第115話 予選試合開始!
_:(´д`」∠):_「5/29:視点変更時に誰の視点か欲しいと言われたので、主人公以外の視点に誰視点か入れてみました。こんな感じでどうでしょう? 分かりやすい、無い方が良い等感想頂けると助かります」
_:(´д`」∠):_「龍姫の儀開始ですー」
_:(´д`」∠):_「ヒロインが大活躍するよー」
_:(´д`」∠):_「本当は二人分の試合を書こうと思ったけど、分量が多かったので分割したんだぜ! まぁヒロインだから分量大目という事でひとつ」
_:(´д`」∠):_「そして5/25からマグコミにて商人勇者のコミカライズが始まりました。よろしければそちらもよろしくですー!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
◆リリエラ◆
「これより龍姫の儀の予選を開始します」
試合場に審判の声が響き渡る。
「儀式の予選は参加者が多い為、バトルロイヤルという複数の選手を同時に戦わせる乱戦形式で行います。予選は試合場に立っている選手の人数が残り5人以下になった所で終了し、立っていた選手が本戦に進めます。これを4つのグループで行います。また試合場から落ちた選手は場外となって即失格です」
「つまり20人は確定で本戦に進めるって訳ね」
横で話を聞いていたミナが本戦参加者の数を計算する。
「いえ、最大で20人です」
そしてすぐさまリューネが訂正をした。
「え? 5人が4試合でしょ?」
「ミナ、5人残るとは限らない」
「……ああ、そういう」
メグリに指摘されて、ミナがリューネの意図を正確に理解する。
さすがに修羅場を潜り抜けて来ただけあって、この子達は新人とは思えない程察しが良いわね。
うん、まぁ引きずり込まれる修羅場が修羅場だしね。
寧ろ修羅場というよりも地獄かしら?
「試合によっては一人しか残らない場合もあります。あまり人数が少ないと敗者復活戦があるみたいですけど」
「成程ね。流石地元の人だけあって詳しいわね」
「あ、はい。いつか自分が参加する時の為に情報は集めていましたから」
と、ミナに褒められたリューネが恥ずかしそうに笑みを浮かべる。
「まぁ私達は4人だから、最悪同じグループになっても全員勝ち残れるわね」
「プ、クク……」
とミナの言葉を聞いた誰かが小さく笑い声を漏らした。
見れば近くに立っていた冒険者らしい選手達がこちらの話を聞いていたみたい。
彼女達は、いえ正しくはその内の一人が私達を見て笑っていた。
「ケイト、失礼よ」
「悪い悪い、でも微笑ましくってさ。皆で勝ち残ろうとか可愛すぎるだろ」
「貴女ねぇ……ごめんね、仲間の口が悪くて」
「いえ、気にしないで下さい」
とりあえず年長の私が彼女達の相手をする事にする。
「貴女達はこの儀式に参加した事があるんですか?」
「あら貴女……ええ、二回ほどね」
二回、か……何か有意義な情報は得られるかしら?
「アンタ達、これが女しか参加できない大会だからって油断しない方が良いよ」
とはさっき私達を笑ったケイトとかいう冒険者の方だった。
「アタシ達が初めて参加した大会でも、デタラメに強い奴が優勝をかっさらっていったんだからさ。ありゃ間違いなくSランクレベルの強さだったよ」
「ケイトの言う通りよ。女しか参加できないからこそ、女の実力者がやって来る。なんだかんだ言って、戦いの場で活躍するのは男が多いから、実力を示す為に公の大会に出て来る人も多いのよ」
ふむふむ、確かに大会なんかで勝利するのは男の冒険者が多いものね。
これはまぁ、単純に男の方が体格が良かったり、筋力が付きやすいからってのもあるけど。
とはいえ、私がAランク冒険者になれたように、女でも実力者は確実にいる。
単純な筋力では勝てなくても、身軽さで対応したりできるし、魔法使いなら筋力や体格は関係ない。
ここはそういう実力はあっても認められない人達が自分の力を披露する場でもあるって事ね。
「浮ついた事考えてないで、目の前の敵に専念しなよ。予選は実力者でもあっという間に負ける事があるんだからさ」
「そうね、中途半端に実力を見せびらかすと周囲の冒険者達から集中攻撃を喰らう事があるから気を付けなさい」
「色々教えてくれてありがとう。貴女達良い人ね」
「よ、よせやい」
「ふふ、笑ったお詫びよ」
ケイトが顔を赤くしてそっぽを向く。
もしかして笑った詫びに教えてくれたのかしら?
