第107話 狙われた龍帝
_:(´д`」∠):_「明日4/15は二度転生二巻の発売日とマンガUPさんでのコミカライズスタートの日です!」
_:(´д`」∠):_「なお小説の方は既に発売しているお店もあるみたいです!」
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魔法で生み出した壁で魔物の群れを分断した僕は、次の行動に出るべくゴールデンドラゴンに指示を出す。
「ゴールデンドラゴン、僕は下で戦うからお前は門を守って戦っている人間達を援護してくれるかい?」
「グォォォウ!」
僕の頼みを聞いたゴールデンドラゴンが、任せろと言わんばかりに吠える。
「じゃあ任せたよ!」
僕はゴールデンドラゴンから飛び降り、包囲網の外側から魔物達を挟み撃ちにするべく戦場へと降りていった。
◆
「チャンスだ!」
我は見ていた。
龍帝がゴールデンドラゴンと離れ、単独行動を始めた姿を。
「飛行能力を持った魔物共は全てゴールデンドラゴンとシルバードラゴンの妨害に回せ! 残った魔物共全て龍帝に向かわせるのだ。ここで龍帝を確実に仕留めるぞ!」
「「「「「応っ‼︎」」」」」
地上に降りた龍帝を狙い、同胞達が我先にと向かってゆく。
ふはははっ!よもや自ら一人になるとはな! なんと愚かな王か!
ドラゴンがどれだけ強かろうとも、その主が無能では最強のドラゴンも宝の持ち腐れだな!
「慢心して一人になった事を後悔するがいい!」
この作戦に参加した同胞、総勢50名による一斉攻撃でチリ一つ残さず葬ってくれるわ!
◆
「あれ?魔物達の攻撃の圧が減ったような……?」
外に出て戦っていた私は、突然魔物達からの圧力が弱くなった事に気付いた。
「なんだ? 急に楽になったぞ?」
どうやら近くで戦っていたジャイロ君も気付いたらしく、首を傾げている。
「町を落とすのを諦めたのかしら?」
そこに防壁の上から魔法で援護をしていたミナが降りてきた。
「上から見た感じだと、地上の魔物達は門を狙うのを止めて包囲の外の一点に集まってるみたいよ」
「一箇所に?」
「ええ、一箇所に」
何故そんな意味のない事を?
何故か悪い予感がするわね。
そして悪い予感を感じたのは、どうやら私だけじゃなかったみたいだ。
戦況が変わった事を感じ取ったらしいノルブ君とメグリがこちらに合流してくる。
「普通に考えれば態勢を整える為に一旦下がった様に思えますが、あれだけの大軍勢を下がらせる意味が分かりませんね。それも包囲したまま下がるのではなくて、一箇所に集まるなんて意味の無い行為を……」
そうね、他の人から見てもそう感じるわよね。
「包囲したまま攻めていた方が長期的に見ればこっちを疲弊させる事が出来たと思う。ただ包囲しているだけでこっちは逃げる事も出来ず精神が疲弊するし、攻めるか休むかを決めるのも向こうの自由に出来るのに」
「ええ、私も同意見だわ」
さすがレクスさんに鍛えられているだけあって、こんな状況なのにしっかり状況が見えているのね。
ほんの数か月前に冒険者になったばかりの新人とは思えない程だわ。
私が彼らと同じくらいの頃はここまで冷静に状況が見えていたかしら?
「魔物達がそんなおかしな動きをする可能性のある理由と言ったら……」
とそこで私達は空を見る。
そこには私達の味方となったゴールデンドラゴンとシルバードラゴンが、空を飛ぶ魔物達と激戦を繰り広げている姿があった。
「あの二人、というか二頭のドラゴンが原因かしらね?」
パッと考えられる原因というと、そのくらいよね。
そりゃあレクスさんは規格外の存在だけど、レクスさんを知らない魔物には関係のない話だし。
となればゴールデンドラゴンとシルバードラゴンという見た目からわかる規格外の存在の方が脅威を感じるでしょうね。
「あっ」
とその時、メグリが何かに気づいて声をあげる。
「どうしたの?」
メグリは何とも言えない微妙な表情でこちらを見てくる。
「……ゴールデンドラゴンにレクスが乗ってなかった」
「「「「……え?」」」」
どういう事!? レクスさんはゴールデンドラゴンに乗って、町を包囲する魔物達のかく乱に向かっていた筈よね?
「っていうか、この距離でなんで分かるの!?」
ドラゴン達は空の上で物凄いスピードを出して戦っている。
私達も魔法で空を飛ぶ事は出来るけど、あれほどの速度で飛びながら戦うのは無理だわ。
そんな速度で動いているドラゴンの背中に人が乗っているかを確認できるなんて、この娘どんな眼を持っているの!?
「身体強化魔法を使って目に魔力を集中したら見えた」
そしたらメグリはさらりととんでもない答えを返してきた。
「え!? 身体強化魔法ってそんな事も出来るの!?」
私は身体強化魔法の魔力をメグリの言うとおり目に集中させて空を見る。
けれど彼女が言う様に空を飛ぶゴールデンドラゴンの背中を確認する事は出来なかった。
「見えないわよ?」
「俺も見えねぇぞ」
「私にも見えないわね」
やっぱりジャイロ君達にも見えないみたいね。
「ええと……多分ですが、身体強化魔法の属性や使い方が違うからじゃないでしょうか? 盗賊であるメグリさんは斥候としての役割が重要ですから、観察する力に長けているんだと思います」
とノルブ君がメグリにだけゴールデンドラゴンの背中を確認出来た理由を推測する。
「成程ね、そういえば私達の身体強化魔法って、それぞれ属性が違うものね」
改めてお互いの魔法の違いを知り、私は自分の覚えた魔法も皆とは違う使い方が出来るんだろうかと考えてしまう。
「……けど今はあっちの方が問題よね」
今考えるべきはそっちじゃないと気を取り直した私は、再び空を飛ぶドラゴン達の姿を見る。
「そういえば、地上の魔物は撤退したのに、ドラゴン達はまだ戦っているのよね」
これはどういう事だろうか?
