第114話 新しい装備を作ろう
_:(´д`」∠):_「うひー、やっと更新だー!」
_:(´д`」∠):_「と思ったらやっぱり9000文字越え! 分割しようかと思ったけどテンポを考えてこのままゴーです!」
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龍姫の儀と共に龍帝の儀も開催される事が宣言された翌日、僕達は町の鍛冶屋へとやって来た。
ちなみにここは、魔物の群れの襲撃に対抗する為の装備を量産する際に場所を借りた工房だったりする。
その目的はもちろん。
「それじゃあ、皆の装備を作るとしようか」
そう、皆の装備を一新しにきたんだ。
色々あって龍姫の儀と龍帝の儀に参加する事になっちゃったからね。
これを機に皆の装備を一新しようと決めたんだ。
なにせジャイロ君達は冒険者になってから今日まで、殆ど装備を変えていないからね。
これまでの魔族との戦いや先日のドラゴンや魔物の群れとの戦いで皆の装備はボロボロだ。
そろそろちゃんとした装備に買い替えないと、魔法による防御にも限度があるからさ。
「うぉぉー! 兄貴が俺達の装備を作ってくれるなんて、滅茶苦茶興奮するぜ!」
「こーらジャイロ、あんまり騒ぐんじゃないわよ恥ずかしいわね」
「とか言いつつ、ミナも興奮してる」
「あはは、何にせよ装備が新しくなるのはちょっとワクワクするもんね」
とジャイロ君達が待ちきれないといった様子ではしゃいでいる。
「私は以前装備を作って貰ったから、今回はこのままね」
と、ちょっぴり残念そうな空気を漂わせながらリリエラさんが呟く。
「いえ、リリエラさんの装備も補修がてら改修します。丁度良い素材も増えてきましたからね」
「えっ!? 良いの!? っていうかこれ以上良い装備になるの!?」
まさか自分の装備も弄って貰えると思っていなかったリリエラさんが、驚きと興奮の入り混じった表情でこちらを見て来る。
「ええ、今までは十分な素材がなかったので有り合わせの装備でしたけど、そろそろまともな素材が増えて来たので、良い感じのが出来ると思うんです」
「……今までのが有り合わせ扱いかぁー……」
あれ? リリエラさんの目が突然宙を彷徨いだしたけど、どうしたんだろう?
今までの有り合わせ装備からようやくまともな装備になる事を喜んでくれると思ったんだけど。
「皆さん良いなぁ……」
と、僕について来ていたリューネさんが羨ましそうに呟く。
「いえ、ちゃんとリューネさんの装備も作りますから、心配しなくても大丈夫ですよ」
「ええ!? 私の装備も作って貰えるんですか!?」
リューネさんが何でと言いたげに驚きの声を上げる。
「でもでも、私はレクス師匠のお仲間じゃないんですよ? 押しかけて弟子入りした部外者の私に、龍帝様が扱う装備の秘儀を与えても良いんですか!?」
いや別に竜騎士でも龍帝でもないんだけどね。
あ、でもドワーフの技術はちょっと使ってるかも。
……まぁいっか。
「気にしないでいいですよ。リューネさんも龍姫の儀に参加するんですから、装備はしっかりしないと、これから世界中から集まった猛者と戦うんですから」
それに期間限定とはいえ、リューネさんは僕の弟子だからね。
弟子の為に何かしてあげるのは師匠としての親心みたいなもんかな。
まぁ恥ずかしいから言わないけど。
「嬉しいですレクス師匠~っ!」
感極まった様子で興奮するリューネさんがピョンピョン飛び跳ねながら喜びを表現する様は、小動物みたいで可愛いなぁ。
それに、僕もアレの準備をしないといけないからね。
そんな訳で鍛冶屋の親方の許可を得た僕は、工房の一角を借りる事にしたんだけど……
「「「「ジー……」」」」
工房の人達が皆して僕の手元を凝視しているんだよね。
まぁ、それが工房で作業させて貰う条件だから仕方ないんだけどさ。
工房を使わせて貰おうと頼んだら、親方さんから条件として僕の仕事を見せて欲しいと言われたんだ。
そんな事で良いのかと僕は困惑したんだけど、親方は金を貰うよりもそっちの方が価値があるって言って聞かなかったんだよね。
「先日のドラゴンの素材で武具を作る手際は見事だった。あの時は状況が状況だったんでじっくり見れなかったからな、今回は集中して見させてほしい」
普通に作るだけなんだけどなぁ。
一流の職人の秘術とかだったら見せるのは問題だけど、僕が習ったのは鍛冶師としての及第点程度の技術だし。
それとも親方さんが見たいのは、他流派とも言える他国の鍛冶師のやり方を見たいって事なのかな?
