11.「執事>メイド>魔王」
「まず、自己紹介をしてもらおうか」
「私はメゴス・スチュアートと申します。困ったことがありましたら、何でもお申し付けください」
初めに、おそらく一番強い執事の男性。龍神族ということだがスーツを着ていると外見は人間と大して変わらない。
「はじめまして、私はクリス・スチュワードです。雑用は私たちメイドにお任せください」
美人メイドの名前はクリスと言うらしい。スチュアードというのはメゴスと変わらないようだ。
髪は黒髪のロング、枝毛が一本もない綺麗な髪だ。いわゆる清楚系女子だ。
「こんにちは! アメリア・スチュアートです。クリと同じメイドです」
可愛い系のメイドはアメリア。やはりスチュアートだ。3人は家族なのだろうか。
茶髪ショート、第一印象では元気一杯だが、たまに仕事をミスるドジっ子という感じだが、どうだろうか。
「メゴスよ、3人ともスチュアートということだが家族なのか?」
「いえ、血の繋がりはありません。学校を卒業すると皆スチュアートという名がつきます」
「学校とは?」
「主に執事やメイドを育成する学校でございます」
なるほど、そこからこの3人は来たのか。
「なぜ、俺のダンジョンに?」
「魔王ハーデスのグループ入りを果たしたとの噂を聞き、マルファス様に従事させていただく事になりました」
「へ? あのグループは誰でも入れるものではないのか?」
「そんな安っぽいグループではございません。選ばれた者のみでございます」
なんとなくだが、あのスキルがついた理由がわかったような気がする。
もしかしてだけども……。
「え……えらばれなかった者はどうなる」
「2割の方が見向きもされず、八割の方がダンジョントレジャーを奪われ、その内6割の方が殺されます」
キャーーー。ヤッパリ。
なんてこった、正直ダンジョントレジャーが奪われるのはどうでもいいが、殺されずにすんだのは幸運だったとしか言えない。
「悪いがハーデスのグループについて知ってことを教えてくれないか?」
「了解いたしました。それでは説明させて頂きます」
それからメゴスの話が始まった。
――――例によってまとめさせていただく。
・ハーデス(殺されかけたので『様』はつけないことにする)のグループは世界最大の同盟。
想像はしていたが、かなりでかい組織らしい。俺は組織とか会社とか、集団の中には出来れば入りたくない人間なんだけどな……。
・同盟に入る条件は2つ、魔王であること、ダンジョンマスターになって10日以内にハーデスの幹部から推薦を受けること。推薦を受けられる確率は約7%。
・幹部の中でも推薦を出す基準は強さや頭の良さなど様々。中には、これまで一回も推薦をしていない幹部もいるとか。なんでも、推薦をしたダンジョンマスターのことは推薦者が責任を持つらしい。それでも自分の推薦した者がハーデスに評価されると自動的に自身の評価が上がるので、推薦しないわけにもいかない、だそうだ。
その話のときにメゴスが教えてくれたのだが……。
「ちなみにですが、その今まで一度も推薦をしてこなかった方が推薦されたのが貴方なのですよ」
「本当か?」
「本当です。だから私たちはマルファス様のもとに来たのです。本来ならこのダンジョンにくる予定だった執事、メイドはもっと弱い方が来られる予定だったところを私たちが……いや、私ですね。私が無理を言って変えてもらったのですよ」
メゴスは優しい笑みを浮かべている。
なんでも、成長する魔王のもとで働きたく、学校で20年近く粘ったらしい。
ありがたいことです。いや、ありがとうございます、メゴスさん。
・最近の出来事だとナンバー2のダンジョンマスターがグループを抜けたらしく、新規メンバーを求めていた。
そんなところに俺が現れたらしく、これまで一度も推薦をしてこなかったゴメスが推薦しちゃったもんだからいろいろと都合が良かった、という訳だが俺からしてみればあんまりハードル上げないでと嘆いてるところだ。
「俺は隠れた才能を汲まれたということですかね」
「噂では、ポーションで強さを判断すると聞いたことがありますが定かではありませんね。それと、本来ならグループ参加には全メンバーの合意が必要なのですが……」
〔マルファス様。お客様がお越しになられました。お名前はゴメス様です〕
「やはり、来ましたね」
「やはりとは? まあ、後で聞くとしよう。今はお出迎えだ、ポルン、メゴス、クリス、アメリア行くぞ」
やはり名前を覚えるのは大切だよな。お前とか君とかよりも呼ばれたときのインパクトが違う。実際、4人とも嬉しそうだ。
まあ、正確には3人と1匹だけどな。
★☆★☆★
「また、お会いしましたね。マルファス様」
「一日に2回も来るとは思ってなかったですよ」
「実は、正式なグループ入りが決定しましたので、ご報告に参りました。本来なら、正式な順序を踏むところですが、今は非常事態が故すべて吹き飛ばしたため、数時間で決まりましたので」
非常事態とはやはりナンバー2が抜けたことなのだろうか。
「ナンバー2の方はどれほどの強さだったのですか?」
「ほう……。私は正直に申し上げますとは嫌いでしたね。ハーデス様とは違い、力を得るためには何でもする方でしたから」
「そうだったのですか」
なぜかは分からないが、ゴメスさんは感心しているようだ。何かしらの才能を感じ取ったからこそ俺を推薦したはずだからな。
正確には分からないがなんかあるんだろう。
「それにしても、たった数時間でだいぶ様変わりしましたね。普通の方だと大金を得ると最初は自分の装備を買ったりするのですが……。お仲間も増えたようですしって……メゴスではないですか!」
「お久しぶりです。お兄様」
「へ?」
今、お兄様って言ったかな。
この世界に来てから驚きの大安売り過ぎてもはや何か起きても驚かないだろうと思っていた俺の考えは一瞬で取り除かれたのであった。
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