第139話 毒魔討伐とランク上げ
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_:(´д`」∠):_「腰痛用のクッションを探してたら面白そうなのが見つかったので、ちょい欲しくなりました」
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「たぁっ!」
僕の一撃を受けて、真っ赤な血のような色をした蜘蛛の魔物が真っ二つになる。
この魔物はインフェルノスパイダー。その毒は弱いけど、ちゃんと治療をしないと命の危険にかかわるやっかいな魔物だ。
まぁ大半は素材として使えないから、気軽に倒す事の出来る魔物なんだよね。
その毒液は加工すれば解熱剤なんかの材料になるから、倒した後で毒液だけを採取すればいいのも狩る側としてはありがたいんだよね。
「それにしても、本当に毒を持つ魔物が多いなぁ」
王都近くの森にやってきた僕達は、いつもは居ない毒を持った魔物を重点的に退治していた。
というのも、冒険者ギルドから毒を持った魔物を優先的に退治して欲しいと頼まれたからだ。
「そうね、これだけ危険な毒を持った魔物が一つところに現れるなんてそうそうないわ」
襲ってきた魔物達を槍で貫きながらリリエラさんが溜息を吐く。
「レクスさんの用意してくれた下級万能毒消しがあるから最悪の事態を心配しなくていいけど、それでもどこに毒を持った魔物が隠れているか分からないから、神経が磨り減るわね」
「はっはぁー! 喰らいやがれ魔物共! 俺の炎を恐れないならあ痛ぁーっ!」
あ、ご機嫌で戦っていたジャイロ君が、茂みから出てきた魔物に噛みつかれてる。
「痛熱つつつつつぅっ!!」
どうやら噛みついたのは毒持ちの魔物だったらしく、ジャイロ君が苦しんで転げまわる。
「油断するなって言ったでしょ馬鹿! メグリ援護お願い!」
と、ミナさんがすぐにジャイロ君に下級万能毒消しを飲ませる。
そしてその隙をカバーするべくメグリさんが……ってあれ?
メグリさんは何故か目の前の魔物の相手をしたままで、ミナさんのフォローに入ろうとしない。
「メグリさん!」
僕はミナさん達に襲い掛かる魔物を魔法で牽制しながらメグリさんに声をかける。
「あっ、ゴメン」
僕が声をかけると、メグリさんが慌ててミナさん達の援護に向かった。
うーん、メグリさんがあんな風になるなんて珍しいな。もしかして調子が悪いのかな?
「はっ!」
メグリさんが振るった短剣から不可視の風の刃が飛び、向かってきた魔物達を切断する。
メグリさんは魔物達の毒を受けない様に、属性強化を上手く使って中距離での戦いを行っていた。
うーん、でも戦い自体はちゃんと間合いを取って油断なく戦っているなぁ。
「よっしゃ復活っ! 兄貴のお陰で毒も怖くないぜ! よくもやってくれたな手前ぇっ!」
そして下級万能毒消しが効いたジャイロ君が、すぐさま戦いに戻っていく。
「あ痛ぁー!」
あっ、今度は別の毒を持つ魔物に噛まれた。
「あんの馬鹿ぁー! いくら安くてもお金かかるんだからねぇー!」
「くっそー! ノルブのヤツが居れば解毒魔法でもっと楽なのによう」
「しょうがないでしょ、ノルブは教会に呼ばれて朝からいないんだから」
と、今日はいないノルブさんの事を話しながらミナさんが下級万能毒消しをジャイロ君に呑ませていた。
◆
「ふー、この辺りの毒持ちの魔物はあらかた倒したみたいだね」
魔物の襲撃が一段落した事で、僕達は一息つく。
「おかげでかなり素材がたまったわ。レクスさんの魔法の袋が無かったらとっくに切り上げていたところね」
「そうですね。でもこれだけ倒せば、冒険者ギルドも満足してくれると思いますよ」
そう、僕達は本来受けた依頼とは別に毒を持った魔物を退治していた。
