第128話 ある密偵達の暗躍
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◆とある密偵◆
「くっ、どうしてこうなった!」
私は王都よりやってきた反龍帝派の密偵。
というのは仮の姿で、数百年前からこの国に潜伏し続けていた魔人だ。
つまり、人間にとっては本当の意味での密偵と言える。
現代の人間共は脆弱かつ無力、姿を変える魔法を使えば容易に人間に溶け込む事が出来る上に正体がバレる心配がない。
私に与えらえた役割は、この国から竜騎士の血と技を失わせる事。
人間の文明が弱体化したこの時代でも、ドラゴンの存在は無視できるものではないからな。
そして幸いにも、先の大戦によって竜騎士達は大きく弱体化していた。
最初は意図的に流行り病を起こして竜騎士達を自然死に見せかけた。
かつての人間達なら、あの流行り病を治療する事も出来たが、医療技術が退化した人間共は面白いくらい簡単に流行り病で死んでいった。
病にかからなかった者達も、反龍帝派を上手く利用して任務の名目でおびき寄せて始末した。
そうしてこの国の竜騎士の血は途絶え、書物などによって残されていた竜騎士の教えも時間をかけて一つ一つ処分してきた。
あとは同胞の決起と共に内側からこの国を破壊するばかりという状況だったのだが……
「よもや人間共に捕まるとは!」
タツトロンの町に現れたという龍帝と龍姫を、龍帝の儀にかこつけて抹殺する為にやってきた私だったのだが、ある日突然現れた黒い騎士達に囚われてそれどころではなくなってしまったのだ!
魔人であるこの私が! なすすべなく!
そりゃあまぁ、確かに私は戦闘向けではない密偵だ。
だがそれにしたって人間に比べて圧倒的なまでに肉体も魔力も強大なこの私が人間ごときに負ける筈がないのだ!
……いやまぁ負けたのだが。
しかもマジックアイテムで力を封じられて反抗も出来ないときたものだ。
結局私はこの町の自警団に捕まり、牢屋に入れられていた。
ああ……なんという屈辱であろう。
魔人たる私が人間に捕まるとは……
しかしここで好機が訪れた。
あまりにも捕まえた犯人の数が多い為、町の牢屋が一杯になってしまったのだ。
しかし我々は反龍帝派として捕まっている以上、情報を吐くまでは下手に始末する事が出来ない。
そこでこの町の役人どもは苦肉の策として、我等を王都に護送する事に決定した。
これはチャンスだ。王都は反龍帝派が牛耳っている。
取り調べどころか即日解放も夢ではない。
「ほれ、さっさと馬車に乗れ! 言っておくが王都で仲間に助けて貰えると思うなよ! すでに王都の反龍帝派は根こそぎ捕まって、王都は龍帝派が取り仕切っているらしいからな!」
「なんだと!?」
そしたら護送用の馬車に我々を載せていた騎士が得意満面の顔でそんな事を言ってきた。
なんという事だ!よもや王都にまで敵の手が回っているとは!!
これでは王都で活動していた同胞に助けを求める事もできんではないか!
ど、どうすれば良いのだ!?
「ああ、こう考えると、退屈と思っていた王都での暗躍の日々は充実していたのかもしれんなぁ」
などと陰鬱な気分で馬車に揺られていた私だったが、突然馬の嘶きが聞こえたかと思うと馬車が止まった。
「なんだ!?」
「まさか盗賊か!?」
盗賊とは運の悪……いやこれは幸運かもしれん。
あの黒い騎士共ならともかく、人間の盗賊なら何とでもなるというものだ!
……この封印さえ外せればな。
だがそんな心配も杞憂であった。
護送用の馬車の扉が無理やりに開けられ、外から誰かが顔を見せる。
「助けに来たぞ」
「お、お前は!?」
そう、私はその顔に見覚えがあった。
「ダルジンか!」
私を助けに来たのは、同胞たる魔人ダルジンであった。
「む? お前も捕まっていたのかアザム」
「あ、ああ。信じられん強さの騎士共に襲われた。だが何故お前がここに? お前は王都に居たのだろう? 王都でもあの黒い騎士共が反龍帝派を襲っていた筈だ」
「そうか、お前も例の黒い騎士に襲われたのか。成程、それなら納得だ」
やはり王都でもあの黒い騎士共が暴れていたのか。
『俺は拠点に出向いていたから助かった』
ダルジンが人間共に聞こえない様、念話で会話をしてくる。
この場合の拠点とは、王都にある拠点ではなく、このタツトロンの町の近くにある朽ちた要塞の事だ。
あそこは我々魔族がドラゴニアを落とす為の前線基地として使っているからな。
『何? 連絡魔法でも転移門でもなく直接出向いたのか!?』
我々は万が一にも拠点の場所がバレる事が無いよう、拠点に直接行く事はめったにない。
人間共の尾行ではなく、龍峰のドラゴン共に察知される事を警戒してだ。
そして拠点に赴く際には、王都に設置された転移門を使って移動する。
なのに何故直接拠点に?
『転移門を使って拠点に向かった者達が戻ってこなくなった。そしてしばらくしたら転移門が起動しなくなった。おそらく向こうの門が機能停止したらしい』
『緊急事態か!?』
『ああ、だから直接出向いたのだが……』
『何があったのだ!?』
ダルジンが苦み走った顔になる。
『拠点に近づいた途端に襲われた』
『敵は何者だ!? あの黒い騎士達か!?』
『いや人間共ではない。要塞の防衛機構だ』
『何!? あの要塞は朽ちていて、全ての機能が死んでいた筈だぞ!?』
信じられん! あの要塞は完全に朽ちており、これまで全く動く気配がなかったのだぞ!?
