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第108話 逃げる追う

_:(´д`」∠):_「本日は二度転生二巻の発売日とマンガUPさんでのコミカライズスタートの日です!」

_:(´д`」∠):_「漫画版は昨夜0時にUPされているのですぐに見る事が出来ますよ! 漫画で戦うレクスの姿をぜひお楽しみください!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 我は逃げた。

 全力で逃げた。


 恥とかプライドとかそのようなものは一切投げ捨てて逃げた。

 アレは違う。

 明らかに違う、異常だ。


 数千の魔物と50の魔人に襲われて傷一つ負わず、ただの一発の魔法で殲滅できる者など、あり得る筈がない。

 アレは人間の形をした何か別の存在だ。


「こら待てーっ!」


「ひぃっ!?」


 後ろから我を追う声が聞こえてくる。

 しかも近い! かなり近い!


 我は必死で逃げる。

 だが既に全力で走っている。

 これ以上の速さで逃げる事は出来ない。


 なら飛べばいいだろう、背中の羽は飾りか? と言われるかもしれんが、空を飛ぼうとすると、一瞬だが隙が出来る。

 飛びあがった瞬間は僅かに速度が落ちるのだ。


 その僅かな速度の低下は、間違いなく我を死へと誘う。

 推測ではない、本能が伝えてくるのだ。


 だがこのままでは間違いなく捕まる。

 今も少しずつ距離が縮まっている。


「どうすれば……どうすれば……っ!?」


 その時、我はある物の存在を思い出した。


「そうだ、これなら!?」


 右の指に嵌めたそれは、我があの御方より授かった品。

 使い捨てではあるが、発動させれば一瞬でこの場より逃走出来る転移の力が込められた指輪のマジックアイテムだ。


「背に腹は代えられん!」


 貴重なアイテムを逃走の為に使うのは恥だが、今はそんな事を言っている場合ではない。


「指輪よ! 我を誘え!」


 発動の言葉を唱えると、指輪が発動する。


 ◆


 次の瞬間、我の体は不可思議な空間へと投げ出された。


「こ、ここは!?」


 突然の景色の変化に我は驚いたが、すぐに現状を思い出し急ぎ後ろを振り向いた。 

 だがそこには不可思議な空間が広がるばかりで、あの恐ろしい龍帝の姿はどこにもなかった。


「やった! 逃げ切ったぞ!」


 龍帝から逃げ出せた喜びを我は全身で噛み締める。

 安堵と共に全身から力が抜ける代わりに、我の心に暖かな気持ちが満ちる。

 ああ、敵がいないという事だけで、(魔)人はこれほどまでに穏やかな気持ちになれるのだな。


 そして落ち着きを取り戻した我は、ここでようやく周囲の状況を見るだけの判断力を取り戻す。


「……ふむ、これが亜空間というものか」


 我の周囲には何もなく、周囲の光景も何色とも言い難い複数の色が常に混ざり合いながら変化しているという不可思議な光景だった。



 ゲートをはじめとした転移のマジックアイテムは、亜空間を経由して目的の空間へと使用者を誘うという。

 ならばここは亜空間で間違いないのだろう。


「だがゲートを使っての転移ではこの様な空間に出る事はなかったが、このマジックアイテム特有の現象という事か?」


 まさかこのまま亜空間に永遠に取り残されるのでは? と不安に思った我であったが、視界の先に小さな光が輝いているのを見た。


「あれは……」


 光に近づくにつれ、その光の中に見覚えのある光景が見えてくる。


「おおっ!」


 良かった、どうやらマジックアイテムが不良品だった訳ではないようだ。

 我は安全な場所へと帰還出来る事を心から喜ぶと共に、いかにすればあの化け物を倒せるかを思案する。


 近づいての戦闘は論外だ。

 遠距離からであっても気付かれたらそれで終わりだ。

 

 50名からなる同胞と数千の魔物による一斉攻撃でも無理だった。

 何か良い方法が無いものか……


「おっと、逃がさないよっと」


 そうだ、もし失敗すれば今度こそ龍帝に……


「……え?」


 何か今、聞こえてはいけない音が聞こえたような気が……

 我は恐る恐る後ろを振り返る。

 するとそこには……


「よいっしょっと!」


 亜空間をこじ開けてこちらに無理やり入ってくる龍帝の姿があった。


「理不尽だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


 何それ!? 素手!? 素手で亜空間をこじ開けてる!?

 何で!? 何をしたらそんな事が出来るの!?


「ひはっ……」


 悲鳴にもならない悲鳴が口から洩れる。

 死ぬ、死んでしまう。間違いなく死ぬ。

 転移のマジックアイテムを使ってまで逃げ出したというのに、亜空間にまで追ってくるなんて……


ダ、ダメだ、このままでは殺される。

 元の空間に逃げだせても龍帝もセットでついてくる事になってしまう。

 どっちにしても死ぬ!! 間違いなく死ぬ!


「ぬぬっ」


 しかしその時、我は龍帝の姿に光明を見た。

 龍帝の体がまだ完全に亜空間に入りきっておらぬのだ。

 まだ体の半分、下半身が元の空間に埋まっていて、体を引き抜いている最中の様だ。


 これはチャンスだ!

 今この瞬間も、元の空間に戻る為の光はこちらに近づいてきている。

 ならば奴をこの亜空間から追い出せば、元の空間に戻った時に我が陣地に龍帝が付いてくる心配はなくなる!


