第100話 龍姫と弟子入り
_:(´д`」∠):_「遅くなりましたー100話ですー!」
_:(´д`」∠):_「そしてまた8000文字超えた……コンパクトに収めたい……」
_:(´д`」∠):_「あ、それとバレンタインプレゼントをくださった皆さん、ありがとうございました! 頂いたチョコはとっても美味しかったです。あまりの美味しさと硬さに差し歯が外れて歯医者に直行しました! ……って外れたー!?((( ;゜Д゜)))!まぁ外れただけだったので、再接着で済みましたが……ネタとしても美味しいね!_(:3 」∠)_」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「それじゃあ今日の講座はこれで終わりです」
「「「「お疲れ様っしたぁぁぁぁ!!」」」」
解体講座が終わると、解体師さん達が腰を90度曲げて挨拶をしてくる。
一緒に参加している冒険者さん達までだ。
ブラックドラゴンの素材で作ったナイフをあげてから皆こんな感じで、なんだかくすぐったいなぁ。
◆
「皆かなりグリーンドラゴンの解体にも慣れて来たし、そろそろブラックドラゴンの解体をさせても良いかもね」
「え? もう?」
帰り道に僕がポツリと漏らした呟きをリリエラさんが拾う。
「元々ブラックドラゴンは強さが違うだけで、グリーンドラゴンと同じプレーンなドラゴンですからね。グリーンドラゴンの解体を繰り返す事で、ドラゴン素材への苦手意識を無くせば普通の魔物素材として問題なく解体する事が出来ますよ」
「そういうものなのね」
そういうものなんです。
「そう言えば疑問なんだけど」
と、ミナさんが会話に混ざって来る。
「トーガイの町でもレクスの狩ったドラゴンが冒険者ギルドに買い取られたのよね? そっちはどうやって解体したのかしら?」
厳密には買い取ったのは王都のオークションに参加した人達だけどね。
「え? そんな事あったの?」
ああ、まだその時はリリエラさんとは出会っていなかったもんね。
「ええ、たまたま遭遇したグリーンドラゴンを買い取ってもらったんですよ」
「その時はギルド中が大騒ぎだったんだから。竜殺しが現れたぞーっ! って」
「ああ、あれが俺と兄貴の運命の出会いだったんだよなぁ。今でも覚えているぜ、兄貴の雄姿を!」
初めて出会った時の事だろうか? それともイーヴィルボアから助けた時の事だろうか?
ジャイロ君が興奮した様子でその時の興奮を語りだす。
「へぇー、そんな事があったのね。まぁレクスさんなら全然不思議じゃないけど、何も知らない当時なら皆相当驚いたでしょうね」
「おうよ! 驚いたも驚いた! ドラゴンは狩るわイーヴィルボアは一撃で仕留めるわ。果ては魔人まで瞬殺ときたもんだ!」
「あー、目に浮かぶわー」
その光景を想像したのか、リリエラさんが乾いた笑いを浮かべる。
「ああそうそう、ドラゴンの解体だけど、たぶん王都のオークション関係者がやってきて解体したんだと思うわ。あそこには珍しい素材が集まってくるから、特別な素材を解体出来るように貴重なマジックアイテムを幾つも所持しているって話よ」
へぇ、そんな貴重な道具まで使ってグリーンドラゴンを解体していたんだ。
商売人として、銅貨一枚でも高く売ろうっていう熱いこだわりがあるんだろうなぁ。
となるとそのオークション会場には、見た事もない凄いマジックアイテムが沢山揃っているんだろうね。
一度見てみたいもんだなぁ。
そんな会話をしながら、僕達夕暮れに染まった町を歩く。
「それにしても、ここ数日で例の騒ぎも収まって来ましたね」
ノルブさんが言う例の騒ぎっていうのは、リリエラさんがグリーンドラゴンを倒した時に起きた龍姫騒動だ。
そういえば、龍姫って結局なんだったんだろう?
「うう、あの話はもういいわよ。今回の解体の件でギルドが気を利かせて解体師達に私達の事は伏せておくように動いてくれているみたいだけど、あんまり表で口にしない方が良いことに変わりはないわ」
と、フードを被ったリリエラさんが溜息を吐く。
どうもまだ顔を晒して外を歩くと龍姫と呼ばれてしまうみたいで、まだまだフードを外せないらしい。
槍を持った女冒険者さんは他にも居るみたいだけど、町の外から来た槍使いの女冒険者となると、数は絞られるみたいだね。
だからたまに金髪の槍使いの女冒険者さんが龍姫様と呼ばれて町の人達に囲まれている姿を見かける。
うん、良い感じに囮になってくれているなぁ。
「そういう意味ではレクスさんは運が良かったわね。夕暮れ時で薄暗かったから、直接会話をした門番以外はレクスさんの顔をはっきり見れた人間は少ないわ。それにあの時はゴールデンドラゴンがピカピカ光って眩しい上に目立っていたものね」
あー、そういう意味では助かったかも。
ゴールデンドラゴンには感謝しておくべきかな?
