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第11話 Bランクとオークション報酬

ごめんよー皆、今回文字数大目です。

あと10話ですが、ラストの戦闘まわりを投稿の一時間後に修正しました。


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「大変よお父様!」


 グリモア子爵様の執務室にセリアお嬢様が慌てた様子で飛び込んできた。


「一体何事だセリアよ?」


 グリモア子爵様が驚いた様子でセリアお嬢様を見る。


「そ、それが! 災厄の未来が、町を蹂躙する魔物達の光景が先見から消えたの!!」


「何だと!?」


 グリモア子爵様も私も、想定していなかった出来事に思わず立ち上がってしまう。


「お昼を過ぎるまでは何度やっても破滅の光景しか見えてこなかったのに、さっき占ったら綺麗にその光景が消えていたの!」


「で、では我が領地は!?」


「皆平和に暮らしていたわ!」


「おおーっ!!」


 握り拳を作って興奮の雄たけびを上げたグリモア子爵様だったが、気が抜けたのか倒れるように椅子にへたり込む。


「あの男を雇った直後にこれとは……やはり私の判断は正解であったか」


「きっと旦那様の言葉を聞いたオーグ殿が、災厄の元凶を倒してくださったのでしょう」


「うむ、さすがはドラゴンを倒した男だ。報酬は弾まないとな」


 執務室にここ数週間感じなかった和やかな空気が流れる。

 さすがはAランク冒険者、グリモア子爵様との交渉から災厄の気配を感じて独自に動いていたか。

 この活躍、彼ならば近いうちにSランクに昇格してもおかしくないかもしれないな。


 ◆


「あっ、レクスさん! 丁度良かった」


 魔人を倒した僕等が冒険者ギルドに戻って来ると、受付嬢のエルマさんが声をかけて来た。


「どうしたんですかエルマさん?」


「お待たせしました。ようやくドラゴンとイーヴィルボアのオークション報酬が入りましたよ」


 おお、遂にグリーンドラゴンとイーヴィルボアの代金が手に入るんだ!

 と言っても、所詮グリーンドラゴンとイーヴィルボアだし、そこまでは期待はできないかな。


「それと領主様が買い取って下さったイーヴィルボアの代金も受け取りましたので、そちらもまとめてお支払い致しますね」


「おー、すっげぇ大金になりそうだなぁ兄貴!」


「どうかな、所詮はグリーンドラゴンだし」


「はぁ……だからそういう事ではないんですよ?」


 え? どういう意味なんですエルマさん?


「ともかく、オークション報酬をお支払い致しますので、応接室に来てください」


「窓口じゃないんですか?」


「オークションの報酬は大金になりがちなので、トラブル対策として他人に聞かれないように室内でお渡しするんです」


「えー、それだと兄貴がいくら貰えたのか分からねーじゃねーか」


「親しい間柄であっても、最低限の礼儀を忘れてはいけませんよ。チームドラゴンスレイヤーズのリーダー、ジャイロさん?」


「ギャァー! その名前はやめろぉぉぉ!!」


 すっかりチーム名が恥ずかしい過去になってしまったジャイロ君がのたうち回る。


「別に僕は一緒でも良いですよ?」


「え? よろしいんですか?」


 ちらりとエルマさんがのたうち回るジャイロ君を見る。


「どのみち後で聞かれるんですから、今聞かれても同じですよ」


「さっすが兄貴! 懐が深いぜ!」


 あ、もう復活した。


「……分かりました。それでは皆さんこちらへ」


 僕たちはエルマさんに案内され、ギルドの応接室へと入っていく。

 そして全員が入ると、エルマさんがドアを閉め鍵をかけた。

 厳重だなぁ。


「それではオークションの報酬をお渡しします」


 そう言うと、エルマさんは大きな袋をテーブルの上に置く。

ミシリとテーブルが軋んだ気がした。

次に小さい袋をそっとテーブルに乗せる。細かい金額かな?