土地が違えば使う素材も違う事が多いだろうし、そうした小さな違いを知りたいのかも。
見て分かる程度の技術なら国が違っても大して変わらないだろうし、そのくらいなら見せても問題ないよね。
「じゃあ、始めますね」
今回使う素材は龍峰で手に入れたドラゴンの鱗がメインだ。
それに以前手に入れたエンシェントプラントの素材や天空島で回収したバハムートの鱗、地下遺跡で手に入れた各種キメラの素材も取りだす。
他にもサイズの確認用と改修用に皆から借りた装備一式を並べる。
「じゃあまずは武器から作ろうかな」
僕は炉に砕いたドラゴンの鱗を入れると、炉に保護魔法をかける。
そして高熱魔法で炉の内部の熱を上げていき、ドラゴンの鱗の不純物を焼却しつつ鱗を溶かしてゆく。
そして溶けた鱗が炉の下部に流れてきたところで、ゆっくり温度を下げつつ加工魔法でおおざっぱな形に形成する。
「お、おい、あれウチで使ってる炉だよな? 何でドラゴンの鱗があんな簡単に溶けるんだ!?」
「っていうか、なんで炉から流れ込んだ素材がもう武器の形をしてるんだ!?」
「しかも他の装備の作業まで並行して進めているのか!?」
「俺……本当に鍛冶の仕事を見てるのか?」
何か後ろの方で鍛冶師さん達が驚いているけどなんでだろう?
まぁでも、今は目の前の作業に集中だ。
いつも通り、前世でも行っていた手順を繰り返して装備を作るだけだ。
◆
そして数日後、全員の装備が完成したと伝えると皆が急いで工房へとやってきた。
工房のテーブルには皆の装備がズラリと並べられている。
「本当に全員分の装備が完成してるなんて驚きだわ。普通オーダーメイドの装備って一つ作るのに結構な時間がかかるものなのに」
「まぁ有名な工房に特注すると年単位で順番待ちになりますけど、僕はそこまで大した技術は持っていないですからね」
「「「「「えっ?」」」」」
「え?」
何で皆そんな目で僕を見てくるの?
「ま、まぁ良いわ。いつものアレよね」
「「「「ああアレ」」」」
何で皆アレって言われて納得するのかな。
「じゃあ皆新装備を着けてみて。緩かったりキツかったりしたらすぐに調整するから」
「「「「「はーい」」」」」
「へっへー、兄貴の作ってくれた新装備ーっと! おおー! 俺の装備は赤色か! 良いね、すっげーカッコいいぜ!」
「わざわざ色まで付けたの? 表面なんてどうせ戦いでボロボロになるんだし、お金の無駄じゃない?」
新装備を見てはしゃぐジャイロ君を見て、ミナさんがもったいないんじゃないかと聞いて来る。
「あの塗料も装備の一環なんですよ。あの赤い塗料は炎に特化したルビードラゴンの血液を粉末化したものを加工していて、火属性の魔法や熱に対する耐性を得ると共に自分の火属性攻撃を強化もしてくれるんです。ジャイロ君は火属性の強化魔法が得意だから、装備もそれに合わせているんですよ」
「ああ、だから僕達の装備にも色がついているんですね」
とノルブさんが自分達の装備を見ながら納得の声をあげる。
そう、今回皆に用意した装備は、それぞれの身体強化魔法の属性に合わせた塗料が塗ってあったんだ。
ちょっとした小技程度の仕込みだけど、自分専用の装備なら色にも気を使いたいだろうしね。
「成程ねぇ……っていうか、ここまで行くともう新装備って言うよりもマジックアイテムって言うんじゃ……」
「うおおー! なんか剣もすっげーカッコいいぜ! デカくて赤くて強そうで良いじゃねぇか!」
「その剣は炎属性の魔法の威力を強化する魔法の杖としても使えるよ。それに剣自体に魔力を込めれば術式を仕込んだ簡単な炎の魔法も即時発動する事が出来るんだ」
「「「「「マジかよ!?」」」」」
工房で聞き耳を立てていたらしい鍛冶師の皆が驚きの声を上げる。
「いつの間にそんな物を仕込んだんだ!?」
「作業のスピードと加工の精度が凄すぎて全然気づかなかったぞ!?」
あれ? 僕は普通の速度で作業していただけなんですけど?
