7.「部下より働く魔王の鏡」
魔王の朝は早い。
てか、魔王に休みはない。睡眠の必要が全く必要ない体質だからな。自ら徹夜で仕事に励む上司の鏡だな俺。部下も寝ないから無駄な思考だけどな!
「魔王様! これから何をされるのですか?」
やっぱりかわいいのぉ。孫を見る爺婆の気持ちが少し理解できる。これが雑種スライムとかだとそんな気持ち微塵も感じがないのだがな。
「これから、経験値を貯める作業に入るぞ」
「外に出るのですか?」
「いや、出ない。外出中にダンジョントレジャーが盗まれたら大変だからな」
「ダンジョントレジャーですか! よろしければ見せてください!」
結構ゴミなんだけどなー、あれ。
「これが、我らのダンジョントレジャーだ」
「おぉぉぁ。何か底しれぬ魔力を感じますね」
「そうか?」
そういうものか?
俺にはただの箱にしか見えないのだが。でも、前よりなんか大きくなったような……。
〔現在8670ポイントです〕
「え……?」
「どうかしましたか、魔王様?」
おかしい。ポイントを見なくなってから3日経ったが想定の2倍ぐらいになってるぞ。
〔仲間数が増えたため、現在毎分2ポイントで増えています〕
なんと。仲間の数でポイントが増えるシステムだったのか。やっぱり神様はわかってくれているな、魔物使いの俺としては自分より仲間の魔物が大切なのだ。
「ありがとうポロン。お前のおかげだ」
「え……。魔王様どうしたのですか?」
俺は改めてポロンに感謝した。
★☆★☆★
ペチッ。
ボコッ。
ペチッ。
「スキル正拳突き!」
――――ドスッ。
「魔王様! 今のはスキルですか?」
「正拳突きというスキルだ。俺も使うのは初めてだったのだが」
しかし気持ちのいいスキルだな。スキル名叫んで腕をまっすぐ出すだけで手にオーラがまとい結構強い攻撃になる。
相手は風属性ゾンビ。貯めると決めていたが、箱の8000ポイントを使い、鏡で【風属性ゾンビ召喚陣】を80体分購入した。
理由はポルンが低位風魔法無効を持っているのでそれを考慮してのことだ。
相手の平均レベルは5。俺一人では勝てるかどうか微妙な強さだが、二人なら結構余裕だ。ポルンは俺のスキルの影響で強化されているのでもはやレベル1の強さではない。
実際相手HPの八割はポルンが、削ってくれている。これでいいのかという気もしなくはないが、適材適所ということであのゾンビの相手はポルンが向いている。
「そろそろ30体目か。それにしてもなかなかレベルが上がらないな……」
「え……すいません。魔王様。僕もう3レベルほど上がってるのですが……」
なん…………だと…。
「鑑定」
【上位スライム エメラルド種 ポルン】
種族:上位スライムエメラルド種 ♂
親:魔王マルファス
レベル:4
HP:60 +28 MP:22 +9
攻撃力:27 +10
素早さ:51 +22
防御力:36 +12
賢さ:28 +5
精神力:7 +6
運:16 +3
スキルポイント:150 +150
スキル:低位風魔法無効 酸耐性Ⅰ
ほんとだ……。
しかも、かなり強くないか。スキルポイントの上昇値以外は完全に負けている気がする。
「それで、魔王様。スキルポイントの割り振りをお願いしたいのですが……」
「あぁ、そうだな。ぜひともやろう」
ポルンのスキルポイントの割り振りは俺が出来るのか。自由度が本当に高いな魔王と魔物使い職。
「ありがとうござ……え?」
「どうした? 急に素っ頓狂な声を出して」
「魔王様後ろに人が!」
ハハハ。なんの冗談だい。小規模のダンジョンには人は来ないんだよ。これ常識のはず……。
「こんにちはマルファス様。本日ご挨拶に参りましたゴストです」
現実逃避をする俺に、悲惨にもしっかりとした声が届いた。
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