今度差し入れに何か持っていってあげようか。
「それよりも早くメシ食おうぜ兄貴! 腹減っちまったよ」
と、空腹が我慢できなくなったジャイロ君が早く食事にしようと声を上げる。
「そうだね、それじゃあどこか近くのお店に入ろうか」
そして僕らが手ごろな店に入ろうとしたその時だった。
「あ、あの!」
後ろから誰かが僕達に声をかけて来たんだ。
誰だろうと思って振り返ると、そこには見覚えのある姿があった。
「君は……リューネさん?」
そう、僕の解体講座にも来ていたリューネさんだ。
走って追いかけて来たのかリューネさんは息を荒げている。
「は、はい! 実は折り入ってお話ししたい事がありまして!」
「話ですか?」
一体なんだろう? ドラゴンの解体の事でわからない事があったのかな?
「実は……」
リューネさんは呼吸を正すと、背筋を伸ばして真剣な顔になる。
「私を……弟子にしてください!! お願いします!」
そう、告げてリューネさんは深く頭を下げた。
リリエラさんに向かって。
「……え? 私!?」
みたいですよ?
「お願いします! 私も貴女の様に強くなりたいんです!」
「え? そ、そう?」
貴女の様に強くなりたいと言われ、満更でもなさそうな顔になるリリエラさん。
「はい! 龍姫の再来と呼ばれる貴女の様に強くなりたいんです!」
「へっ?」
「「「「龍姫様っっっ!?」」」」
リューネさんのその言葉を聞いた瞬間、町の人達が一斉に振り返った。
◆
「いやーははは、怖かったですねぇ……いやホントに」
「ひ、人の波に押しつぶされるかと思った……」
あの後、リリエラさんに向かって押し寄せて来た町の人達に押しつぶされそうになった僕達は、慌てて空を飛んで逃げた。
さすがにあのままリューネさんを放っておいたら大怪我するのは目に見えていたので彼女もいっしょにだ。
そして魔法で姿を消しつつ宿の部屋に戻って来た訳だ。
安心した反動か、ノルブさんとメグリさんがさっきの光景を思い出して体を震わせている。
うん、ヘタな魔物の群れよりも怖かったよね。
「あの、すみませんでした……」
自分の発言が原因で騒ぎが起きてしまったと、リューネさんが謝罪の言葉と共に頭を下げて来る。
「ああいや、気にしないで下さい。それよりもですね……」
僕はリリエラさんの方に視線を向けつつもリューネさんに質問する。
「何故リリエラさんに弟子入りしたいと?」
リューネさんは言った。
リリエラさんに弟子入りしたいと。
「は、はい! 私、龍姫様の再来と呼ばれる程の強さを持つあの方に弟子入りしたいんです!」
「ねぇ……その龍姫様って何な訳?」
リューネさんの言葉に、リリエラさんがうんざりした様に聞く。
そう言えば龍姫って人は一体何者なのかを僕らは知らないんだよね。
「え? 龍姫様をご存知ないんですか?」
リューネさんが信じられないと驚きの表情を見せる。
「うん、知らない」
「で、でも貴女は龍帝流空槍術の後継者なんですよね!?」
「え? 違うけど?」
「へ? ……い、いえ、そんな筈はありません! あの槍捌きは間違いなく我が流派、龍帝流空槍術です!」
リューネさんがそんな筈ないと強く否定する。
というか今、我が流派って言った?