『理由は分からん。だが現に要塞の防衛機構は起動している。おそらく同胞達もアレにやられたのだろう。転移門もソレに破壊されたのだろうな』
なんという事だ。
まさか私が捕まっている間に、そんな事になっていたとは……
『こうなると龍帝の復活は真実なのだろうな。我々魔人の暗躍を察知し、連絡経路を封じてから人間共の反龍帝派ごと俺達を一掃した』
『そうか! 反龍帝派の取り締まりは我々を捕らえる為の隠れ蓑か!』
『ああ、人間共にとっては俺達魔人は伝説の存在だからな。俺達を捕らえる為と説明するよりも、反龍帝派を捕らえる為と説明した方が、強引な取り締まりに対する反感を招きにくいと言う判断だろう』
『豪胆な判断だな……』
二つの敵勢力を一気に排除出来て一石二鳥、いや龍帝の力を示す事も出来て一石三鳥という事か……
『だが敵にも誤算はあった。俺が直接拠点に出向いて町から離れていた事で、人間共の襲撃を逃れる事が出来たという事だ』
むぅ、確かにな。おかげで私も助かった。
『拠点との連絡が取れないのは本拠地も同じだ。あそこには多くの同胞が居た。準備が出来次第拠点を制圧する為の部隊が動くだろう。その前に我々も何らかの手柄を立てねば、無能者の烙印を押されかねん』
『しかし何か方法はあるのか? あの黒い騎士共は悔しいが強いぞ?』
『分かっている。故に一点突破だ。まずはこのまま龍帝の儀を行わせる』
『それに何の意味がある?』
『おそらく龍帝の狙いは龍帝の儀の終了と共に即位宣言をする事だろう。儀式は竜騎士に相応しい実力を民に見せつけるのにうってつけだからな。それはつまり我々の狙い通り、本物の龍帝の正体が判明するという事だ。あとは龍帝さえ始末すれば竜騎士共も混乱して戦いどころではなくなる。あとは反龍帝派の連中を囮にして逃げるだけだ』
『そう上手くいくのか? あの黒い騎士どもの守りを抜けるのは困難だぞ?』
するとダルジンがにやりと笑みを浮かべて懐から古ぼけた箱を取り出した。
そして箱を開けると、中から光り輝く宝石が姿を現す。
『これを使う』
『それは?』
『かつて人間共が作り出したマジックアイテムで、マナブレイカーという。周囲の魔力を吸収し続け、限界を超えると共にすさまじい爆発を引き起こす』
むぅ、確かに言われてみれば魔力を吸収される感覚がある。
と言うかだな……
『おいおい、何時爆発するか分からんものが信頼できるのか?』
『安心しろこの専用の箱に仕舞っておけば魔力を吸収しない。蓋さえ閉まっていればな』
成る程、使う時に外に出せばいいのか。
『しかもこのマナブレイカーは魔力を吸収する程魔力を吸収する力が強くなる。つまり爆発の瞬間は防御魔法の魔力までも吸収してしまう事で身を守る事も不可能なのだ』
『それはまた厄介な恐ろしいマジックアイテムだな』
防御魔法を無効化するのか、敵にとっては厄介極まりない兵器だな。
ただ同時にそれは、我々も至近距離で爆発したらただでは済まないという事でもある。
『それとこれは俺の推測なのだがな、あの黒い騎士共の装備はマジックアイテムだと俺は思っている』
『突然何の話だ?』
『我々は人間共が竜騎士の技を失う様に活動を続けてきた。それ故、龍帝達の戦力も完全ではないと俺は思っているのだ。となれば、あの黒い騎士達の強さの源は何だと思う?』
『それがマジックアイテムという事か』
『ああ、龍帝は何らかの手段で大量のマジックアイテムを見つけたと俺は推測している。失われた技の代替戦力を求めたのだろうな』
ふむ、それはあり得る話だ。
『そして龍帝達は十分な数のマジックアイテムが揃った事で行動を開始した』
『だがそれが何の関係がある? 人間共の懐事情などどうでも良かろう?』
『言っただろう? このマナブレイカーは魔力を吸収する。つまりあの黒い騎士共のマジックアイテムを動かす魔力もだ』
『そうか! マナブレイカーならあの黒い騎士共も一網打尽と言う事か!』
『その通りだ! あとはこれを上空から落とせば、人間共は何が起こったのかも分からないうちに町ごとドカーンだ!』
『ドカーンか!』
『そうだドカーンだ! そして万が一生き残りが居たとしても、他の町から集めてきた反龍帝派の残存戦力で攻めれば一網打尽だ!』
『『ははははははははははっ!!』』
これは良い! 上空からでは人間共の驚く顔が見れないのは残念だが、これは楽しい花火が見れるぞ!
くくく、この私を捕らえた屈辱、必ずや晴らしてくれよう!
はーっはっはっはっはっ!!
魔人達(:3)∠)_「はははははははははっ!!」
モフモフΣ(:3)∠)_「おおテリブル、誰かが凄まじい勢いで旗を立てている気がする」
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