意外に良い人なのかもしれないわね。
「ではこれより第一試合の選手の番号を呼びます! 呼ばれた選手は向こうの試合舞台に上がって下さい」
進行役が番号を呼び、選手たちが舞台に上がっていく。
「76番!」
「呼ばれたから行ってくるわ」
「気を付けてねリリエラ」
「がんばれ」
「が、頑張ってください龍……リリエラさん!」
「頑張りなよー」
「健闘を祈るわ。まぁ貴女なら余裕だと思うけど」
ミナ達だけじゃなく、ケイト達まで私に応援の言葉を掛けてくれる。
そして舞台に上がると、選手達の視線が私に集まる。
「……あれが龍……」
「やっぱり最初は……」
あー、これは完全に気付かれてるわー。
これは絶対来るわねぇ。
「では予選試合第一戦……」
試合場の選手達が武器を構えるけれど、彼女達の切っ先は狙いを隠す気もなくこちらを向いている。
「はぁ……しょうがないか」
私もそれに対応するように自らの槍を構え、魔力を練り上げる。
「始め!!」
「龍姫を狙えーっっ!!」
審判の宣言と共に、選手達が私に殺到した。
私、龍姫じゃないんだけどなぁ。
盗賊とおぼしき軽装の選手達が正面と左右から私を襲う。
良い連携だけど、もしかして仲間なのかな?
それともあらかじめ手を組んでいたのか。
まぁどっちでもいいわ。
「貰った!」
「貰ってないわよ」
身体強化魔法で氷の属性強化を発動した私は、足元を凍らせる。
「うわっ!?」
当然地面が凍った事で、三人は足を滑らせてバランスを崩す。
体勢を整えようと慌てる彼女達のみぞおちに、槍の石突きを連続で突き込んでいく。
「ぐっ!?」
「がっ!?」
「ごっ!?」
高速で突撃してきた彼女達は、自分達の速度が乗ったカウンターを受けて悶絶しながら地面に倒れ伏す。
「ファイアアロー!」
「ウインドアロー!」
「アイスアロー!」
三人が倒れた直後に、後方から放たれた魔法攻撃が迫ってきた。
「甘い!」
私は氷の魔力を槍に通し、放たれた魔法を全て迎撃した。
「嘘っ!? 魔法が弾かれた!?」
「もしかしてマジックアイテムなの!?」
確かにこれはマジックアイテムだけど、原因は貴方達の魔法が弱かったからよ。
多分彼女達は本職の魔法使いじゃなくて、相手の隙をつく為の補助として魔法を習っていたんでしょうね。
だからミナやレクスさんの放つ魔法に比べたら圧倒的に威力が弱かったのよね。
その程度の魔法だったから、身体強化魔法で武器を強化するだけで十分迎撃出来たってわけ。
「ははっ、油断したなぁぁぁぁ!」
そしてようやくこちらに向かってきた集団が私のもとに到達した。
彼女達はさっきの盗賊達の様に広がって私を包囲していく。
「どうしようかな」
とりあえず正面から襲ってきた戦士の剣を槍でいなして地面に突き刺させる。
「うぉっ!?」
これで正面はこの選手が邪魔で後続が攻めてこれない。
「はぁっ!!」
左右から選手がジャンプして襲い掛かって来た。
凍った床で足を滑らせないようにって事ね。
「でもそれだと回避できないわよ」
私は彼女達の攻撃を身を逸らして回避する。
「「速い!?」」
実は私自身はそんなに速く動いてないのよね。
私の足の裏に魔法で生み出した薄い氷の刃で、試合場の床に張り巡らされた氷の上を回りながら滑っているからそう見えるだけで。
実はこのブーツ、魔力を流す事で裏側に氷の刃を生み出すマジックアイテムになっているのよね。
このブーツを使う事で、以前行った氷の上を高速で滑りながら戦う戦術を簡単に出来るようになったってわけ。
更にこの氷はそのまま武器にもなって、魔力の込め具合で長さや硬さを調節する事が出来るの。
こんな風にね。
「はぁっ!!」
私が脚を大きく上げて回し蹴りを行うと、ブーツの裏に生えていた氷の刃が長く伸びて包囲していた選手達を薙ぎ払う。
うん、試合が始まる前にドラゴンで試しておいて良かったわ。
人間相手にぶっつけ本番で新装備の機能を試していたら大惨事になってたところね。
