第117話 驚異の新人達
_:(´д`」∠):_「歯の治療中なので痛みで原稿がキツイです……」
_:(´д`」∠):_「ロキソニンマジ天使」
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◆リリエラ◆
次の予選試合に参加したのは、ミナとメグリ、それにリューネの3人だったわ。
自分達全員が呼ばれた事に驚きつつも、3人は互いの顔を見合わせて頷く。
それはチームを組もうという無言の目配せ。
そして審判の合図とともに、選手達が動き出した。
狙いはミナ、一目で魔法使いと分かる彼女に向かって選手達が襲いかかる。
「喰らいな!」
けれどあらかじめそれを察していたミナは、身体強化魔法で自身の肉体を強化すると大きな跳躍とともに包囲を脱出したの。
「な、なんですって⁉︎」
「なんて身の軽さ⁉︎魔法使いじゃなかったの⁉︎」
想定外の身軽さで包囲を突破したミナの姿に選手達が驚き、その注意が彼女に集中する。
でもそれがいけなかった。
「もらった」
「隙ありです!」
「「キャァァァァァッ‼︎」
気配を消していたメグリと、ミナを狙うフリをしていたリューネがミナに意識を集中していた選手達に不意打ちを放つ。
よもやの不意打ちに攻撃を受けた選手達は一撃で意識を刈り取られてしまったわ。
何気に実力者と分かる相手から先に狙うあたり、あの2人もなかなかエグいわね。
そして選手達の注意がメグリ達に移ると同時に、ミナが無詠唱魔法を発動する。
「サイドバースト!」
嵐のような突風を起こす風魔法が放たれ、選手達が場外へと吹き飛ばされていく。
ミナがこの隙を逃す筈がないと、あらかじめ分かっていたメグリとリューネは即座に左右に展開し魔法の直撃を回避、更に自らの武器を試合舞台に突き刺して吹き飛ばされないように踏ん張る。
ああ成程ね。だからミナは殺傷力の低い風系の魔法を使った訳か。
そうして、ミナの魔法の効力が切れた後に試合舞台に残っていたのは、たったの3人だった。
……あ、運良く舞台の端にいた選手が3人いるわね。
その内の2人は……ああ、試合が始まる前に私達に声をかけてきた2人ね。
残り6人、さて最後の脱落者は誰かしら?
「……ええと、棄権します」
と思っていたら、残っていた3人のうちの知らない選手が、プルプルと震えながら顔を真っ青にして試合舞台から飛び降りちゃったの。
「あ痛っ!」
よっぽど慌てていたのか、降りた時に転んだみたいだけど、まぁ試合舞台との高低差は1メートル程度だから大した怪我じゃないわね。
「し、試合終了!」
ミナの魔法にド肝を抜かれた審判が我に返ると、すぐに試合終了の宣言をする。
「うん、まぁ予想通りの結果ね」
見れば試合舞台の上では、ミナ達がハイタッチをして予選通過を喜んでいた。
「まだ予選だから、油断しちゃだめなんだけどね」
とはいえ、その気持ちは分からなくもないわ。
初めての武闘大会だものね。
「さて、レクスさん達の方はどうかしらね?」
いやまぁ、レクスさんについては万が一にも心配はしてないんだけど、他の2人はちょっと心配よね。
「特にあっちの僧侶の子の方が……」
なにせあの濃いめのメンツで一番普通の子だもんね。
◆ジャイロ◆
「77番!」
「おっ、呼ばれたぜノルブ」
「う、うん」
審判に呼ばれたノルブは、緊張した様子で試合舞台に上がっていく。
ったく、ビビり過ぎだっての。
「なんだあのガキ、ガッチガチじゃねぇか」
「なんで僧侶が予選に参加してんだ?」
「さぁな、けどありゃ真っ先に狙われて脱落だろ」
「あのガキと戦う連中が羨ましいねぇ。実質ライバルが1人少ねぇのと同じじゃねぇか」
近くで他の選手達がノルブの事を笑ってやがる。