「こちらがレクスさんが出品されたドラゴン、イーヴィルボア三頭、そして領主様がお買い上げになったイーヴィルボアの代金の合計金額、白金貨20枚となります」


 金貨20枚? 予想以上に少ないなぁ。


「んだよ、金貨20枚って少なすぎねぇ?」


 同じ事を思ったらしいジャイロ君が拍子抜けした顔で椅子にもたれかかる。


「違いますよジャイロさん。金貨20枚じゃありません」


 ノルブさんがジャイロ君に訂正の言葉をかける。

 あれ? でも今金貨20枚って言ったよね?


「白金貨20枚です」


 白金貨? ええと……確かそれって、金貨での支払いが難しい時に発行される特別な金貨の名前だよね?


「白金貨って金貨いくらだっけ?」


「ええと、確か……」


ミナさんに問われてノルブさんが記憶を手繰る。


「金貨1万枚です」


「「「「「金貨いちまんまい!?」」」」」


 ビックリする金額が飛び出してきて皆でハモる。


「それが20枚ですので、金貨に換算して金貨20万となります」


「金貨20まんまい!?」


 ちょっとびっくりだよ!? いままでの報酬が子供のおこづかいに思える程、金額のケタが違うよ!?


「と、とんでもない金額ね……」


 驚く僕らにエルマさんが詳しい説明を始める。


「今回のオークションでは、魔物の部位毎の出品を行いました。鱗、骨、皮膚、内臓、核といった具合にです。特にドラゴンは素材に捨てる所なしという魔物ですから、ほぼすべてが大金で落札されました。入札者もどれか一つでも手に入ればいい自慢になりますからね。その中でも特に貴重な部位は皆さん欲しかった様で、とんでもない速度で入札が行われていったそうですよ」


 ですよって、みんなどんだけグリーンドラゴンが欲しいの!?

 あれかな? グリーンドラゴン程度の魔物でも、状態の良い素材は逆に珍しいから予想外に高値になったのかな!?

 マニア人気的な意味で。


「イーヴィルボアも毛皮を小さく切る事なく、まるごと出品出来ましたので、大貴族の方々がお金に糸目をつけず落札したそうですよ」


 はー、お金持ちの人達の金遣いは凄いなぁ。


「「「「…………」」」」


 ジャイロ君達も言葉が無いといった様子だ。


「それにしても本当に凄い金額ですねぇ」


「領主様からの支払い分も大きかったですね」


「領主様から?」


「ええ、イーヴィルボアとドラゴンの討伐代金も込みだそうです」


「討伐代金?」


「はい、領内で暴れていたドラゴンとイーヴィルボアを討伐した事は領内の安定につながる行為。故に報酬には討伐の正当な対価も付けておくとの事です」


「領主様がそんな事を……」


「まぁそれにしても不自然に多い金額なんですが……」


 と、エルマさんは何か思うところがあるのか、首をかしげている。


 でもすごい話だなぁ。

 そんな民の事を思う貴族がいたなんて感動だよ。

 善良な貴族ってのも、居る所には居るもんだ。


「そういう事なら、ありがたく頂きます」


「やっぱ兄貴はスゲェぜ! 普通Dランクじゃこんな金額は稼げねぇぜ!」


金貨20万枚のショックから復活したジャイロ君が叫ぶ。

 まぁ確かに、この金額に僕もびっくりだよ。

 冒険者って儲かるんだなぁ。


「合計額が白金貨20枚と説明いたしましたが、こちらに用意したお金は、すでにギルドのオークション出品手数料の8%である金貨16000枚を引かせて頂いております。小さいほうが白金貨18枚、そしてこちらの大きい袋が手数料を差っ引いた分の金貨4000枚です」


 ああ、デカイ袋の方が手数料を差っ引いたおつりなんですね。

 お釣りが金貨4000枚かー。


「そうそう、金額が多い場合はギルド銀行でもお預かりいたしますよ」


 それ、預けましょうって言外に言ってますよね。


「ええと、魔法の袋があるんで大丈夫です」


 そう言って僕は報酬を魔法の袋に入れる。


「それは残念です……」


 心底残念そうにエルマさんが呟く。


「それはそれとして、これからも大物の魔物を討伐しましたら是非ウチのギルドに買い取りを申し込んでくださいね! 手数料はかかりますが、オークションに出せばいいお値段になりますので!」


