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第3遊戯 まずは基本から行こうか

喉乾いた…




「ではまずこれを渡しておく」


「これは……サイコロ?」



 手渡されたそれは百円ショップにも売っている良く見るアイテム、サイコロ。



「それはゲームで言う捨てるなんてとんでもない! という物だ。無くすと結構ハードなペナルティがあるから大切にな」


「ペナルティ?」


「知りたいか?」


「勘弁してください大切にします」



 知りたいかといったときの瀬名の顔がものすごく邪悪だった……何これ恐い。

今更ながらえげつないゲームを受けてしまった。



「ではまずこのマップを見よ」


「マップ? おお、いつの間に……」



 見ろと言われて見れば足元にいつの間にか白色のマスが道のようにたくさん並んでいる。しかし、だ。それ以前に



「なぁ、この山とか雲あるじゃん」


「ああ、あるな。生だぞ?」


「え? じゃあ何触ったら土が出るとか?」


「出るぞ。本物だからな」


「へいへーい、マジかよそれ聞いてないよ何それ半端ねぇじゃんか」



  このマップのところどころに川や山があるのだ。そこまではいい。おもちゃの奴にもプラスティックでできた山とか川の絵が描かれたりしているしな。だがな……



「川の流れる音がするなんて聞いてないよ。つうか普通聞こえないよ」


「ああ、だから言ったじゃないか、本物だって。触ってみろ」


「……」



 恐る恐る川を触る。すると…



「冷たい」


「ああ、本物だからな」



 ……ハイテクを通り越して何だこれ。時代行き過ぎってレベルじゃないぞ。



「まあそんなものはすぐに慣れる。ではまずこれを見てもらおうか」


「慣れるのかこれ…」



 少しこの先の事を考え不安になりながらも瀬名が提示したものに視線と顔を向ける。そこにははっきりと自分の名前と何やらRPGでありそうなパラメータらしきものが示されていた機械らしきものがあった。



「何これ」


「これはお前の現段階のステータスを示す物だ。名前はAbility status display equipment、略してASDE、アスディという物だ」


「ステータス? アスディ? ASDE?」


「まあパラメータ表みたいなものだ」



 どういうこっちゃ。



「お前の今の状態から能力、考え、特性、特殊能力等がここに示されているんだ」


「何そのゲームみたいなあれ!! びっくりなんですけど!!?」


「まあ普通リアルの自分の能力を見るなんてことないからな」



 あってたまるか馬鹿野郎。



「まずこのASDEだが、表示される能力値は初めは基本的に、体力、考え方、得意不得意、特殊能力しか表示されない」


「それでもそれだけ知ることができるんだな。嫌なような良い様な……」



 複雑だ。



「で、説明だが、体力は見たままでお前の現在のスタミナだ。お前が走ったりして疲労を感じれば減るし、逆に休めば回復する」


「ふむ」


「次に考え方。これはようは思考傾向だ」


「思考傾向?」


「ああ。簡単にいえばマイナス思考とか、破壊願望とか、どういった考え方の基準を持ってるかってことだ。マイナス思考だと何か考えるときマイナス方向にもっていきやすい人がなる。今のお前だと、普通。特にこれといった基準がないということだ」