前世の知り合いとか、文字通り目にも止まらぬ速さで作業していたけど。
目に見える速度程度でしか作業出来ない奴なんざまだまだ半人前だっていつも言ってたからなぁ。
そうこう話している間に、皆が新しい装備を装着し終える。
「どう? キツかったり緩かったりしない?」
「全然大丈夫だぜ!」
「ええ、ぴったりよ。というか改修って結構形が変わるのね」
リリエラさんが改修された装備を見て驚きの声を上げている。
「ええ、せっかくなんで新しい素材と交換しつつ大幅に改修したんです。皆の戦闘スタイルや属性に合わせてチューニングしましたから、ちょっと使い勝手が変わってるかもしれませんね」
「成程ね……けどここまで違うともう新品ね」
とか言いつつも、リリエラさんは嬉しそうだ。
やっぱり新しい装備はワクワクするもんね。
「あ、あのレクス師匠、私の装備なんですが……」
と、新装備に着替えたリューネさんが話しかけてきた。
「なんだか前の装備に似ているような気がするんですけど」
お、鋭いね。
「ええ、リューネさんの装備は元から使っていた装備を流用しているんですよ。元々の素材が良い物を使っていましたからね」
そう、リューネさんの装備はボロボロになっていたけれど、使っている素材自体は悪くなかった。
だからリューネさんの戦闘スタイルに合わせつつ、前世で見た竜騎士の装備を思い出しながら改修したんだ。
いうなれば、古代竜騎士装備改といったところかな。
「リューネさんの装備は代々受け継がれてきたものですから、それをそのまま使い続けるようにした方が良いかなって」
「っ!? そこまで考えてくれていたんですか師匠……」
リューネさんが震えるような声音で僕に語り掛けてくる。
「リューネさんは受け継いだ槍の手入れの仕方が分からなくて上手く使いこなせなかった時でも、安易に武器を替えたりせずにずっと使い続けてきましたから、きっと鎧にも思い入れがあるんじゃないかなって」
「あ、ありがとうございますレクス師匠ぉ~!」
リューネさんが涙目で感謝の言葉をあげる。
「私、絶対龍姫の儀で優勝してみせます!」
うん、やる気に満ちるのは良い事だね。
「うぉー! 早く新装備を使いたいぜ!」
「そうね、試合をする前に装備を馴染ませておきたいわ」
あはは、皆新装備を試したくて仕方ないみたいだね。
「じゃあ新装備のテストがてら、魔物狩りでもしようか」
「「「「「「はーい!」」」」」」
「キュウ!」
モフモフ、試し切りに行くんであってご飯を狩りに行く訳じゃないよ?
◆
「ゆくぞ」
縄張りより飛び立った我等は人間の集落へと向かっていた。
我等はダークドラゴン。
誇り高き漆黒の龍だ。
間違ってもブラックドラゴンの様な雑魚と一緒にしないで貰いたい。
連中とは鱗の艶が違うのだ。
見よこの水で濡れたかのような美しい光沢。
……脱線した。
群れる趣味の無い我等は、他のドラゴン共となれ合う事などせぬ。
故に初めは今回の騒動の事を知らなかった。
だが噂好きのエメラルドドラゴンがやかましく囀っている声が聞こえてきた事で、ここ最近巣の外が騒がしかった理由に気付いたのである。
そしてそれ故に我等は人間共の集落に向かう事を決断した。
その理由は人間どもを蹂躙する為だ。
というのも、我等の長を自称していた黄金が人間ごときに敗北したと知ったからだ。
しかもカビの生えた古の制約などに従って、人間をその背に乗せるという恥知らずな真似をしたというのだから信じられぬ。
我等ドラゴンは世界最強の生物。
そのドラゴンが人間などという脆弱極まりない存在に従うなど、あってはならない事だ。
故に、我等はふがいないゴールデンドラゴンに代わって、人間共の思い上がりを矯正しに往くのだ。
ふっ、折角だ。最強のドラゴンはゴールデンドラゴンなどではなく、我等ダークドラゴンである事を人間共に教えてやるとするか。
闇の支配者の力、人間共に見せつけてくれるわ!