「それ、ギルドが手数料を欲しいだけよね」


「っ!? ……なんの事ですか?」


 ミナさんのツッコミにエルマさんが一瞬硬直したものの、すぐに平静な表情になる。

 うーん、プロの仕事だ。


「あ、そう言えば大物と言えば……」


 僕はエルマさんにさっき倒したカースドバイパーの話をする。


「という訳で買い取りをお願いできますか?」


 せっかく狩ったんだし、お金になるなら売ってしまおう。


「イーヴィルボアを狩ったばかりなのにまた大型の魔物……ううん、これはもうけ話よ!」


 なにやらエルマさんが気合を入れている。

 きっと仕事熱心な人なんだろうな。


「でもあれって呪いの魔物なんでしょ? 良いの?」


 と、メグリさんがカースドバイパーについての疑問を呈してきた。


「そういやそうじゃん! 呪われてたら解体できないぜ兄貴!」


「ああ心配ないよ。カースドバイパーの呪いは死ぬと消えるんだ」


「そうなの!?」


「うん、アレは身体強化魔法のカースドブーストに類似したものだから、ジャイロ君が無意識に回復の魔力を放出していたようなものだよ。アレの魔物版さ」


「いえ、それよりも今魔界の魔物って言いませんでしたか?」


 何故かプルプルと震えながらエルマさんが聞いてくる。


「はい、魔人がゲートを使って魔界から召喚した魔物です」


「魔人んんんんっ!?」


 エルマさんが絶叫する。


「あーうん、まぁこういう反応するわよね普通」


「うん、至極当然の反応」


 何故か横でミナさん達が嬉しそうに頷いている。


「そういえば以前読んだ魔界の魔物の資料にカースドバイパーって名前が……ちょ、ちょっと待っててください! 良いですか! 上の人を呼んできますから絶対に待っててくださいね!」


 そう言うやいなや、エルマさんは応接室を飛び出してどこかに行ってしまった。

 そして数分も経たずに一人の男の人を連れて戻って来た。


「おいおいエルマ、緊急事態って何だ一体? それにこの子供達は何だ?」


 どうやら男の人も用件を教えられずに連れてこられたみたいで、困惑している。


「それ……は、今……から、せ……つめい、しま……す」


 よっぽど慌てていたのか、エルマさんは乱れた呼吸を整える。

 そしてようやく呼吸が整った事で話を再開する。


「レクスさん、この方は当冒険者ギルドのギルド長です。今回の問題は私の権限を越えていた為にギルド長に来てもらいました」


「ギルド長!?」


 まさかの大物出現だー!