「分かってねぇなぁあのオッサン達」
そうだ、アイツらはノルブの強さを全然分かっちゃいねぇ。
「試合開始!」
「おっといけねぇ、試合を見逃しちまうところだったぜ」
なにせこの試合は俺にとっても凄ぇ大事な試合だからな。
「ヒャッハー!雑魚はさっさと退場しなーっ!」
「ヒィッ⁉︎」
さっそく周囲の選手にノルブが襲われる。
相手の迫力にビビったノルブは固まって逃げれなくなっちまった。
そして選手達の武器がノルブに叩きつけられる。
「まぁ大丈夫なんだけどな」
「へへっ、チョロすぎるぜこのガ……キ?」
「な、何?」
ノルブに攻撃した選手達が、戸惑いの声を上げる。
「び、びっくりしたぁ〜」
ノルブが安堵の声をあげる。
「何だ?アイツら何で攻撃を止めたんだ?」
近くで試合を見ていた連中は、ノルブへの攻撃がとつぜん止まった事に首を傾げる。
「違うっての。攻撃を止めたんじゃねぇよ」
そう、選手達は攻撃を止めたんじゃねぇ。
「止まったんだよ」
選手達の攻撃は、ノルブの防御魔法に完全に防御されていたのさ。
「おーいノルブさっさと反撃しろ!」
「う、うん!」
俺が声をかけると、今が試合中だと思い出したノルブが手にしたメイスを振りかぶって目の前の大柄な選手に攻撃を仕掛ける。
「はっ、手前ぇ程度のガキのヘナチョコ攻撃なんぞ通じごぼぁっ⁉︎」
ノルブの攻撃を笑って受けた選手が吹き飛ぶ。
そしてその巨体が地面に落ちると、ビクビクと痙攣して気絶しちまった。
「す、すみません!やり過ぎてしまいました!」
慌てたノルブが気絶した選手に駆け寄ると、すぐさま回復魔法を使う。
まぁ気絶しただけみたい、だから死んじゃいねーだろうけどな。
「……っ」
ノルブを狙ってた連中が困惑して一歩下がったけど、回復魔法に集中している今がチャンスだと思ったのか、もう一度一斉に襲いかかる。
「死ね化け物小僧っ!」
「え?」
全員の攻撃がノルブの脳天に叩きつけられる。
「こ、これならどう……っ⁉︎」
今度こそやったと思った選手達の顔が情けなく歪む。
「な、何するんですかぁ〜」
「ひぃぃぃっ⁉︎何で効かないんだぁっ⁉︎」
はははっ、アイツらマジビビってやがる。
なにせノルブの装備は防御力特化型だって兄貴が言ってたからな。
ノルブはオレ達みたいに素早く動くのが苦手だから、兄貴と相談して防御力を上げる方向で敵の攻撃を防ぐ事にしたらしい。
実際ノルブの属性は防御向きの地属性だった事もあって、身体強化魔法を使うと俺達の中で一番防御力が高くなる。
一見すると普通の司祭服に見えるノルブの服だが、使っているのは各種ドラゴンの鱗の粉末とエンシェントプラントっていうデケェ木の魔物の樹皮を繊維にした糸を混ぜて作った特別製の服らしい。
……っていうか兄貴って服も作れるんだな。
マジでなんでも出来て凄ぇぜ兄貴は!
他にも魔法防御を上げるマジックアイテムやらなにやらも付いてる司祭服は、ドラゴンのブレスにも耐えられるんだって兄貴は言っていた。
それこそマグマっての中に入っても大丈夫なんだとか。
マグマってのが何なのかワカンねぇけど、兄貴が言うんだから凄ぇんだろうな。
「今度はこっちの番ですよ!アースバインド!」
倒れた選手の治療を終えたノルブが魔法を発動すると、突然ノルブの周りの地面が波打ち始めて周りにいた選手達の足を掴む。
「な、なんだこりゃあ⁉︎」
「いきます!」
ノルブがメイスを振りかぶり、危険を感じた選手達が逃げようとするが、足を掴まれた選手達は逃げる事に失敗してノルブの攻撃の直撃を受けて吹き飛ばされる。
そう、これこそ足の遅いノルブの為に兄貴が考えた必殺の戦い方、逃げれないように捕まえてから攻撃する作戦だ!