「龍姫様とは、この国の最後の竜騎士の名です」
あ、説明が始まった。
「かつてこの世界では人間と魔人が争っていました。それはこの国でも例外ではなかったそうです。寧ろわが国では、他国以上に魔人との戦いが激しかったと伝えられています」
あー、確かに前世の記憶でもドラゴニアは激戦区だった記憶があるなぁ。
「それというのも、我が国がドラゴンと共に戦う竜騎士の国だったからです。竜騎士はドラゴンと戦い己の力を見せる事でドラゴンを従えます。そしてドラゴンに乗った竜騎士は空を統べる騎士の中の騎士と呼ばれる程の強さを発揮したのだそうです」
まぁ実際の強さはそこまで特別ではなかったけれど、ドラゴンに乗った騎士とか見栄えが良いからね。そういう意味では竜騎士は戦場の花形である騎士の中でも人気の職業だった。
なにより単純にドラゴンという強力な存在が人間の味方に付くと言う意味でも、ドラゴニアは魔人に危険視されていたんだ。
ああでも、竜騎士が見かけだけの職業だったわけじゃないよ。他国の騎士で同じくらいの階級に属する騎士達と比べるとそこそこ強いし、龍帝と呼ばれる竜騎士の王を始めとした上位の竜騎士はそれこそ騎士の中の騎士と言っても良いくらいに強く華々しい戦いをしていた。
まぁ他の国の騎士や職業にもバケモノみたいな人はいっぱいいたけれどね。
魔導国家の魔法騎士団や剣帝王国の魔剣師団とかね。
「龍姫様はそんな竜騎士達を統べる最強の竜騎士、龍帝陛下の寵姫であり、ご自身も優れた竜騎士でした」
ふむ、つまり龍姫はかつてこの国にいた王妃、もしくは側室ってことなのかな?
騎士ということは、愛人枠かもしれないね。
「龍帝陛下と龍姫様はそれはそれは深く愛し合っており、皆が羨むほど仲睦まじかったそうです」
「なんだか恋物語みたいな話ねぇ」
「ですがそんな二人の甘い日々も長くは続きませんでした。魔人の大軍団がこの国へと進行してきたのです。魔人達はドラゴンと共に戦う我が国に対抗する為。強力な魔物の群れを率いて襲ってきたそうです」
へぇ、僕が死んだ後でそんな事件が起こっていたんだ。
「竜騎士達はドラゴン達と共に戦いに赴きました。勿論同じ竜騎士である龍姫様も共に戦場へ行く事を望みました」
ウンウン。
気が付けば僕だけでなく、リリエラさんやミナさん達もリューネさんの話に聞き入っている。
「ですが龍帝陛下は龍姫様が共に戦場に出る事を許しませんでした。戦える者はそれこそ女であろうとも戦場に向かうというのに、何故自分だけ出てはいけないのかと龍姫様は憤りました。龍姫と呼ばれようとも、自分は騎士。ならば民の為に戦場に出るのは当然の事だと龍帝陛下に問いました」
うん、これは龍姫が正しい。
僕等が生きていた時代は魔人と戦う為に男も女も戦える力を持つ者は戦場に出ていたからね。
あと性別とか関係なしに強い人は男女の区別なく強かった。
ホントウニツヨカッタヨ。
なんて思い出している間にもリューネさんの話は続く。
「それもその筈。実は龍姫様のお腹には龍帝陛下のお子がいらっしゃったのですから」
ああ、確かにそれなら一緒に戦う事は出来ないね。
この話の龍帝が僕の知っている龍帝と同じなら、それはかつてのドラゴニアの王ということなのだから。
王の子を身ごもった寵姫が戦場で戦う訳には行かないよね。
いや王の子でなくても妊婦さんが戦場で戦うのはマズイか。
「そして龍帝陛下は龍姫様に言いました。この戦い、我等竜騎士は誰一人帰ってこられないかもしれない。だが君がいれば、君さえ生き残ってくれれば龍帝流空槍術の継承者は失われずに済む。だからどうか後の世まで龍帝流を存続させてほしいと」
ふむ、龍姫にそんな事を頼んだという事は、龍帝はその戦いで自分達が生きて帰れない事を確信していたという事だね。
それが前世の僕が死んでどれくらい経った後の時代の話かは分からないけれど、相当大きな戦争があったって事はよくわかったよ。
「そうして龍姫様は国に残り、戦に出向いた龍帝陛下の帰りを待ち続けました。けれど遂に龍帝陛下達が戻る事は無く、龍姫様はこの国最後の竜騎士となったのでした」
リューネさんが話を終えると、部屋の中がシンと静まり返る。
かつてこの国でそんな出来事があったんだと皆感慨深い様な神妙そうな顔だ。
あれ? でもそれだと辻褄が合わなくなるような?
