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第112話 帝都激震

_:(´д`」∠):_「ちょっと竜騎士編が長くなってしまったので、章を区切りました」

_:(´д`」∠):_「つまり新しい犠牲者の章です」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 ここは竜国ドラゴニアの首都ロンゴニア。

 その更に中心と呼ぶべき場所、ロンゴニア城の一角にある大会議室に我等はいた。


 ここに居るのは私を含めて皆有力な貴族や騎士団の上役ばかりだ。

 しかも集まっている者達の中には敵対する派閥の者達もおり、普段なら共に行動することなどありえないほど仲の悪い者達もいた。


 だがそうした者達も今だけは黙って会議室の中にいた。

 大会議室のテーブルには、我が国を描いた大きな地図が敷かれている。

 そしてテーブルの側には、1人の騎士が緊張した面持ちで立っている


「それで、タツトロンの町の状況はどうなっておるのだ?」


 我が国の最高権力者である皇帝代理が騎士に問う。

 皇帝ではない皇帝代理だ。

 しかしその地位は皇帝と同義である。


 そして皇帝代理に問われた騎士が緊迫した様子で説明を始めた。


「はっ! 現在タツトロンの町は魔物の大群に包囲されております」


 そう、この会議は龍峰ロンライドに近いタツトロンの町が、魔物の大群に包囲されているという情報を受けて急遽開かれたものなのである。


 情報を運んできたのは、タツトロンの町があるイソルベ男爵領の隣の領地を治めるユーザルール伯爵で、説明をしている騎士もユーザルール伯爵の部下だ。


 伯爵本人はイソルベ男爵と共に救援のための軍の編成を行っている為、王都には来ていない。

 だがタツトロンの町の様子を見る限り、とても自分達だけでは町を救う事は出来ないと判断して、家臣の騎士を王都へと送ってきた。


「魔物はタツトロンの町を守る防壁近くまで接近しており、既に町の守護隊と戦闘が開始されていると思われます。魔物の大群の規模ですが……」


 そういって騎士は地図の上に魔物を示す駒を並べていく。

 駒はタツトロンの町を包囲するように、大小二つの円を作る。


 小さな円はタツトロンの町のすぐ側で包囲し、大きな円は町から離れた位置にある森の側から広がって町を包囲している。

 それはまるで二つの包囲陣形を敷いているかの様な形だ。


「何故魔物達は二重の円陣を敷いているのだ? これでは戦力を分散しているようなものではないか?」


 確かに皇帝代理のいう通りだ。

 いかに数が多かろうとも、円陣の一角に戦力を集中して突き破れば、被害は避けられぬが逃げれないこともなさそうに思える。


 外に広がるもう一つの円陣が、逃げた者を待ち受けていたとしても、これだけ陣形が広がってしまってはその厚みも大したことはあるまい。

 これならばイソルベ男爵とユーザルール伯爵の軍でなんとかなるのではないか?


 しかし騎士は悲壮な顔で皇帝代理の言葉を否定した。


「いえ、これは二つの円陣ではありません。内側の円から外側の円まで、全てが魔物で埋まっているのです」


「……なに?」


 皇帝代理が素っ頓狂な声をあげる。

 だがそれは我等も同様だ。


「町の側から森まで全て魔物だと? いやいや、それはあるまい。地図の上で見ればほんの数センチだが、実際の距離では数百メートル以上あるのだぞ?」


 そう口を挟んだのは、我が国の王都を守護するドラゴニア騎士団の騎士団長だ。

 専門家である彼の言葉に、貴族達が耳を立てる。


「それだけの範囲を埋める数の魔物を集めるには、我が国だけでなく周辺国の魔物まで根こそぎ集めねばならんぞ? ありえん」


「騎士団長がそこまで言う程か……」


 騎士団長が否定するのも当然だ。

 領地を持つ貴族なら分かるが、魔物の大量発生といえばせいぜい数十から百体くらいだろう。


 そもそも、大抵の魔物は冒険者達によって常に間引きされているようなものだ。

 それゆえ、大量発生という現象自体がそうそう起こるものではない。

 過去にはそれ以上の数の魔物が暴れたという話もあるが、真偽の怪しい昔話だ。


 そしてこの騎士の報告が確かなら、通常の魔物の大量発生をはるかに超える数の大群が町を包囲している事になる。

 それこそ数千といった数になるな。


「タツトロンの町へ向かう途中だった多くの旅人達より報告がありました。また我々が送った偵察部隊もその情報が事実であると確認しております。しかも確認できた魔物は全てCランク以上の強力な魔物ばかりだったそうです」


