第103話 少女の特訓(簡単地獄コース)
_:(´д`」∠):_「書き溜め原稿って素敵!(つまり書き溜めに頼らないとアカン仕事が目白押しの意)」
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襲ってきたシルバードラゴンを無限投げで投げ飛ばした僕は、皆に大型の敵との戦いの心得を伝えた。
……んだけれど、それに対しての皆の答えは……
「「「「「「そんなの無理ですっ!」」」」」」
そんな事はないと思うけどなぁ。
「大丈夫ですよ。この技のキモはタイミングであって、逆に言えばタイミングさえ取れれば素人でも技を決める事が出来るんです」
相手の力を利用できるから、素人にもお勧めなのがいいよね。
「「「「「「素人がドラゴンを無限に投げるとか無理あり過ぎっ!!」」」」」」
いやまぁ連続して投げ続けるにはちょっとコツがいるけどさ。
でもまぁ一回や二回投げるくらいなら少し練習すればいけるよね?
「ああそうそう、特に竜騎士を目指すリューネさんには必須の技ですよ。従えたドラゴンがじゃれついてきた時に押しつぶされない為にもこの技はマスターしてもらわないと」
「ええ!? 竜騎士ってそんな危ない技が必要な職業だったんですか!? なんというかこう、ドラゴンを槍で下して従えるみたいにもっとスマートな職業だとばかり……」
「あははっ、ドラゴンとのコミュニケーションは素人には危ないですからね。甘噛みされる時の為に身体強化魔法で身を守るのは必須ですよ」
「あの牙で甘噛みかぁー……」
ドラゴン達の姿を見て、皆が顔を青くしている。
皆は身体強化魔法を覚えているからそんな心配はないんだけどね。
と、そこでシルバードラゴンが身を起こす。
投げられたショックか暫くは頭をフラフラさせていたけれど、気を取り直したのかすぐに身を正して雄叫びを上げる。
もう怒った、絶対殺すって感じの殺気だね。
うん、今の投げは軽めの回数だったとはいえ、結構根性あるドラゴンだね。
さてどうしようかな、別に倒しても良いんだけれど、折角シルバードラゴンがやる気になってるんだし……
僕は襲い掛かって来るシルバードラゴンの攻撃をかわしながら軽く投げる。
今度は無限投げじゃなくて手の返しを利用した軽い投げだ。
「ド、ドラゴンをあんな軽々と……」
「あー、レクスさんの行動を基準にものを考えると、痛い目を見るからあんまり参考にしちゃだめよ」
「……ええっと、単独でブルードラゴンと戦いながら言われましても……」
うんうん、皆も大分ドラゴンとの戦いに慣れて来たね。
そうだ! シルバードラゴンの活用法を思いついたぞ!
「リューネさん、こっちに来てください」
シルバードラゴンをちょっと遠くまで投げた僕は、リューネさんを呼ぶ。
「え? は、はい!」
グリーンドラゴン達の攻撃を避けつつ、リューネさんは僕の下にやってきた。
その移動にドラゴンへの怯えは見えない。
うん、一度戦った事で度胸がついてきたみたいだね。
「な、何でしょうか?」
リューネさんは背筋をピンと伸ばし、緊張した面持ちで僕を見つめて来る。
「いえ、折角シルバードラゴンが出て来たので、リューネさんに相手をしてもらおうかと思って。相手はドラゴンの中でも二番目に強いドラゴンですから、リューネさんの良い修行相手になると思うんですよ」
「成程、そういう事で……え?」
僕の言葉を聞いたリューネさんは納得の表情で返事をしかけたけど、その返事が途中で止まってしまう。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? ド、ドラゴッ、シ、シル、シルバードラゴンと戦うぅぅぅぅぅ!?」
「はい」
「はいじゃないですよぉぉぉぉっ!! 無理っ! 無理です! シルバードラゴンと戦うとか無理無理無理無理っ! 無理ですよぉぉぉ!!」
「あー分かるわ。凄い分かる」
「まぁ兄貴の修行って割と厳しいからなぁ」
「とはいえ、レクスの決定に変更はないから頑張りなさい」
「ええと、怪我をしたら回復魔法の準備はありますから」
「まぁ……死ぬ気で避ければなんとかなる」
「全然援護になってなぁぁぁいっ!!」
誰も味方をしてくれない事にリューネさんが絶叫する。
「あっ、そろそろ来ますよリューネさん」
「え?」
起き上がったシルバードラゴンが、僕に向かって突撃してくる。
しかも会話の最中に少しずつ移動して位置をずらしていたので、ちょうど僕とシルバードラゴンの間にリューネさんが挟まっている感じの配置になっている。
「グルォォォォォン!!」
「ちょっ!? 私関係なぃっ!?」
けれど、シルバードラゴンにリューネさんの都合なんて関係ない。
敵との間に立ちふさがるなら、諸共殺すだけだとシルバードラゴンが爪を振るう。
「さぁ頑張ってください! 大丈夫、所詮シルバードラゴンです!」
「全然フォローになってませぇぇぇぇん!」
