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その15.哀愁の過去と複雑な現在

 2年の学園祭の準備期間のある日。

 放課後俺は担任の諸積先生から呼び出され、最近のゴタゴタに対する事情聴取だとか熱い擁護だとか、訳の分からない話を延々と聞かされた。

 それが終わったのはもう日が落ちて辺りは暗くなり始める頃合い。

 諸積先生から一緒に夕飯でも食いに行かないかと誘われたのだが、精神的に疲れてきたのでそれは丁重にお断りしておいた。

 熱心に俺を守ってくれるのは非常に有り難いんだが、俺の気持ちとしては微妙だ。

 俺は七原の名を持つだけで、子供の頃から大人に贔屓にされてきた。

 そのせいで友達から「何で海人だけ?」とか「いいなぁ」とか、そんな目で見られることがしばしばあった。

 それが俺は凄く嫌だった。

 まぁ、それはいい。


 ようやく長い長い担任とのやり取りを終わらせ、げっそりしながら教室に戻るとそこには1人の女子生徒が床に新聞紙を広げて作業をしていた。

 もう辺りは暗くなってきて、校内にはほとんど人が残っていない。

 他の教室も電気が消えて辺りは静まり返っているというのに、その女子生徒はたった1人で黙々と作業を行っていた。


「何やってんだ? もう随分な時間だけど……」

「お、これは七原くんではありませんか!」


 俺が声を掛けると女子生徒はあちこちにペンキがついた顔をこっちに向けて、笑顔で応答してくる。

 何をやっているのか近づいて見てみると、どうやら学園祭に使う垂れ幕を作っているようだった。


「あれ? 垂れ幕はもう作り終えたんじゃなかったのか?」

「それがね……」


 女子生徒は「はぁ」とため息をついてある方向を指さす。

 その方向を見てみると、そこにはペンキまみれになった無残な垂れ幕があった。

 誰かがドジってペンキを垂れ幕の上にぶち撒けてしまったのか、或いは……。


「どうしたんだこれ!? まさか……ドジッた?」

「あはは、まさか。そんなことしないよ。気がついたらこんなになっててさ……作り直しっすよ……はぁ~あ」

「…………」


 女子生徒はそう言うが、割りとあっけらかんとしている。

 対照的にそれを聞いた俺は顔を青ざめていた。


 ……もしかしたら、これは俺のせいかもしれない。

 いや、俺が直接ペンキを塗りたくった訳ではないのだが、こういう子供じみた嫌がらせをして『俺以外』の人間にダメージがいくことが最近増えている。

 もしかしてこれも……そのうちの1つなのかもしれない。


「……すまんな」

「何で七原くんが謝るのさ?」

「いや……」


 まだそうと確定した訳ではないので『これは黒波の仕業だー!』と言うこともできなかった。


「でも……何も1人で作りなおすこともないだろ。他のみんなは?」

「みんな帰っちゃった。でも、いいんだ。私こういうの好きだから」

「…………」


 女子生徒は見てくれと言わんばかりに、手を広げて作業中の垂れ幕を俺に見せてくる。

 なるほど。

 確かにかなり凝った作りをしている。

 イラストや字も綺麗で人目を引く良い垂れ幕だ。

 でも、もうこんな時間だというのに色が半分も塗り終えていなかった。

 このまま作業を続けていけば軽く2~3時間はかかってしまうだろう。


 しかし、そういう女子生徒の表情は自分で言っている通り、大変な作業を前にしても全然しんどそうな顔をしていなかった。

 むしろ本当に楽しそうだ。

 普段あまり接したことのない女子生徒の、そんな活き活きした表情がとても印象的だった。