「ならば! 龍帝が自由に動けぬ今しかチャンスはない!」


 我は元の空間から体を引き抜こうとしている龍帝に向かって全力で攻撃を放った。


「死ねっ龍帝ぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」


 龍帝に命中した魔法が炸裂し、その余波が亜空間内に吹き荒れる。

 至近距離での魔法の炸裂が我が身をも傷つけるが、そんな事は些細なものだ。

大切なのは龍帝をこの亜空間から追い出す事だ。


「体の一部が元の空間と繋がったままのあの状態では、満足な回避など出来まい!」


 しかも爆発の直前、龍帝は防御魔法を使うそぶりすらなかった。

 つまり龍帝が我の魔法の直撃を受けたのは間違いないという事だ。

 龍帝を亜空間から追い出すつもりで放った魔法だったが、これは追い出すどころかそれ以上の成果となったやもしれんな。


「ふ、ふははっ、我が全力の一撃が直撃したとあっては、龍帝といえども……」


「ブラストランサー!」


 巨大な魔力の槍が我の真横を通り抜けた。

 直後、翼に激痛が走る。


「ぐわあぁぁぁぁぁっ!!」


 見れば我の自慢の翼に大穴があいているではないか。

 翼はほとんど千切れかけており、とても飛ぶ事など出来そうもない。


「わ、我の翼が……」


「まったく、いきなり攻撃してくるなんて、ビックリしたなぁ」


「っ!?」


 再び聞こえてきたあの声が、我の背筋を凍らせる。

 視線を戻せば、そこには傷一つない龍帝の姿があった。


「あ……ありえん!?」


 馬鹿な!? 防御魔法も使わずに我が魔法を無傷だと!?

 人間は呪文を唱えねば魔法は使えぬし、そもそも生身の人間の体は我等魔人とは比べ物にならないほども脆いというのに、何故生きているのだ!?


「あ、あれ?」


 その時だった。

 龍帝の体が亜空間に飲み込まれ始めた。


「いや違う、元の空間にはじき出されるのか!?」


「くっ! ブラストランサー!」


 元の空間に引き戻される直前、龍帝が再び魔法を放ってくる。

 だが不意打ちならともかく、引き戻されまいと抵抗して狙いが甘くなった魔法にあたりなどせぬわ!


 無理に魔法を放とうとしたのがいけなかったのだろう。

 魔法を放った事で引き戻す力への抵抗が弱まった事で、一気に龍帝の体が元の空間へと押し返された。


 それと同時に、我はまばゆい光に包まれる。


「くっ!?」


そしてゆっくりと目を開けた時には、我は見覚えのある部屋に居た。


「も、戻ってきたのか……?」


 我はしばし呆然となって周囲を見回していたが、すぐにさっきの事を思い出して背後を振り向く。

 急ぎ千切れかけた翼にハイポーションをかけて血を止める。

 ハイポーションを使った治療では即座に飛行可能にはならないが、重要なのは出血を止める事だ。

 本格的な治療は後ですればよい。


 我は再び龍帝が空間を引き裂いて現れないかと何度も周囲を見回しながら警戒したが、いつまで待っても龍帝が現れる気配はなかった。


「……こ、今度こそ逃げ切った……のか?」


 龍帝が追ってくる心配が無くなったことで、安堵と共に我の体から力が抜ける。


「い、生き残った、生き残ったぞぉぉぉぉぉっ!!」


 たった一人、生き残ったのは自分ただ一人。

 その事があの方に知られれば、我は厳しく罰されるだろう。

 だがそれでも、我は生き残った事を心から喜ぶのだった。


 ◆


「うん、反応はあるね」


 元の空間へと押し出された僕は、慌てることなくマーカーの反応を確認する。


「ふむふむ、それほど離れてはいないみたいだね」


 あの時、魔人が転移のマジックアイテムを使った事を察した僕は、すぐに転移魔法に介入し、生じた空間の歪みを見つけてこじ開けた。


 そのまま魔人を倒そうとしたんだけど、ここ最近の魔人との遭遇率の高さを考えると、一人倒したところで大した意味はないんじゃないかと考えたんだ。

 だってもしここで魔人を倒したとしても、別の魔人が別の悪事を働く可能性が高いからね。

 それはこれまでの魔人との戦いを考えれば、容易に想像できることだった。


 だからこのまま魔人の本拠地に連れて行ってもらおうかと思ったんだけど、よく考えると町ではまだ皆が戦っている最中だ。

 このまま魔人の本拠地に転移したら、町に戻ってくるまで時間がかかってしまう。

 さすがに町を放っておくわけにはいかない。


 そう考えた僕は、魔人に攻撃をするフリをして相手の位置を知る事の出来るマーカーを打ち込んだ。

 狙い通り、相手は羽を傷つけられたショックと痛みでマーカーを打ち込まれた事に気づいていない。


 後は元の空間に押し出されるフリをして亜空間から離脱して、元の空間に戻ってからマーカーがちゃんと作動しているかを確認した。


「マーカーはちゃんと作動しているし、これでいつでもあの魔人の所に転移可能だね」


 そうと分かれば、あとは町を襲っていた魔物達を殲滅するだけだ。

 さっき向かってきた魔物達を纏めて退治したけど、皆を巻き込まない様に威力を弱めていたから、完全には倒し切れていないんだよね。


「それじゃあさっさと残った魔物達をやっつけるとしようかな!」

魔人(;゛゜'ω゜'):「よっしゃぁぁぁぁぁ! 生き残ったぞオラァァァァッ!?」

レクス(:3)∠)_「さーって、魔物を倒したら転移魔法で追いかけよーっと」

魔人(;゛゜'ω゜'):「ひぃっ!? な、なんだ今の悪寒はっ!?」

作者(:3)∠)_「ちなみに本来一瞬の通過であるはずの亜空間を魔人が知覚できたのは、レクスがマジックアイテムの転移に強引に介入したからです(豆知識)」


面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。

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― 新着の感想 ―
亜空間をこじ開けてこちらに無理やり入ってくる龍帝の姿があった。 ホ、ホラーだぁ…(遠い目)
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