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外に出ましょう魔王様!  作者: 彩葉 翔
引きこもり魔王様降臨
10/14

9.「我が魔王様の為とはいえ」

「ゴスト。お前はこのダンジョンに行ってくれ。価値が無さそうだったら放置でも奪うでもどちらでも良い」

「承知致しました」


 我が主(ハーデス様)より命ぜられたのは今日の朝のことだった。

 【新規ダンジョン調査】

 正直私はこの仕事があまり好きではない。なぜなら最悪戦闘になるからだ。いや、戦闘になるのは構いません、ただ一方的な虐殺になるのが嫌なのです。


 新しいダンジョン(マスター)、全員に勧誘していてはキリがないうえに、グループが巨大化しすぎる。だから、こうやって私達が視察に行くのは必要なことだとは理解してますが……。

 グループ入りはハーデス様の傘下に入る……いや、実際のところほぼ対等な関係になる。月に一度の会議のときのハーデス様はとても楽しそうですしね。

 ですが、対等になるということは私たちはハーデス様のお仲間を推薦するということに同意義。


「そんな人そうそう居るわけがありません」


 だから私はこの仕事は苦手なのです。好きでもないことをするうえに、相手の未知なる実力を見分けなければならないのですから……。


 おっと、あれですかね。

 平原に1つもカモフラージュをした形跡のない階段が見えた。


 やっぱり飛行の魔法は役に立ちますね。戦闘、捜索、移動手段なんでも応用が可能ですから。ひとつ難点を上げるなら魔力の消費量が多すぎることでしょうか。


「入り口は初期状態のようですね。まだ3日とはいえ侵入経路を塞がないのは少々まずいですね」


 ――――マイナス30点です。


 私の合格点は80点ですよ。さて、このダンジョンは合格点を超えられますかね。

 やれやれ、階段を降りたらすぐに玉座ですか。もし、今までに冒険者が来たらどうするつもりだったのでしょうか。

 今は気配を完璧に消してますから見つかってないですね。


「ありがとうござ……え?」

「どうした? 急に素っ頓狂な声を出して」

「魔王様後ろに人が!」


 やれやれ、ようやく気づいてもらえましたね。それにしてもエメラルドスライムですか、かなり珍しい。ハーデス様も見たことが昔あると言っていたぐらいの希少度の魔物ですか。


 ――――これは、プラス20ポイントですね……。


「こんにちはマルファス様。本日ご挨拶に参りましたゴストです」

「だれでちゅ……。ですか?」


 かみましたね。まあ、言葉が通じてるだけましな方と言ったところですか。


「ハーデス様の部下にしてメイド総括のゴストです。以後お見知りおきを」

「一体何用でしょうか」

「本日はハーデス様のグループに入っていただけないかとご相談に参りました」

「同盟ということでしょうか?」

「まあ、だいたいそういうことです」


 思ったより頭がいいですね。私の言い方もあるとは思いますが、傘下に入るというものではなく同盟関係に近いものだと見抜くとは。


「なぜ、私のような弱い魔王のもとに来たのでしょうか」

「それも含めて今からご説明させていただきます」


 やはり、頭がいい。


 ――――プラス5点ですね。


 グループの話も理解できているようですし、演技では無いですね。彼はしっかりと理解している。

 それでもやっぱり金の話で目が輝くの誰も同じですか。大抵の方がそこだけで終わるのに対して彼は自分に不利な所は一回聞いただけで分かっているっぽいですし……。


「お断りします」

「へ?」


 なんですって?

 今、お断りしますと言いましたか、理解できているように見せて本当はまったくチンプンカンプンだったのですかね


 ――――理解をして断りを入れる奴は強くなる。絶対に入れろ。


 ハーデス様がそう言っていたのを思い出す。他の方々ならここで合格にするでしょうが、私はそんなに浅はかな考えでは決めませんよ。断ったということは、私と彼らしか知らないことですから。


「理由ですが、私は外に出れないため半年に一度の会議にでれません」


 理由が分かりました。ダンジョンを心配しているのですね。やはり目先の餌に食いつかず冷静に物事を判断する頭を持っていますね。


 ――――プラス10点です。


「あぁ、なるほど。ダンジョンが心配ですか? 大丈夫ですよ。会議時にはハーデス様より部下を各ダンジョンに送られますし、ワープでのお向かいにも参りますので」

「つまり、外には出ないということですか!」

「はい、お手数はとらせません」

「入ります。いや、入らせてください」 


 魅力的なことには変わりませんか……。まあ、それはそうですね。頭が良ければこの話の価値にも気づくでしょう。とりあえず第1ステップは合格です。アイテムをお渡ししましょう。


