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クライシスゲーム ~引きこもりが世界を救うキセキ~  作者: 若雛 ケイ
一章 引きこもりのお兄ちゃん、出撃ス
14/50

1-6.行き詰まる最終兵器

 俺は引きこもりのエリートだ。

 引きこもりのベテランに比べれば年季はまだ浅いかもしれないが、精神的には上級者と言ってもいいと思う。

 それくらい俺の引きこもりに対する情熱は高いつもりでいる。


 小夏に半ば強制させられる形で現実の世界を見てきたが、その意志は揺らぐどころか断固たるものになった。

 外に出ても何も良いことはない。

 外は危険だ。

 黒波に殺すとか言われたし、殺人犯もうろついているようだし。

 そんな所にわざわざ突っ込んでいくのは生粋のドMとしか思えない。


 ただ、外にでることによって世の中の荒廃具合を肌で感じることができた。

 俺には関係のないことだが、関わりを持ってしまっている小夏を見るとどうしても心配してしまう。

 そういう思いを断ってこそ真の引きこもりと言えるのだろうが、まだまだ俺はその域に達することはできなかった。

 俺もまだまだ未熟な引きこもりということか。


 そういうことなので、俺は安心して引きこもるべく、小夏への心配を取り除くために麻莉亜に相談してみることにした。

 思ったより狂っている世の中は、出来るだけ早く元通りにしておきたい。

 麻莉亜が今どういう状況にあるか分からないが、彼女が本気を出してくれればたちまちこの世は元通りになることだろう。



「麻莉亜さ~ん……?」


 家に帰って鞄を部屋に放り投げるとすぐに麻莉亜を探し始めたのだが、いない。

 気配がしない。

 どっか買い物でも出かけているのかと思ってGPSを起動してみる。

 俺のGPS情報は今朝麻莉亜に開放したが、麻莉亜のGPS情報は常時いかなる時でも俺に開放されているので、アプリを起動すればいつでも麻莉亜の居場所は掴めるんだ。


「勝露アリーナ……?」


 麻莉亜の奴、一人でアリーナなんて行って何してんだろう。

 まぁ、いい。

 時間は無限にあるんだから、とりあえず帰ってくるまで待っていよう。





「只今戻りました、そしてお帰りなさい。ご苦労様でした」

「おう、何してたんだ」


 しばらくすると、麻莉亜が帰ってきた。

 麻莉亜が出かける用事があるのは買い物くらいしかないはずなんだが、帰ってきた麻莉亜は手ぶらだ。

 何しに出かけてたんだという話を振りながら、俺は麻莉亜と一緒にリビングへと戻っていった。



 麻莉亜がアンドロイドだということは、ミニマム姉妹を含む七原の関係者には知られているのだが、他の連中は一切そのことを知らない。

 知らないというか、麻莉亜は秘密裏に七原の研究として作られたアンドロイドであり、行政機関と裏取引のようなことをしてまでして人間としてこの世に登録されているので、喋ってはいけない。

 もちろん、麻莉亜にはアンドロイドには義務付けられているレッドラインもない。

 世間には七原重蔵の娘、七原海人の年の離れた姉ということで通っている。

 全く似てないけどな!


 でも、あんまり長く同じ人と付き合いがあると年を取ってないのがバレるので、俺が一人暮らしする時はそういう事情も踏まえて麻莉亜がくっついてくることになった。

 その為、なるべく特定の人間とは長く付き合うような関係を築かないようにしていると、本人は言っていた。


 そんな麻莉亜は特定のコミュニティを持っておらず、出かけるにしても買い物くらいしかないはずなのだが、アリーナに行っていたとはどういうことなのか。

 とりあえず俺も麻莉亜もソファーにゆっくりと腰を落ち着かせてから、話を始める。


「オンラインでは戦えないクライシスとも戦えるとの情報があったので、様子見とレベル上げを兼ねて勝露アリーナに行ってました。海人さんも随分と早かったようですが、早退ですか?」

