13.「終わりの始まり」
『う~ん、ちょっと速すぎるんじゃない?』
――お前は……。
『うん、そうだよ。君をこの世界に連れてきた神』
――アマテか……。
『悪いけど君は喋れないから。死人に口無しってやつだね!』
――やっぱり、俺は死んだのか。それにしても人が死んだんだからもうちょい声のトーン落とすとかないの?
『ふふーん、悪いね。僕は神だからね』
――理由になってないな。
『いいじゃないか。本来神以外はここに来れないんだから』
――そうなのか?
『そうだねぇ、君は特別だから』
――元異世界人だからか。
『それは答えじゃないね。実のところを言うとこの世界って元異世界人まあまあいるんだよね。例えばハーデスとか』
――あぁ、そうか。あいつ元人間か。
『あんまり驚かないね! いいよぉ、やっぱり僕は君のそういうところが好きなんだよ。でも、もう一人君は元人間に会ってるんだよ?』
――誰だ? あの俺のグループ入りに反対したやつか?
『不正解だね、正解は'ゴメス'だよ。あの二人はこの世界に生まれ変わった異世界人を殺しまくってる奴らなんだよ』
――なんだと……。だいたいどこで俺が、異世界人だとばれた?
『君は、ちょっと危機管理能力が足りないね。ゴメスと初めて会った日のことを思い出してみな』
――会った日って、今日のことだけどな。えーと確か、グループの説明を受けて、ポーション飲まされて、変な魔法を飛ばされたな……。特におかしなことがあったか?
『君はやっぱり馬鹿だなー。僕が言いたいのはその変な魔法のことだよ』
――でも、あのときなにもおきなかったぞ。
『そう、なにもおきなかったのが不味かった。ゴストは君をあのとき殺そうとしてたんだよ、本当は。でも君は死ななかった』
――もしかしてあれは、異世界人には効かないのか?
『大正解。まあ、彼らも今回のことが起きるまで知らなかったぽいけどね。ついでに言うと僕も知らなかったよ』
――はぁ、俺がこのことを気づかせちゃったのか。
『まあ、そうだね。それで君、今現実では何が起こってるか興味ないかい?』
――どうせ、もう死ぬんだ。今さら仲間が死んだ知らせを受けても嬉しくもない。
『一応言っておくけど、まだ誰も死んでないよ。君もふくめてね!』
――死んでない? それは良かったよ。仲間が無事なら俺はこのまま死んでもいいかもな……。
『そんなこと言わないでくれよ。君だって薄々気づいてるだろ?』
――俺がここに居るってことか? よくある話じゃここから生き返るのかね。
『悪いけどそれは無理かなー。さすがの僕でも生き返らせるとかはちょっと厳しいな』
――は? ならなんで俺はここにいるんだ…。
『君がここに、この世界にきた理由を告げたくてね』
――俺が……この世界にきた理由?
