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第123話 王都強襲

_:(´д`」∠):_「なんとか風邪なおりましたー」

_:(´д`」∠):_「心配してくださった皆さんありがとうございます!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 ◆宰相◆


それは、私が朝食の後の一服をしていた時に起こった。


「大変ですお館様!」


「何事だ騒がしい」


 なにやら慌てた様子でやってきたのは家令のジェームズだ。

何があったか知らぬが、仮にも宰相である私の屋敷で働いているのだから、もう少し落ち着かぬか。

 どれだけ慌てていても、常に冷静に振る舞うのが使用人達の上に立つお前の役目であろうに。


「そ、それが大変なのです! 王都に正体不明の集団が侵入したとのことです!」


「何だと⁉︎守備隊は何をしていたのだ︎⁉︎」


王都の外周は魔物や敵の侵入を阻止するための防壁に守られている。さらに近づく敵は常駐している守備隊が撃退する手はずになっている筈だ。


「何でも相手は凄まじい速度で王都に接近してきて、守備隊の攻撃をものともせずに防壁まで近づくと驚くほどの跳躍力で壁を飛び越えて王都に侵入したそうです」


「防壁を飛び越えただと⁉︎」


 馬鹿な⁉︎ 王都の防壁の高さは5メートル以上あるのだぞ⁉︎

それを守備隊の迎撃をかいくぐりながら飛び越えるなど、並大抵の実力で出来ることでは無いぞ⁉︎

いや、それよりもすでに王都に侵入されたのであれば対策が必要だ。


「それで 敵はどれほどの規模だ⁉︎」


王都への侵入を強行したという事は、そのまま城まで攻め込むつもりか、王都の民を人質にするといったところが狙いか?


「しょ、詳細は分かりませんがおおよそ100名ほどかと」


「はぁっ⁉︎たった100人だと⁉︎」


 なんだそれは⁉︎︎

 王都を守る騎士団は緊急時であっても千人は即動かせるのだぞ⁉︎︎


「そんな中途半端な数でなにをするつもりなのだ⁉︎」


ううむ、訳が分からん。

守備隊の攻撃をものともせず防壁に接近し、あまつさえ飛び越えて王都に侵入した者達がたったの100人程度だと⁉︎


それならばわざわざ外から接近せずとも商人にでも変装して侵入すれば良いではないか。

なぜわざわざ危険な方法を取るのだ⁉︎


「……まさか囮か⁉︎」


わざわざ目立っての侵入だ、その可能性は高いだろう。

だがそれにしても危険すぎる。


 一体誰の差し金なのだ?

 よもや隣国のラインガル王国か?

 あそこは国境沿いで小競り合いが絶えんからな。


 だがラインガルの騎士団が攻めてきたのなら、国境砦の騎士団や近隣の領主達が放ってはおく筈がないし、そもそもたかが100名程度の兵を送ってくるわけがない。

それに連中にこれほどの実力者がいるのなら、もっと有効的な使い方をしてくるだろう。


「まさか……西のライムオスか⁉︎」


 魔導国家ライムオス、魔法の研究に優れたあの国なら、今回の強襲を実行できる魔法騎士を動員できる筈だ。

ただ騎士団の主力になるレベルで剣と魔法を同時に扱える人材となるとその数は限られてくる。

そう考えれば今回の襲撃者の数が少ない理由も分かるか。


 だが理由が分からん。

 我が国の首都とライムオスは龍峰を挟んでいる為、戦争をするには龍峰を迂回せねばならん。

でなければ龍峰に生息するドラゴンどもを刺激して戦争どころでは無いからな。

竜騎士が滅びた今、ドラゴンを戦力として使う事はできないが、こうやって天然の城塞としてドラゴンを利用する事はできる。


同時に我が国では龍峰の地理的有利を活かす為、ライムオスに繋がる街道の敷設は最小限にしか行っておらん。

下手に大きな街道を作って向こうに利用されては意味が無いからな。


そして同様にライムオス側もわざわざ我が国の領土を開発してまで進軍してくる意味もない。

ライムオスにとっても我が国にとっても、龍峰はお互いが戦争をしない為の便利な理由なのだ。


つまり現状ライムオスが我が国を襲う理由がない。

であれば、今王都を襲っている集団は、ライムオスとは何の関係も無いということか?


まさかとは思うが龍帝派ではあるまいな?