「おう、ギルド長のバークレーだ、よろしくな!」


 ギルド長さんは気さくな様子で僕達に挨拶してくる。


「初めまして、レクスといいます」


「ジャ、ジャイロです!」


「ミナです」


「メグリ」


「ノルブです、よろしくお願いします」


「おう! それでエルマ、何の用だ? これでも俺は忙しいんだぞ」


 お仕事中に呼ばれたんだ。これは申し訳ないなあ。


「どうせギルド長の仕事なんて酒を飲むか博打をするかくらいでしょ? 元Aランクなんですから、こんな時くらい真面目に働いてください」


「元Aランク?」


僕がエルマさんの言葉に反応すると、横に居たノルブさんが耳打ちしてくる。


「冒険者ギルドの支部長はAランク冒険者を経験した人が就任するのが習わしなんですよ」


「へぇ、そうなんだ」


「そうだぞ、俺は凄いんだ。がっはっはっはっ」


 良かった、わりと良い人そうだ。


「いい気分の所申し訳ありませんが、町の近くでカースドバイパーが発見されました」


「カースドバイパー? 確かそれって……」


「魔界に生息する危険度Aランクの魔物です」


「そうそう……って何ぃーっ!?」


 一拍の間をおいてギルド長が驚きの声をあげる。


「何で魔界の魔物が地上に居るんだ!? エルマ! 急いで冒険者に緊急依頼の通達をっ!!!」


「既にカースドバイパーは討伐されていますのでご安心ください」


「そうか! では急ぎ教会と魔法使い組合に緊急通達……ってマジ!?」


 ギョッて感じでギルド長が驚きの声をあげる。


「さらに魔界と繋がるゲートと魔人の存在も確認されたそうです」


「なんだとぉー!? まさかこの時代に魔人が!? というか実在したのか!? いやともかく魔界関係なら急いで国に報告して軍を動かして貰わないと!」


「ゲートと魔人も撃退済みだそうです」


「もう全部終わってるじゃねぇか!?」


 うーん、テンション高い人だなぁ。


「……エルマ、あまり悪質な冗談は止めろ。これでも俺はギルド長だぞ?」


 あれ? 冗談と思われちゃった?


「えっと、本当なんです。カースドバイパーの死体なら持ってきてます」


 さすがにエルマさんが嘘つきだと思われるのは気分が悪い。

 証拠を出せばギルド長も信じてくれるだろう。


「そうだそうだー! 兄貴は嘘なんか言わないぜー!」


「カースドバイパーの死体ねぇ……まぁ良い。裏の解体場に持ってこい。……どうせビッグバイパーの変異種かなんかだろ」


 うーん、信用されてないなぁ。


 ◆


 ギルド長についてきた僕達は、ギルド裏にある解体場へとやってきた。


「へー、解体場ってこうなってんのかー」


「私達は入るの初めてだものね」


「だろうよ。ここに入るのは大物を狩って来た上位ランクのパーティばかりだからな。ほら、さっさと獲物を運んで来い」


 ギルド長に急かされたので、僕はさっそく魔法の袋からカースドバイパーの死体を取り出す。


「どうぞ」


「どうぞってお前、カースドバイパーは家よりデカイ巨体……ってなんじゃぁぁぁ!?」


 取り出したカースドバイパーにギルド長は驚いているけど、コイツはカースドバイパーとしては普通の大きさだと思うんだけどなぁ。


「お、おまっ!? 一体どこから出した!?」


 あ、そっちか。


「魔法の袋からですよ」


「魔法の袋だぁ!? ロストアイテムじゃねぇか!? 何処で手に入れたんだそんなモン!?」


 ロストアイテム? 何それ? これは普通の魔法の袋なんだけど。


「普通に家から持ってきましたよ?」


「どんな家だぁぁぁ!?」


 村では普段使いに便利だから皆持ってるんだけどなー。


「はぁはぁ……」


 叫びつかれたのか、ギルド長は荒い息を吐く。


「……という事です、ギルド長。本当だと信じて頂けましたね?」


 クククとエルマさんが笑いを噛み締めた笑顔でギルド長に話しかける。


「エルマ、お前何で言わなかった?」


「えー? 私は彼がドラゴンを討伐した時からちゃんと報告していましたよ。真面目に報告を聞かなかったのはギルド長じゃないですか」


「まさかこのガキが例のドラゴンを討伐した新人か!?」


 ギョッした顔でギルド長が僕を見る。


「そうですよ、ちゃんと毎日まじめに仕事をされていたら、もっと早くレクスさんの事に気付かれたと思いますよ。ですので、これからは真面目に業務に取り組んでくださいね」


 ウンウンと周囲の職員さんが頷いている。


「くそ、謀りやがったなコノ野郎」


 もしかしてこの二人、仲が悪いのかなぁ?


「それでギルド長」


「ああ分かってる、ドラゴンを単独討伐して、目の前に魔界の魔物の死体があるんだ。信じるさ。レクスだったか? お前が魔人を倒したんだよな? ゲートの残骸と魔人の死体はどこだ?」


 一変して雰囲気の替わったギルド長が僕に聞いてくる。

 これがAランクの冒険者の実力なんだな。


「ゲートも魔人の死体も異空間に捨てましたので残っていません」


「……まじかよ」


 困ったように頭をかくギルド長。


「何か困るんですか?」


 もしかして倒し方が悪かったのかな?


