きみは僕のナカ
僕には少し、人と違うところがある。
自分ではそうは思わないんだけど、大きくなるにつれて『あぁ、みんなとは違うんだ』って思うようになった。
「駆くん」
「…なんだい?」
金曜日の放課後。
僕と陽菜は図書室で勉強をしていた。
「ここが分からないんだけど…」
「あぁ、これはね──」
優しい風が吹き込む窓辺で、僕と彼女の二人だけ。
外からは部活動の声が聞こえる。
穏やかで、ゆったりとした時間が流れていた。
「──で、こうなるんだ」
「なるほどー…」
相槌を打ってノートに書き込む指先から、ふむふむと感心する彼女へと。視線を向けた。
気づかれないように。腕、胸、首、顔となぞるように見る。
白シャツから伸びた腕は白くて、細い。
ちらりと見える鎖骨も綺麗で。噛んでみたいなって思ってた。
程好く膨らんだ品のある大きさの胸とか。可愛い唇も。ずっとずっと、思ってた。
彼女の肌に、触れてみたかった。
風に揺れた髪から覗く、可愛い耳。
それをおさえるようにして耳かけをする仕草。
彼女の全てが、とても綺麗で
「できたッ 駆くん、できたよ!」
陽の光を浴びて、にっこり笑う彼女の姿に。
ひどく、食欲をそそられた。
「───そう、良かったよ」
返事をする、今でさえ。
相手に好意を抱く事があると、同性だろうが異性だろうが、その相手を捕食対象としてみてしまう。
だからいつもいつも、涎が出そうになるのを我慢しながら近づいて。彼女の全てを食べたいなって考えていた。
そんな風にみられているなんて思いもしないだろう。
「………駆くん?」
肉厚で、脂が乗ってて。きっと甘美な味わいが広がるんだろうなとか考えて。堪らずごくりと喉が鳴った。
「駆くん」
全てが僕の栄養となって、身体の奥の奥まで流れ込んで。僕の一部となる。
それを想像しただけで、下腹部が一気に熱くなった。
「駆くん!」
「…………あ、 えーと…。何かな」
「ぼーっとして。何考えてるの?」
無邪気に、けれど不思議そうに笑う彼女に
『今しがた君を咀嚼してました』なんて言えるはずもなく。
「あー…えーとね」
「なーに?」
じわじわと燃え上がる欲望を悟られないように
涼しい顔して、優しい声で。
「あのね、陽菜───」
僕の家へと連れだした。
───あの時の、記憶の中の彼女は本当に綺麗で。美しかった。
艶のある髪も、柔らかい肌も、綺麗な胸も、大きな瞳も。
全部全部、僕好みで素敵だった。
ベッドに横たわる彼女に跨り、愛おしそうに頬を撫でる。少し、疲れているようにもみえるけど、その表情も綺麗で。身体が疼いた。
ぐったりとした彼女を起こして、腕の中へと閉じ込める。
シーツに出来た赤い染みと、冷たくなった小さな身体。滴る液は赤黒い。
焦点の合わない瞳を見つめて「好きだよ」って囁いた。
「僕がきれいに全部食べてあげるから」
ぺろりと舐めて
薄く開いた唇に、思いっきり噛みついた。
───これでずっと、一緒だね。