「頭領、人間共がこちらに近づいてきていますぞ」
と、群れの若いドラゴンが集落から出てうろついている人間に気付いた。
「おやおや、これではあの人間共が集落に帰ったら、仲間が一人も居らずに寂しい思いをしてしまいますな」
「おお、それは可哀そうだ」
若いドラゴン達が、わざとらしく人間共を憐れむ様な声をあげつつも、何かを期待する眼差しをこちらに向けている。
まったく、仕方のない奴等だ。
「分かった分かった。ではあの人間共が寂しい思いをせずに済むよう、先に蹂躙してやると良い」
「はははっ! さすがは頭領! 話が分かる!」
若いドラゴン達が我先にと人間達に向かって急降下を開始する。
しかも若い連中だけでなく年長の者達まで降下を始めおった。
やれやれ、少しばかり人間共が憐れに思えてくるぞ。
そんな心にもない事を思いながら地上を見つめていると、先頭を往くドラゴンが人間に襲い掛かった。
すれ違いざまに人間共を自慢の爪で引き裂くか、それとも急降下の速度も載せて踏みつぶすか。
人間共はどんな死にざまを晒すのかと眺めていたら、先頭の若いドラゴンが真っ二つに分かれた。
真っ二つに、分かれた。
「……は?」
え? 今何が起こった?
◆
「うぉぉぉ、ビックリしたぁぁぁぁっ‼ 何だ一体!?」
突然空から襲い掛かって来た黒いドラゴンを間一髪迎撃したジャイロが驚きの声をあげる。
「どうやらはぐれドラゴンが襲ってきたみたいだね」
と、レクスの視線に従って空を見ると、幾つもの黒い影が空を飛んでいた。
「はぐれドラゴン? この間町を襲ってきたヤツみたいなの?」
リリエラが以前町を襲ったグリーンドラゴンの事を思い出したのか、視線は空に固定したままレクスに質問する。
ドラゴン達は仲間がジャイロによって一刀両断にされた事を警戒しているのか、攻撃してくる様子もなく上空をグルグルと回っている。
「ええ、でも従えてるのはワイバーンじゃなくて同族か。こうなるとはぐれっていうよりも群れとして動いているのかな?」
どっちにしてもドラゴンってだけでヤバイ気がするんだけど。
私はちらりとジャイロが真っ二つにしたドラゴンに目を向ける。
その黒い鱗の色は、以前レクスが倒したブラックドラゴンね。
「というか今、ジャイロがドラゴンを真っ二つにした。レクスに強化魔法を掛けて貰っていないのに」
「そ、そういえば……」
メグリの声を聞いて、私はブラックドラゴンを倒したのがレクスでなくジャイロだと気付いた。
しかもそれだけじゃなくてレクスの援護も受けていない事にも。
「ドラゴン素材を精製して作った武器ですからね。ドラゴンの鱗くらい簡単に切れるのは当たり前ですよ」
さらりと断言するレクスだけど、その理屈は凄くおかしい気がする。
「ええっと……そうなの? ドラゴンの鱗にドラゴンの素材で作った武器を当てたらどっちも壊れそうだけど」
リリエラも訳が分からないときょとんとした顔でレクスに聞き返している。
そうよねぇ、どっちも元は同じ素材だものね。
「鉄と同じですよ。鉄鉱石をそのまま武器の形にしたものよりも、不純物を取り除いた鉄を鍛えた武器の方が強いでしょ? ドラゴンの素材も同じです」
「な、成る程。そう言われるとそんな気がしてきたわ」
戦士として身近な素材で説明された事でリリエラが納得の声をあげる。
「まぁ良く分かんねぇけど、兄貴が作った武器が凄ぇって事だな!」
くっ、馬鹿は単純で羨ましいわね。
というかそれって、レクスがドラゴンの素材を自在に加工できる技術を持ってるって事よね。
先日の魔物の大群が襲来してきた時は、硬いドラゴンの素材に簡単に穴をあけたりして簡易な装備として加工して皆を驚かせていたけど、今回のはそんな素人作業なんかじゃなくて、技術者として素材を自在に扱う事が出来るって意味だもの。
同じ加工でも意味が全く違うわ。
戦士として出鱈目に強いだけでなく、魔法使いとしても規格外。
しかもマジックアイテムも当たり前の様に作れて、鍛冶師としても超一流の腕前って、本当に何者なのこの人!?
