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外に出ましょう魔王様!  作者: 彩葉 翔
引きこもり魔王様降臨
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プロローグ

『おめでとうございます。佐藤達也 様は新作ゲームのモニターに選ばれました。詳しい情報は下のリンクから公式ページに行きご確認ください』


 脱ぎっぱなしの洋服、散らばる無数の空き缶、部屋に一つしかない窓はカーテンを閉め、日光は完全に遮られている。

 そんな部屋で今日もパソコンの前に座る俺は佐藤達也、26歳だ。

「おっ?」

 徹夜していたおかげですぐメールを発見。

 多くのゲームでランキング入りを果たしている俺には、この類のメールが少なからず送られてくる。

 引きこもり歴8年の俺。非常にゲームの腕も上達している。その分、金も消費したが後悔はしていない。補足させてもらうが親の金ではないからな。

「グランドファンタジー?」

 公式ページの売り文句はこうだ。

『職業、住居、暮らし、恋愛すべてがあなたの自由。仮想世界、グランドファンタジーで第2の人生をお楽しみください』

 なかなか面白そうだ。

 仮想世界とはゲームもそこまで行ったのか。科学には寡聞な俺だが、その凄さは分かる。


『モニター様、専用登録ページ』


 俺は急いでゲームに登録する。もしかしたら一番乗りかもしれない。モニターのプレイヤーは一人だけではないはずだ。


『これから、ゲームに関するアンケートを取ります。よろしいでしょうか』


【はい】【いいえ】


 もちろん【はい】をクリックする。


『貴女のゲーム内でなりたい職業』


 職業か。選択肢がないということは何でもありなのだろうか。それならば……。


( 魔物使い )


 魔物使いと入れた。自慢じゃないが、プレイヤー数国内2300万人とかいう化物オンラインゲームの【全プレイヤー魔物使いランキング】で一位をとったことがある。思い入れの強い職業だ。


『初期ステータスが決定いたしました』


 職業:魔物使い 種族:獣族人型 男

 レベル:1

 HP:6 MP:23

 攻撃力:7

 素早さ:17

 防御力:13

 賢さ:プレイヤーの方は表示されません。

 精神力:1

 運:4

 スキルポイント:200

 スキル:魔物使いⅡ


「うぇ…………しょぼ」

 仕方ないとは思うが、それでもちょっと低すぎやしませんか……?

 まあ、最初からチート能力とかはゲームとして面白くないだろうからな。最近流行りの俺TUEEEE系のラノベは読むのはいいが、ゲームにおいては最初から主人公が最強とか誰得だよって感じだ。

 現実と違って努力した分だけ、かけた時間だけ強くなれる、だからゲームは面白い。俺はそう思っている。


 それにしてもさっき書いた職業がもうステータスに反映されているのは素晴らしい。

 まさか、初期設定で魔物使いがあったのか?


 俺の中でこのゲームの評価が一気に跳ね上がった。俺のゲームの評価方法は、魔物使いの職が有るか、無いか。その二択だ。

 しかし、残念なことにこの職は結構マイナーなのもまた事実。


 そして種族は獣族ときた。まさか、もふもふ出来るあれか?

 種族を自分で選べないのは少し残念だが、高い理想を求めすぎるとゲームは楽しめない。


『次にスキルポイントを使用し、スキルを習得してください。なお、残ったポイントは残りますのでご安心ください』


 所持スキルポイント:200


 ・鑑定Ⅰ 100ポイント

 ・魔物召喚士Ⅰ 150ポイント

 ・支配者の素質Ⅰ  200ポイント


 うーむ。どれにするべきか。

 鑑定はこの手のゲームでは定番だ。魔物召喚士と支配者の素質、興味は湧くがどのようなスキルなのかが全く分からない。危険だな……。


 無難に鑑定のスキルをとっておくか。


『ありがとうございました。グランドファンタジーの世界をお楽しみください』


 突然目の前が真っ白になり、視界がぐるぐる回る回る。体は光を発しやがて小さな光の玉になり、パソコンの画面に入っていった。


 ★☆★☆★☆★☆★


『やあ、こんにちは。神様のアマテだよ!』


 気がつくと、少年が前に立っていた。周りは真っ白で何もない。居るのは、アルテと名乗る少年と俺だけだ。

 初対面の相手には、敬語。これは常識。


「ここはどこですか?」

『そうだね。ここは、世界に入る前の段階ってところかな。君に言いたいことがあってね』


 なるほど。ゲームに入る前の諸注意を教えてくれる場所ってやつか。それにしても、いきなり始まるのは予想外だ。


「自分でこっちに来る時間を決められないのですか?」

『そうだね、僕が呼んだから無理だね』

「そうですか。でも流石にログアウトは自分で、出来ますよね?」


 始めるのは今でも構わないが、終了時間を決められないのはゲームとしてありえないだろう。そう思ったのだが。


『無理だよ。だって君もう異世界人だし』

「そうですか……」

『おっ! 意外と受け入れが早いね。いいよその根性。好感触だよ』

「って言うとでも思ったかぁぁぁぁ!」


 冗談じゃない。もう少しで例の化物ゲームの大型アップデートが来る予定なんだぞぉぉ ぉぉぉぉ。


『うん。それが普通の反応だよねやっぱり』

「出来れば、地球に返してほしいのですが」

『2回目になるけど無理なんだよなぁ。君グランドファンタジーっていうゲームの登録するときに、はいをクリックしちゃったじゃん?』


 確かにしたが、それがどうした。


『なんと下の方に書いてあったのですよ。この登録をはいと押された方は異世界に転生することを認めますってね!』

「エロサイトの架空請求かよ!」

『イヤー、ショウガナイネ。ハイッテオシチャッタモノ』


 完全に棒読みだ。喧嘩売ってんのか、こいつは。


『まあまあ、そんなのに怒らないでよ。代わりに僕にできる範囲で君の願いを叶えてあげるから』


 なろう小説では、定番のセリフだな。ここは、俺もテンプレで返すか。


「それなら、チート能力を下さい」

『却下。僕には無理だよ? それに君は主人公が最強のゲームは嫌いじゃなかったかい?』


 正しくは、主人公が最初から最強だが。

 それもそうだな。

 それじゃあ……。


「なら、ハーレムを作ってください」

『却下。それは君の努力次第さ』


 む、これもだめか。

 ならば、これならどうだ!