「いや、学校は短縮授業だった。それよりも何だ、アリーナでそんなことやってるのか?」

「告知に書いてありました。海人さんも確認だけはしておいた方が良いかと思いますが」

「ほ~ん……」


 試験が終わった後はこれからも何かあるかもしれないと思って、ちらちら告知は見てるんだけれども、全然そんなの見覚えがない。

 麻莉亜はもっとレベルの高いクライシスを倒したいと言ってたし、丁度それと合致したんだろう。


「で、どうだった? レベル上げられたか?」

「全然ですね。特に目新しいことはありませんでしたし、レベルの高いクライシスもいませんでした。ただ、クライシスとの戦いでは経験値の入りが悪くなるということが分かったのは収穫かもしれません」

「どういうことだ?」

「他の人の会話を聞きました。人間同士の戦いの方が経験値は多いとのことです。また、相手の降参で勝った時よりも撃破して勝った時の方が、通常勝負よりも真剣勝負の方が経験値が多く入るようです」


 麻莉亜は時折紅茶を口に運びながら淡々とそう話す。

 そう言えば集会の時に黒波もそんなことを言っていたような気がする。

 人間同士で戦った方が入る経験値が多いと。



 このゲームのレベルの上限は20と、一見すぐに辿り着けるくらい低く見えるのだが、それまでの道のりは長い。

 というのも、経験値の入りが非常に悪いからだ。

 俺は実際に麻莉亜のアシスト付きでレベルを1まで上げたのだが、それは相当な数の雑魚クライシスを倒したものだ。


 相手のレベルが高ければ貰える経験値は上がっていくんだろうけれども、現状オンラインで対戦できる雑魚クライシスはレベル5まで。

 相手のレベルを超えると一気に貰える経験値が激減するので、あれだけ頑張っている麻莉亜もレベル6で足踏みしている状態。

 それくらいレベル上げは大変な作業なんだ。


 いや、作業だと感じているのは俺だけだろう。

 だって、他の奴らは一歩間違えれば死ぬわけで、常に命がけで戦っているのだから。

 しかも、途中で降参すればレベルは1つ下がってしまう。

 普通の人はレベル上げなんて行為自体怖くて出来ないと思う。


 この調子じゃ、いくら頑張ってもボスと対等にやり合うなんて無理だし、頑張っているうちにミスして死んでしまうのが関の山だ。

 そんな仕組みだと分かっているのに頑張っている小夏の気が知れない。

 普通の人間なら他の天才ゲーマーみたいな奴が現れるのを待つか、誰かが正攻法以外でエボルをぶっ壊してくれるのを期待するかしかないと思うだろうし、実際そうしているはずなんだが。


 だが、麻莉亜は完全に対雑魚クライシスの攻略法を掴んでいるようなので、負けることはまず有り得ないと言っていた。

 後は数をこなしてレベルを上限まで持って行き、どれだけ早くエボルを倒す準備を整えるかといった所なのだが、問題は経験値の入る量。

 効率よく経験値を稼ぐことができれば、その分だけエボルを倒す時期が早まるということになるのだが……。


「つまり、レベルを早く上げたいなら、レベルの高い人間と真剣勝負の殺し合いをするのが一番手っ取り早いってことか?」

「そのようですね。というか、もはやレベル5のクライシスでは経験値すら入らなくなりました」

「育てさせる気あんのかそれ!?」

「人間同士で切磋琢磨しろというメッセージか、或いは全体のレベルを見て徐々に高レベル汎用クライシスを開放していくとか、そんな所でしょうか」

「……現状でエボルに挑んだとしても……」

「無理でしょうね。それ以前に、エボルとの挑戦権を得るための三雄と呼ばれる中ボスですら撃破できないと思います」

「…………」


 負けたら死ぬゲームで、勝算がないのにそれでも頑張れと言えるはずがない。

 なるべく早くエボルを倒して欲しいと思った矢先の報告だったので、俺はうまくいかないもどかしさに口を紡いでしまった。



 このゲームの肝は自分の持つHPや剣の攻撃力といった基礎ステータスよりも、自分の持つサポートスキルにあると、麻莉亜は言っていた。

 レベルが上がると基礎ステータスが上がるのはもちろんなのだが、それに伴って持てるサポートスキルが増えたり、新しく有用なサポートスキルを手に入れたりすることができるみたいなんだ。