「まあな」



 何かぶち壊しながらなにか! なんて考えもないし鬱だ飛ぼう、なんて考えもないし。



「ただこれは注意がいるぞ? 考え方の基準なんていとも簡単に変わるからな」


「そりゃそうだろ」



 人の考えに感化して自分も! なんてあるし。



「次に得意不得意。まあこれは説明しなくても良いな。そのまんまだ」


「そうだな」


「まああるとすればこれも変わったりするから注意がいるということだ」


「そうなのか?」


「ああ、中には何かをしてあ、これ私いける! やつもあるだろ?」


「ああ、確かに」



 あったなそんなの。



「今のお前は……得意なし……お前、どんだけやる気ないんだよ。」


「うるさいんです」


「不得意は……何だこれ絵描き?」


「ああ、これな。小中高ですべて2以下しか取ったことがない」


「まあよくあるな」



 昔美術でのらえもんの絵を描いて先生に見せたら引き攣った笑みで、ま、まあ良いわよ、と言われた。あれは結構ショックだった…



「お前の感性がだめなんだな」


「酷い言われようだ」


「まあいい。そして最後に特殊能力だ」


「これは?」


「まあお前の持つスキルや特殊な才能みたいなものだ」


「ほう」



 何があるのだろうな。モテる! とかあればいいが…無理か。



「この特殊能力は初めは4つしか表示されないんだ」


「4つ?」


「ああ、4つだ。例えばお前だと動物寄せ、危機回避、フラグ建築準2級(危険物取扱い方)、脆い原石だな。ほう、脆い原石持ちか…ある意味運がいいな」


「いやそれ以前に!!」



 フラグ建築準2級(危険物取り使い方)ってなんだよ!!



「説明してやろう。まず動物寄せは動物に好かれやすい人間につく能力だ」


「ああ、言われてみれば」



 良く散歩とすると猫が俺の足にじゃれついたり、犬が何故かついてきたりするな。なるほど、これのおかげか。



「次に危機回避だが、これは良い物だ。消えないように大事にな。これは言うなれば命の危険を回避しやすい人間が持つスキルだ」


「命の危険?」


「ああ。記憶にないか?」


「う~む………あ、あった4つほど」


「だろう」



 1つは小学校の時、屋上で友達とバカやってた時貯水タンクが倒れてきたんだっけな。間一髪当たらずに済んだんだよな。

 2つ目は中学校の時だな。突っ込んできたバスに直撃せず掠っただけで済んだんだっけ。

 3つ目は鉄骨だ。マンガでよくある上からドーンってやつ。無論、助かった。

 4つ目が一番ヤバかったなぁ。俺が高校3年の時だ。俺がいつも通る道に昔の不発弾埋まってたらしく、突如爆発。幸い俺はその爆発に巻き込まれる前にその場所から離れていたから良かったものの、2mくらい後ろにいたら飛んできた飛来物で体を貫かれていたところだった。



「……ありがとうお母さん、あなたのおかげで俺は無事です」


「良かったな。で次はお前の気になるフラグ建築だが…」


「大丈夫だ、もう分かってる。ようはあれだ危険な場面に遭遇しやすいってことだ」


「ああ、そうだ。間違っても1級なんて取るなよ? 死ぬぞ?」


「取りたくないわ」



 むしろ2級も消したいわ。



「で、最後に脆い原石……これはようは才能の塊の脆いバージョンだ」


「どういう意味だ?」


「原石は磨き方次第ではただのゴミになる。しかし、これはさらに壊れやすくもあるってことだ」


「壊れやすい?」


「ああ。開花すれば天才だが、開花しない可能性が普通よりも高い、ただそれだけだ」


「おおおう……」


「普通なら砕けないところをお前の場合は砕けたりするかもしれん、だからしっかりと己を磨くことだ」


「お、おう」



 なんだか分からんが俺は運が良ければ開花するらしい。



「とりあえず最低限はこれでいいだろう。後はプレイ中に随時教えていこう」


「おう」


「あ、それと1日10回までのサイコロだが、一度振るとしばらくの間振っても意味がなくなるから注意しろよ?」


「ん? つまり」


「冷却期間があるということだ。1度振ると最低1時間は振れない」


「なるほど。そこらへんも考えていかなきゃな」


「ああ。では早速振ってみよう。時間の確認はいいのか?」



 そう言われ、俺は念のため腕時計を見る。現時刻午後6時ちょうど。これを振ったら次は7時ぐらいまでは振れないのか。よし。



「では確認が済んだので、記念すべき1回目、いってみようか」



 瀬名がそういうと俺は幸先良いように、と祈りながらサイコロを振る。カンカラララとあっちに行ったりこっちにいったりし、やがて勢いをなくしたサイコロは俺の足の前に止まる。数字は……



「4だな」


「ではこの人型を」



 手渡された物は大体1,2㎝位の小さな白い人形だった。俺は一度それを見るとスタート地点に置き、4つ進める。するとそこに書かれていたのは……



「地獄か宝?」



 何とも言えないマスだった。いや…地獄という文字が浮かんでる時点で、何とも言えないとは言えないのかもしれん……とりあえず、何も悪いことがなければいいが……














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