地上の魔物が撤退したのなら、空の魔物も撤退するのが当然なんじゃないの?
それとも、敢えて空の魔物をドラゴン達と戦わせている?
そしてその空にレクスさんは居ない……
じゃあレクスさんは一体どこに?
そう思った時だった。
ドガァァァァァァンッ!!
凄まじい轟音と共に、地上の魔物達が集まっていった場所が大爆発を起こした。
「……ぐ、偶然よね?」
あそこにはたまたま魔物が集まっていただけであって、実はあそこにレクスさんが居て魔物が殺到していたとか、そんな馬鹿な理由な筈が……
「まさかたまたま魔物達が集結した場所にたまたまレクスが居て、魔法で大爆発を起こしたとか?」
「凄くありえそうで返答に困りますね」
ミナの推測に、ノルブ君が苦笑しつつも否定を出来ないでいる。
うん、正直私もそんな気がしたような気がしなくもない。
「まぁ普通に考えて、あんな大魔法を使う事の出来る人間は限られるものね……」
たまたま偶然Sランクの魔法使いが町にやってきたという可能性もないわけではないけれど、さすがにこれ以上は自分でも往生際が悪いと思う。
「となると、やっぱりアレはレクスさんが起こした爆発って事になるのかしら?」
などと話していると、後方で爆発に巻き込まれた魔物達がこちらに吹き飛ばされてくる。
「とりあえず、あの爆発の方に向かうのは色々と危険みたいだから、私達は吹き飛ばされてきた魔物にとどめを刺して回りましょうか」
「そうね、それが良いわ」
「あれ、レクスさんからしたら魔物達が自分から近づいてきて、こちらから向かっていく手間が省けてラッキーくらいにしか思っていないですよね?」
「ええ、私もそう思うわ、間違いないわね」
そんな訳で、私達は本来の役割である町の護衛を行う為に吹き飛ばされてきた魔物達にとどめを刺して回るのだった。
◆
魔物共が龍帝に殺到する。
その陰に隠れて同胞達が全周囲から龍帝を仕留めるべく向かう。
だが龍帝は魔物共への対処に手一杯で、気配を潜めて高速で接近してくる同胞達に気づく様子は無い。
万が一龍帝の行動がなんらかの陽動であった場合を考え、我だけは龍帝への攻撃を控え周囲を警戒していたのだが、どうやらいらぬ心配であったようだ。
龍帝の首を獲るという大手柄は連中に取られてしまうが、なに作戦を立てたのは我だ。
我の献策あっての事と考えれば、我の功績が揺らぐ事もない。
あとは倒した龍帝の首を晒して人間共の戦意を挫き、町の住人を人質にしてシルバードラゴンを従える竜騎士を降伏させれば良い。
最小限の労力で最大限の結果を。
それこそが我のやり方よ。
「さて、そろそろ龍帝の首が落ちる頃……ぬっ?」
とその時だった。
突然龍帝の居る場所から眩い光が生まれたのだ。
「なっ何ご……⁉︎」
何事だ、言おうとした私の言葉を、凄まじい光と轟音がかき消す。
「ううぉあぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」
更に光に遅れるように衝撃波が我を襲う。
「ぬぅおっ⁉︎」
衝撃波で吹き飛ばされぬよう、我は必死で力を込めて踏ん張る。
そしてようやく衝撃が収まった事で、我はゆっくりと目を開いてゆく。
一体何が起きたのかと
「…………っ⁉︎」
目を開けた我の視界に入ってきたのは、誰一人として立っている者が居ない荒れ果てた荒野であった。
「こ、これは⁉︎ 一体⁉︎」
否、違う。
立っている者は居た。
一人だけ、何事もなかったかの様に立っていた者が。
「いやー魔物達が自分から近づいてきてくれるから、すっごい楽だったなぁ」
その者は、自分が魔物の群れに襲われていた事など気付いていないかのような口ぶりだった。
それどころか、数十人の魔人に命を狙われていた事にすら……
龍帝は、気付いていなかったのだ。
「ふー、とりあえずこれで一通りは倒したかな? あとは空で戦っているリューネさん達の援護かな」
「っ⁉︎」
その言葉に我は気付いてしまった。
気付いてしまったっ‼︎
我等は龍帝を追い詰めていたのではなく、龍帝によって誘い出されていた事に!
いつだ⁉︎ いつから我等魔人が自分を狙っている事に気付いた⁉︎
いやそれどころか、気付いていて尚龍帝は自らを囮にしたというのか⁉︎
我等に襲い掛かられると確信して⁉︎
自らの命が脅かされると分かっていて⁉︎
「違う……」
そうだ、違う。
違うのだ!
龍帝は、龍帝は、我等の事などカケラも歯牙にかけていなかったのか⁉︎
我等など、自分一人で対処出来ると確信していたからこそ、あえて単独行動を取ったという事か⁉︎
「全て掌の上だと……⁉︎」
「あれ?」
何かに気付いた、そんな誰かの声を聞いて我に帰ると、龍帝がこちらをじっと見つめている事に気付く。
「……」
「……あ、魔人だ」
「ギャァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎」
我は全力で逃げ出した。
魔人(;゛゜'ω゜'):「何で活きてるのぉぉぉぉぉぉっ!?」
レクス(:3)∠)_「まってーまってー(ゆっくりとした動作で高速接近)」
魔人(;゛゜'ω゜'):「こないでぇぇぇぇぇっ!!」
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