さーって、それじゃあリューネさんのお手並み拝見と行こうかな。
それにしてもゴールデンドラゴンは動かないなぁ。
なんというか、凄く達観した眼差しでシルバードラゴンを見ている気がする。
「うきゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
リューネさんが悲鳴を上げながらシルバードラゴンの攻撃を回避する。
僕も今回はシルバードラゴンを投げる事なく回避に専念だ。
そしてシルバードラゴンが態勢を整える前にリューネさんの後方に移動して、常に彼女が僕とシルバードラゴンの間に来るように位置取りを調整する。
「し、ししし死ぬぅーっ!?」
何度もシルバードラゴンの突進を受け、リューネさんが半泣きで攻撃を避け続ける。
「リューネさん、避けてばかりじゃいずれ追い詰められますよ!」
「もう追い詰められてますーっ!」
リューネさんは必死でシルバードラゴンの攻撃を回避するけれど、これじゃあジリ貧だ。
「まずは反撃してみましょう!」
「は、反撃ぃぃぃぃっ!? うきゃあっ!?」
突進してくるシルバードラゴンに対してカウンター気味に攻撃を放ったリューネさんだけど、体格差とシルバードラゴンの猛スピードの前に木の葉の様に吹き飛ばされてしまう。
「し、ししし死にゅうぅ……」
「大丈夫! 防御魔法があるから、シルバードラゴンの攻撃程度なら十分に耐えられます!」
「ふぇ……? ほ、ほんとだ。全然怪我してない。な、何これ?」
「さぁ反撃ですよ!」
「で、でも攻撃が全然通じませんよぉ……」
さっきの攻撃が通じなくてリューネさんが弱音を吐く。
「大丈夫、さっき教えましたよね。大きな敵と戦う為の方法を」
「え!? それってもしかしてさっきの!?」
「そう、それです! やってみましょう!」
「は、はいぃぃぃ!」
シルバードラゴンが僕を目指してリューネさんに襲い掛かる。
「こ、こぅうきゃあっ!?」
そしてリューネさんはシルバードラゴンを投げようと向かって行くけど、あっさりと跳ね飛ばされてしまう。
「リューネさん、自分から向かっていく必要はないです。自分を支点にして、ドラゴンの体を回すイメージで投げてください!」
「はひぃぃぃぃぃっ~」
リューネさんが吹き飛ばされながら返事をする。
「うきゃあっ!」
「ぶきゅっ!?」
「ほげっ!?」
何度もシルバードラゴンに挑んでは跳ね飛ばされるリューネさん。
「ねぇ、グリーンドラゴン辺りで練習した方が良いんじゃないの?」
ドラゴン達と戦いながら、リリエラさんがそんな提案をしてくる。
「いえ、折角最強格のドラゴンが来ているんですから、なるべく強いのと戦って貰った方が良いかと。上の強さを知っていれば、それより弱い相手と戦う時もアイツに比べれば弱いって思えて楽になりますから」
「知っている上のケタが違う気がするんだけど……」
その時だった業を煮やしたシルバードラゴンが白銀色のブレスを吐いたんだ。
「レジストブレス!」
念の為僕は即座に仲間達にブレス防御の魔法をかける。
「キャァァァァァッ!?」
ブレスの直撃を受けたリューネさんだったけど、ちゃんとブレスの中から悲鳴が聞こえるからちゃんと防御できているみたいだね。
そしてブレスの余波が収まる前にシルバードラゴンが動いた。
「リューネさん来るよ!」
「ふぇっ!?」
ブレスによって巻き上げられた土煙が動いてリューネさんの前にシルバードラゴンが姿を現す。
けれど僕の声に反応したリューネさんが何度も繰り返した動きを無意識にとった時、全てのタイミングがかみ合った。
リューネさんの手が振り下ろされたドラゴンの爪に触れる。その勢いのまま投げる動作が行われる。シルバードラゴンの巨体が浮く。
「そのまま一気に振り抜いてください!」
「はいぃぃぃぃぃっ!」
そして次の瞬間、銀色の巨体が宙を舞い、やがて重い音を立てながら地面へと叩きつけられた。
「……や、やったぁぁぁぁぁっ!」
「おめでとうございます!」
初めてシルバードラゴンを投げる事に成功したリューネさんが全身で喜びを表現しながら飛び跳ねる。
「それじゃあ続けて投げましょうか。こういうのは反復練習が必要ですからね」
「はいっ! 何度でも投げますよぉーっ!」
ようやくシルバードラゴンを投げる事に成功したのが相当嬉しかったんだろう。
リューネさんはやる気満々でシルバードラゴンに向かって行った。
リリエラ_(:3)∠)_「ところで常にドラゴンと反対側に回り込んでいたレクスさんって、ボスキャラみたいよね」
ミナ_(:3)∠)_「残念、レクスからは逃げれない」
リューネ:(;゛゜'ω゜'):「それ、逃げられないの私では!?」
シルバードラゴン:(;゛゜'ω゜'):「私絶賛逃げれないんですけど!?」
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