第124話 宰相探索
_:(´д`」∠):_「あっとぅーい! 皆さんも熱中症にはお気を付け下さい」
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「よーっし、ドラゴニア王都へのゲート開通っと!」
ドラゴニアの王都に送ったゴーレム達から、転移ゲートのマーカー設置が完了したという連絡を受けた僕は、さっそくゲートを開いて王都へとやってきた。
ゲートは命令通り王都の外れにある目立たない場所に設置されており、周囲には誰の姿もない。
「それじゃあ黒幕達には退場してもらおうかな」
ゴーレムを王都に送った理由は、ゲートを設置するのがメインじゃない。
これはあくまでも二つの町の移動をスムーズにする為だ。
今回の事件では、龍帝を狙って反龍帝派が反旗を翻した。
それだけなら国内の貴族同士のいざこざとして放っておくんだけど、その為に自分達の国の民を人質にしようとするのは流石に見過ごせない。
このまま放っておいたら、もっと多くの人達が犠牲になってしまう可能性が高いからね。
だから僕は龍姫の儀が無事に終わって、リューネさんが自らの素性を明かすまでの間、反龍帝派が悪さを出来ない様に彼等を拘束しにきたんだ。
中身のないゴーレム達なら、万が一捕まっても誰かを危険にさらす心配もないしね。
それにバキンさんから龍帝派のメンバーが誰なのかは確認してあるから、うっかりゴーレム達が味方の貴族を捕らえたりする心配もない。
まぁ王都を守る騎士達と戦う可能性があるから、ゴーレム達には最小限の反撃以外はするなとも言ってある。
これは後々リューネさんが王族として復権した時に、騎士達の恨みを買わない為の対策だ。
そんな指示を出していたから、ゴーレム達も結構行動不能になっていると思ったんだけど、意外と壊れていないらしい。
王都を守る騎士達は、ゴーレム達の行動に敵意がないと察したのかな?
そう考えると、実は騎士達は宰相達の国家支配をよく思っていない龍帝派だったのかも。
そんなこんなでゴーレム達による城の制圧は無事完了し、主だった反龍帝派の貴族達を捕らえる事に成功していた。
ただ一人、主犯格と思われる宰相を残して。
「それで、宰相の行方は分かった?」
『……』
けれどゴーレム達はまだ見つかってないと首を横に振ると、御免なさいと頭を下げてくる。
「城を制圧したのに宰相が居ない。となるともう逃げた後って事か」
宰相の屋敷にいた家族も使用人も宰相の行方は分からないらしく、宰相の行方は完全に見失っている。
うーん、ゴーレムにも探査機能をつけておくんだったよ。
ありものの材料で数を揃えただけだったのがここに来て災いしたなぁ。
「それにしても家族まで見捨てて逃げるなんて酷い奴だなぁ」
こちらの襲撃を察知してすぐに逃げ出すあたり、宰相は判断が早いね。
前世でもそうだったけど、こういう逃げ足の速い悪党は後々面倒な事をしでかすんだよね。
できれば早く捕まえたいところだけど。
「屋敷に隠し通路か転移装置を用意していたんだろうなぁ」
ゴーレムに脱出経路を探させつつ、僕は探査魔法で周辺の反応を調べる事にする。
王都が襲撃されたこのタイミングで王都から離れる反応があれば、それは高い確率で反龍帝派だろうしね。
それがスピードを出した馬車だったりしたら、ほぼ確定だ。
「あれ? 反応ないなぁ」
けれど残念な事に、王都から逃げる反応は察知できなかった。
「うーん、残念」
これは転移装置で逃げたのかなぁ。
だとすると追跡する為に転移装置の隠し場所を探さないと。
「王都や仲間をあっさり見捨てて逃げるという事は、どこかに大きな拠点を持っている可能性があるかも」
ただの悪党貴族かとおもっていたけど、もしかしたら予想以上に厄介な相手かもしれないね。
前世じゃ権力者の中に邪教集団の幹部とか、古代の秘宝を見つけて世界支配を企んだ魔法研究者とかたくさん居たし、宰相もそんな感じの人物だったのかなぁ。
そういえばこの時代に転生してからはそういう支配欲に取り憑かれた悪党って見ない気がする。
もしかしたら長い時間をかけて、世の中が少しずつ良くなっているのかもしれないね。
うん、そう考えると、前世や前々世で身を粉にして戦ってきたのも無駄じゃなかったのかもね!
