「「「え?」」」


 レクスさんの妙な発言に、私達は思わず聞き返してしまった。


「フルクリーンピュリフィケーション!」


「「「へっ?」」」


 突然レクスさんが魔法を発動させたかと思うと、周囲が光に包まれていく。


「え? 何? 何?」


 いったい何をしたのかと身構えたけれど、すぐに光は沈静化する。


「な、何をしたのレクスさ……」


「ああああああっ!?」


 何をしたのか、それを問おうとした瞬間、ミナの叫び声が響いた。


「今度は何!?」


「ぬ、沼! 沼がっ!」


「何? 沼がどうしたの?」


 ミナの言葉に地上を見れば、そこにあったのはなんの変哲も無い普通の地面だった。

 本当に普通の地面で、何を驚いているのか……あれ?


 おかしいわね。私達は今腐食の大地に居るはず。

 なのに普通の地面が見えた……?


「あれ? 沼どこ行った?」


 そうだ、ジャイロ君の言う通り沼が無い。

 そこにある筈の、腐食の沼が無くなっていた。


「レ、レクスさん? いったい何をしたの?」


 私は自分の中の冷静さを総動員してレクスさんに質問した。

 この状況は魔法を発動させたレクスさんに何らかの関係がある筈だから。


「はい! 毒の沼地に素材が沈むのが厄介なら、毒を浄化して普通の土にしちゃえば良いと思ったんです! なのでちょっと広域浄化魔法で近隣の毒の沼地を浄化して普通の地面にしてみました!  範囲はこの近辺だけだけど、これなら素材が沈む心配も無いですよ!」


「おおっ! 流石兄貴だぜ! ってかこれ、以前ドブ掃除に使った魔法だよな!」


 ドブ掃除!? ドブ掃除に何の魔法を使ったの!?


「そうそう、よく覚えてたねジャイロ君」


「へへっ、そりゃあダークブロブを倒すようなドブ掃除を忘れる訳がねーよ」


 ドブ掃除でダークブロブ!? 一体ドブ掃除で何があったの!?


「へへっ、地面もしっかり固まって足場の心配もねぇし、これなら毒の心配も無ぇぜ! スゲェや兄貴!」


「いやいや、さすがに褒め過ぎだよジャイロ君」


 ジャイロ君がレクスさんに尊敬の眼差しを送り、レクスさんはレクスさんで良い仕事をしたと言わんばかりの表情をしている。


 って言うか、その……危険領域になるような毒の沼地がドブさらいに使う魔法で浄化されちゃって良いの?


「あっ、見てジャイロ君! 沼地に潜んでいた魔物が半分埋まった状態で固定されてる! チャンスだよ!」


「おおっ! マジだ! …… でもなんでアイツら半分だけ埋まってるんだ?」


「多分僕の魔法にびっくりして沼地から飛び出したんだけど、全身が出る前に沼地が浄化されて土になっちゃったのが原因かな」


「成る程な。コイツはラッキーだぜ! なんせ相手は殆ど身動きできないんだからよ」


「だねっ!」


「おい二人共! 何呆けてんだよ!? チャンスだぜ! 一気に狩りまくろうぜ!」


 二人は無邪気にはしゃぎながら私達を急かしてくるけれど、私達はとてもそんな気持ちにはなれなかった。


「「……」」


「リリエラさん?」


「ん? どうしたんだよミナ?」


 私達の様子に気付いた二人が不思議そうに声をかけてくる。

 うん、分かんないかー、分かんないよねー。


「……」


「……」


 私とミナは互いに視線を交わしてうなずきあう。

 そして二人に向き直ると叫んだ。


「「なんかもう! 色々と台無しよっ‼︎」」


 もうこれ危険領域じゃなくて安全領域の間違いじゃない!?

腐食の大地 (i|!゜Д゜i|!)「ぐわぁぁぁぁっ!体が浄化されるぅぅぅぅっ!」

ジャイアントポイズンセンティピード(:3)レ∠)_「今日からチンアナゴに改名します」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 第144部分 上から37行目 ギルドのブラックリストに載って依頼を『受けれなくなる』⇒『出せなくなる』 倒した魔物の回収 ジャイロのセリフ  コイツで毒が『聞かなくても』⇒『効かなく…
[良い点] 毎回話のテンポが良くて、読んでいて飽きません。 楽しいから何度も読み返して時間が足りなくなります。どうしてくれるんですか、もー!(笑) [一言] あと、本編とは関係ないヘッダーフッターのち…
[一言] 拡がりつつある腐食の大地も浄化されまくるのかしら、、、 (*・ω・*)wkwk
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