私は自分の体を滑らせながら選手達の攻撃を回避し、回転の速度を力にして槍を振るう。
前の敵を突く。次いで振り返る事無く引き手で背後の敵に石突きをぶつける。
「キャアッ!? なっ、何でこっちを見ないで攻撃が……」
レクスさんが私用に作ってくれたこの装備には、一つ面白い機能が追加されていた。
それは周囲の温度を感覚的に察知する機能。
これは蛇が持つ能力を再現したマジックアイテムらしくて、敵の体温を察知しやすくする機能だと言っていた。
特に私の得意な氷の魔法で周囲の温度を下げる事で、より顕著に温度の違いを分かるようになるみたい。
おかげで私は見えない方向から襲ってくる選手の体温を感じとり、振り返る事無く迎撃が出来た。
「結構使えるわねコレ」
まぁ、他の装備が物騒過ぎてこういう場面で使える装備が限られているって言った方が正しいんだけど。
「けどいつまでも包囲の中に居るのもね」
いくら後ろからの不意打ちに対処できるようになったとはいえ、数の不利はやっぱり危険だわ。
私は周りの選手達の攻撃を回避しながら包囲の外へと向かう。
「包囲を崩さないで! 全方位から一斉に攻撃をするのよ!」
包囲の外側に居た選手達が私の移動していた方向に集まって、私を再び包囲の中心へと戻す。
「付け焼刃の連携の割には良い連携ね」
私を包囲の中心に戻した選手達が、全方位から一斉に攻撃を放ってくる。
「ととっ、さすがにこれは回避できないわね……このままだと」
私は足の裏に展開していた氷の刃に魔力を流し込み、ナイフのように短かった刃を大剣と言える長さに伸ばす。
「なっ!?」
足の裏に展開していた氷の刃が伸び、私の体が周囲の選手達よりも上へと押し出される。
「はいっと!」
更に上に跳躍する事で、私は包囲網の上空へと飛びあがった。
「それじゃあこれでおしまいよ!」
せっかく私のもとに集まってきてくれたんだし、一網打尽にさせてもらいましょうか。
「アイスブリザードスフィア!!」
上空から真下の選手達を包み込むように猛吹雪が吹き荒れると、あっという間に試合舞台が雪と氷に包まれる。
「さ、寒ぅーいっ!!」
選手達が凍えながらも吹き飛ばされない様に必死に踏ん張っている。
でも、この魔法が生み出すのはただの吹雪じゃないわ。
「キャアアアァァァァァァッッ!!」
吹雪に紛れて選手を吹き飛ばしたのは、人の頭ほどもある大きな氷の塊だった。
そう、この魔法で吹き荒れるのは風と雪だけでなく、氷も含まれていたのよ。
選手達が次々と氷の塊に吹き飛ばされて試合舞台から落とされていく。
そして魔法で生み出した氷吹雪がやむと、試合舞台に立っているのは私一人だった。
「しょ、勝者リリエラッ!!」
審判が寒さで体を震わせながら私の勝利を宣言する。
「ふぅ、何とか無事に勝てたわね」
それにしてもこの魔法は凄いわね。
試合前にレクスさんに習っておいてよかったわ。
でも、新装備の魔法補助が無いと自力での発動はちょっと難しいかもね。
◆とある女冒険者◆
「何アレ……」
隣に立っていたケイトが驚きのあまり呆然と呟く。
けどそれも当然と言えた。
町で龍姫の再来と呼ばれていた彼女は、自分をマークして一斉に襲い掛かってきた他の参加者達を圧倒的な技量で捌き、あまつさえ見た事もない大魔法で一掃してしまったのだから。
その間僅か十数秒。
たったの数十秒で、龍姫は数十人もの参加者を全滅させてしまった。
ハッキリ言って人間業じゃないわ。
「さっすがリリエラ、圧勝じゃない」
私が言おうとしたその言葉を、誰かが先に言葉にした。
見れば龍姫と共にいた少女達だ。
彼女達は龍姫の戦いぶりに驚く事無く、むしろ当然のように見ていた。
「うん、結構強そうな人もいたのに楽勝だった。私はああいう全員を相手にする魔法を使えないから、狙われたら苦戦するかも」
それどころか、自分ならどう戦うかなんて言っている。
まさかあの子達にも龍姫と同じ事が出来るというの?
