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異世界で生を受けたなら  作者: 蓮嫁 ルイ
プロローグ
1/15

目が覚めれば

処女作書き直してきました。

 

 目が覚めればそこには知らない天井があった……などということはなく、十余年どうにもこうにも見飽きた天井だった。



「ま、そんな旨い話はないよな」



 そんなことを呟いてみるも当然変化はない。しかし旨い話とはどんな話なのだろうか。まあ、無意識の発言だったのだし、特に意味はないのだろう。


 ふと、こうして現実逃避し始めたのはいつだったか、そんなどうでもいいことを思いつく。

 ……そういえば高校に入る頃には既に始まっていた気がする。いつだったかそれで注意を受けたこともあったはずだ。

 懐かしい、もう随分(ずいぶん)前のことの様に感じる。



「今日は何してたんだっけ……あんま思い出せないな」



 最近物忘れが激しい。昨日自分が起きていたのかさえ分からなくなることがある。

 目を開くことも億劫(おっくう)で、目蓋の上から当たる光で昼夜を判断している。

 最近は目の調子も悪くて外れる事も多いが目蓋からは何も感じないし目は暗闇を見せている。だから今は夜なのかもしれない。

 夜なら起きていても仕方ない。今目覚めたばかりだけどまた眠ってしまおう。


 そう考えているとふと言葉が漏れた。

 まるで何気ない話をふる友人に言葉を返す様な口調で。意図せずして口が勝手に動いていた。それは宛らルーチンの様だった。



「異世界転生、ね……信じちゃいないがあって欲しいもんだ。割と切実に」



 脈絡(みゃくらく)も何もあったものじゃない、唐突(とうとつ)な話題。だけどそれで思い出すこともあった。

 最近は(もっぱ)ら異世界転生の妄想をして過ごしていたんだった。現実逃避の先もこれだった。まあ、何を考えていたのか忘れてしまったが。


 異世界……そう、異世界。

 いつからだったか、もうずっと憧れている。

 いつか母にその話をしたことがあった。

 まるで童心に帰ったみたいに、年甲斐もなくキラキラとした目で話すのだと母は笑っていた。


 何故か会いに来るたび悲しそうな顔をする母が唯一、その時だけは嬉しそうに笑うのだ。

 多分、こんなにも切望しているのはそういうことなんだろう。

 母に笑って欲しいのだ。いつも悲しそうな、苦しそうな、そんな顔ばかり浮かべている母に。

 まるで子供に戻ったみたいだ。

 このことを誰かに話たら、苦笑しながらそんなことを言われた気がする。

 あれは……ああ、そうだ。父だ。

 秘密にしておいてやる、と言っていたのに次の日には母にバラしてしまうようなそんな父に言ったんだった。


 父……いつも泣きそうな顔で早く自立しろと声を震わして叱ってくれる父。

 そんな父があの時は笑っていたのだ。いつもの泣きそうな顔じゃなく、昔家族で遊びに行った時に手を引く自分に付き合ってくれた、あの時みたいに。



 そうか、父と母を待っていたのか。

 異世界の話をしたら、また笑ってくれるだろうか?

 それとも一昨日したみたいな、困った顔で涙を流すのだろうか?


 どちらでもいい。

 なんだか今は無性に話がしたい。



 しかし、到来も待てずに寝落ちしそうだ。

 頭の中の痛みも強くなって咄嗟に何かのボタンを縋るように押してしまった。

 だんだん強くなる痛みと眠気に従ってこのまま意識を手放した方が楽になれるだろう。無駄に抗う必要もないのかもしれない。


 でも……。


 今日は………。


 起きていたい、な…………。




 *****


「……! ……ッ!」



 誰かが俺を呼んでる気がする。

 多分、母さんのものだろう。確証はないがそんな気がする。

 どうやらいつの間にか眠っていたみたいだ。

 依然(いぜん)目蓋は重く、開きそうにないが起きてるからそんなに呼ばなくても良いのに母さんは心配性だ。



 それにしても変だ。声がボヤけて聞こえる。

 母さんが呼んでいるのは分かるが何を言っているのか聞き取れない。

 とうとう目や鼻だけじゃなく、耳まで駄目になったらしい。


 何とか応えようと声を出そうとするが口が開くだけだ。

 困った、これでは母さんと話せない。

 これでは笑わせられない。


 不意に両側から軽い衝撃が伝わる。

 なんだ親父もいたのか。言ってくれれば良いのに。

 俺は今、両親に抱きつかれているのだろう。声に応えたくてもう上手く動かない腕を両親に触れさせる。

 情けない話だが、これが限界だった。


 それでも、それで充分だったらしく抱き締める力が一層強くなる。

 なんだか酷く心地いい。

 凄く暖かくて、あやして貰ってる様な心地良さ。

 それがより(おだ)やかな眠たさを引き立てる。

 そういえばずっと響いていた頭痛が無くなっている。親の愛は万病に効くらしい。

 どうしても眠い。

 でも寝る前に会えて良かった。頑張って起きてた甲斐もあったというものだ。


 どうせなら話もしたいけどそれはまた今度でいいか。

 今はただ、この心地いい眠気に身を任せたい。



 だからさ、母さん、親父。

 やっと寝られるんだから寝させろよ……。



 不思議とその言葉が届いたのが分かった。何でそう思ったのかよく分からないが、案外奇跡でも起こって声が出たのかもしれない。


*を境に精神年齢が若返っています。

主人公の今の歳は28前後。

精神年齢はもう少し老けています。どちらかというと老けているというより機械的になっていますが。

対して*以降の精神年齢は高校、大学くらいだと思って下さい。

これは*以降はある程度の記憶を思い出しているからです。高校、大学くらいなのは話をしたのがそれくらいの時期だったということで。

母親と父親との思い出、そして会いたいという思いが切っ掛けとなっています。

それに応じて一人称が俺になったり、親の呼び方も戻っています。

こちらが本来の意識に近いです。



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