腐食の大地からやってきた魔物達を討伐して欲しいと頼まれたから。
◆
それは朝、仕事を探して冒険者ギルドで依頼ボードを眺めていた時の事だった。
「優先依頼ですか?」
依頼を見繕っていた僕達に、ギルドの受付嬢さんが魔物退治を頼んできたんだ。
「はい、ギルドからの通達で発生する特殊な依頼で、緊急依頼ほど急を要するものではありませんが、特に急ぐ用事が無い場合は優先的に受けて貰う必要のある依頼です」
へぇ、そんな依頼もあったんだね。
「内容は腐食の大地から出てきた毒持ちの魔物退治です」
「腐食の大地!?」
と、受付嬢さんの言葉を聞いたメグリさんが、珍しく声を上げた。
「どうしたんですかメグリさん?」
「あ、うん……ちょっと危険な場所の名前が出てきたから驚いただけ……うん」
危険な場所か。確かに腐食の大地だなんて、名前を聞くだけで危なそうな場所だもんね。
「ええと、それでですね、依頼地域は腐食の大地周辺の土地及び平時には見かけない毒を持った魔物が確認された地域です。期間は毒を持った魔物の姿が確認されなくなるまでです」
なんというか、随分とおおざっぱな依頼だなぁ。
「優先という事ですけど、その間は他の依頼を受けちゃいけないんですか?」
「いえ、今回は内容が魔物退治なので、他の依頼を受けつつ毒を持った魔物を発見したら討伐してもらうくらいで構いません。ギルドとしてはとにかく数を減らしたいので。ただ、もし発見しても戦う事が出来ない状態でしたら、その時はなるべく早くギルドに発見した場所を報告してください」
成る程、普通の依頼+討伐と考えれば良いんだね。
「わかりました。ところで腐食の大地っていうのは何なんですか?」
と、僕が受付嬢さんに聞くと、受付嬢さんはえ? と首を傾げる。
「あれ? レクスさんは腐食の大地の事をご存知ないんですか?」
「名前だけは聞いた覚えがあるんですが、詳しくは知らないですよ」
「成る程。では僭越ながら私が説明させていただきます」
僕が知らないと告げると、受付嬢さんが姿勢を正して腐食の大地の事を語り出す。
「腐食の大地とは、およそ千年前に出現した毒の沼地の事です」
「毒の沼地ですか?」
「ええ、その沼地は少しずつ周囲の土地を汚染し、毒に侵された大地を広げていったんです」
周囲を汚染して広がっていくって……
「まるで魔獣の森みたいですね」
うん、木の魔物達で出来た魔獣の森も、少しずつ周囲の土地を侵食していって、リリエラさんの故郷の村を飲み込んでしまったんだもんね。
「その通りです! 腐食の大地も魔獣の森と同じ危険領域なんです!」
「危険領域!?」
その名前を聞いて、僕は自分が何時腐食の大地の名前を聞いたのかを思い出す。
そうだ、アレはトーガイの町でBランクになった時に、ギルド長に聞いたんだった。
冒険者の中でも一定ランク以上の者にしか入る事が許されないほどの危険な場所、危険領域。
腐食の大地もそんな危険な場所の一つだったっけ。
「一説には悪魔が作り出したとも言われる腐食の大地では、およそ100年に一度、そこで生息している魔物達の大繁殖期が起きるんです。そして腐食の大地から追い出された魔物達が周囲の土地に住み着くんです」
受付嬢さんが両手を広げながら沼地を追い出された魔物が広がってゆく様を演出する。
「それで最近毒の魔物の討伐依頼が多かったのね」
受付嬢さんの説明を聞いて、リリエラさんが納得の声をあげる。
「その通りです。しかも今回は前回の魔物達の氾濫から50年程しか経っていないので、ギルドとしても困っていたんですよ。例年通りなら、その時期に合わせて毒消しのポーションの材料を集めて十分な在庫を用意していたそうなんですけど、今回は予想外に早かったので準備が遅れていたんです」
と、そこで受付嬢さんがニッコリと笑顔を見せる。