 篠辺野奏しのべのかなで

 2年時の俺のクラスメート。

 普段は透明感のある綺麗な栗色の髪を肩の下まで垂らしているのだが、今はペンキが付いてしまう為か、髪を結いている。

 小夏や小春とは違い、「まさしくこれぞ女性!」みたいな体つきをしており、スレンダーな体に非常に大きな夢の詰まった果実を胸に備えている。

 顔も線が細く美人といった感じでその果実が下品に見えることもなく、男にはさぞかし人気があるだろう。

 俺だって篠辺野ときゃっきゃうふふなことをする妄想をしたことがある。


 だが、残念なことに俺とは縁があれば普通に当り障りのない会話する程度の仲で、特別仲がいいとかそういうのはない。

 他のリア充やイケメン共に混じって篠辺野を引き寄せる程の魅力が俺にはないことくらい分かってる。

 自己主張の激しい胸とは違い、本人は普段そんなに前に出るような子じゃないので、篠辺野のこんな良い表情を見れたのは何だか嬉しかった。


「もう遅い時間だし、明日に回せよ」

「ダメダメ! 明日は明日の作業があるんだから! これは今日中に終わらせないと!」

「…………」

「そこで七原くんにちょ~っと頼みたいことがあるんだけど~?」


 篠辺野はそう言って足を崩し、人差し指を口元に持って行き、艶かしい体勢を取り始めた。


「…………」


 胸がでかいってだけでもう十分なのに、卑怯過ぎる。

 もうその姿に一瞬でやられて俺は自分の鞄を取りに行く足を止め、篠辺野の近くに腰を下ろした。


「早いな! そんなに色っぽかった?」

「……けしからんから仕方ない。早く終わらせようぜ」

「お! さすが七原師匠っすね! じゃ、師匠には色塗り手伝って貰おうかな!」


 そう言って篠辺野は垂れ幕に鉛筆で青やら黄色やら文字を書き、俺に指示を出してきた。

 俺はとりあえず周りに人がいないことを確認すると、長期戦を覚悟して上着を脱ぎ、腕まくった。

 こんな所を黒波一派に見られたら迷惑がかかっちまうかもしれない。

 それだけは避けてやらないといけない。


 願ってもないラッキーなイベントではある。

 こんなたわわな果実と……違った。

 こんな篠辺野との二人きりの作業だ。

 羨む男も多かろう。

 

 だが、俺は全くそんな思いにはなれなかった。

 ……いや、全くというのは嘘だ。

 そんな幸せな時間を楽しめる割合なんて10パーセント……いや、20パーセント……いや……。

 何でもいい。

 そんな至福の時間を楽しむ余裕なんて90パーセントくらいしか俺にはなかった。

 何故なら、黒波一派に見つけられ篠辺野が可哀想な目に合わないように気を使うので一杯一杯だったから。

 なので、せっかくの機会ではあったんだけれども、とにかくさっさと終わらせて帰ろうと俺は意気込んだ。



「はい、七原くん、これ紫。あんまり神経質にやらないでいいからね。ちゃっちゃと終わらせちゃお」

「…………」


 そう言って篠辺野はちらっと俺に目をやり、紫色のペンキの入った缶を寄越してきた。

 そしてすぐにまた自分の作業に戻る。

 篠辺野は俺には申し訳ないと思ってか、テキパキと作業を進めていた。


 一方の俺はそんな篠辺野の姿に見とれてしまい、手を止めてしまっていた。

 果実がけしからんというのもあるんだけれども、本当に活き活きと楽しそうに作業を続けているんだ。

 鼻歌なんかも時折混じっている。

 『こんな雑務を楽しそうにやるなんてどういうことなのかな』という思いも混じりながら、俺は良い顔している篠辺野から目を離せないでいた。

 