「ともあれ、レクスさんの作った装備が凄いって事がこれで証明されましたね。まぁ分かってはいた事なんですが、寧ろ予想以上だったというかなんというか……」
と、ノルブがジャイロの手にした赤い剣を見つめながら遠いまなざしになっている。
気持ちは凄く分かるわ。
色々と凄すぎて何を言っていいのか分からなくなってきたのよね。
「よーっし、決めた! この剣は黒いドラゴンを倒したからブラックドラゴンスレイヤーだ!」
「いやその剣赤いじゃない、どこがブラックなんだよって突っ込まれるわよ絶対」
いけない、バカの発言に思わず突っ込んでしまった。
「じゃあレッドドラゴンスレイヤーか?」
「ドラゴンスレイヤーから離れなさいよバカ!」
あーもう、こんな下らない話をしてる状況じゃないでしょうが馬鹿!
「……」
そんな風に馬鹿に対してどうでも良すぎるツッコミをしていたら、レクスが真っ二つにされた黒いドラゴンの死体を見つめて何かを考え込んでいた。
「キュウキュウ!」
あとモフモフが羽を齧ってるけど良いのかしら?
「どうしたのレクス?」
「いえ、ちょっと鱗の艶が気になって」
鱗の艶? 何それ? 艶が良いと価値が上がったりするの?
「キュ? ガジガジ」
あっ、レクスにつられて鱗に齧りだした。
まぁいっか。私の狩った獲物じゃないし。
「……あっ、これブラックドラゴンじゃない」
「え?」
じっと黒いドラゴンの死体を観察していたレクスが、突然そんな事を言いだした。
「でも黒いからブラックドラゴンなんじゃないの?」
「いえ、この鱗の艶……これは上位の属性竜であるダークドラゴンですよ」
「「「「「「ダークドラゴンッッ!?」」」」」」
って、マジで!? マジでダークドラゴンなの!?
「ダークドラゴンって、幾つもの国を邪悪な呪いで滅ぼしたっていうあの伝説の邪竜の事!?」
ちょっ、何よそれ!? そんなヤバイ奴が空の上をグルグルしてるって言うの!?
だっていうのに、レクスはキョトンとした顔でえ? 何それと言わんばかりの眼差しでこっちを見てくる。
「いえいえ、ダークドラゴンは単に闇属性の力を持つドラゴンで、闇を操ったり精神にダメージを与える攻撃は出来ますけど、呪いなんて使えないですよ?」
「そ、そうなの?」
伝説になる様な呪いが使えないのなら、そこまで怖がる相手じゃないのかしら?
いやまぁドラゴンだから十分怖い相手なんだけど。
「まぁ心の弱い人が精神にダメージを受けると、気絶したり最悪廃人になる事はあるかもしれませんけど」
「「「「「「何それ怖っ!!」」」」」」
ちょっ、十分怖いじゃない!