『そうだよ。結果から言うとね、あの二人を止めて欲しかったんだ。何でもしていいとは言ったけど流石に暴れすぎて面白くなくなったんだよね、僕』
――あぁ、確かに一人だけが異常に強いとかバランス崩壊してるもんな。
『そのために君に特殊な能力つけたり、本をあげたり、スライム生まれさせたりしてあげたのにさ。君外に出ないから』
――悪かったな。俺は外に出れないんだ。なぜかは俺もよく分かってないんだがな……。
『まったく、あの本どうりに進んでたらチちゃんと強くなれたのに、まさか君、一目見ただけで本をぶん投げちゃうんだもん』
――本当にすいませんでした……。
『いいよいいよ。もう過ぎたことだから』
――神様ありがとうございます。
『それで君が外に出れない理由はね。君の地球での生活に関係してるんだけどね』
――引きこもりだって言いたいのか? 確かに俺は引きこもりだよ。悪かったな。
『いや、違うんだよ。実は本当の理由があるんだ。君、流石にゲームをやってただけで完璧な体内時計とかおかしいと思わない?』
――いや、しかし。実際にこうやって……。
『悪かったよ、君がこの世界に来るときに僕がその記憶消しちゃったんだよ。思い出せないのも当然さ』
――人の記憶を勝手に……。
『でも、君がちゃんと僕のあげたダンジョントレジャー使ってればいずれわかったことだったんだよ。君が、その体内時計のことを思い出したのもダンジョントレジャー触ったあとだったでしょ?』
――言われてみればそんな気もしなくはないな……。
『さあ、ここまで喋ってみて君は何を思ったかい?』
――俺が馬鹿でした。
『そうか。反省してくれたね。それじゃあ僕から君にもう一回チャンスをあげよう。元はと言えば、僕が君に目的をしっかり伝えていなかったのも否があるしね』
――え? でも、復活は無理なんじゃ。
『もちろんすぐは無理だよ。こっちの世界ではすぐかもしれないけど、あっちの世界では長い時間が経ってしまうから』
――そうですか。それでも俺は戻りたいです。
『理由を聞いてもいいかな?』
――俺は……俺の記憶を取り戻したい。
『うん、及第点だね。3度目はないから気をつけてね』
――はい。
『それと、僕は君が生きているときはこの世界に干渉できないから、伝えるべきことを言っておくよ』
――わかりました。
『まず、君の仲間だけど残念ながら君が復活するときには執事とメイドは寿命で亡くなってるから。ゴメスは確かにメゴスの兄だけど、同時に元人間だ。寿命はないからまだ生きてる』
――元人間はこの世界ではそんなに強いのですか……。
『まあね、一度でも僕に触れてるから』
――神様の力ですか、納得です。
『次だけど、ポルンはまだ生きてるよ。そして今も君を待っている。なんて言ったって彼の親は君だからね』
――ポルン……。俺は…………。
『時間だけど二百年ほどたってるよ。ハーデスはどうやら良からぬことを企んでいるようだし、それを君に止めてもらう形になるかな』
――俺がそれを止めければならない理由はあるのか……?
『それも、君の失った記憶の中に答えがあるはずだよ』
――そうか……。俺はポルンにまた会えるかな。
『もちろんだ。というか、ポルンのもとに転生するから。実のところを言うとね、君が殺されたあとにメゴスが君の死体を命さながらに持って逃げたんだ。彼らは、死体さえ残っていれば転生出来る可能性はゼロではないって希望を抱いてたね』
――まさか……。
『そのまさかだよ。彼ら彼女らは死ぬまで君の死体を守りきったよ。そして今は彼らの子供とポルンが君を守ってる。君は愛されているよ。たった数時間の付き合いなのにここまで尽くしてくれるとはね』
――もう、聞きたいことはありません。はやく元の世界に戻してください。
『わかったよ。それと、今回は準備時間があんまりなかったからアイテムとかは用意出来てないから君のステータスだけで勘弁してね』
――俺はどんな状況でも元の世界に戻ります。
『よし、良かった。それが聞きたかったんだよ。今の君なら現実から逃げないだろう』
――次に会うのはハーデスを止めたあとだといいですね。
『僕もそれを願ってるよ。それじゃあ……』
『行ってらっしゃい!』
この何もない世界が次に見れるのはハーデスを殺したあと……。そして俺が自分自身の記憶を探し終えた後だ。
俺は俺に誓う。
必ず仲間を守りきる。
絶対に弱音を吐かない。
二度と安易な行動はしない。
そして、
必ず世界をハーデスから救い出す。
今回で最終話となります。いかがだったでしょうか。
作者的には伏線(?)はすべて回収しました。
このお話の続きは書きますが、作風が大きく変わる恐れがあるので、「外に出ましょう魔王様!」の更新という形ではなく、新作扱いにさせて頂くと思います。
次作も読んでいただけると幸いです。
【誤字脱字の指摘。感想&評価よろしくお願いします】
追記・もし主人公死なないルート読みたいっていう方がいましたら書きます。そちらの方は、終始コメディー的なお話になります。(更新は遅くなりますが…)