1.「魔王様!放置プレイですか?」
『新しい魔王様さん!』
なんということをしてくれたのでしょう。
詐欺まがいの方法で異次元に飛ばしたくせに俺に魔王をやれだと? まあ、それはいいとしよう。問題はその前だ。
『そのダンジョントレジャー狙って勇者とか冒険者とか来ると思うけど頑張ってね!』
嘘だろ。嘘だと言ってくれ。
勇者とか冒険者が来るってことは俺の命も狙われるってことだろ?
一応、称号魔王だからな。
どうにかして身を守らねば。
ここには俺一人しかいないからな。
とりあえず、神様のプレゼントを調べるか。
今の気持ちはこいつを外にぶん投げたい気分なんだがな。
しかし、こいつを狙って勇者とやらも来るわけだからな。きっとチートアイテムなんだろう。そうじゃなかったら困る。
「鑑定」
【神の箱ダンジョントレジャー】
「名前そのまんまじゃねーか!!」
あぁ、思わずツッコミを入れてしまった。傍から見たらキ○ガイだな。俺。
それにしても、もうちょい効果が探れる名前でも良かっただろうに。酷いな神様。
しょうがない。もう一度じっくりと観察しよう。
・見た目はただの木箱。
・大きさは俺の拳一個分ぐらい。
・意外とずっしりと重い。
・小さな扉らしきものがある、だが開かない。
だめだ。それしか分からない。どうやって使うんだよこれ。
まさか本当にただの箱なんじゃ……。
「何が、神の箱だ。ただのゴミじゃねぇか」
〔現在:6ポイントです〕
箱に文字が浮かび上がってきた。
え?
なんか反応した。もしかしてさっきの言葉の中に発動条件的なワードが含まれてたのか。
「ゴミ」
違うか。
「神の箱」
〔現在:7ポイントです〕
「おぉ」
どうやら名前を呼ばれることで、反応してくれるらしい。
「ポイントを使います」
とりあえず、ダメもとで言ってみる。どうせ一発じゃコマンド発見は無理だろう。
〔ポイントを使用します。貴方が7ポイントで交換出来るアイテムは次になります〕
マジか。今日の俺は冴えてるな。
どれどれ、どんなアイテムがあるかな。
1ポイント
・貴方が最強になる最短ルートを示す本
・銅貨 一枚
む。1ポイントの奴しかないのか。
前者は凄い気になるな。もし本当に最短ルートで行けるなら、そんな便利なことはない。
「貴方が最強になる最短ルートを示す本と銅貨1枚お願いします」
2ポイントだけ使うことにした。
現段階では、どうやればポイントを増やせるか謎だからな。
〔2ポイントを消費します〕
そう浮かび上がると、さっきは全く動かなかった小さな扉が開き始めた。
2つの光の玉が中から出てきたと思ったら、次の瞬間には、銅貨一枚と本一冊に変わっていた。
〔現在6ポイントです〕
2ポイント使ったのに1ポイントしか減っていない。
「ポイントの増える条件はなんですか?」
〔1分に1ポイント増えます。持ち主のレベルによって変動します〕
1分に1ポイントだと……。
つまり、1分=1銅貨の式が成立する。
なんだこれ。強くね?
確か、金は鏡に入れられるんだよな。
試しに一枚鏡に投げ入れてみた。
まるで水の上に落ちたかのようにコインの入った場所の周りが波を立てる。
「1ポイント加算されました。ダンジョンの創造を始めます」
おぉぉぉ。なんの抑揚もない棒読みな言葉だが、確かに鏡が喋った。
口があるわけでもないのでただ声がするだけだが。
「 初心者のベット を設置します」
――――ドスン。
部屋の端の方に安っぽいベットが、出てきた。どうやら、所有者が望むものを出してくれるのは、ほんとらしい。
今夜どこで寝ようか悩んでいたところだった。俺は修行僧でもなんでもないんで、石の上で寝るとかごめんです。
「おめでとうございます。ダンジョンレベルが2になりました。新たな機能が追加されました。今からためたダンジョンポイントでアイテムを購入できます」
もうレベル2ですか。俺よりも先にレベルが上がるとは。
まあ、最初の方のレベルは上がりやすいのだろう。
「ん? ちょっと待てよ……」
神の箱から銅貨とる。→鏡に入れる→一分待つ→神の箱から銅貨とる。の無限ループが成り立ってないか。
もしかして神様は放置プレイを望んでいらっしゃるのか。だとしてもこれはチートだろ。
例えるならば、一分待てばスタミナが1、回復するゲームで、一分待てばスタミナ全回復のアイテムが出てくるアイテム。
そんなところだろうか。
ちょいと強すぎやしませんか。
確かにこれがダンジョンにあるって言われたら命を危険にさらせても、取りに行きたくなるな。
他のダンジョントレジャーもこんなチート能力なのだろうか。ちょっと、興味が湧いてきたな。そういえば、もう1つ交換したんだったな。
【貴方が最強になる最短ルートを示す本】
俺は、わくわくしながらページをめくる。
【今の貴方に必要なのは、外に出ることです】
俺は、そっと表紙をとじた。
俺の見間違いかな。きっと何かの冗談だ。
ページをめくる。
【外に出ることです】
俺は、無言で表紙をそっと閉じ部屋の一番向こうまでぶん投げた。
「絶対に俺は、外にでねぇぞ!」
俺は、新しく出来たベットに飛び乗りながら、半分やけくそでそう叫んだ。
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