ノルブの魔法で足を封じられた選手達が次々とノルブのメイスに吹き飛ばされていく。
「あ、あのガキヤベェぞ⁉︎」
ようやくノルブの強さに気づいた連中がほかの選手を狙い始める。
ノルブと戦うくらいなら、ほかの選手を倒して予選通過の5人に選ばれた方がマシッて思ったみたいだな。
「けど、ヤベェのはノルブだけじゃねぇぞ」
『……』
「うわっ!? 何だコイツ!? 素手でなんて強さだ!?」
向こうじゃ覆面をしたやたらとガタイの良い選手が素手で他の選手を掴んでは場外に放り投げている。
ってかマジですげぇ筋肉だなアイツ。
『はぁっ!!』
あっちじゃバケツヘルムの選手が二刀流で周囲の選手と互角以上に戦っていた。
「ちぇっ、俺もこっちの試合に出たかったぜ」
俺の試合は大したヤツが居なかったけど、こっちは面白そうな奴らが一杯で羨ましいぜ。
「とくにあそこがスゲェよな」
俺はノルブと一緒に戦っている選手達の中の四人目を見る。
そいつは黒い鎧に黒い兜、黒い剣と黒いマントの全身黒づくめの選手だ。
その選手の動きのキレは他の選手に比べると明らかに格上で、ソイツが動くとマントの裏地の赤色がまるで炎のようにはためいていた。
間違いなくアイツがこの中で一番強い。
「あーマジで俺も参加してぇ」
そして予想通り、試合はノルブと覆面にバケツヘルム、そして全身真っ黒な鎧の選手と最後にこれまた顔を隠した選手の5人が勝ち残った。
「つーか顔を隠した連中ばっかりだな。そういう恰好が流行ってんのか?」
「これにて予選試合を全て終了とする! 本選は二日後! それまでに選手はしっかりと準備を整えておくように!」
こうして、龍帝の儀と龍姫の儀の予選は無事に終わった。
さーて、本選が楽しみだぜ!
◆王都の貴族達◆
「龍帝の儀の予選が終わったそうだ」
タツトロンの町に忍ばせた部下からの報告を同胞が告げる。
「それでどうなった? 龍帝の正体は判明したか?」
「いや、まだだそうだ」
「では龍帝が本選に参加している可能性は高いな。我等の刺客はどれだけが本選に参加できたのだ?」
「……」
何故か同胞が眉間に皺を寄せて黙りこくる。
「どうした? 何人が本選に参加出来たのだ?」
予選には大量の刺客を参加させた。
万が一予選で龍帝を始末できなかった場合、本選に参加する選手を龍帝以外全て刺客で固める予定だ。
その為に腕利きの刺客ばかりを参加させている。
万が一にも部外者が混ざらない様にな。
「……3人だ」
「何!?」
馬鹿な、少なすぎる!
「本選に参加できた刺客は3人だけだ」
どういう事だ!? 龍帝の儀に参加した刺客は一流の訓練を積んだ精鋭ばかりだぞ!?
その刺客達がハンパ者の冒険者に負ける筈がない!
「予選にデタラメに強い選手が何人もいたらしい」
デタラメに強い選手だと!?
よもや龍帝を守る為に敵対派閥が兵を出してきたのか!?
だが連中の部下にそこまでの実力者は居なかった筈だ!
「それと……」
「それと?」
まだ何かあるのか!?
「予選に参加させた刺客の数が多すぎて、選手の割り振りがくじ引きになった。そしてたまたま我々が送った刺客達が同じ試合に参加することになった……」
「「「オーゥ……」」」
何という事だろう。
我等の送った刺客達は同士討ちで壊滅してしまったのだった……。
貴族(:3)∠)_「ツライ、皆して発言力欲しさに刺客を山盛り送ったら同士討ち(このザマ)だよ」
モブ選手(:3)∠)_「僧侶怖い僧侶怖い」
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