「ありがとうございます。それでは、さっそくお近づきのあかしに金貨10000枚と、こちら経験値のポーション2本です」

「おぉ、ありがとうございます」 


 さあ、第2ステップですよ。

 ハーデス様によればレベルの上昇値で将来的か強さがわかるらしいですからね。上がりにくければ最初は弱いかもしれないが、上がりにくさに比例して最終的には最強に近い強さになるとことです。


「ポロン。1本ポーション飲むか?」

「え! そんなわけにはいかないですよ。両方とも魔王様が飲んでください!」

「俺は部下であるお前と一緒に飲みたいのだが」

「ありがとうございます……!」


 しかし本当に上昇値が変わるものなのでしょうか。私が今まで見た中ではだいたい40ぐらいが最高ですかね。

 こないだの方なんて120も一気に上がってかなり喜んでいらしゃいましたが、もちろん不合格でダンジョントレジャーだけさっさと頂きましたが。


「では」

「はい!」


 ――――ゴクッ。


 手下のスライムにポーションを渡すとは実際に下につく私としては高評価ですね。


 ――――プラス10ポイントです。


  さて、レベルの方はどうでしょうか……。


「ポルンお前はいくつ上がったか? 俺は3上がったぞ」

「はい、魔王様! 僕は7上がりました!」


 3? 

 7?

 嘘でしょう。本当は本人たちの承諾が必要なのですが、私の本職のスキルではないのですが。このレベル差なら少しくらいなら覗けますかね。


 鑑定。


  【魔王マルファス 魔物使い レベル5】

  【エメラルドスライム ポルン レベル11】


 本当ですかこれは……。

 これが、ハーデス様が望んでいた人材……いやダンジョンマスターなのでしょうか。

 このままいけば、ハーデス様と同じレベルに到達しうりますね。これは計画変更です。


 ここで殺してしまいましょう。


 しかし、なんのチャンスもやらないのは流石に私も気の引ける所はですね……。


「そういえばゴストさんは今何レベルなんですか?」

「へ? あぁ、私ですか。そうですね。立場上詳しいことは言えないので……」


 これは丁度よいですね。試させていただきましょう。


「では……。感じ取ってもらいましょう」


「『絶望のオーラ』レベル30」


 我ながらひどい話であるが、嘘です。

 確かにスライムの方にはレベル30だが、魔王の方には130レベル。私が放てる最高レベルを打たせていただきました。

 スライムの方は良くて気絶、悪くて死。

 魔王の方は良くて死、悪くて消滅ですかね。


「ん? 特に何もなんないが……」


 その一言で私に衝撃が走る。

 何もおこらない。そんなはずはないと思っても事実、平然と立っている。


「おや? マルファス様には影響がないようですね。普通は気絶するレベルのオーラだったのですが」

「すいません。ポロンを直してくれませんか?」

「あぁ、すいません。『ヒール』」


 平静を保つのに、精神を極限まで使うはめになった。

 オーラ系のスキルが効かないときの理由は大きく分けて2つ。単純に自分よりレベルが高いか無効とするスキルを持っているか。

 おそらく後者でしょうが、今見れないのは残念です。

 さっきチラ見した感じたとここのダンジョントレジャーは'神'の名を持つアイテムでしたね……。

 こちらも申し分ない合格です。


「それでは、私はこれでそろそろ返らせて頂きます」

「え? 能力の情報提供とかはいいのですか?」

「申し訳ございません。勝手に見させていただきました。それでは詳しい情報はまた後日ということで」


 何か言いたげな顔をしていたが、私にとってはそれどころではない。


 ――――プラス100ポイントで余裕の合格です。


 ひさびさの大型の新人です。これはハーデス様もお喜びになるでしょう。

 つい先日、ナンバー2の方が抜けたばかりですし……。


 行く時の面倒臭さは嘘のように消え去り、ただ我が主に早く伝えたいという興奮で私はいつの間にか本気で空を飛んでいた。


「これは、楽しみですね。次は私が試される番です」


 ハーデスグループに入るには現地視察の合格の次に、責任者によるプロディースをし、全体の八割の賛成を得ないといかないのですから……。


 普段は面倒ごとを嫌うゴストだったが、この日ばかりは次の仕事が楽しみだった。

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