そしてタツトロンの町に龍帝が現れたという情報自体が、我らの戦力を分散させる為の罠だったのか⁉︎


……いやいや、下級貴族の集まりである奴らにそんな力などあるはずが無い。

流石に我ながら発想が飛躍しすぎたな。


だがそうなると、侵入者の正体は一体何者なのだ⁉︎


「お、お館様。我々はどうすれば良いのでしょう?」


私の考えを遮るようにジェームズが怯えながら私に指示を求めてくる。

まったく、家令ならば言われずとも行動をしてみせろというのだ!


「警備員は全員屋敷の護衛に回せ!それから城に使いを出して近衛騎士団を出動させるよう命じるのだ!」


「近衛騎士団をですか⁉︎しかし彼らは城を守るのが使命の筈⁉︎」


察しの悪いジェームズに苛立ちが募るが飲み込む。

この状況で怒鳴っても時間の無駄だ。


「近衛騎士団の役目は王族を守る事だ。だがこの国に王族が居ない以上、空っぽの城を守る必然性などなかろう」


そうだ、この国に王族はいないのだ。

国の運営は全て我ら貴族が行なっている以上、宰相である私が最高権力者だ。

ならば王都を守る名目で近衛騎士団を出動させた方が私の身を守る役に立つというものだ。


「ああそれと、価値のある物をすぐに持ち出せるようにしておけ!」


「は、はいっ!」


ジェームズが慌てて食堂を出て行くが、もし王都を襲っている集団の狙いが我ら反龍帝派であるなら、下手に外に出るのは危険だな。


だがこのまま屋敷でじっとしていても危険か。


「こうなると、登城前であった事が幸いしたな……」


 ◆近衛騎士団◆


「団長、連中全く止まる様子がありません!」


「言われんでもわかっとる!」


 副官が見れば分かる事をわざわざ報告してくる。

 だがそんなもの隣にいる俺にも見えているというのだ!


 ほんの十数分前、突如王都に不審な集団が侵入してきたとの報告が入ってきた。

防壁を守っていた筈の守備隊の不甲斐なさに憤慨していると、今度は宰相から我等近衛騎士団への出撃命令が下った。


城を守るのが役目である我々への出動命令と聞いて驚いたが、もとより騎士の使命は人々を守る事。

我らは即座に出動した……のだが。


「攻撃魔法が当たっているのに、止まる気配がないだと⁉︎」


戦場は市街地である為、市民の避難を優先しなければならない。

それ故に弓や魔法の使用は最小限に抑えているとはいえ、直撃を何発も受けているのに倒れないのはどういう事だ⁉︎


「そしてなぜ反撃してこない⁉︎」


そう、何より気になったのは、賊が一切攻撃してこない事だ。

こちらの攻撃に対する反撃すら行わないのだ。

その徹底的なまでの無反応さは、まるで命令された通りに動く人形のようで、不気味さすら漂っていた。


現に攻撃を受けても躊躇する事なく向かってくる賊に、部下達が怯えの色を見せている。


「団長、周辺住民の避難完了しました!」


「よーし、よくやった!前衛部隊は敵の足止めに全力を尽くせ!魔法使い部隊は大魔法による同時一斉攻撃の準備!直後に補助部隊は突撃部隊に強化魔法!号令と共に突撃部隊は一斉突撃!」