「なっ、馬鹿な⁉︎」


「ありえん……Cランク以上の魔物の大群だと⁉︎」


 騎士団長達が騎士の報告に信じられないと困惑の表情をうかべるのも当然だ。


 Cランクの魔物となれば、訓練を受けた騎士が数人がかりで相手をするような魔物だ。

 そんな魔物が数千体など、信じられるわけがない。


「と、ともあれ、タツトロンの町に援軍を送らぬわけには行かぬであろう。魔物がタツトロンの町を滅ぼせば、次に襲われるのは近隣の町や村であろうからな」


 皆が困惑する中、皇帝代理が兵を集めるべきだと騎士団長に告げる。

 そうだ、人間の軍が相手ならば、そのまま町を征服するなり我等に交渉をしてくるだろうが、魔物にあるのは食欲くらいのもの。


 集まった魔物達がタツトロンの町の住人だけで満足できなかった場合、餓えた数千頭の魔物が国中に解き放たれる事になる。


 いや、それだけの数の魔物ならばむしろ分散して個々の群れの数が減る方がやりようもあるか?

 寧ろ魔物達が一丸になったままでほかの町へ向かおうものなら、少数の守備隊しか持たない町ではひとたまりもないだろう。


「そ、その通りです皇帝代理! 急ぎ騎士団を出動させるべきです!」


「なんとしても被害が少ないうちに魔物達を殲滅せねば!」


 魔物達が自分達の領地に来てはたまらないと領地を持つ貴族達が口々に騎士団の出動を後押しする。


「うむ、騎士団長。急ぎタツトロンの町へと援軍を送るのだ」


「はっ、すぐに部隊を編成して出動いたします!  ……とはいえ、Cランク以上の魔物の大群となると、王都に常駐している部隊だけでは対処は困難かと。急ぎ各地に散っている部隊と各貴族領より兵を送ってもらう必要があるかと」


「貴族達の兵もか?」


 自分達の兵も集めると聞いて、領地持ちの貴族達が嫌そうな顔になる。

 だが領地を持つ以上、防衛の為に兵を出すのは当然だ。


「高ランクの魔物の数が報告通りならば、国境を守る騎士団からも兵を割く必要があります」


「国境の兵までもか⁉︎」


 騎士団長の言葉に皇帝代理がそれはマズイと声を上げる。

 国境に配置された騎士団は、我が国への侵略を目論む他国への威嚇に他ならない。


 その騎士団が突然いなくなれば、敵は喜び勇んで攻めてくるだろう。

 流石に全ての兵を撤収させる事はありえないが、それでも騎士の数が減れば攻めやすくなる。


「国境で戦う者達は相手の異変に敏感です。砦から兵の数が減ったらすぐに察知される事でしょう」


 すぐさま外務大臣が耳の痛い事を言ってくるが、専門家の発言だ。

 相手に気付かれるのは間違いないと暗に言いたいのだろう。

 それを理解して皇帝代理も騎士団長も渋い顔になる。


「敵に察知されぬよう気を付けつつ、できうる限り多くの兵を出させるのだ」


「御意」


 皇帝代理の無茶な命令に、外交大臣が頭を下げる。

 今の会話を聞けばどう考えてもバレない筈はないのだが、相手が気づかなかった事にするのも外務大臣の仕事という事なのだろう。


「では急ぎ兵を集めタツトロンの町に援軍を送るのだ!」


「「「「「はっ‼︎」」」」」


 そして騎士団と貴族達が兵を集めるべく会議室を出ようとしたその時、突然扉がノックされた。


「失礼いたします。ユーザルール伯爵の使者がまいりました」


 入ってきたのは城で働く文官と、泥や血で汚れた鎧を纏った騎士の二人だった。


「何っ!? ユーザルール伯爵だと!?」


 会議室にいるすべての人間の視線が先ほどまで説明をしていた騎士に注がれる。

 ここにきて新しい使者だと!?


「はっ、緊急の報告とのことです!」


 皇帝代理の顔が不機嫌そうに歪む。

 しかしその表情は怒りよりも困惑の色が強い。

 当然だ、この状況で緊急の報告など、碌な事ではないだろうからな。


「申せ」


 意を決した皇帝代理が新たにやってきた騎士に報告を促す。


「はっ! タツトロンの町を包囲していた魔物の大群が殲滅されました!」


「…………」


「……?」


「「「「「「……は?」」」」」


 一瞬何を言われたのか分からず、その場にいた全員が首をかしげる。


「……タ、タツトロンの町を包囲していた魔物の大群が殲滅されました」


 全員に問い返されて困惑した騎士がもう一度同じことを言い直す。


「「「「「……」」」」」


 どうやら聞き間違いではなかったらしい。

 聞き間違いではないのかー……


「って、なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

皇帝代理(;゛゜'ω゜'):「い、一体何が起きてるの!?」

魔人_:(´д`」∠):_「お友達(新しい被害者)来る?」


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