「……ごめんね、付き合わせちゃって。それ塗ってくれたらもう大丈夫だよ」

「…………」

「どしたの? 疲れた?」

「いや、凄い良い顔してるな~って」

「え!? あれぇ~? 惚れちまいました?」


 篠辺野はふざけた様子で少しにやにやしながらそう聞いてくる。

 俺は慌てて視線を逸らした。

 篠辺野って意外とこういう茶目っ気もあるんだな。

 もっと真面目な奴かと思ってたんだが。


「そ、そんなんじゃねぇよ……」

「七原くんは九条さんと付き合ってんじゃないのかにゃ? いいのかな~?」

「冗談やめてくれ。小夏……九条とは昔から少し縁があるだけで、別にそういうんじゃない」

「あれれ? 今言い直したぞ?? そんなこと言ってると、九条さん誰かに取られちゃうよ~? 九条さん可愛いし、クールだし、人気あるよ~?」

「嘘だろ!? 人気あんのあいつ!?」

「あるよー! ……多分。私男だったら絶対九条さんに惚れてると思う!」


 ……俺は男だからおっぱいでかい方に惚れてると思う。

 まぁ、小夏も可愛いっちゃ可愛いんだけどな。

 小春に似てるし。

 如何せん俺はあの性格知ってしまってるから、篠辺野のようにはなれそうにない。

 あいつの場合クールじゃなくて人見知りしてるだけだ。

 他の人にはそれがバレてない分良いように取られているんだろうけれども、クールな癖にあの小学生みたいな身長と体型じゃ「クールでカッコイイ!」とか思えないだろ。


「なんだ~。七原くんは九条さんと付き合ってる訳じゃないのか~」

「親同士が仲良くて、実家がご近所さんってだけだ。今俺は実家出てるし、最近はあんまり関わり持ってない」

「ふ~ん……そっか~。九条さんいいな~」


 そんな雑談をしながら作業を進めていく。

 俺に飽きさせないように気を使ってか、篠辺野の方から話をふってくることも多かった。

 普段はこんなに話したりしない奴だと思っていたので、俺の篠辺野に対する印象はこれで随分と変わった。


「私ね……こういう絵とか書くの好きなんだ。だからこういうの全然苦にならないんだ」

「ほう……」


 元の垂れ幕と今作っている垂れ幕と比較してみれば一目瞭然だ。

 絵の内容もそうだけれども、配置やインパクト等全ての点に置いて今篠辺野が作っている方が圧倒的にクオリティが高い。


「画家志望なのか?」

「う~ん……、まぁ、そんな所かな。でも、恥ずかしいからあんまり人には言わないでね」

「恥ずかしがる所でもないだろ。誇れよ。いいじゃねぇか画家。芸術家なんて憧れるぞ」

「芸術家なんてそんな大層なものじゃないんだ。その……漫画……とか……」

「漫画!」


 なんということだ。

 篠辺野が漫画好きとはかなり意外だけれども、こんなところで俺と趣味が合致した。

 俺も漫画は大好きだ。


「ごめんごめん、忘れて!」


 篠辺野は恥ずかしそうに俺にペンキまみれの顔を向けて苦笑いをする。

 確かに意外と言えば意外だけれども、そんなに恥ずかしがるもんでもないとは思うが。


「いいじゃねぇか漫画! 俺大好きだぞ!! 特にオールドな奴とか凄い好き!」

「え!? 本当!? 七原くん漫画好きなの!?」


 篠辺野の方もかなり意外そうな顔して俺に聞いてきた。


「あぁ、大好きだ。知り合いにも漫画好きがいてさ、クラムダンクとシロコのバスケ貸したらハマっちまって、そいつ中学でバスケ始めたぞ」

「あはは! あるあるだよね!! クラムダンクは本当に名作だー! 名言がたくさんあるもんね~」

『先生、バスケがしたいです』


 俺と篠辺野の声が被った。

 そして二人で笑い合う。

 そんな楽しい作業がずっと続いていった。




「終わったねー!!」

「終わったなぁ……」


 そんなこんなで予定よりもかなり遅れてしまったが、垂れ幕は無事に完成した。

 かなりの時間を使ったが雑談もかなり盛り上がってしまって、俺としてはあっという間だし、本当に楽しかった。

 その垂れ幕の完成度がまた不安定で、誰が見ても『素人が適当にやった部分』と『手慣れた人間がきっちりやった部分』がすぐ分かってしまう、申し訳ない出来となってしまったが。