「「「「「了解‼︎!」」」」」


「宰相閣下より賜ったドラゴン装備に恥ずかしくない戦いを見せろ!」


前線部隊が敵の突進を大盾で必死に耐えている間に、魔法使い達が全魔力を注ぎ込んで大魔法の術式を構築してゆく。


そして魔法の発動準備が整ったところで、俺は前衛部隊に即時散開を命じる。


「総員散開!」


前衛部隊が一斉に離れる。

遮るものが居なくなった事で賊は再び駆け出すが、魔法使い部隊との距離は遠い。


「撃てっっっっ!」


『バーニングフレイム』


魔法使い部隊が放った大魔法が発動し、敵集団の中心に向けて超高温の炎塊が放たれる。


部隊のほぼ全員の全魔力がそそぎこまれた炎の塊は、ゆうに家一軒分はあろうかという大きさだった。


どれだけ強力な魔法使いであろうとも、これほどの魔法を単独で発動させる事は絶対に不可能だ。


大炎塊は敵の中心に着弾すると、周囲に飛び散るように破裂した。


「うわぁぁぁぁ⁉︎」


「た、耐えろ!」


いくら距離をとっているとはいえ、これだけの威力の魔法が炸裂すれば、こちらもただではすまない。

周囲の建物は魔法の余波を受けて燃え出す。


「ホーリーウォール!」


「ガードアップ!」


僧侶や防御魔法に長けた者達が兵士達の構える盾に防御魔法をかけ、我らを魔法の余波から守る。


「補助部隊、強化魔法の準備を急げ!」


これだけの魔法を喰らって生きていられるとは思えんが、相手はこちらの魔法を何発も受けたのに意に介していなかった化け物だ。

なにかしらの切り札を以って耐えきる可能性も否定できない。


「エンチャントウエポン!」


「プロテクション!」


補助魔法の使い手達が突撃部隊に強化魔法をかけてゆく。

俺達近衛部隊の装備は、ドラゴンの素材を加工した最高級品だ。


鍛え抜かれたこの体にドラゴンの装備を纏った俺達は、いわば小さなドラゴンとすらいえるだろう。

そんな連中が数百人。

相手がどれだけ強かろうとも、この装備と数に打ち勝つ事は不可能だ。


敵もドラゴンの素材を装備に使っている可能性はあるが、鱗拾いの冒険者達が集めて売った素材は国が金に飽かせて買い占めている。

多少は買い漏らしがあるかもしれんが、圧倒的に数が違う。


さらに装備は軍のおかかえ鍛治職人達が採算度外視で作った最高品質の品だ。

しかもそれに強化魔法をかけているのだから、負ける要素がない。


「くくっ、城の警護が任務だった為に今まで実力を発揮出来ずにいたが、これでようやく俺達が本当の意味で竜騎士を名乗るにふさわしい存在だと証明する事ができるな」


そう、近衛騎士である俺達は宰相から竜騎士を名乗る事を許されていたのだが、俺達に嫉妬する連中からドラゴンを従えていないのに竜騎士を名乗るのはおこがましいのではないかと難癖をつけられていたのだ。


実際に戦えば確実にドラゴンを倒す自信はあった。

だが王都を守るのが俺たちの使命だと言われて宰相の許可を得られなかった為に、俺達は自分達の実力を示す事が出来ないでいた。


故に、この状況は俺達近衛騎士団の実力を示すチャンスと言えた。

ああ、そういう意味ではあっさりと賊を逃してしまった守備隊の連中に感謝してもいいかもな。


そんな事を考えていると、ようやく大炎塊の余波が弱まってきた。

同時に、炎の奥から黒い影が揺らめく様子も見える。


やはり生きていたか!


「総員突撃!」


「「「「「おおおおおおっっっ‼︎」」」」」


号令を受けた部下達が一斉に突撃する。

そして部下達の突き出した武器が頼もしい魔法の光を放ちながら賊へと叩き込まれた。


そして、ペキンッという軽い音を立て部下達の武器が折れた。


「「「「「「へっ?」」」」」」


え?折れた?


「「「「「「えええええええええっっっ⁉︎」」」」」」


ば、馬鹿な⁉︎ドラゴンの素材で作った装備だぞ⁉︎

強化魔法で強化されているんだぞ⁉︎

それがなんで折れるんだ⁉︎


『……』


賊は何も言わず、反撃すらせず、呆然とする我らの横を、何事もなかったかのように通り抜けていった。

そして残されたのは我ら近衛騎士団だけだった。


「だ、団長……我等はどうすれば」


「……どうしよう?」


いや本当にどうしよう。


『……』


「……団長、残った賊の一部が魔法で火事になった家の消火作業をしています」


「え?何で?」


「さぁ?」


『……』


そうして残った賊達は消火作業を終えると、魔法の余波で火傷した兵達にポーションを配り、こちらに一礼してから仲間を追っていったのだった。


「……一体なんだったんでしょうアレ?」


連中の行動の意味が分からず、副長が首を傾げているが、そんなもん俺だって聞きたい。


「本当にアイツらは何の為にやってきたんだ?」


この国を支配する為に攻めてきた侵略者じゃなかったのか?

もう何をすれば良いのか分からず、俺達はただただ呆然と立ち竦むのだった。

黒い鎧(:3)∠)_「クイックイ(はーい次こっちの建物修理しますねーというジェスチャー)」

近衛騎士団(:3)∠)_「いやホント何しに来たのアンタ等……?」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 唐突に今までと違う内容がぶっこんできたので、理解できなかった。
[気になる点] 第112話 帝都激震 第123話 王都強襲 帝都と王都どっちが正しい?
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