「……ねぇ、今の話が正しいのなら、この国には龍帝流を使う竜騎士が居る筈じゃないの? なのになぜ私に弟子入りって話になるの?」
そう、その通りだ。
皆も同じ疑問を抱いたみたいで、うんうんとリリエラさんの言葉にうなずいている。
「はい、その疑問こそ、私が貴女に弟子入りを願いでた理由なんです」
リューネさんは姿勢を正すと、リリエラさんの目をまっすぐ見てその理由を語った。
「実は、数百年前にこの国で質の悪い流行り病が流行りまして、大勢の竜騎士達が病で亡くなってしまったそうなんです」
「流行り病で!?」
まさか病気が原因とは思わず、皆ぎょっとなる。
「はい、生き残った者達はまだ修行の途中で、龍帝流空槍術を極めるには至っていなかったらしく、その代以降の竜騎士達は不完全な龍帝流を受け継ぐ事になり、それが原因で弱体化した後継者達は強力な魔物との戦いに敗北し更に技術が失われていって……ついには私の代に残された龍帝流空槍術の技は全盛期の半分以下になってしまったんです」
そして弱体化に続く弱体化で、遂にはグリーンドラゴンにすら勝つ事が出来なくなり、今に至るのだとリューネさんは語った。
「だからお願いです! 貴女が受け継いできた龍帝流をどうか私に伝授してください!」
リューネさんは床に額を擦り付けてリリエラさんに頼み込む。
「って言われてもねぇ……」
リリエラさんはどうしたものかと肩をすくめる。
「私は龍帝流の継承者なんかじゃないし、ギリギリブルードラゴンを倒せる程度よ。人にものを教える事なんてとてもできないわ」
「そ、それでも! それでも私よりは強いじゃないですか! 私なんてグリーンドラゴンどころかワイバーンすら倒せないんですよ!」
いや、それは胸を張って言う事じゃないと思うんだけど。
っていうか、竜騎士がワイバーンにも勝てないってヤバくない?
この町に来た時に竜騎士なんておとぎ話って言われていたし、この時代の竜騎士はどれだけ弱体化してるんだ?
「それに貴女の話が本当なら、貴女は王族って事になるんじゃないの? さすがに一介の冒険者が王族にものを教えるなんて話まわりが許さないでしょ?」
あ、そういえばそうだね。
リューネさんが龍姫の子孫という事は、彼女は王である龍帝の血を継いでいるって事だから。
「あっ、そこは気にしなくても大丈夫です。数百年前の流行り病で直系の人達は全滅していますし、私の一族自身、どれだけ龍姫様と血のつながりがあるかわかったものではありませんから。もしかしたら血のつながりの一切ない弟子の子孫の可能性もあるかもってお母様が言っていました」
それはそれでどうかと思うよ?
とはいえ、流行り病で後継者を始めとして多くの竜騎士が死んだのなら、残ったのは血のつながりのない弟子だけっていう可能性は確かに高いかもね。
後継者達の暮らす本家の家から離れた場所に住んでいた弟子の子供なら確かに流行り病の被害から逃れる事が出来た理由にもなる。
腕の立つ高弟は後継者の屋敷付近で暮らし、大した腕を持たない弟子が道場から離れた場所で暮らすとか普通にあったからなぁ。
「……だとしてもやっぱり貴方にものを教えるのは断らせてもらうわ。私もまだまだ未熟で、師匠から技を教わっている最中だもの」
「師匠……ですか?」
と、そこでリリエラさんがニヤリと嫌な笑みを浮かべる。
「ええそうよ、私に龍帝流を教えてくれたお師匠様が居るのよ」
あ、ヤな予感。
「い、居るんですか!? 龍帝流空槍術を極めた継承者が!?」
違いますよー、継承者じゃないですよー。
けれどリリエラさんはそんな僕の気持ちを無視してこちらを指さす。
「ええ、ここに居るレクスさんこそが、私に龍帝流空槍術を教えてくれた師匠なのよっ!!」
「……え、ええーっ!? こ、この方が!? で、でもこの方ってさっきまで解体講座とかしてましたよね!? 私てっきり竜騎士の身の周りの世話をする従者かと思ってたんですけど!?」
リューネさんが信じられないと言わんばかりに驚きの声を上げる。
うーん、従者と間違えられるなんて初めてだよ。
「さっきの解体の時の話を聞いていなかったのかしら? 彼こそは最高の冒険者であるSランクの冒険者だとあっちの彼が言っていたでしょう?」
とリリエラさんがジャイロ君を指さす。
ジャイロくんもニヤリと意味ありげに笑みを浮かべないでいいから。
「て、てっきり貴女の素性を隠すための隠れ蓑役かとばかり……」
「ふっ、相手の実力を測り損ねるとはまだまだ未熟ね。彼こそが正真正銘Sランク冒険者にして私達の師匠、レクスさんよ!」
やめてリリエラさん! ああジャイロ君達も無意味に僕に向かって膝をついて頭を下げないで良いから。
皆こんな時ばっかりノリが良すぎだよ!
