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恋の宮で泳ぐ君等  作者: 采火
本編
10/12

雪解け泳宮

 全ての報告を聞いた入彦は目を臥せた。阿弖も自分の目で見た事が未だに信じられないでいるが、事実弟姫は亡くなっている大碓を一人で祀っていたのだ。どういう経緯でこうなったのか想像もつかない。

 一人、入彦だけがやっと全ての実体を分かったかのように、深く深く溜息をついた。


「───きっと大王の意向に逆らってしまったんだな」


 若さ故の過ち。だが、二度目は無い過ちだったのだ。

 こうならないためにも入彦は再三娘達に注意を促してきた。娘達の様子からして、入姫はこの事を知らず、弟姫だけが知っていたのだろう。弟姫が青ざめる理由も仕方がない。

 しかしずっとそのままでいてはいけないのだ。成長しなければ、前を見なければ、ずっと己を変えることは出来ない。

 弟姫が罪の意識を何に転じさせるか、入彦はそれだけが心配だった。

 ふと窓から空を見る。澄んだ空から太陽の光が柔らかく降り注いでいた。きっと今の時分は、大碓の造った池が想像以上に綺麗に輝く頃だだろう。入彦は忙しさにかまけてまだ見ていない池の光景を脳裏に描いた。あの池が全ての始まりだ。

 弟姫が落ち着いたら、さり気なく事の次第を聞こうと思う。池を案内させて見るのもいい。最近の自分は入姫のことばかりを気にかけて、弟姫のことはすっかり後回しだったから。


***


 季節が巡り春がやってくる。

 春は雪解けの季節だ。

 溶けない氷がないように、心のわだかまりもいつかは解ける。

 入彦は思った。

 ───温かな日差しが、全ての罪を溶かしてくれればいい、と。


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