「なら……引き込める環境を下さい。出来れば日の当たらない部屋で」

『君ってやつは変わらないね……。わかったよ。君にはダンジョンをあげよう』


 神様まじ神様。これからは尊敬の念をこめて神様と呼ばせてもらおう。

 引き込める環境があるなら異世界でも良いかな。パソコンがないのはちと厳しいが。


『それじゃあ、君の新しい家に行こうか』


 みんな、架空請求業者には気をつけろよ。

 ネトゲ仲間にそう言って回りたい。


 光に包まれ、俺は反射的に目を閉じる。

 次に目を開けたときには、そこは異世界だった。


 ★☆★☆★☆★


 『着いたね。ここが君のダンジョンだよ!』

「ここが俺の家か……」


 ダンジョンと聞いてどんなものかと思ったが、テニスコートぐらいの広さのワンルームで、部屋の真ん中に加工も何もされていない石――おそらく椅子なのだろう――が置いてあるだけだ。あとは地上につながっているだろう階段があるだけ。


 まあ、なんだ。しょぼいな。うん。


『君、しょぼいなって思ったでしょ。大丈夫そんな君に神の僕からプレゼントをあげよう!』

「ありがとうございます。神様」

『君、引きこもりのくせに礼儀正しいね。まあ、いいや。一つ目はこれ』


 神様が、指を鳴らすと目の前に大きな鏡が出てきた。(今ものすごく失礼なことを言われた気がするが気にしないことにする)


 2人分ぐらいは余裕で入るだろう大きさだ。

 縁は全て宝石でコーティングされていて、売ったらかなり良い値がつきそうだ。

 人から貰ったものを売るなんて失礼なことをしないけどな。


「こいつは誰ですか。神様?」

『なんの冗談だい? それは鏡だよ?』


 あ。こいつは俺か。

 初めてこの世界の俺の顔を見た。

 なんと表現すればいいのか、簡単に書き表すならば、狼が擬人化したイケメン男性と言った感じか。

 耳が狼そのもので、意識すればピョコピョコ動く。なんとなくだが、身体能力も高そうな気がするが俺はまだレベル1だ。


「結構イケメンですね。ありがとうございます、神様」

『うんうん。君は前世では顔については完全に諦めてたけどちょっと同情しちゃったよ」


 俺は同情されるほど酷い顔だったか……。

 この神様は軽い口調で心に刺さることを平然と言ってくる。


「で! この鏡の使い方なんだけどね……」


 名前は【ダンジョンの生き鏡】というらしい。使い方は、簡単。この世界のお金または同等の価値のあるものを鏡に押し入れるだけ。

 すると、あら不思議。

 このダンジョンにそのとき最も重要なものが生成される。部屋であったり、防御施設であったり、風呂であったりだ。

 鏡がダンジョンの持ち主が――俺のことだが――望んでいるものを読み取ってくれるから、基本的にこの鏡に任せて大丈夫、ということだ。


「すごく便利な鑑ですね。貴重なものですか?」

『いやいや、ダンジョン持ってる奴はみんな持ってるよ。で! 次は君に、僕の所有物から1つダンジョントレジャーとなるアイテ厶をあげよう!』

「神様の所有物からですか!? ありがとうございます!」

『その名も……って名前はまだないんだけどね。この箱だよ、世界に1個しかないから大事にしてね!』


 世界に一個しかない? そんな貴重なアイテムを、くれるなんて。流石は神様。


 その箱をじっくりと観察する。

 拳1個分ぐらいの大きさだ。上に数字が書いてあるがどんな効果があるアイテムなのだろう。


「どのような効果があるアイテムなのですか?」

『うーん。それは自分で探してもらおうかな? あんまり僕から全部言っちゃたら面白くないじゃないか。君もこういうの好きだろ』


 神様は俺の趣味を解ってらっしゃる。

 俺はゲームの要素の中でも誰も知らないことを発見し、それを公開して優越感にひたるのが好きだった。

 後半は、あれだとしても未知のことを既知にするのは大好きなことなのだ。もちろん、ゲームに限定しての話だが。


「ありがとうございます」

『うんうん。それじゃあ僕はそろそろ行かせてもらうよ。では、最後に一言』














『そのダンジョントレジャー狙って勇者とか冒険者とか襲って来るから頑張ってね! 新しい魔王さん!』


 え? 勇者? 冒険者? 魔王?

 それって…………。


「引きこもっていられないじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!」


 叫び声も虚しく、この殺風景な部屋に反響し響き合うだけ。


「鑑定スキル」

 現実逃避に近い感覚で俺は自分に向けてスキルをかけてみる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 本日2度目の発狂。


【魔王マルファス 魔物使い】


 しっかりと【魔王】と記されていた。

【誤字脱字の指摘。感想&評価をして頂けると幸いです】

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