 だから、単にレベル差が2とか3しかないといった状況でも、持っているサポートスキルによっては戦力が全然違うことも出てくるそうで。


 その区切りが5の倍数レベルにあるらしく、レベル5とレベル4では結構な戦力差があると麻莉亜は言っていた。

 だから麻莉亜は執拗に俺をレベル5まで上げようと誘ってきたわけなのだが。

 そういったシステムの性質上、いくら麻莉亜と言えどもレベルが10も違えば圧倒的な戦力差となり、麻莉亜と同等の機能を持っていると見込まれるエボルと戦うにはそれではまず負けるだろうというのが、麻莉亜の見通しだ。


 その麻莉亜がこの調子なら、いつ世界を元通りにしてくれるのか分かったものではない。


「麻莉亜としては、いつくらいにエボル倒せそうだ?」

「……現状では不可能でしょう。これ以上レベルを上げる手段が対人戦しかないのであれば、私はレベルを上げることができません」

「…………」


 麻莉亜はアンドロイドだ。

 アンドロイドには人間の言うことを聞く、人間に危害を加えない、自分は守るという基本的な行動原則が備わっている。

 エボルやクライシスみたいなのでなければ、他のどのアンドロイドもそれは同じだろう。


 ただ、麻莉亜に限って言えば『より人間に近い』というコンセプトの元で作られたものなので、そこは微妙に灰色な部分があると、親父から聞いたことがある。

 麻莉亜はそんなことはまずしないだろうけれども、その気になれば人間の命令に逆らうこともできるし、人を殴ることもできる。

 親父やお袋、俺には何だかんだで最終的には逆らえないようにはなっているらしいけれども。


 とにかく、麻莉亜だって特例がない限り人間に危害を与えることができないのは、他のアンドロイドと同じだ。

 それが殺人ということになれば、なおさらだろう。

 従って、麻莉亜は殺人の可能性が出てしまう真剣勝負はおろか、通常戦闘だって他人には仕掛けることができない。

 つまり、対人戦でしか経験値が入らないのであれば、麻莉亜がこれ以上レベルを上げるのは不可能ということになる。


「ど、どうすんだよ……やばくないかそれ……?」

「相手は自分を最高の性能だと誇っています。もちろん、どんな人間にも勝てる自信があるのでしょう。それを考えれば人間を恐れてわざわざレベルを上げられないような状況を作るとは思えません。それでも今後レベル5より上のクライシスを用意する気がないのであれば、人間が私に仕掛けてこない限り私のレベルアップは不可能です。私は人間相手に真剣勝負を挑むことはできません。海人さんのように話し合いのできる相手でないと殺してしまう可能性もあるので、通常戦闘も申し込めません。これ以上レベルを上げる手段がないのであれば、私がエボルに勝つのは一生無理ということになりますね」

「ちょっと待て、そしたらこの世界どうなんの!? マジでエボルに支配されちゃうじゃねぇか!」

「他に人間の方でエボルを倒してくれるまで上り詰められる人がいれば……」


 そう言って麻莉亜は俺の方を凝視してくる。


「俺? やんねぇよ!! レベル上げだって相当しんどいぞ。ゲームも完全にクソゲーの部類だし、俺はやりたくねぇからな!」

「それだと、お父さんやお母さんの敵討が取れなくなってしまいます。私はエボルを倒したい。そうなった場合は海人さんのアシストについてでも、エボルを倒しに行くつもりです」