「ですが、その問題もレクスさんの下級万能毒消しのお陰で何とかなりました! 一部の強力な毒を持つ魔物については急ぎ材料を集めていますが、それ以外の毒を持った魔物はこの毒消しのお陰ですぐに在庫が用意できそうで助かっているんですよ! なにせBランクのインフェルノスパイダーの毒にも効果があったくらいですから!」
「インフェルノスパイダー!?」
その名を聞いて、ミナさんが驚きの声をあげる
「知ってんのかミナ?」
ジャイロ君が良く分からないと首をひねりながら聞くと、ミナさんが青い顔で頷く。
「かなり凶悪で嫌らしい毒を持つ魔物よ。犬くらいの大きさがあるから、毒とか関係なく普通に襲ってくるしね」
「そうですね。インフェルノスパイダー単体の強さはDランク相当の強さですが、それに毒の危険度を考慮してBランクとなっています」
と、ミナさんの説明に受付嬢さんが補足する。
「なんだよ、Dランクなら大した事ねーじゃん。薬もあるなら楽勝だろ」
「あのね、インフェルノスパイダーの素材はお金にならないのよ。Dランク相当の実力って事は殻や牙もその程度でしかないの。それなのに危険度をBランクに引き上げる毒は持ってる。唯一価値があるのは毒液だけど、戦う為に用意する毒消しの方が高くつくのよ。だからインフェルノスパイダーは……っていうか毒を持った魔物の大半との戦闘は経費の方が高くつくから嫌がられるのよ」
確かに、前世でも都市を襲撃されたから絶対に倒さないといけないみたいな状況でもない限りは、強力な毒を持った魔物は放置されるか、遠距離からその土地ごと一掃していたもんね。
「そういう訳で討伐の危険度は大分減ったんですが、沼地から出てきた魔物が一般の人を襲う危険がある事には変わりがありません。ですから腐食の大地の魔物の繁殖期が収まって外に出た魔物達をあらかた狩り終えるまでは優先的に毒持ちの魔物を退治してほしいんです。代わりに、ギルドからは優先依頼が取り下げられるまでの間、毒持ちの魔物の素材買い取り金額のアップおよび各種毒消しの割引を行っております。そして毒持ちの魔物を多く倒す程、ギルドへの貢献度が高いとされランクアップの審査での評価対象となります」
「おおっ! 毒持ちの魔物を倒すとランクアップ出来るのかよ!」
「断定ではなく、審査で有利になるというものです。とはいえ、参加しない方よりはランクアップに近づくのは間違いありません」
「あれそういえばリリエラさんのSランク昇格ってどうなってるんですか? 確かタツトロンの町のギルド長からSランクに推薦してもらえる約束になってた筈ですけど」
「ええ、その件でしたら既に先方から連絡を頂いております。リリエラさんのSランク昇格審査の判断材料の一つとしてカウントさせてもらっていますよ」
僕がタツトロンの町での出来事を思い出して聞くと、受付嬢さんがそんな風に答えてくれた。
「あれ? すぐSランクになれるんじゃないんですか?」
「そのですね、冒険者の上位ランクへの昇格は、下位ランクの昇格と違って複数の審査が必要になってくるんですよ。単に力が強いだけじゃ駄目なんです」
「え? でも僕はすぐSランクになりましたよ?」
「あのですね、上位ランクへの昇格というのは、単純な強さは当然として協調性や人間性、ギルドおよび国家への貢献度なども考慮しないといけないんです。特に人間性に関しては時間をかけてじっくり見ていかないと分からないものです」
うん、言いたいことは分かるよ。
「ただレクスさんの場合、国家やギルドへの功績が多すぎて……」
「え? そんな大した事をした覚えはないですよ?」
本当に大した事してないんですけど。