「ごめんね。ホント七原くん担当じゃないのに……」


 篠辺野は申し訳無さそうに、一層ペンキまみれになった顔をこっちに向けて謝ってくる。


「いいよ。気にすんな」


 多分俺のせいで元の垂れ幕がダメになったんだから。


「それじゃ、いっぱいやりますかー! 駅前のエムバーカー、私奢るよ?」

「マジで!?」


 満面の笑みを浮かべてそう俺に言ってくる篠辺野。

 俺としては願ってもない申し出だ。

 今まであまり話したことのない相手だったが、実際話してみると本当に楽しかった。

 作業を終えたことが残念に思えてしまう程だ。


「まじまじ! 七原くんにこんなに手伝わせちゃって申し訳ないからね。それに、七原くんと話してて楽しかったよ~。私と朝まで語り尽くさないかい?」

「お……」


 そんな嬉しい篠辺野の申し出にソッコーでイエスと答えようとしたところで、俺の脳裏に作業中忘れていた黒波の影がよぎった。

 もし、そんな所を黒波に見られてしまったら篠辺野が大変なことになる。

 ただでさえ、俺のせいでこうして居残り作業を強いられたというのに、これ以上篠辺野が何か嫌な目に合ってしまったら本当に申し訳ない。


 ……でもこんな時間だぞ?

 さすがに校外で黒波に見られるなんてことはないだろ……。

 いや、でもいつどこで仲間が見ているか分からないんだよな……。


「いや、いい」

「えぇ!?」


 俺は考えに考えたが、結局その申し出を断ってしっまった。


「家で飯作って待ってる奴がいるんだ」

「あら……。そりゃそうだよね……ごめんね、無理な申し出しちゃって」


 篠辺野は少し残念そうにそう言う。

 残念なのは俺だ。


「でも、本当に有難う。七原くんのお陰でとっても楽しかったよ! またいつか七原くんと話せる機会があれば、色々語ってみたいな!」

「あぁ、こちらこそ。すまんな、せっかくの申し出だったのに」

「ううん、気にしないで。私も無理に付き合わせちゃってごめんね。本当に助かったよ、ありがとう、七原くん!」


 そう言う篠辺野の顔は本当にいい笑顔をしていた。

 俺もまた篠辺野ともっと話してみたいとは思っているのだが、どうしても黒波のことが頭をよぎってしまう。

 そのせいで以降、学校で篠辺野と会っても俺から話しかけることが出来なかった。

 篠辺野も篠辺野で、この時俺と話したようなテンションとノリは何処かへやってしまったらしく、以前のような挨拶を交わすだけの関係に戻ってしまった。



 そんな調子で、結局俺が不登校になるまで篠辺野とはそれ以上の仲にはならなかった。

 学年も1つ上がり、篠辺野とは別クラス。

 篠辺野は俺のことなんて忘れて楽しくやっているだろうし、俺も篠辺野含め、全を宇宙の彼方に置き去りにして現実逃避をしていたのでそんなこともすっかり忘れていた。



 そして今。

 これからは少し現実を見ていかなきゃいけないなと思いつつ、何となくベッドに横になりながらぼけ~っとBPSを開いて現実逃避期間中に届いた連絡を眺めていたら、篠辺野の名前を見つけた。

 内容は「元気にしているかな?」という当り障りのないものだった。

 俺がこんなクズ人間やっていても、こうして気にかけてくれていたんだと知れて、何だか嬉しい。


「クソォオォオオーーー!! 何だか嬉しいじゃねぇよ!! あんな立派なフラグ立てておいて、何自らへし折ってんだよ!! あんなたわわだったのに!! 200小夏くらいあったのにぃ!! クソッ!! クソがぁーーー!!!」


 後悔にまみれ、ベッドを拳で何度も何度も殴りつけた。

 今思い返せば、無性に悔しい思いで一杯だ。

 何カッコつけて『黒波に嫌な思いをさせられたら大変だキリッ』とか思っちゃってんの!?

 あぁ、あの時に戻りたい。

 今直ぐ戻りたい!!

 ソッコーでフラグを立て直したいぃぃい!!


