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出会い

それからあっという間に時間はすぎ、結婚式当日となった。

結婚式は無事に終わり二次会にも引き続き参加中の二人。

彼女の出会いも目的のはずなのにすっかりそんなことは忘れ、二人でのんびりと会場の片隅で酒を飲んでいる。

そこに冬馬の知人らしき人がやってきて、話しかけてきた。


「あ、柏木さん。今日は無理言ってすみませんでしたね。楽しんでいますか?」


彼は人付きのするような笑顔を浮かべて二人に挨拶した。


「あ、三山さん!いえ、お役に立てたなら光栄です。あ、沙耶、こちら私の取引先の三山さん。」

「どうも。三山です。」

「あ、初めまして。蒼月です。」


三山が手を差し出していたので沙耶は握手する。

その間、三山は笑顔を絶やすことはない。

沙耶はニコニコしていて感じのいい人だなぁと思っていた。

握手していた手を離すと三山が口を開く。


「でも、柏木さんにこんな綺麗な恋人がいるとは知りませんでしたよ。」


三山の褒め言葉にすかさず沙耶は照れて返事を返す。


「そんな、綺麗だなんて・・・。」


だが、沙耶は褒め言葉に気を取られすぎたために他の言葉が聞こえていなかったようだ。

きちんと聞いていた冬馬が沙耶に小声でツッコミを入れる。


「お前、バカか?そんなのお世辞に決まっているだろ?それより恋人発言を否定しなくていいのか?」

「冬馬の恋人!?」


彼女は彼の言葉でようやく三山の言葉に気づき、驚きの声をあげた。

そして、慌てて否定の言葉を出す。


「三山さん!!私、こんなバカの恋人なんかじゃありませんから!!」

「バッ!バカってお前!てか、言い方に気をつけろよ!!」


彼女の勢いに任せた言葉に冬馬は慌てて小声でつっこんだ。

しかし、その小声は慌てていたためにボリュームを下げきれず三山の耳に充分届く音量のままだった。

だが、三山は笑顔を崩さない。


「ははっ、別にいつも通りの話し方で大丈夫ですよ。今日はあくまで私の妹の結婚式、仕事を抜きにして楽しみたいですからね。」

「いや、しかし・・・。」


三山の言葉に冬馬は困惑の色を浮かべた。

それに引き換え、一気に顔色が明るくなったのは沙耶だ。


「そうですよね!よかった。私も普段堅苦しい言葉使わないから疲れちゃって。」

「ばっ!お前!調子に乗るな!!」

「ははっ。本当に楽しい方ですね。よかったら、これを機会にこれからもお付き合いしていただけませんか?」


冬馬が一人慌てていたが、それはまったく気にせずに三山はゆったりと沙耶に聞いた。

三山は、常にニコニコと笑顔を浮かべていて性格はいたって温厚で人が良さそうに見える。

ついでにいうならば、冬馬の会社もそれなりに上場企業であるのでその取引相手となれば稼ぎも悪くないだろう。

そして、沙耶の今日の目的は元々出会いだったのだから、三山の誘いを断る理由などなかった。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


彼女は頭を深く下げて彼にそう返した。

そして、冬馬だけが肩身の狭い思いをしながら、二次会終了まで三人ですごした。


「さて、三次会には出られますか?」

「私は明日も仕事ですので。」

「私も帰ります。夜更かしはお肌に大敵ですしね。」


三山が聞けば冬馬はきちんと答え、沙耶は冗談を交えながら返した。


「でしたら、私も帰りますのでお送りますよ。」

「本当ですかー!?ありがとうございます。冬馬よかったね。」

「いや、私は・・・。」


冬馬に限らず、この場合、大抵の人が遠慮するだろう。

いや、彼の沙耶への気持ちを考えれば、二人の邪魔をするために図々しく一緒に帰るという選択肢もあっただろう。

しかし、彼はそんな性格を持ち合わせていなかった。

本当に損な性分である。

さて、沙耶は彼が断る理由が分からない。

そのために強く誘ってくることが分かっていたので、冬馬は先手を打つ。


「あ、すみませんが、少し寄るところがあったのを思い出しましたので、これで失礼します。」


そう言うと、そのまま二人に軽く頭を下げて背を向けて帰っていく。


「じゃあ、私たちも帰りましょうか?」

「はい。」


そして、三山と沙耶も帰路に着く。

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