いえ……いくらなんでもソレは無理ってモノよね?
「龍姫様凄いです……うう、私勝てるかなぁ」
そんな彼女達の横で槍を持った女の子が不安そうに呟く。
いやいや、いくらなんでもアレの相手は無理でしょ、死んじゃうわよ。
私達もドラゴンを倒したっていう龍姫をマークはしていたけど、あんな化け物だとは思ってもいなかったのよ!?
悪い事は言わないから、あんなのと戦おうとするのはやめておきなさい。
「萎縮する事無いわよ。全力でぶつかればいいのよ」
ちょっ、無責任な事言っちゃダメでしょ!?
その子の人生がかかってるのよ!?
「ただいまー」
彼女達の話を聞いていたら、龍姫が試合舞台から戻ってきた。
近くで見る龍姫は呼吸の乱れすらなく、大魔法を発動させた事による疲労をかけらも感じさせなかった。
「お帰り。楽勝だったわね」
「そうでもないわよ。全員から狙われるとか、生きた心地がしなかったわ」
嘘おっしゃい! 全然余裕だったじゃないの!
「そぉ? 全然余裕に見えたわよ?」
そうよそうよ! 言ってやりなさい!
「そんな事無いわよ。こっちもいっぱいいっぱいだったんだから」
……本当かしら?
「そういえば、向こうもそろそろ試合が始まってるのよね」
と龍姫が試合会場の外に視線を向ける。
向こうって龍帝の儀の事かしら?
「ええ、あっちも派手にやってるでしょうね。なにせレクスが居るんだし」
レクス? 龍姫の仲間の事かしら?
「きっと向こうの会場はこっち以上の惨状が繰り広げられてるわよー」
こっち以上? ……ええと、なに? もしかして龍帝の儀にも龍姫と同じような化け物が参加してるって事?
「はー、他の参加者が可哀想になるわね」
あっはっはっと龍姫の仲間の少女が笑うけど、こっちはとても笑い話には聞こえなかった。
だってすぐ傍に龍姫の戦いを見ても平然としている彼女の仲間が三人もいるんだから。
しかも三人ともまだ試合を行っていない。
つまり、私達と戦う可能性が非常に高いって事、なのよね……。
「ねぇケイト……この大会、棄権しない?」
私は小声で相棒に大会を諦めないかと提案してみる。
けれど相棒は何も言ってこない。
まさか龍姫と戦いたいなんて言うつもり!?
貴女そんな熱血キャラだった?
私は無言を貫くケイトに顔を向ける。
「……」
あっ、駄目だ、ショックが強すぎて放心してるだけだわ。
◆ジャイロ◆
「それでは次のグループの試合を始めます」
審判が選手の番号を呼ぶ。
俺は早く自分の番号を呼べと心の中で審判を急かす。
「27番」
「おっしゃきたぜー!」
ようやく自分の番号が呼ばれた事で、俺は足早に舞台に向かう。
「が、頑張ってくださいねジャイロくん!」
後ろからノルブの声援が聞こえてくる。
「おうよ! レクス兄貴の一番弟子ジャイロ! ちょっくら勝利を勝ち取ってくるぜ!!」
俺は振り返る事無くそう答えると、試合舞台へと登って行った。
リリエラ:(´д`」∠):_「あー怖かった―」
ミナ(:3)∠)_「嘘つけ」
メグリ(:3)∠)_「嘘はいくない」
リューネ(:3)∠)_「あの戦いのどこに怖がる要素が?」
ミナ(:3)∠)_「ぶっちゃけプチレクスって感じだったわ」
リリエラ(:3)∠)_「おっ? 戦争する? 戦争する?」
参加者全員(;゛゜'ω゜'):「よそでやってくださいっ!!」
ジャイロ(:レ)∠)_「次回は俺の試合だぜ!」
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