ああもうノルブさんまで!
「え、ええ……じゃあこの人が本物の龍帝流の後継者でしかも龍姫様の子孫である私以外の龍帝流の継承者って事はつまり……」
リューネさんがワナワナと震えながら、まるでありえないものでもみたかの様な表情で僕を見る。
「まさか、貴方が龍帝陛下の生まれ変わりだったんですかーっ!?」
「いえ、違います」
ほんと違います。
「そうだぜ、龍帝とか良く分かんねぇけど兄貴はあの山でメッチャクチャドラゴンを倒しまくったんだぜ!」
ジャイロ君が指さした方向を見て、リューネさんが目を見開く。
「まさか、龍峰ですか!? では龍帝陛下は選龍の儀を終えてドラゴンを従えられたのですか!?」
「よくわかんねぇけど多分そうだぜ!」
こらこら、適当に相槌打たないで。
あと僕は龍帝じゃないから。
「はっ!? ではまさか先日町にやって来たというゴールデンドラゴンに誰かが乗っていたと言うのも龍帝陛下の事!?」
「あっ、それはレクスさんですね」
ちょっとノルブさん、勝手に教えないでよー!
「いやー、あれは死ぬかと思ったわ。というか全面的にあの時は毎秒死ぬかと思ったわ」
「うん、ドラゴンの群れとか、ブラックドラゴンとかワイバーンとかゴールデンドラゴンとかちょっとどころじゃなく死ぬかと思った」
あれ? 皆根にもってたりする? するの?
「だがそこで兄貴はドラゴン共をぶっ飛ばしまくったんだぜ! ゴールデンドラゴンも兄貴のワンパンでぶっ飛んだぜ」
「あれは驚いた。ドラゴンの巨体が宙を舞ったんだもん」
「ゴールデンドラゴンを……吹き飛ばした? 最強のドラゴンの王を……?」
皆の話を聞いたリューネさんはワナワナと体を震わせたかと思うと、今度は僕の前に膝をついて頭を下げる。
「お願いします龍帝様! どうか私に龍帝流空槍術をお授けください!」
だから違いますって。
「龍姫の儀に参加する為に!」
って、またなんか妙な単語が出て来たぞーっ!?
◆
「龍帝が現れたというのは本当か?」
龍峰を監視していた同胞の報告を受け、俺は思わず聞き返してしまった。
龍帝が現れたという事は、あの忌々しい竜騎士共もまた蘇るという事だぞ!?
「ああ、ゴールデンドラゴンが人間を乗せて人里に降りたらしい」
「信じられん。ゴールデンドラゴンが再び人間を乗せるとは。数百年前に竜騎士は全て滅ぼしたと思ったのだが……」
そうだ、あの流行り病で竜騎士の血筋は全て途絶えた筈だというのに。
「どうやら生き残りが居たらしいな」
そして小癪にも、生き残りの存在を秘匿して我らに備えていたという訳か。
もしかしたらここ最近の同胞達の失敗の陰には、潜んでいた竜騎士の残党の影があったのかもしれんな。
だが、竜騎士はドラゴンが居てこそ真価を発揮する連中だ。
ドラゴンに頼らず我等に対抗できるとはとても思えん。
何か我等に対抗する新しい手段を手に入れたという事か?
「どうする?」
同胞が不安そうに意見を求めて来る。
馬鹿が、我等が人間相手に怯えてどうする。
「決まっている、滅ぼすぞ。再び人間とドラゴンが手を結ぶのを黙って見過ごすわけにはいかん」
「だがゴールデンドラゴンは厄介だぞ?」
確かにな、ドラゴンの王であるゴールデンドラゴンの相手は少々面倒だ。
だが真正面から戦うだけが戦いではない。
「問題ない。集めた魔物共に相手をさせれば良い。我等はその隙に龍帝を始末するのだ。龍帝と竜騎士共さえ居なくなれば、ドラゴンが再び人間共に手を貸す理由もなくなる」
そうだ、龍帝さえ居なくなれば竜騎士など烏合の衆よ。
むしろ姿を現した今こそ好機!
「我等の再起を成功させる為にも、不確定要素はここで潰すぞ!」
くくくっ、本当の恐怖というものを教えてやろう人間共よ!
???_(:3 」∠)_「ふははははっ! 恐れるがいい人間どもよ!」
同胞さん_:(´д`」∠):_「ブルリ、あれ? なんか悪寒が……」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。_(:3 」∠)_