第134話 ティラン対ノルブ
_:(´д`」∠):_「更新遅れてすみません」
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◆ノルブ◆
『じゃあ試合を再開しましょうか』
龍帝の儀の決勝戦が始まって少しした頃に、空から何かが試合会場に飛びこんできました。
けれどレクスさんが武器を大きく振ったと思ったら、その何かが空高く弾き飛ばされて大爆発してしまいました。
なにか大変な事が起きたんだと思うんですが、当のレクスさんは何事もなかったかの様に試合を再開しようと言ってきました。
「ええと、良いんですか今の? 何か大変な事に巻き込まれたような気がするんですけど」
会場に飛び込んできたメグリさんの発言を聞くかぎり、今回も魔人が関わっていたみたいなので急いで対処しないといけないと思うんですが。
っていうか、こんなに頻繁に魔人に遭遇するってそれだけでももう異常事態ですよね?
『周囲に敵の反応はありませんから、大丈夫ですよ』
「ええっ!? あー……いや……うーん……レ……いえティランさんがそう仰るなら……」
レクスさんの探査魔法で危険が無いと言うのなら、本当に問題はないんでしょうね。
もしかしてさっきの爆発は襲ってきた魔人を返り討ちにした影響とかだったりするんでしょうか?
……まぁレクスさんのする事なのであまり深く考えない様にしましょう。
でないと僕の精神が保ちませんから。
「ふぅ……」
僕は観念してメイスを構える。
攻撃は考えない。メグリさんの攻撃を回避する事の出来ない僕では、彼女よりも速いレクスさんの攻撃を避ける事は不可能です。
だからなんとしてでも最初の一撃を耐えて反撃します。
倒せるとは思っていません。
でもせめて一発くらいは反撃してみたいじゃないですか。
弟子として、師匠に成長しているんだと……
『では本気で行きますよ!』
「すみません本気で手加減して下さい! お願いします!」
一撃くらい当てたいとか考えてすみませんでした!
試合なんかで死にたくありません!
慌てて身体強化魔法を防御専念で発動させます。
後の事なんて考えず、たった一発を耐える事だけを考えて。
でなければ、最悪命がありません!
『はぁっ!』
レクスさんが一瞬で距離を詰め、その剣が僕のメイスに当たります。
これはチャンス!
体で受けるよりも、武器で受けた方が明らかに守る上では有利だからです。
バキンッ!
と思ってたら僕のメイスがあっさりと折れました。
あ、あれー? このメイスの軸、結構太いんですけど……
それに軸部分はレクスさんがブルードラゴンの角を加工したもので、更に強化魔法でより強固になっているのでミスリル製の武器より硬い筈なんですけどーーっ!?
などと考えている間にレクスさんの剣が僕にぶつかります。
胴体が真っ二つにされる恐怖に身をすくめましたが、幸いにも僕の僧服はレクスさんがドラゴンの鱗の粉末を固めた金属糸で作ってくれた特別製の僧服。
下手な鎧よりも遥かに強靭な品です。
頑丈とは聞いていましたが、まさか本当に剣で切る事が出来ないなんて驚きで……
ゴキボキゴキッ!!
はい! 真っ二つにはなりませんでしたが肋骨が音を立てて折れていくのが分かります!
痛い痛い痛い! 気絶しそうになるほど痛いですが、痛みで目が覚めて気絶すらできません!
いっそ殺して!
……ああ、そういえば試合前にリリエラさんとミナさんがうっかり殺さない様に手加減しろと何度も念を押していましたっけ。
その後でレクスさんが「大会ってそこまで気を付けないといけないんですねぇ……ならいっそ刃を潰した試合用の武器を作った方が良いのかな?」とか言ってましたっけ。
それでティラン用の装備を作りに行ったんでしたね……ってなんでそんな細かい記憶を思い出せるんですか!? もしかしてこれって走馬灯とかそういう何かはっきり見えちゃいけない記憶のような気がというか体が浮いて浮いて浮いて浮いて飛んでるぅーーーーーーっ!?