「大丈夫ですよ。一応皆の装備にはアンデッド対策にある程度の魔法攻撃の耐性をつけているから、ダークドラゴンの精神攻撃程度なら殆どダメージを受けませんよ」
「え? そうなの?」
「ええ、僧侶であるノルブさんの装備を考えていた時に、僧侶がメインで戦う相手ってやっぱりアンデッドかなーって思ったんで、皆がアンデッドと戦う事になっても良いように精神攻撃や麻痺攻撃への対策機能を付けておいたんです」
「うわー、さらりととんでもない機能が付いてたわー」
ドラゴンが相手でも効果を発揮するアンデッド対策って何よ……
「今回の装備は手持ちの素材の割には自信作なんですよ。なにせ以前メガロホエールの親から貰った宝石がマジックアイテムの術式に使う触媒として優秀だったもので」
レクスが自信ありげに私達の装備に使った素材について語りだす。
「メガロホエールの親って海で出会ったあの?」
「ええ、クラーケン騒動の時に出会ったあのメガロホエールです。新装備を作る際に以前メガロホエールの親から貰ったあの巨大な宝石の原石も使えないかなと思ったんですよ。宝石ってマジックアイテムや儀式の触媒に優れている事が多いですから」
「余った原石とかある!?」
宝石という単語が出て来た事でメグリが目の色を変えて会話に参加してくる。
本当にこの子は金目の物に弱いんだから。
まぁこの子の場合、実家の事情もあるからしかたないんだけどね。
「で、試しに使ってみたら予想外にマジックアイテムの術式と相性が良くて、おかげで、色々な機能を装備に仕込めましたよ」
最高の素材ではなかったけれど、現状で用意できる素材を使ったベストな仕事が出来たとレクスは満足げに言う。
「はー、その様子だと、どんなとんでもない機能が付いているか分からないわねこの装備」
本当、何が仕込まれてるのか分からないからちょっと……いやかなり怖いわね。
「というか、ドラゴンの攻撃を受け止めたらそのまま相手が真っ二つになる剣とか、危険すぎて試合には使えないんじゃないですか?」
「「「……っ!?」」」
ノルブが何気なく呟いた言葉に私達はハッとなって顔を見合わせる。
「「……?」」
バカとまだレクスの恐ろしさを正しく理解していないリューネは首を傾げているけれど。
「ヤバい……確かにそうだわ! 危うく町のお祭りで死者を大量生産する所だったわよ!」
「祭りの余興どころか阿鼻叫喚じゃないの!」
「……さすがにそれはマズイと思う」
リリエラが慌てた声をあげ、メグリが青い顔で呟く。
「え? え? じゃあどうすればいいんですか? 素手で戦った方が良いですか?」
まだ状況が良く分かっていないリューネが困惑した様子で武器を使わなければ良いのかと聞いて来るけど、事はそう簡単じゃないわ。
「駄目よ、武器だけでなく鎧にもどんな恐ろしい機能が付いているか分からないわ。下手したら攻撃してきた相手を消し炭にする様な機能が付いていてもおかしくないわよ!」
「ま、まさかそんな……」
いくらなんでもそれは無いだろうとリューネが苦笑いをする傍で、レクスがパッと顔を綻ばせる。
「あっ、よくわかりましたね。格上の相手に当たってしまった時の為に、一定以上の大ダメージを受けるとこれまで蓄積したダメージを相手に打ち返す衝撃反転機構を仕込んでおいたんですよ」
「「「「ほらあったぁぁぁぁぁぁっ‼」」」」
そんな料理の隠し味を気付いてもらえたみたいな無邪気な喜び方をするんじゃないわよ!
「ちょっとレクス! 他にどんな機能を付けたの!? 全部教えなさい!」
私はレクスにどんな機能を皆の装備に仕込んだのかと問いただす。
「こうなるとダークドラゴンが襲ってきたのは丁度良いタイミングだったかも。装備に仕込まれた機能を試すのに丁度いい相手」
成る程、言葉で聞いてもどれだけ危険な機能がついているか分からないものね。
頑丈な実験台が居るってのは良い事だわ。
「良く分かんねぇけどあいつ等と戦うんだな! 分かったぜ!」
「は、はい! 良く分かりませんけど、戦えばいいんですね!」
相変わらず事情を理解していない二人が無邪気にダークドラゴンと戦うんだと興奮している。
まぁ良いわ。実際に戦いが始まったら、どういう意味だったのか身をもって理解するでしょ。
「よっし! 皆、片っ端から新装備の機能をダークドラゴン共に試すわよ!」
「「「「「「おおーっ‼」」」」」」
「えー? 何で皆そんなに警戒してるんですか? 装備に仕込んだのは普通の機能ばかりですよ?」
「「「信用できるかぁぁぁぁぁっっ!!」」」
レクスが作った物が普通な訳ないでしょっ!
リリ/ドラ/リュ゜+。*(*´∀`*)*。+゜「ヒャッハー!試し切りだぁぁぁぁぁ!」
ダークドラゴンズ_:(´д`」∠):_「助けてぇぇぇぇぇぇっっ!!」
ゴールデンドラゴン(:3)∠)_「我は何も見ていない」
シルバードラゴン(:3)∠)_「我も何も見ていない」
山岳ドラゴンズ(:3)∠)_「僕等も何も見ていません」
ダークドラゴンズ(;゛゜'ω゜'):「貴様等鬼かぁぁぁぁぁっ!!」
ドラゴンズ(:3)∠)_「「「「「ドラゴンです」」」」」
モフモフΣ(:3)∠)_「ええからはよ食わせろ」
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