「キモいので、やめてもらえませんか?」

「…………」


 したら、麻莉亜に見られていた。


「お前は何で俺の部屋に勝手に入ってくるんだよ!! ノックしろって言っただろ!!」

「ノックはしました。中からキモい呪怨の叫びが聞こえてきたので、つい」

「キモいって言うな!! いつの時代の言葉だ! 変な言葉学習してんじゃねぇよ!! 何の用だ!?」

「夕食の準備が出来たので海人さんに声を掛けようと……」

「あぁそう!! じゃあ、食うわ!! モリモリ食うわ!!」


 俺は少し怒った様子でベッドから飛び降り、麻莉亜をのけて部屋の外へ出て行く。

 そして飯を食う前に用を足そうと思い、トイレの扉を開けた。


 がチャ。


「…………」

「…………」


 したら、小夏がいた。

 酷く驚いた顔した小夏が、目の前に。

 いちご柄の可愛いパジャマを来た小夏さんが、ズボンとパンツを下ろして便座に座っていらっしゃった。

 小夏さんはビクッとなって一瞬俺と目が合うと、光の速さでパジャマの上を下の方に伸ばしてサッと隠す。


「目の前に……目の前に小夏が……目の前こっなつ、こ~なっつ♪ ちゃちゃちゃ! くっじょお~こ~なっつ♪」

「…………」


 どうしたらいいか分からなくなった俺は、大昔のアニメ『となりのトントロ』のテーマソングを思わず口ずさんでしまった。

 小夏は今までにない眼光の鋭さで俺を睨みつけている。

 今にもその鋭さで心臓を射抜かれそうだ。

 だが、俺は負けない。


「こぉ~ど~もの時にぃ~見た~あれから変わらないぃ~~~~~ちゃかちゃん!」


 負けじと続きを歌ってみた。


「出てけ」

「…………」


 バタン。


 負けました。


 ガチャ。


「不思議なおぱい~」


 バタン。

 最後まで歌いきれなかったのが心残りだったので、一度閉めたドアをほんの少しだけ開けて、その隙間から歌の最後を歌った。

 これで満足した。

 よし、これで俺はこの後殴られる。

 自室に戻って防御体勢を敷いておこう。


 自室に戻り、布団を被って全ての攻撃に備えた。

 この布団さえ死守すればどんな暴力が飛んでこようとも、ダメージは0だ!

 クライシスゲームの研究で培ったこの知恵を思い知れ!!


 トイレから水を流す音が聞こえてくる。

 怖い。

 ゾンビから逃げるゲームでもやっているかのような気分だ。


 あれ、小夏の足音がどっか行ったぞ?

 まさかの無視、無反応か!?

 いや、小夏なら有り得るな。


 っつーかこれはあいつが悪いだろ!!

 人ん家で用を足すなら鍵くらい掛けておけよ不用心な!!

 ここはお前ん家じゃねぇーんだ!

 何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ!!

 そうだ! おかしい!!

 ここは俺ん家だ!

 俺は堂々としていていいはずだ!!


 そう思った俺は被っていた布団をガバッと放り投げた。


 バシャーーー!!


 したら、物凄い勢いで水を掛けられた。

 ひと通り水をぶっかけられると、最後に風呂桶が飛んできて俺の頭の上にガコンと綺麗にハマった。

 びしょびしょになった俺は何が起こったのか呆然としながら視界を確認してみると、そこには丁度この部屋を出ていこうとしている小夏の後ろ姿があった。


 忘れていたのは小夏だけじゃない。

 俺もすっかり忘れていた。

 ミニマム姉妹がしばらくウチに住むことになった……ということを。

 【Tips】

 九条小夏

 17歳 女 高校3年生 146cm 43kg A型

 バレー部に所属しているが、現在は学校全体で部活を行っていない為活動はしていない。

 正義感と責任感が非常に強く、クソ真面目な努力家。

 それに加えて自分を曲げない芯の強さを持つ。

 一方で人見知りが激しく、感情表現すらうまくできない程不器用。

 いちごが大好きで、いちごの乗ったショートケーキを海人に食べられてマジギレし、大喧嘩になった過去がある。

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