そう、気が付けば僕はレクスさんの振り抜いた剣に吹き飛ばされ、そのままの姿勢を保ったまま真横に飛んでいました。
あはは、目の前の風景が真横に流れていくって新感覚の光景……
「ぐはっ!?」
どこまでも飛んでいくかの様な錯覚は試合会場の壁にぶつかった事でようやく止まったものの、その衝撃は凄まじく、僕は余りの痛みにとうとう意識が薄れていくのを感じていました。
薄れゆく意識の中、レクスさんの困惑する声が聞こえます。
『しまった、剣が折れちゃったよ。やっぱり素材がいまいちだと強度もいまいちだなぁ』
ありがとういまいちな素材さん。貴方のお陰で僕は命だけは助かりました……
ゴフッ……
◆メグリ◆
「ノルブ選手場外! 勝者ティラン選手!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼」」」」」
「す、すげぇ! あの鉄壁のノルブが吹き飛んだぞ!」
レクス達の試合が終わり、観客達が歓声を上げていた。
皆が知らない所で魔人がこの町を襲おうとしていた事も知らないんだから、皆本当にのんき。
「そうか、攻撃の効かないノルブは吹き飛ばせば勝てるのか!」
「いやその時点で無理じゃね?」
大丈夫、相手の死角に入って身体強化魔法で一点突破すれば急所狙いで十分行けるから。
「まさかあのノルブが倒されるとはなぁ……一体何者なんだティランは……」
何者かと言えば、私達の師匠者かな。
「なぁ、やっぱりそうなんじゃないのか?」
「あ、ああ……やっぱそうなのかな……?」
「ティランが、龍帝陛下なんじゃないのか……?」
ノー、違う。
「ノルブの鉄壁を崩す程強いって事はやっぱりそうなんだよな……?」
「それに悪党共を片っ端からとっ捕まえてくれてる黒い鎧の騎士様達があの竜騎士って噂だもんな」
ううん、それはレクスが作ったゴーレム。
「じゃあやっぱり、龍帝陛下……」
「龍帝陛下だ……」
「龍帝陛下が龍帝の儀に優勝したんだ……」
「伝説の龍帝陛下が蘇ったんだ……」
「うぉぉぉぉぉっ! マジかよ! 伝説は本当だったんだな!」
「龍帝陛下バンザーイ!」
「龍帝陛下-っ‼」
「……っ」
笑いをこらえるのって実はとっても辛いと、私は今日初めて知った。
目立たない様に鎧で正体を隠してるのに、その所為で思いっきり目立ってるとか、なんの冗談?
正直言えば、私達はレクスの正体がバレても問題だとは思わない。
寧ろ冒険者なら、ジャイロ程とは言わなくても名声を高めたいと思うのが普通。
だからレクスの振る舞いは本当に珍しい。
皆に勘違いされて王様扱いされたくないなんて、絵に描いた様な善良さ。
その裏で本当の龍姫の後継者であるリューネを助け、国を乗っ取った宰相達や魔族を返り討ち。
弱きを助け、悪しきを挫き、見返りを望まないその姿は、まるで物語の英雄そのもの。
「「「「「龍帝陛下―っ!!」」」」」
ふふっ、龍帝コールを受けて、試合会場の上のレクスが困惑してる。
正直言えば、私達はレクス程の力があれば彼が王様になっても驚かないし、寧ろなって欲しいとすら思う。
だってレクスなら他のどの王様よりも良い王様になって皆を幸せにしてくれると思うから。
そうなると私達も嬉しい。
でもレクスはそれを嫌がるんだろうな。
レクスはいつだって自由な冒険者である事が、何より大事ですって言うだろうから。
「だからレクスは面白い」
ただ、何か忘れているような気が……?
ノルブ((( ;゜Д゜)))「い、生きてる……」
折れた素材(:3)レ∠)_「感謝しーや」
ノルブ((( ;゜Д゜)))「あざーっす!」
レクス(:3)レ∠)_「ちなみに真っ二つになっても繋げる事が出来ます」
ノルブ((( ;゜Д゜)))「真っ二つにしない事を考えて!」
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