「ドラゴンをはじめとした強力な魔物退治の実績で実力に関しては言うまでもなく、魔獣の森を貫通する街道の設立、街道内での休憩を可能とする結界の設置。更に魔物除けポーションの販売によって、多くの人々が安全に旅を行えるようになりました。これらの実績によって人々が得られる恩恵は計り知れず、またこうした戦闘行為以外での実績が、レクスさんの人間性の保証となっています。ぶっちゃけここまでやっておいて今更審査とか何を審査するんだよと言われた程です」
なんでそんなに投げやりなんだ審査官……
もっと調べる事は色々あるだろうに。
「まぁそんな訳で、すぐにリリエラさんが昇格出来る訳ではありません」
そうなんだ。残念だなぁ。
「別にいいじゃねぇか兄貴! この依頼を受けてバンバン魔物を退治すりゃああっという間にランクアップできるんだろ!」
と、これまでの話を聞いていたらしいジャイロ君がそんな事を言ってきた。
「偉い連中が色々調べるのに時間がかかるんなら、それでいいじゃねぇか。それに今回は素材の買取価格もアップするんだしさ、ランクアップが早くなる上に金も多くもらえるなら得じゃん!」
おお、さすがジャイロ君だ。なんというか物凄いポジティブだよ。
「つー訳でよ! さっそくその万能毒消しってのを買って毒を持った魔物を狩りまくろうぜ!」
早くランクアップしたいと、ジャイロ君はやる気満々だ。
「さすがに新人は気合が入ってるわね。私も負けてらんないか」
と、ジャイロくんに触発されたのか、リリエラさんも気合を入れている。
「しょうがないわね。でもま、確かにランクアップが早くなるならやらない手はないか」
二人に負けじと、ミナさんもやる気を出す。
「……」
けれどそんな中で、メグリさんだけは何故か無言だった。
◆メグリ◆
「へっへー! 今日は大漁だったぜ!」
魔物退治から戻ってきた私達は、冒険者ギルドへと入ってゆく。
ギルド内は既に多くの冒険者達が居て、素材の買取には時間がかかりそうだった。
「さーって、今日はいくらになるかなっと!」
けれどランクアップの期待が大きいジャイロは、行列の長さも気にならない様子でウキウキと買い取りの列に並ぶ。
「ねぇ、私は先に戻ってもいい?」
「ん? どうしたんだよメグリ? トイレか?」
「この馬鹿っ!」
「痛ってぇーっ!」
馬鹿な事を言ったジャイロを、ミナが思いっきりはたく。
「メグリ、もしかして具合が悪いの? 今日はなんだか上の空だったし」
ん、さすがにミナには気付かれたか。
「ん、大丈夫。ちょっと疲れただけだから」
「そう? まぁどうせ買取には時間がかかるし、先に戻ってていいわよ」
「ありがと」
最後まで心配そうな様子のミナと分かれ、私は冒険者ギルドを後にした。
◆
「……やっぱり」
一足先にレクスの屋敷に戻ってくると、門の前には一台の馬車が陣取っていた。
そして馬車の傍には、綺麗に整えらえた白髪の男の人の姿。
一見普通に見える服だけれど、その服に使われている生地は明らかに良いもので、その人が裕福な家庭の生まれであると告げていた。
というか、私はその人が誰なのかを知っていた。
「お久しぶりですな」
私の姿に気づいたその人が話しかけてくる。
「バハルン……」
私は彼の名前を呼ぶ。
かつて、私をトーガイの町まで送り届けた人の名を。
「貴方が来たという事はやっぱり……」
バハルンがなんとも言えない表情で頷く。
「ええ、お役目を……果たす時が来ました」
「ん、分かってる」
私はすべてを受け入れて、彼の手を取る。
「それでは参りましょうか……メグリエルナ姫」
バハルン(:3)レ∠)_「第一話で登場して以来、遂に本編に参戦だぁー!」
インフェルノスパイダー_:(´д`」∠):_「スナック感覚で狩られた僕達の事も忘れないでください」
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