「だからやらねぇって! 麻莉亜のアシストがいくらあっても……」


 と、言った所で小夏のことを思い出した。

 小夏はああ見えても一応人間。

 麻莉亜の方がよっぽど人間らしいが、小夏もれっきとした人間。

 エボルを倒したい強い意志がある。

 麻莉亜と同じだ。

 麻莉亜はもうこれ以上レベルを上げることが出来ない可能性があるが、アシストならできる。

 アシストしてでもエボルは倒したい。

 一方小夏はどう考えてもうまくゲームを攻略していっているとは思えない。

 完璧じゃん。


「よし決めた。これから麻莉亜は小夏のアシストに回って……」

「却下します」

「早いな!!」

「小夏さんが私のアシストを受けたいと思っているとは思えません。そして、私も必要がないのに小夏さんのアシストをしようとは思いません」


 麻莉亜も長年付き合いのある小夏のことはよく理解しているようだ。

 確かに小夏は誰も頼りにしないと意固地になっていた。

 でも、このままじゃあいつは暴走を止めることができないんだよ。

 怪我するだけならまだしも、本気で死んじまう可能性があるんだ。


「必要なんだよ。麻莉亜も分かるだろ? あいつが暴走しているの。今回はエボルを倒すーなんて言って頑張っちゃってんだ。あいつ、このままじゃ死んじまう! 小夏だっておじさんの……九條さんの大切な愛娘だぞ? 何とかしてやれねぇかな?」

「もしかして海人さんは小夏さんのことが好きなのでしょうか?」

「何でそうなんだよ! ガキの頃から見てるし、危なっかしいだろ? それに、勝手に死なれたら小春だって悲しむ」

「小春さんのことが好きなのですか?」

「好きさ。あぁ、好きさ、大好きさ」

「却下します」

「何でだよ!!」

「私が小夏さんの意志を無視してとやかく言うことではありません。また、小夏さんの場合私が言った所で考えを改めてくれるとも思えません。小夏さんを助けるためには、小夏さん自身が自分の力量に気づくか、酷い目に合う前にエボルを倒してしまうしかありません」

「…………」


 麻莉亜でも無理か。

 何だか俺には無関係だと思ってきたことなのに、俺が追い詰められているような気がしてきた。


 俺の心配していた小夏の制御は、麻莉亜でも不可能。

 更に、最終的に麻莉亜に任せればいいと思っていたエボル討伐も雲行きが怪しくなってきた。

 俺は何ともうまくいかない物事に落胆し、頭を抱えてしまった。



「それよりも海人さん、学校は如何でしたか? 危険はなかったでしょうか?」

「それがさぁ……」


 今度はそう麻莉亜に話をふられたので、俺は今日学校であったことを全て話した。

 とりあえず教師は味方してくれると言ってくれたことや、黒波に殺すと言われたこと、学校では生徒が失踪するような事件が起こっているということ等々。


 麻莉亜のエボルを倒す目算が崩れたという話を聞いた後だ。

 話している俺も気が滅入ってきた。

 それでも麻莉亜は表情を変えずにふむふむと真剣に俺の話を聞いてくれていた。


 そう。

 いくら窮地に追い込まれても麻莉亜が俺の味方でいる限り、俺は悲観することはないし、希望を失うこともないんだ。

 俺が希望を失うことはないんだが……。


「……という感じなんだけど」

「……危険ですね」

「そう思うだろ? こんなんじゃ、学校行くどころじゃないだろ」

「学校は今後必要とされる知識や社会性を学ぶに必要な教育機関だと心得ています。しかし、黒波空吾の件や校内で生徒の失踪が起こっていることを考えれば、海人さんが行くこと自体危険だと私も考えます」

「……俺、学校なんか行かなくていいよな?」

「……海人さんの意志にお任せします。海人さんが行くというのであれば、私はそれをに従います。危険があればすぐに知らせて下さい。海人さんが危険な目に合うことがないよう、私は最大限の努力をします」