「いや、死体が残っていれば、国に報告して注意喚起が出来るんだが、それがないと偉いさんはまず信用してくれんだろうなぁと思ってな」


 あー、貴族ってそういう所あるよね。

 物的証拠が無いと、こっちが手柄をねつ造したり、危機感を煽って予算を水増ししようとしてると決め付けるんだよなぁ。

 前世の僕もそれで苦労したから良く分かるよ。


「俺達が見たぜ! 兄貴の魔法で魔人が真っ二つになって吸い込まれてくのを!」


「私も見たわ。凄い魔法だった」


「魔人、そこのカースドバイパーよりも恐ろしい殺気だった。皆殺しにされると思った」


「教会の名にかけて真実だと証言します」


 ジャイロ君達が、僕の言葉は真実だと証言してくれている。

 皆いい子だなぁ。


「まぁ魔界の魔物の死体があるからな、コイツを氷魔法で冷凍保存して軍に持っていくか。そうすりゃちったあ危機感を持つだろ」


「すみません、証拠を捨ててしまって」


 異空間に捨てたモノを回収するのはちょっと難しいからなぁ。


「いいって事よ。大事なのは犠牲を出さなかった事だ。あとの面倒事は大人に任せておきな」


 おお、さすが大人の男!

これこそ頼れる冒険者の姿だよね!


「それと分かってると思うが今回の件は全員よそで口外するな。魔人が関わっているとなると、国が動く案件だ。下手に触れ回って周りに不安の種を蒔きたくねぇ」


 さすがギルド長、後々の事も考えた適切な判断だね。


「ちょっと待てよ! それだと兄貴の活躍が無かった事になっちまうじゃねーか! そりゃズリーぜ!」


 ジャイロ君が納得がいかないとギルド長に抗議する。


「いいんだよ、ジャイロ君。一般の人の生活を考えるのが先さ」


「でもよぉ」


 僕が良いと言ってもジャイロ君は納得がいかないみたいだ。

 優しい子だなぁ。


「安心しろ。ちゃんとこの件の報酬はコイツの買い取り価格に色を付けてだす。それに危険度の高い魔物を退治したって事で、俺の権限でお前さんをBランクの冒険者に昇格させる」


 ええ!? 僕がBランク!?


「おおー! マジか!Bランクだってよ兄貴!」


 一転ジャイロ君が興奮した様子で歓声をあげる。


「本当ならAランク相当の魔物を単独で倒した事でAランクにしてやりたいんだが、冒険者になったばかりのヤツをあまり早く高ランクにするとお前さんがコネやイカサマでランクを上げたと疑われるだろうからな。今回はギルドの危険な指名依頼でランクをあげたって事にしておくわ」


「なる程、Dランクに昇格した時と同じですね」


 嫉妬で足を引っ張られるのはごめんだからね。


「ええ、そうですね。その点は私共も歯がゆく思っています。でも大丈夫ですよ、レクスさんならすぐにAランクに昇格できますから」


 と、エルマさんが微笑みながら僕を励ましてくれる。


「それに、お前さんにはさっさとランクを上げて危険領域に入って欲しいからな」


「「「危険領域?」」」


 僕とジャイロ君とメグリさんが聞いた事の無い言葉に首を傾げる。


「ランクの低い冒険者が入ったらいけない領域の事ですよ」


 と、ノルブさんが説明してくれる。


「あまりに危険すぎて国家と冒険者ギルドが一般人や弱い冒険者の立ち入りを禁止している場所、それを危険領域と言います。危険領域にはランクがあり、B、A、Sの三つの領域に分類されます。この領域に入れるのは、最低でもその危険領域と同じランクの冒険者だけです」


「つまり最低でもBランクにならないと入れないんだ」


「それってつまり、レクスに危険領域を探索させたいからBランクにあげたって事?」


「良く分かったな嬢ちゃん」


 メグリさんの指摘をギルド長が肯定する。


「危険領域は文字通り危険な場所だが、そこでの成果は確実に冒険者の功績になる。領域を踏破すればそれこそランクアップは確実だ」


「領域の踏破?」


 僕の疑問にギルド長は頷いて言葉をつづける。


「危険領域の中には早く解決して欲しい、将来的に人類の害になる現在進行形で危険が増大している場所があるんだ。例えば領域全体が毒の沼である腐食の大地は皆知っているだろう?」