と、そんな時だった。
僕のいる場所に誰かが向かってくる事を探査魔法が示した。
「ん?この反応……」
僕は即座にティランの装備を纏って正体を隠すと、反応の察知に集中する。
けれど不思議なことに、その反応が近づいてくるのは道からじゃあなく……
『家を通り抜けてくる?』
そう、反応は住宅街をまっすぐ突き進んでいた。
反応のとおりに進めば、途中の家にぶつかってしまう筈なのに。
『これはもしかして……』
ゴーレムを引き連れ反応が進む先にあるものを探すと、いかにもな家を発見する。
王都の外れにあるにしては妙に大きく、それでいて中途半端に古い家だ。
『うん、典型的な逃走用の家だね』
前世や前々世でも見たことがある。
こういう家には権力者が自分の屋敷に作った逃走用の隠し通路の出口があるんだよね。
そして一般人のフリをした当時の権力者の手下の子孫が管理人として暮らしている。
で、いざという時に権力者が隠し通路を通ってきたら逃亡の手助けをするって訳だ。
探査魔法の反応を確認しつつ屋敷の敷地に入ると、住人の反応がある家を無視して側にある納屋に向かう。
『ここだね』
探査魔法の反応は家じゃなくこっちの納屋に向かっている。
そして納屋の中を調べると、案の定床の一角に地下へと降りる階段があった。
階段を降りた先は使われた様子のない小さな倉庫だった。
「この辺りかな?」
地下室の壁を調べると、やっぱり隠し扉があった。
そしてドアを開けば、そこには通路が伸びており、奥から誰かがやってくる気配がする。
『もしかして宰相かな?』
近づいてくる反応は複数で、相手が宰相の可能性は高そうだ。
僕は身を隠すと、近づいてくる相手を待ち構える。
「はぁはぁ、なんとか逃げおおせたぞ。あとは馬車を用意させて、守備隊の騎士達を護衛につけさせれば王都を脱出できるな」
姿を現したのは、豪勢な服を纏った貫禄のある老人と護衛と思しき数人の男達だった。
明らかに貴族と分かる出で立ちから、この老人が高位の貴族であるのは間違いない。
これは宰相である可能性が高いね。
よし、それじゃあ捕まえよう。
『パラライズネット!』
僕は姿を現すと、即座に護衛に向けて麻痺の魔法を放った。
「「「「ぐぁっ⁉︎」」」」
即座に追撃に移ろうとしたんだけど、護衛達はあっさりと倒れてしまう。
『えっ⁉︎』
なんだ? 護衛が妙に弱いような?
「なっ⁉︎」
確認する為に魔法の範囲から外した老人が狼狽する。
僕は老人の腕をとって関節を極めると、地面に押しつけて身柄を確保する。
「ぐぁっ!」
けどまいったな。これはやられたっぽいぞ。
「き、貴様……私が、ドラゴニア宰相ルガメーノ・マザヌ・イセメンと知っての狼藉か!」
老人は自分が宰相だと名乗るけど、いまさらだね。
『嘘をつくな』
「な、何っ⁉︎」
この自称宰相の護衛はいくらなんでも弱すぎだ。
うっかり宰相を巻き込んで殺してしまったりしないように、弱めの麻痺魔法を牽制に放ったのに、それで全員が動けなくなるなんて常識的に考えてありえない。
となれば考えられるのは、この宰相が偽物だってことだ。
うん、囮ってヤツだね。
やられたよ、きっと本物の宰相はこの隙に逃げ出している事だろう。
「お、おい! 私は本物の宰相だ! 本物だぞ! 嘘じゃない!」
やれやれ、いくら囮とはいえさすがにこの状況で本物と主張するのは無理でしょ。
それに本物が捕まった時に本物だと言うはずがない。
いやもしかしたらこの囮も、まさかここまで護衛が弱いと思っていなかったのかも。
だから雇い主が逃げる時間を稼ぐ為に、必死で宰相のフリをしているんだろう。
意外に忠誠心が高い部下を従えているなぁ。
まぁ相手はお爺さんだし、なるべく怪我をさせないように情報を吐かせよう。
拷問とか尋問が苦手だったから、そういう薬を前々世で作った経験もあるしね。
◆
口の中に信じられない程おぞましい味の液体が無理やりに注ぎ込まれる。
『宰相はどこだ?』
そして目の前の黒い鎧の男の質問を受け、口が勝手に動く。
「ぐおぉぉぉっ! わ、私が本物の宰相だ! 私はここに居る⁉︎」
恐らくは特殊な効果のポーションなのであろう。
私は賊の質問に正直に答えさせられていた。
……だというのに!
『驚いた、この薬を飲んでも情報を吐かないのか』
何故か賊は私の言葉を信じないのだ!
お陰で私は次々に違う薬を飲まされて同じ質問を繰り返される。
しかも全ての薬が全部違うおぞましい味の為、慣れる事も我慢する事も出来ないでいた。
というか貴様が飲ませた薬だろう!自分の薬の効果を信じぬか!
捕まった時点で私は方針を変えた。
宰相である私を狙った以上、相手とは交渉が出来ると判断したからだ。
宣戦布告の為の見せしめなら、別に王都に居る私でなくとも平民達が暮らす街を狙えば良い。
だがあえて王都に堂々と攻め込み、捕らえるのが最も困難であるこの国の実質的な最高権力者たるこの私を狙ったのだ。
それは間違いなく何か目的があっての事。
ならば交渉を受ければ命までは奪われない可能性が大きい。
それに一国の宰相を殺したとあれば、我が国も全力で犯人の正体を探し当て報復するだろう。
まっとうな権力者ならその様な無駄なリスクをとったりはしない。
それ故私は自分の正体を知らせて交渉の席に座ろうとしたのだが、この男は私が宰相だという事を頑なに信じようとしないのだ!
一体何を考えておるのだ!?
『次はこの薬を飲んでもらう』
「や、やめっ⁉︎うぼぁっ⁉︎」
『さぁ今度こそ吐いてもらうぞ。宰相はどこだ?』
「だから私が宰相だぁぁぁぁぁ!」
だ、だれか助けてくれ!
「護衛!護衛!︎起きて私を助けんかっ!」
私は必死で護衛に助けを求める。
「「「「……」」」」
だが護衛達は聞こえていませんよと言いたげに無言で目を瞑っていた。
「寝たふりするなぁぁぁぁあ!お前たち絶対起きているだろ!眉毛がピクピクしているぞ!」
『よし、次はこっちの薬を飲んでもらおうか』
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
宰相(இ ω இ`。)「お願い信じてぇぇぇぇぇぇぇ!」
レクス(:3)∠)_「まだ口を割らないなんて、とんでもない忠誠心だ!(驚愕)」
反龍帝派貴族達_(┐「ε;)_「ところで我々も捕まっているんですが……」
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