「麻莉亜……」


 麻莉亜が俺の味方で本当に良かった。

 麻莉亜は昔からいつだって俺の味方だ。

 極力俺の気持ちを理解しようとしてくれるし、俺の気持ちを尊重してくれる。

 俺のことに関しては麻莉亜がいる限りそんなに心配はいらないんだ。

 それよりも……。


「小夏と小春が……」

「さっきも言った通り、私が小夏さんや小春さんに口出しすべきことはありません。言っても小夏さんが理解するとも思えませんから」

「そう言うなよ。おじさんも麻莉亜の父親と言っていいくらいなんだし、あの姉妹と麻莉亜も姉妹同然だろ」

「やめて下さい。確かに清秋さんは私の父親にも当たりますが、私は彼女達と姉妹という続柄には当たりません」


 くそ~。

 いつから麻莉亜はこんなミニマム姉妹に冷たくなったんだよ全く……。

 最初はもっと普通な感じだったのに……。


「俺からのお願いでも無理か? 何とか2人を助けてやって欲しいんだけど……」

「彼女達が私の助けを必要としているのであれば考えますが、そうなのですか?」

「…………」


 そう麻莉亜に聞かれて小夏の言葉が思い浮かんだ。


 ――麻莉亜にも頼らない!

 

 くそーー!!

 頑固野郎め!!

 麻莉亜に助けてもらえれば小春も安全安心だろうに!!

 そうなれば小夏も安心、俺も安心でイイトコ尽くめじゃねぇか!!

 大人しく守られてろよ!!


「それよりも海人さん、レベル上げをしましょう」

「は?」

「レベル上げです。今後エボルを倒すまではクライシスゲームのレベルは必ず必要になってきます。出来るだけ上げておいて損はありません」

「嫌だよ! 少し上げただけでもめっちゃ大変だったじゃねーか! 俺はもうあのゲームやらない! それに万が一俺が死んだらどうすんだよ!?」

「私がアシストについている限り、クライシス戦で死ぬことは現状ありません。安心してください」

「嫌だよ!! だって麻莉亜、俺を自分の代わりと見立ててエボルを倒そうとしてんだろ!?」

「これ以上私にレベルを上げる手段がなくなれば、或いはそうなります」

「はっきり言いやがった!! 嫌だ嫌だ! とてもじゃないがやってられん!!」


 麻莉亜とのレベル上げは俺に言わせれば地味な作業。

 言わば、つまんないRPGのレベル上げと同じなんだよ。

 ただ麻莉亜の指示に従って『手』を出して、時折挟まる麻莉亜の解説を右から左へ流すだけ。

 そこに楽しみが1つもない。

 本当に面白くないんだ。


 だから麻莉亜のその提案は申し訳ないけれども拒否させてもらった。

 それでも麻莉亜はしつこくせがんでくるので、今回だけということで仕方なく俺はレベルを3つだけ上げた。

 その結果、一応レベルは4まで上げることが出来た。


 麻莉亜はどうしても俺のレベルを5まで上げたかったみたいだが、あまりにもダルかったのでレベル4でギブアップ。

 レベル4からは一層経験値の入りも悪くなったので、これでもかなり頑張ったと思うし、これで勘弁してもらった。

 変にレベルを上げすぎて、麻莉亜に「このまま海人さんにエボルを倒してもらおう」なんて思われても困る。



 エボルを倒せる見込みのあった唯一の希望、麻莉亜が行き詰まった。

 そして小夏は小夏で誰にも頼らないと1人で暴走を始めた。

 それを止めることは麻莉亜にもできない。

 現実を見てしまったことで、俺の心配事は増えてしまった。


 これでは落ち着いて漫画を読む気にもなれない。

 だからと言って俺に出来ることなんて何一つない。

 この現状を麻莉亜が打破してくれるのを、俺は待ち続けるしかないんだ。

 それが引きこもりエリートの精神であり、ダメ人間を自称する男の精神なんだ。


 この壊れゆく世界を救う物語は、勇者麻莉亜の手にかかっている。

 俺は必死でそう思い続け、麻莉亜からのレベル上げの誘いから逃げ、自分の気持ちを落ち着かせようと再び現実逃避に戻った。

 しかし、どうしても小夏の態度や言葉、行く先を頭の中から消すことができず、以前のように頭を空っぽにして落ち着くことはできないのだった。

 【Next】

 →そのお兄ちゃんは幻か


 【Tips】

 レベル1から選べる職業は剣士、格闘家、弓兵の3種類である

 レベル10になった時にクラスチェンジが行え、更に上位職へと分岐できる

 職業にはパッシブスキルが付いており、例えば剣士であれば剣の攻撃力が+3される

 また、職業特有のサポートスキルも存在する

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