「知ってるわ」


「うん知ってる」


「教会でも腐食の大地を浄化する方法を模索していると聞きます」


「そんなのあったっけ?」


「あるのよ!」


 あらら、ジャイロ君だけは知らなかったみたいだ。

 でも今の時代にはそんな危険な場所が出来てたんだなぁ。

 おっかないね。


「ここの沼地は年々広がっていてな、いずれは人里を飲み込むほどに拡大するだろうと言われている。そういったもう誰にもどうしようもなくて、廃棄、隔離するしかなかった場所の問題を解決する方法を国は求めているんだ」


 へー、なんだか魔物の呪いに侵された村を救った冒険者カドクの物語みたいだ。

 不謹慎だけど、ワクワクしてきたぞ。


「だから頑張って危険領域を踏破してくれ。その暁にはお前さんの活躍が正式に評価されるからよ!」


「ギルド長の無責任な期待はともかく、私達冒険者ギルド一同、レクスさんの活躍には期待しているんです。残念ながら今回の活躍は大事になり過ぎてしまいますので、表立って評価はできませんが、それでもギルド内の査定ではちゃんと評価してありますので、いずれこれらの活躍も査定に反映させて頂きます」


 エルマさんとギルド長が期待に満ちた目で僕を見て来る。

 なんだか照れるなぁ。


「どこまで出来るか分かりませんが、精いっぱい頑張ります!」


 ◆


「おおー! マジかよやるなぁオーグ!」


「へっへーん。まぁ実力ってヤツさ」


 ギルド長との話を終えた僕達がロビーに戻ると、オーグさんと冒険者さん達がなにやら盛り上がっていた。


「どうしたんですかオーグさん?」


「おおレクスか! どうだ頑張ってるか?」


「はい! 今日もヘビの魔物を退治しました!」


「そうかそうか! 頑張れよ!」


 オーグさんは気分よさそうに僕の背中をバンバンと叩く。


「凄く嬉しそうですけど、何かあったんですか?」


「おう、良く聞いてくれた! これを見てくれや!」


 そういってオーグさんが指差したのは、一匹の猪の魔物だった。


「あれ? これってイーヴィルボアじゃ?」


「その通りよ! 魔物討伐の仕事をしてたら偶然遭遇してな! なかなかに手ごわかったが、俺の必殺の一撃の前には敵じゃなかったぜ!」


「凄い! さすがですねオーグさん!」


「ふふん、まぁな。Bランクの魔物を単独討伐できるとは俺も強くなったもんだぜ」


「とかいって、その鎧のお陰だろー?」


 周囲の冒険者さんからからかい半分の野次が飛ぶ。


「うっせ! 運も実力のうちだっての!」


 いいなぁ、こういうじゃれあう様なケンカをしながら笑いあう関係。


「そうですよ、道具はあくまで道具、魔物を倒したのはオーグさんの実力ですよ!」


「……へっ、嬉しい事いってくれるじゃないか!」


「分かりますよ、だって凄く綺麗に倒してますもん」


「そうだろうそうだろう!」


 うん、分かるよ。この見事に小柄な子供のイーヴィルボア。

 焼き肉にしたらすっごい肉が柔らかくて美味しいんだよね!

 普通子供のイーヴィルボアは殺気立った大人が守っているから、めったに出会えないんだ。

 それを見つけるなんて、さすがはオーグさんだよ!


「今日も酒が旨くなりそうだぜ!」

:(;゛゜'ω゜')主人公ランクアップ!

:(;゛゜'ω゜')オーグさんは猪狩りの名人!

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― 新着の感想 ―
メグリが呪いの魔物と言ったけど、誰も魔界の魔物とは言ってなかった気がする。なのに、エルマさんが魔界と言っている。もしかして、「僕はエルマさんにさっき倒したカースドバイパーの話をする。」と書いてあったか…
[気になる点] 入札は、落札しないと完了しません。落札すると、価格が決定します。
[良い点] 与り知らぬところで勝手に名声を積み上げられていくオーグさん、死後にあることないこと尾ひれがついた英雄譚として詩人に詠われていそうだな
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